なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

FUCK GEEZ『Once Upon A Time There Was FUCK GEEZ….』

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京都府舞鶴市を拠点にするパンク・バンドが米国のレーベルからリリースしたベスト盤。

コンスタントに活動を続ける日本のインディの中で最古のレーベルである、
MCR Companyの主宰者Yumikes(vo)が率いるバンドだ。
このLPは83年のデビュー・ソノシート『Cut It Off』から
92年の伝説的なオムニバス・カヴァーCD『掟破り・The Breakers』までの音源から抜粋されている。
ぼくも初期のFUCK GEEZのソノシートやカセット作品を持っているから懐かしく思うと同時に、
時代的に“昭和最後のパンク”の息吹を感じる。


ANARCHYに加えて、
奇形児やMASTURBATIONをはじめとするADK Recordsのバンドたちや、
STAR CLUBなどの日本バンドの影響を感じる素朴なパンクだ。
日本ならではの雑種感覚でハードコア・パンクも取り込み、
ホメ言葉として日本特有の“ヤンキー・パンク”の塩っ気もピリリと利いている。
と同時に早くから外国のシーンとコンタクトを取り、
と同時に特定の日本のパンク・シーンとつるまずに様々な地方の様々なバンドと関係を作ってきた、
Yumikes率いるバンドならではの非内向き志向は当然である。
ANARCHYのオリジナル曲8曲をメドレーでカヴァーした直後に、
ドイツのハードコア・パンク・バンドであるSPERMBIRDSのカヴァーをやるというセンスも、
FUCK GEEZ以外にはありえない。

楽曲的には英国の77年スタイルとハード・パンクの流れをくみつつ
80年代後半の曲はメロディアスなハードコア・パンク・ナンバーが多く、
メロディアスな曲からスラッシュ・チューンまでやり
ラストはLAUGHIN' NOSE風のポップ・パンクでキメる。
昼間っから営業しているお通し無しの安い居酒屋で色んなアルコールを
ちゃんぽんしているみたいな気分が味わえる。
なんたって不揃いだ。
メジャーもアンダーグラウンドもヘッタクレもないとばかりに意外と音作りに凝っていたりもして、
ちょっとの失敗も御愛嬌なんである。
昔のエロ本みたいなセンスの「むすんでひらいて」の替え歌は
初めて聴いた時と同じく今回も爆笑させていただいた。

意外なところにもFUCK GEEZのファンが存在する。
たとえばThe GEROGERIGEGEGEのリーダーもFUCK GEESの音源を愛聴し、
ライヴ・ビデオをよく見ていた。
性的コンプレックスを感じさせる曲の
「マスターベーション」や「How To Sex」などの初期の歌詞を見るとそれも納得できたりする。
切なくて切なくてたまらないのである。

という具合に歌詞も非常にプリミティヴだ。
SEX PISTOLSに衝撃を受けたとのことだが、
ニヒリスティックではなく、
どちらかと言えばCLASHの姿勢に近いハッパをかけるトーン。
ナイーヴに思えるところも見受けられるが、
どれも純情である。
本作にも収録された曲「パンク・ロックで埋め尽くせ!!」で歌われる
“はやり廃りの奴らにはアキアキするぜ”の昨今だけに、
89年の時点でチェルノブイリを歌い込んだ曲「Where Are You Going?」を聴くと、
周りに流されぬ下心無きピュアな歌の大切さをあらためて知る。

ジャケットは表も裏も
SEX PISTOLSの『Never Mind The Bollocks~』へのオマージュとも解釈できるデザインで、
レアな写真をたくさん載せたカラフルな歌詞カードも高ポイント。
オリジナル曲の歌詞とその英訳(一部抄訳)が読みやすく載っているのもうれしい。
いつも書くようにパッケージ・トータルでひとつの作品なのである。

そのアートワークを彩るメンバーの写真が象徴するように、
いい感じでオシャレな道を常にハズしている。
ファッショナブルなシーンに取り込まれた時点でパンクもロックも骨抜きにされてダメになるわけだが、
そうゆうシーンが鼻をつまんで取り込もうと思わないほどのグレイトな激臭に満ちている。

CRUST WAR周辺の人間が制作に関わったこともうなずける原始の一枚。


★FUCK GEEZ『Once Upon A Time There Was FUCK GEEZ….』LP+DLクーポン
LPは14トラック入り。
2009年と2010年の計9曲分のライヴ動画がダウンロードできるクーポン付。


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コメント

「働きたくない」は個人的に印象が強かったんで久しぶりに聴きましたがやっぱり好きですね。トライアゲイン、TANKARDのバージョンも好きですね。でも、このFUCK GEEZの直訳の日本語で歌われたバージョンが歌詞の良さもあって素晴らしいと思いますね。「TO BE OR NOTHING TO BE」を入れて欲しかったですね。意外な所にファンがいるんですね。ゲロゲリさんも、意外に内容自体が切ないやつが多いバンドでしたね。

かくさん、書き込みありがとうございます。
書き込みから察するにかなりFUCK GEEZもチェックされていたようで、さすがです。
いわゆる日本語パンクの伝統的なバンドともイイ意味でズレているところも含めて、けっこうマニア受けしたのかもしれません。どこもかしこも聴いていると切なくなりますし、GEROGERIGEGEGEは辺境やマイノリティの匂いのするものがずっとテーマでしたから納得です。
洗練れた東京のバンドではありえない地方パンクのメチャクチャな面白さが詰まっていますね。TANKARDのヴァージョンは聴いたことないですが、日本語カヴァーも素晴らしいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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