なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

VISION OF DISORDER『The Cursed Remain Cursed』

VISION OF DISORDER『The Cursed Remain Cursed』


ニューヨーク州ロングアイランド出身の“メタル・ハードコア・バンド”、
VISION OF DISORDER(以下、V.O.D.)が11年ぶりに出した5作目。
プロデュースと録音はSHADOWS FALLの『Madness In Manila』を手がけたウィル・プットニーで、
プロダクションとミックスは
2000年代半ば以降のMOTORHEADのプロデューサーとして知られるキャメロン・ウェッブである。

自分にとって特別なバンドの新作だから、
CCDプレイヤーにCDをセットしてから正座してスピーカーに向き合って音楽に臨む。
一抹の不安を抱きながら“play”ボタンを押す。
この10年間に米国から続々と出てきて飽和状態のいわゆるメタルコア・スタイルとはまったく違う、
まさしくV.O.D.。
久しぶりにこう言いたくなった。
全世界を敵に回してもおれは支持する。


2002年にV.O.D.が活動停止した後、
中核メンバーのティム・ウィリアムズ(vo)とマイク・ケネディ(g)はBLOODSIMPLEを結成。
メタル・イベントの“ラウド・パーク”に出演するため2006年に来日もしたが、
観ていて鬱になるほど複雑な気分に陥った。
2タイトルのアルバムも悪かないが、
中途半端なメジャー路線アプローチが痛々しくも感じた。
メジャー・レーベルのバックアップのためかV.O.D.よりはアルバムが売れたようだが、
ティムもマイクも“何かが違う・・・”と悟ったのかどうかは知らない。
だがV.O.D.が徐々に再始動の準備していったことは事実である。

V.O.D は2006年に数回再結成ライヴを行ない、
その映像が『Dead In NY』というタイトルのDVDで世に出た2008年には
本格的な再編に向けて動き出していたようである。
ただしその『Dead In NY』、
テンションは健在だったが、
歌もポイントの4作目『From Bliss To Devastation』(2001年)の曲をやってないのが気に入らなかった。
まるでそのアルバムがなかったことにしたいかのように思えたからである。

ひとまずその件は置いておいて
まさか本当にニュー・アルバムを出すなんて思ってもいなかったから素直にうれしい。
V.O.D.のfacebookによれば96年のアルバム・デビュー時から不変のメンバーでのレコーディングのようだ。
やっぱりこの5人が揃えば何かが起きる。
いわゆるケミストリーってやつだが、
メンバー全員で音を出して曲を作っていく過程が目に浮かぶアルバムなのだ。
とりわけベーシストとドラマーのコシが強く獰猛なデス・メタリック・グルーヴはもっと称賛されるべきで、
BLOODSIMPLEとの違いの大きさを再認識。
マット・バウムバック(g)がときおり弾き出すブルージーなエキスも本作で染み出している。
90年代後半にニュースクール・ハードコアの異端として突出ししていた個性がまったく古びることなく、
それどころか精神の断崖に追いつめられた処女の如く奥深いところが初々しく汚れたまま炸裂している。

セカンドの『Imprint』(98年)を核に、
ファーストの『Vision Of Disorder』(96年)以前の曲の要素を根元までぶちこんだみたいである。
昔の曲の再録音が中心ながらサードとしても数えられる『For The Bleeders』(99年)収録の
芳醇な曲の色も入っている。
メロディアスに歌うパートこそあまりないが、
リリース当時も賛否の声が飛んで最近のセットリストからも曲を外している
前述の4作目『From Bliss To Devastation』(2001年)のフック十分の曲作りも、
実は大いに活かされている。
要はこれまでのV.O.D.をコンパクトに凝縮して先に進んだのである。

V.O.D.の活動停止中に増殖した米国産のメタルコア・バンドからすればメタルメタルしてないが、
一般の音楽ファンの方が耳にすれば十分メタルってことになるだろう。
こういうメタリックで激烈な音に対して頭デッカチな輩はすぐマッチョ!だとかのたまうが、
単に激音についていけないだけでケチつけたいならばせめて“タフ”と言っていただきたい。
ただメンタリティがタフだとしてもヴィジュアルを見れば一目瞭然なように、
V.O.D.はいかにものニューヨーク(シティ)ハードコアのバンドではない。
いわゆるタフ・ガイとは一線を画し、
いわばケンカが弱そうなバンドである。
スラム育ちでもない。
だがサウンドも歌詞もどのニューヨーク・ハードコアよりも強靭であり、
喜怒哀楽の“喜”と“楽”を根こそぎ殺ぎ落として
“怒”と“哀”だけに永遠の命を吹き込んだかの如きアルバムを今再び叩きつけてきた。

稀代のヴォーカリストであるティム・ウィリアムズの喉にも惚れ直した。
はらわたと心の奥底からのスクリームがほとんど野放しでぶちかまされ続ける。
命を削っていれば軋まない歌声なんてウソだ。
逆上の意識の流れで音と共に絶叫が前のめりに加速している。

“呪われた者は呪われたまま”と解釈できるアルバム・タイトルが示すように、
“ネガティヴ・メンタル・アティテュード”全開の熱を帯びた歌詞にも磨きをかけ、
ますます壮絶である。
ハードコアとデス・メタルの極端な精神性がファックして産まれ堕ちたヘイト・フィーリングに身震いする。
死臭が漂うほど陳腐で底の浅い手垢にまみれたイージーなプロテスト・ソングや
ヘドが出るほどエゴ丸出しの“ポジティヴ”なメッセージ・ソングの浮ついた乱舞に吐き気がする昨今、
これほど“希望”が激しく横溢する憎悪の言葉をおれは知らない。

突き抜けるための言霊の連続だ。
歌詞の一部から引用すればRest In Peaceならぬ“Rot In Pieces”。
「Set To Fail」をはじめとして曲名も覚悟を決めたフレーズばかりだ。
これまであまり見せなかったポリティカルなニュアンスが滲み出ているところも興味深い。
ただしUSAに言及しつつも意識は普遍的である。
世界中の煉獄が見えている。
むろん“奴らがどーのこーの”とも歌わない。
V.O.D.は免罪符を必要としないし傷を舐め合ったりもしない。
敵も味方も欺瞞の渦。
だからNEGATIVE APPROACHみたいに“俺”と“あんた”のタイマン真剣勝負だ。
“個”と“個”で真正面から向き合うしかない。

究極のカオティックなバンド名を背負ったがゆえの重い命のヴァイブレイション。
まさに触発のためのロックである。
死ぬまでこれで命をつなげる。


★VISION OF DISORDER『The Cursed Remain Cursed』(CANDLELIGHT USA CDL519CD)CD
四つ折り歌詞カード封入のデジパック仕様。
約42分11曲入り。


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コメント

はじめまして。

VODはエクストリームな音楽にのめり込むきっかけとなったバンドで、「imprint」を聴いた時の衝撃は今も覚えています(行川さんのライナーノーツもカオティックで最高でした)。人生で初めてライブというものに行ったのが、高校生の時、川崎クラブチッタ(2000年かな?)でのVODのライブ(with DEVIATE)でした。そこで絶頂を体験してからロックから抜け出せなくなり今に至ります。BLOODSIMPLEにはピンとこなかったので、発売を知っても迷っていたのですが、これを読んだら買うしかないです!
話はかわりますが、TURBONEGROの最新作はお聴きになられましたか?最近、へビーローテーションで聴いてます。DOLL誌で、行川さんによるハッピー・トムのインタビューを読んでTURBONEGROに興味を持ち、それからずっとデスロックの魔力にとりつかれています(行川さんがインタビューした数あるなかでも、この記事が一番好きです)。

脈略ない感想を長々と失礼しました。
今後のご活躍も楽しみにしております。

好みくらい自分勝手でいろよ

十一年ぶりですか…
そりゃ年とるわな

まだ聞いてませんが、必ず聞きます
なんか胸が熱くなった

行川さんありがとう

昨日、たまたまタワレコに立ち寄った際に偶然発見し、即購入。
ボクは98〜02年までNYで美大に通ってたんですが、ストレートエッジやヴィーガン、エモキッズの友人たちから「V.O.Dなんて聴くな!こんなもんクソみたいなメタルだ!」と揶揄されましたが、「お前ら高校時代は体育会系のジョックスにいじめられてイヤな思いをしたのに、自分の感性と合わない音楽のジャンルとかバンドを差別するのか?それじゃあいじめっ子と変わらないぞ!」と拙い英語で言い返したら、なんとも気まずい雰囲気になったことを思い出したり…。
新作、とにかくティムのボーカルが突き抜けてますね!スクリームでここまで多様な感情表現ができる歌い手は、非常に稀だと思います。現在絶賛聴き込み中です。

書き込みありがとうございます。

>溝口さん
『Imprint』はぼくも衝撃でした。あのライナーは取り乱しすぎで今読むと恥ずかしいですが、興奮は伝わってきます。文体が基本的コテコテでさらにくどくなって引かれそうだからずっと封印していますが、今回久々に一人称を“おれ”で書きたくなったのもV.O.D.だからなのです。
チッタ公演は『For The Bleeders』の後ですね・・・『Imprint』のツアーで3日間観たときよりグレイトなライヴでした。その時DEVIATEのメンバーと対談やったことも思い出しました(別にやったV.O.D.単体のインタヴューは掲載予定だった編集部の都合でお蔵入りになったことも思い出しました)。
TURBONEGROの新作はまだチェックしていません・・・・スイマセン・・・もちろん絶対買います。よくあれだけページを割いてくれた!という感じだったDOLL誌のハッピー・トムのインタヴュー、ロックの本質を突いていましたね。タイプはまったく違いますが、そういう点でV.O.D.とTURBONEGROは相通じると思います。

>タチバナさん
胸が熱くなってもらえてうれしいです。ぼくも“11年か・・・・”と驚きましたが、けっこうその間もV.O.D.のことは時々ネット上で情報を調べていました。活動停止中にそこまでするアーティストはあまりいないです。

>korokuさん
興味深いエピソードですね。“ストレートエッジやヴィーガン、エモキッズ”には好まない人も多そうですね。V.O.D.はそのへんのシーンには馴染んでなかったでしょうね(ロードランナーでレーベル・メイトだったからかEARTH CRISISとツアーしたりしていましたが皮肉ったりしていた記憶も・・・)、かといってタフ・ガイでもないですし(V.O.D.はジョックスではないですしね)。ともすれば頭デッカチになりがちな(パンク/)ハードコア・シーンとは距離を置いて、色々な意味で我が道を進んでいたんですね。
ぼくは今まで聴いてきた全シンガーの中で10本の指に入るぐらいティムの喉に惚れています。

いつもご丁寧な返信ありがとうございます。
友人たちは19歳(ボクは日本の大学を卒業してたので23歳)と若く、ピュアで頭でっかちな時期だったのかもしれません。
とにかく当時のシーンは潔癖というか、いろんなジャンルをクロスオーバーして聴いている子はあまりいませんでした。SEの子はSEバンドを、エモキッズはエモを、レズビアンの子はCat PowetやBikini Killを、という具合で。
メタルもハードコアも聴いてたボクは異端だったのでしょうね。
ちなみにみんなが大好きで、別格扱いでリスペクトされてたのがFugazi。彼らだけは誰からも否定されてませんでした。
長文失礼致しました。

返信ありがとうございます。

V.O.D.とTURBONEGROはロックの本質を突いている点で共通している。言われてみれば、確かにそうですね。
両者の音楽には、「美しさ」と「自由」を感じます。
ロックって理屈じゃないですね。。

V.O.D.といえば石井エリコさんですが、彼女のことはどう思いますか?

書き込みありがとうございます。
>korokuさん
アメリカで生活した方ならではのリアルな言葉ですね。日本で抱いていた90年代のUSアンダーグラウンド・シーンのイメージです。そういう聴き方はよく言えば徹底しているということですが、十代末ぐらいはそういう感じになりがちかもしれません。表面的な思想性も綴れる歌詞より響きが正直と気づくまで、ぼくも時間がかかりましたから。
FUGAZIに対してはオルタナ勢に多い免罪符的なリスペクトと音楽的な訴求力の減退で、90年代後半以降はちょっと距離があります。むしろFUGAZI/イアン・マッケイをコケにしているPOISON IDEAの方にシンパシーを抱いたりして。
↑でタチバナさんが書かれているように、やっぱり“好みくらい自分勝手でいろよ”ってことです。

>溝口さん
そうですね、自由だからこそ雑種、ダーティなようで美しいです。どちらも全世界をマザーファッカー!と見なして中指立てていますし。その姿勢は自分の表現をはじめとしてある意味責任感が強いからこそ説得力をもつのです。それにしてもライヴ初体験がV.O.D.というのはしあわせ者ですね。

>にゃんさん
デビューした頃はハングリー精神があって好きでしたね。最近は文章自体ほとんど見かけません。

VODすごく懐かしいですね。
私も行川さんのImprintのレビューが印象的だったこともあり、imprintは数え切れないくらい聞き込みました!
新作が出たんですね。早速聞いてみます!ありがとうございました!

あきらさん、書き込みありがとうございます。
初来日公演に衝撃を受けたので、それからしばらくして音が届いた『Imprint』は書くのにエネルギーを注ぎまくった記憶があります。その当時のグルーヴを残して4作目のいいところも取り込みつつ、これまでなかった凶暴な歌唱を聴かせるなど新しいところにまた進んでいるのもうれしいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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