なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『合衆国最後の日』

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『北国の帝王』や『ロンゲスト・ヤード』などで知られる
米国のロバート・アルドリッチ監督による77年公開の映画。
原題は『Twilight’s Last Gleaming』である。

“4年後”のアメリカ合衆国の裏舞台を描いた“サスペンス映画”だ。
東西の冷戦がピークに至る時代の政治が核のフィクションではあるが、
いわゆる“ポリティカルな映画”とは一線を画し、
“トータル・アート”の映画だからこそ成し得るスリルとダイナミズムとインテリジェンスに富む人間ドラマ。
周りに流されず身内も全世界も敵に回して我が道を進むintegrity(誠実さ/高潔さ)を浮き彫りにし、
静かなる感動を呼ぶ作品である。

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1981年の11月16日に米国北西部モンタナ州のミサイル基地が脱獄囚たちに乗っ取られる。
主犯は元・米国空軍大佐ローレンス・デル(バート・ランカスター)。
デルはベトナム戦争に関する“政治的な秘密”を暴露しようと試みたがゆえに、
米国の“不穏分子”と見なされ殺人をデッチ上げられて投獄されていた。
だがデルがミサイル基地を襲撃したのは単なるその復讐ではない。
信念のためである。
目的の遂行のためには“身内”をも殺すところなど
生きるか死ぬかのギリギリのところで存命してきた軍人のスピリットもキープしているが、
ベトナム戦争を生き抜いたデルのベクトルは進化していた。

ミサイル基地の設計等に参画していて装置等を熟知しているデルは、
第三次世界大戦に至らぬための安全装置を無力化してミサイルを発射可能の状態にした。
核弾頭を搭載してロシアに向けられたその9機のICBM(大陸間弾道ミサイル)で脅しつつ、
他の脱獄囚と共に立てこもりながら装甲車や戦車に囲まれたデルは、
“当時”の米国大統領デイヴィッド・スティーヴンス(チャールズ・ダーニング)と直接電話で交渉。
一人につき1000万ドル、大統領専用機による国外移送、国外脱出の際の大統領の人質同行を
ミサイル発射回避の条件として突きつけたが、
メインの要求は
ベトナムの人々のみならず米国の兵士も殺しまくったベトナム戦争の“目的の真実”の文書公表である。

むろん政府は内密に事を進めて一般国民も世界も事件のことを誰も知らない。
そんな中で軍には軍のメンツがあって危険な賭けに出るが、
お互い一目置いていたデルと大統領の間には
死にそうなほどの緊張感の中からゆっくりと信頼の兆しも見えてくる。
それはまるでこの映画の原題が告げる“黄昏の最後の輝き”である。
ベトナム戦争の時に米国が国家として一番大切にしながらも結果的に失墜した威信ではなく、
孤独を共有しているかのようにセンチメンタリズムを殺ぎ落として個人の信義に殉じようとする男二人には、
まもなく“審判の日”が解かれる。

サブ3

デルをはじめとする脱獄犯たちがミサイル基地を占拠して交渉に臨むまでの序盤がまずスリリングである。
ヴァイオレントな時間とはいえ派手なアクションはほとんどない。
むろん“火薬”が使われるシーンはあるし時に血も流れるが、
下手したら重みが失われる過激な映像に頼らず、
それでいてじわじわと冷や汗の匂いが漂ってくる生々しい時間の推移である。
一歩間違えばサリンで死ぬ作業など
大統領や軍を“脅迫”するための綱渡りの“仕込み”をする過程も見応え十分だ。

中盤以降はほとんどのシーンが落ち着いたトーンで進み、
極秘の“裏政治交渉”の内幕を覗き見るスリルも味わえる。
ユーモアはデルと手を組んだ脱獄犯が吐く程度で、
他の人間は誰ひとりとしてジョークを口走る余裕はない。
だが両者の駆け引きを固唾を呑んで見守るうちに静かな時間の流れがもたらす緊迫感に酔いしれていく。

理屈も感傷も入り込む余地がないハードボイルドな映像力とストーリーにじわじわと魅せられる。
適宜スクリーンを“分割”する見せ方によって臨場感を増幅させているところも特筆したい。
別の場所で物事が同時進行していることを見せるべくスクリーンの2分割~3分割~4分割も行なって、
交渉をしているときの双方の様子もわかるし、
お互いがやり取りしていないシーンで同じ時間の様子を映し出すことで
両者の“現在進行形”の心理も同時に見えてきて非常にリアルなのだ。


出演者もみな好演である。
特に主人公のデルと米国大統領のスティーヴンスには、
“好敵手”であることを乗り越えていく意識の流れが感じ取れるのだ。

言葉の比重も高い映画だが、
それぞれのキャラが伝わってくる会話の妙味で引き込まれる。
62年のキューバ危機に匹敵する事態に対する
国務長官などの米国システムの中枢の人物たちが集まった協議もリアリティ十分だ。
開かれた政府に改めるか闇の政治を続けるかの話で、
前者を選択したら国務省もCIAも必要ないという意見も飛びかう。
大半の人物が聞き取りやすい英語で話しているのも興味深く、
しっかりした教育を受けている者たちが米国の政治や軍のトップということを示している。
好戦的な人間はほとんど登場しない。
示唆に富む言葉の数々により誰もが現実を見据えた上での行動に思える。
目的と必要とあれば“悪”と取り引きするのも政治。
そういう冷厳な事実が現実を動かす。

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隠蔽を糾弾する映画とも言える。
ただ国家や軍や企業に限らず、
そういうものを指弾する人々も自分らを棚に上げて身内の“犯罪”を無責任に隠蔽している。
結局は同じ穴のムジナである。
だがこの映画の米国大統領は自分がしでかした事件に関してではなく、
10年以上前の米国政府等が犯したベトナム戦争にまつわる隠蔽に対して危険を冒す。
国民に対して重責を負う大統領の苦悩を露わにしながら少しずつ真正面から挑む姿は、
退路を断たれたからとはいえ潔くクールですらある。

90年代初頭に米国が介入から手を引いたばかりに無政府状態が加速したとされるソマリアなどの例もあり、
なんだかんだいっても世界の警察の任を担わざるを得ない超大国のトップの
米国大統領が背負う責任や決断力の重みもじわじわと伝わってくる。
自信がないがゆえに視野が狭く短絡的なブッシュ息子みたいな臆病者には務まらない。


当時米国大統領に就任したばかりのジミー・カーターも公開直前の試写会に訪れたという。
共和党/保守派からは“弱腰(≒人権)外交”とも叩かれた
イランのアメリカ大使館人質事件など大統領時代の外国との問題の解決方法や、
退任後の平和活動に影響を与えたのではないかとも想像できる。


オーケストラによる落ち着いた重厚な音楽も静かに緊張感を高めることに一役買っている。
有名な曲の「星条旗(原題:The Star-Spangled Banner)」が国歌に制定される前の実質的な米国国歌で、
この映画の中でビリー・プレストンによって歌われる愛国歌「My Country ‘Tis of Thee」が
主題歌のように使われているのも興味深い。
この映画の原題『Twilight’s Last Gleaming』が
現在の米国国歌「星条旗」の歌詞の一節をそのまま引用していることも含めて考えると、
複雑な思いが込められていると想像するに難くない。

米国の罪を問うみたいなニュアンスも含む映画だが、
同時に米国の懐の深さと包容力の大きさと胃袋のでかさ肝っ玉のでかさも伝わってくる。
正邪を超えた内省的なニュアンスに覆われているからこそ、
監督の“愛米”の思いも密かに震えている。

ほろ苦い余韻がいつまでも残る。
オススメ。


★映画『合衆国最後の日』
1977年/アメリカ・西ドイツ合作映画/146分/カラー/ヴィスタサイズ
11月3日(土)より、シアターN渋谷にてモーニングロードショー。
他、全国順次公開。
http://www.gasshukoku-movie.com/
(c) 1977 Geria Film GmbH


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コメント

プレス資料コピペ乙

フリークス小川ってのは山崎智ちゃんだろうか。山崎智ちゃん乙。じゃなくても乙。

-

山崎智ちゃん、行川さんに親切にしようよ。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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