なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Omar Rodriguez-Lopez『Octopus Kool Aid』『Saber, Querer, Osar Y Callar』『Un Corazon De Nadie』

MARS VOLTAやAT THE DRIVE-INのリーダーでもある米国の奇才、
オマー・ロドリゲス・ロペスが彼にしては久々の約1年半ぶりとなるソロ作3タイトルを同時期に発表している。
むろんすべてセルフ・プロデュースだ。


SKMN-017.jpg
『Octopus Kool Aid』

昨年の2月に制作が完成していた約31分10曲入り。
LE BUTCHERETTESで歌う女性シンガーのテリ・ジェンダー・ベンダー(vo)と弟のマルセル(ds)も
大きくフィーチャーされている。
こちらはCDジャーナル誌の10月号でレヴューさせてもらった編集部に対する仁義もあるから、
ブログでの紹介はひとまず割愛させていただく。


SKMN-018.jpg
『Saber, Querer, Osar Y Callar』

昨年の5月に制作が完成していた約41分10曲入り。
ドラム・プログラミング、シーケンス、ピアノ、ウーリッツァー(エレクトリック・ピアノ)、
メロトロン、ベース、ギター、パーカッション、作詞、ヴォーカルのすべてと、
一曲以外のソングライティングを一人でやっている。
ライヴ・ドラムと一曲のソングライティングの共作を
MARS VOLTAでも活動を共にするディーントニ・パークスが行なったが、
ほぼ独演だ。

妖しい電子音とデリケイトな歌声をはじめとしてオマーが作ったサウンドがきらめきゆらめき、
ドラムが入ってくる作り。
ジャケットのイメージでサイケデリックに響いていく。
全編を覆うダブの応用みたいな音作りや日本の祭り太鼓のビートを思い出すリズムの曲も面白いが、
アシッド・フォークと呼べるパートが目立つのも特徴で
濡れた喉を震わせるオマーの歌声も大いに聴きどころだ。
内省的なようで意識が外に向かっているから音がダイナミックなところもポイント高い。

ギター弾き語りをベースに作ったことが想像できる曲が多く、
それは曲作りのクレジットが“composed”ではなく“written”というところにも表れている。
歌が前面に出た作りではなく楽器等の比重も高いアルバムだが、
実験的な“歌もの”アルバムとしても楽しめる一枚だ。

アルバム・タイトルはスペイン語だが、
曲のタイトルのほとんどは英語。
ラスト・ナンバーの「Angel Hair」は
今回の3タイトルも含むオマー作品のジャケットのレイアウト担当のサニー・ケイが90年代初頭にやっていた、
激情系ハードコア・パンク・バンドのANGEL HAIRに引っかけているのだろうか。


SKMN-019.jpg
『Un Corazon De Nadie』

2010年の11月に制作が完成していた約37分10曲入り(日本盤のCDは10月10日[水]発売)。
ヴォーカル、プログラミング、シーケンス、ドラム、ベース、ギター、ピアノ、サンプラー、
作詞、作曲、録音を一人でやった独演盤である。

今回の他の2作と同じくエレクトロニカからも導き出されたような音で、
テクノ以前のマーク・スチュワートのダブ・チューンも思い出すヘヴィな中低音がうねり膨張するが、
テロリスティックというよりは内向的な佇まいである。
KRAFTWERK、LA DUSSELDORF、初期DAF、SUICIDE、THIS HEATの幻影も聞こえてきた。
反復が基本とはいえトランスものとは一線を画し、
意外と音はポップにハジけて研ぎ澄まされて現代音楽風のピアノも挿入されるなど一筋縄ではいかない。
こちらはさらにヴォイスが音の中に埋もれているような曲が多いが、
むろん“ヴォーカルが弱い”という類いの作品ではなく、
こういうサウンドのバランスによって生々しさが増幅しているのだ。

1年半ほど前にできあがっていた本作がリリースされるようになったのは
今年3月のオマーの母親の他界が引き金だという。
となるとあらかじめ母親を想定した作品とは違うように思えるが、
ジャケットも含めて死を悼むアルバムに聞こえるのはぼくだけではないだろう。


いずれも歌詞は不明だが、
どんなことを歌っているのか気になるヴォイスの響きも特筆したい3タイトルだ。


★オマー・ロドリゲス・ロペス『オクトパス・クール・エイド』(スリープウェル SKMN-017)CD
★同『セベ、ケレル、オサル・イ・カヤル(知り、欲し、挑み、黙す)』(同 SKMN-018)CD
★同『ウン・コラソン・デ・ナディエ(誰のものでもない心)』(同 SKMN-019)CD
すべてデジパック仕様。


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コメント

こんにちは

行川さん、いつも拝見しています。
オマーは才能あるミュージシャンであり、ぼくも彼の作品が好きですが、それにしても少しプロダクツを出しすぎ、もっとアイデアを凝縮した方がいい、とは思われませんか?ネット上でフリーに公開するから「作品」として余り意識することなく次から次へとどんどん出してしまうのかもしれませんが。
別にMars Voltaだけやってればいいとは言いませんが、余りこういうことを言っている人がいないので、行川さんにあえてお聞きした次第です。

>Fripperさん、書き込みありがとうございます。
素朴に、出しすぎな印象はぬぐえません。
まあオマーの場合はライヴ音源をどんどんリリースするというのと違い、スタジオ録音で作った音源が大半だけにイージーなリリースではなのも痛し痒しです。どれもテーマごとに作品としてまとめてリリースしていると思いますが、MARS VOLTAなどではやらないリード・ヴォーカルをやるなど、独演に近いものはプライベート作品として意義はあるとは思います。ただ他の人が参加するにしても、決まりきった人でなく色々ミュージシャンと組んだ作品も聴いてみたいです。現状は、録りたい時にすぐ対応できる人とやっている感じなのでしょう。
インターネット時代に即して過去のソロ関連作もガンガン試聴可能にしていますが、「聴いてみて気に入ってもらえたらうれしい。よかったらCDも買ってくれたらうれしい」というスタンスなのかなと。せっかく作ったからたくさんの人に聴いてほしいという感じで公開しているのでしょうが、本人もコアなファンに向けている意識は強いと思います。
作詞はともかくソロ関連と同じく作曲もプロデュースも自分でほとんどやっているバンドだけに、やっぱりオマーはMARS VOLTAがアイデア凝縮のベストの場と考えている思います。気合の入り方が違いますもの。聴いている側でさえ頭がおかしくなりそうなほど緻密なMARS VOLTAの作業とはしばし離れ、ある一種の息抜きみたいな場としてソロ関連作品を作っているようにも感じますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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