なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『カリフォルニア・ドールズ』

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『北国の帝王』『ロンゲスト・ヤード』などで知られる
米国のロバート・アルドリッチ監督による81年公開の遺作。
“異形の映画館”シアターNの渋谷クロージング作の一つとしても『合衆国最後の日』と同時公開の今回は、
ニュープリント版での上映だ。

もともとのタイトルは『...All The Marbles』。
“トップ賞”を目指して女子プロレスラー二人とマネージャーが繰り広げる
汗と涙と笑いの珍道中と感動のクライマックスのアメリカン・ドリームなシリアス・コメディである。
音楽にロックが大きくフィーチャーされているわけではないが、
ぐだぐだの前半と熱い後半のビッグな落差も含めて
これはもう“ロックンロール・ムーヴィー”と言い切りたい。

サブ3

カリフォルニア・ガールズは
黒髪のアイリス(ヴィッキ・フレデリック)と金髪のモリー(ローレン・ランドン)のタッグで、
マネージャー[兼トレーナー]のハリー(ピーター・フォーク)の指揮のもとで全米を巡業する毎日を送る。

うさんくさい体臭プンプンでポン引きみたいに怪しいハリーは
彼女たちで一山当てようと目論んでいるようにも見える。
“芸人”として仕立てようとしているみたいにも映り、
当時日本で注目が高まっていたミミ萩原/ジャンボ堀のタッグと対戦するシーンでは
日本の芸者のスカウトも現れる始末だが、
カリフォルニア・ガールズのプッシュに一生懸命なことは確か。
とはいえいつまでたっても貧乏だし将来が見えないことに対してモリーは故郷に帰ることも考え始め、
アイリスは恋愛関係でもあったハリーに対して恋人としてもマネージャーとしても最低!と愛想を尽かす。
キャットファイトよろしく“泥レスリング”もやらされて観客みんなから笑いものにされ、
「ケガをした上に道化になるのだけはイヤ!」と泣いてハリーに訴える。
それでも夢をあきらめない二人は、
ハリーが運転する無駄に馬鹿でかいアメ車でつらくても悲しくても次の街へと向かう。

けど“見ている人はちゃんと見ている”というわけで、
いつのまにかカリフォルニア・ドールズはプロレス雑誌で大きく記事になっていた。
といっても実力が認められているわけではないからトントン拍子に事が進むわけではなく、
“肉体”を駆使してビッグ・チャンスを得る。
対戦相手は宿敵の二人組・トレドの虎。
その後半の試合のシーンでは
文章にするのが不可能なほどカオティック&エキサイティングな戦いが繰り広げられるのであった。

サブ2

真剣勝負の二人の女子レスラーもさることながら、
塩辛いイイ味を出しているマネージャーのハリーも“第三のカリフォルニア・ドールズ”である。
沈黙を恐れているかのようにしゃべくり、
格言をナンセンスにアレンジしたみたいなトークが
笑っていいんだか感心していいんだかわけわかんないセンスで目と耳が離せない。

そんなハリーは確かにケチな中年ではあるが、
悪徳マネージャーに見えて実はカリフォルニア・ドールズに対する深い愛を感じる。
「負けてもいいが、そしたら今までの苦労は水の泡だぞ」と
試合直前に二人に吐いた言葉は彼女たちへの最高の鼓舞フレーズだし、
終盤の大舞台におけるハリーの過剰な演出は感動ものだ。
オープニングとエンディングは艶やかな絢爛なエンタテインメント性たんまりで
核の試合は本格派ストロング・スタイルという女子プロレスのリングの醍醐味を、
ハリーはカリフォルニア・ドールズでダイレクトに伝える。

サブ4

権力に物を言わす興行師はまさに悪徳興行師である。
ベタベタなシチュエーションだが、
今も根はあまり変わらないだろうし米国だけの話に留まらない“興業の裏世界”みたいなものも覗ける。
ギョーカイと切っても切れない色欲をチラ見せしつつ、
ドロドロした物語とは一線を画すアメリカンな乾いたテイストで持っていく。
リングを囲む観客もたっぷり映しているのもポイントで、
ファンの声援(+ブーイング+爆笑)あってこそのカリフォルニア・ガールズということも表している。

妖しく退廃の香りが漂う朽ちかかった華美な映像もたまらない。
場末の匂いが漂ってくる下品ギリギリのあでやかな色彩感覚はドラッギーですらあり、
煙モクモクの工場がよく映し出されるなど鼻をくすぐる不健康な香りに覆われている。
ある種のチープな味わいをゴージャスな方向に持っていくパワフルな作りが素晴らしいのだ。
随所に使われる種々雑多な音楽も反則技に見えて正々堂々と楽しく、
マネージャーのハリーが愛するオペラはイイ意味で安っぽい味わいをもたらし、
クライマックスの“カリフォルニア賛歌”も感動的だ。

サブ1

カリフォルニア・ガールズの二人はタバコを吸うし、
別のレスラーは試合直前に缶ビールを飲んでいたりして、
ほとんどロックンローラーである。
カリフォルニア・ドールズのドサ回りは、
メジャーなポジションを目指しながらもなかなか手が届かないロック・バンドのツアーみたいだ。

カリフォルニア・ドールズが“NEW YORK DOLLSに対する回答”と思うのはぼくだけではないだろう。
NEW YORK DOLLSは地元ニューヨークだとヒップな人たちから支持を集めていたが、
他の土地でのライヴでは苦労していたというし、
いかがわしいにもかかわらず本格派という点でも通じる。
マネージャーのハリーのキャラは、
70年代に活動していた当時の後期NEW YORK DOLLSのマネージャーでその後SEX PISTOLSを手がけた
マルコム・マクラーレンそのものである。
さらにアイリスとモリーのグラマラスな怪しい匂いを噴霧するタフ&ドラマチックな生き様は、
アリス・クーパーをはじめとする“アメリカン・グラム・ロック”とも共振しているではないか。

リングがステージに見える。
特に晴れの舞台に上がったカリフォルニア・ドールズはロック・スター。
マネージャーの盛り上げも涙ぐましく目頭が熱くなった。

ロックンロールの世界観にも通じるプロレスならではのおもしろさで、
汗をかく女性が一生懸命になったときの美しさと輝きが加速する快作である。


★映画『カリフォルニア・ドールズ』ニュープリント版
81年/アメリカ映画/112分/カラー/ヴィスタサイズ
11月3日(土)より、シアターN渋谷にて公開。
他、全国順次公開。
http://www.californiadolls2012.com/
…All the Marbles (c) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved


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コメント

シアターNなくなっちゃうんですか。。。何か淋しい所にあって落ち着いてて好きでした。「合衆国最後の日」もそうですが、昔からのものを選びに選び抜いた感じですね。内容的に両方共、真剣勝負ですね。観たいです。

かくさん、書き込みありがとうございます。
シアターN、駅から近くても渋谷の秘境みたいなところにあるのも、上映していた映画にふさわしかったです。後日もう一つ紹介しますが、今回のクロージング作品もシアターNにふさわしいと思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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