なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TURBONEGRO『Sexual Harassment』

Turbonegro-SHcover.jpg


ノルウェーの“デス・パンク・バンド”の9作目に数えられる約5年ぶりのアルバム。
NASHVILLE PUSSYQUEENS OF THE STONE AGEからRDPやSATYRICONまでが参加した
トリビュート盤『Alpha Motherfuckers』もリリースされていることが示すように、
幅広いロックな連中たちから支持されているハンドだが、
これはまさに完全復活を告げる感動の逸物である。


89年の結成時から唯一離れずメンバーであり続けるリーダーのハッピー・トム(b)と
ギタリスト二人は前作『Retox』と同じメンバー。
ドラマーは変わり、
90年代の前半からバンドの顔だったシンガーのハンクもいない。
IRON MONKEYやACRIMONYやORANGE GOBLINのメンバーも在籍していたDUKES OF NOTHINGの、
トニー・シルヴェスターがニュー・ヴォーカリストとして加入している。

メンバー・チェンジの影響が気がかりだったが、
TURBONEGROの音の肝になるビートを担う新ドラマーもシンプル&手数が多くて加速度が途切れない。
ややMOTORHEADのレミー系の喉を震わせる新しいヴォーカルもまったく問題なく、
それどころか前任のハンクのスタイルを受け継ぎつぎながらも野太く血液が膨張して地獄の歌心が脈打つ。
ハッピー・トムのベースに食らいつく2本のギターは、
ノルウェー特産ブラック・メタルの毒精液を吸ったジョニー・ラモーンとアンガス・ヤングの二重奏である。

楽曲としてはRAMONESとIggy and the STOOGESとバンドの方のALICE COOPERのブレンドに、
本作で目立つAC/DCの要素を加味したかのごときシンプル&キャッチーな曲が基本。
そこに81~82年のツイン・ギター時代のBLACK FLAG
Roky Erickson & the ALIENSのやさぐれロックンロールのグルーヴが息づき、
静脈注射されたPOISON IDEAとブラック・メタルの“毒素”がサウンドの血中を流れている。

“物わかりの悪いロックンロール”をリスペクトしてネクスト・レベルに進める
血湧き肉躍るクールなソングライティングが筆舌に尽くしがたい。
ロックンロールの青黒い鉱脈が光り輝いている。
パンクもメタルもひっくるめて日本のロックの大半が陥る行儀良くて面白みに欠けるビートとは違う、
絶妙にゆるくて加速するリズムの感覚も他で聴けない。
音のナイフで琴線をゆすって涙が漏れてくる超絶ロックンロール・パンクのセンスと
キャッチーなソングライティングに悪徳のスパイスで、
蕩ける痺れる悶絶するアクメに達する。
しかも泣けるしドリーミングなのがたまらない。

レコーディング・プロダクションもパーフェクトだ。
TURBONEGROのヴィジュアルを象徴するフレーズの曲名「Tight Jeans, Loose Leash」そのものの
タイト&ルーズな鉛色のロックンロールに染め上げている。
プロデューサーのマット・スウィーニーは
ボニー“プリンス”ビリーと組んでアルバムを出しているミュージシャンでもあり、
Cat Powerやジョニー・キャッシュのアルバムでギターを弾くなど
演奏者として多彩なアーティストの作品に参加もしている。
いわゆるパンク畑ではないとはいえ
現在進行形のサイケデリックな音が肌に染みて耳が肥えたマット・スウィーニーのプロデュースにより、
TURBONEGROのロックンロールは肯定性極まりない致死領域を突破したのである。

生きたロックに新旧問わず幅広く親しむ方ならゲスト陣も興味深すぎる面々だ。
アンドリューWKがピアノとバッキング・ヴォーカル、
Tom Petty and the HEARTBREAKERSの不動のメンバーであるベンモント・テンチがピアノ、
CONVERGEやDOOMRIDERSやOLD MAN GLOOMで活動するネイト・ニュートンが
バッキング・ヴォーカルで参加。
TURBONEGROのイメージに一見そぐわないし一枚のアルバムに集うこともありえない3人だが、
いかにものロックンローラーではないからこそロックンロールをよくわかっている3人だし、
TURBONEGROの秘めた本質が見え隠れしているメンツなのである。

ストレートな“Fuck You! I Don’t Care”系の歌詞ではないが、
MOTORHEADの内容に近いストーリー性を帯びた無頼の歌詞(すべて英語)もクール極まりない。
「The Nihilistic Army」はタイトルだけでもう昇天する。
BLACK FLAGやNAPALM DEATHの曲名にもなっているストロングな言葉の“Rise Above”の逆を行く、
「Rise Below」という曲も面白い。
ネガティヴなフレーズなわけだが、
とことん諦観ゆえに突き抜けるTURBONEGROの強い意志を感じるのだ。
“Tokyo”も歌い込んだ曲の「Hello Darkness」は復活の挨拶だろう。

“Turbojugend”というファンクラブ(≒親衛隊)の名前にも表れているように、
昔から“それっぽいニュアンスを匂わせていたバンドでもある。
MOTORHEAD/レミーにしろJOY DIVISION/NEW ORDERにしろ誰もナチ・シンパではないが、
鼻から吸い込むみたいな危ない香りは共通している。
一悶着も辞さないアルバム・タイトル『Sexual Harassment』も素ン晴らしい。
TURBONEGROはいわゆるセクシストではないが、
元からの良識派もワルからの転向組もひっくるめて善人気取りのassholeに花火をブチ込むようなもんである。
VISION OF DISORDERのところでコメントしていただいた方への返信でも書いたように、
TURBONEGROにとっても全世界がマザーファッカー。
だからこそ鋭利極まりない誠意(≒integrity)を感じる。

なにしろ音そのものの説得力が格別である。
これぞロックンロール・パンクの真実。
文句は言わせない。
きんたまやろうなんかきにすんな。
全世界を敵にまわしてもファックしたい底無し沼のディープなアルバム。
グレイト。


★TURBONEGRO『Sexual Harassment』(VOLCOM ENTERTAINMENT VOL-03068-2)CD
コーティングされた紙の16ページのブックレット封入のデジパック仕様。
約33分10曲入り。


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コメント

まだ活動していたとは知りませんでした!


久々に、購入してみたいと思います。

V.O.Dのところでコメントした者です。

ものすごい行川さんの熱量を感じるレビューで、何度も読んでいて感激しました。
ここまで、多角的に様々な面から掘り下げていただいたので、
またさらにこのアルバムを楽しめそうです。

行川さんのいう「絶妙にゆるくて加速するリズム」。
これが、ホント興奮をもたらしてくれますね。
最近、MUNICIPAL WASTE、BLACK FORKを聴いてても思いましたが、
速きゃあ、いいってもんじゃないです。
絶対的に、ロックは、リズム・ビートが突っ走ってなくては。

TURBONEGROのもつ、いかがわしさ、を“Turbojugend”の点から指摘しているのは、
とても興味深かったです。納得です。

ユーロ・ボーイの猥雑と妖気さを纏ったリードギターに特に魅了されました。
DVDなどのライブ映像を観ていて思うのですが、自分のなかでは、彼はロックスターです。

そういえば、CONVERGEのメンバーは美味しいとこにいつも顔を出しますね(笑

またも、長文を失礼しました。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
これは買い!です。
>溝口さん
音楽によってぼくの中から言葉が湧き出るのです。ぼく自身、熱量がない文章は読む気がしませんから。
やっぱりバンドはドラムで決まります。タイトなバンドもものによってはもちろんイイのですが、今回ドラムが変わってもノリがキープされていてナイス!です。それにしてもBLACK FORKの名前を出すというのもうれしいです・・・同じく埋もれたバンドですし。にしてもTURBONEGROも過小評価すぎですね。ギターも素晴らしいですね。DVDでわかりますが見せる要素も多いバンドで、至れり尽くせりですね。
ゲストとか入れればいいってもんじゃないですが、クレジットも調べれば調べるほど色々深く広がっていくアルバムにつまらない作品はないです。CONVERGEの中のロックンロール・スピリット担当のネイトはあちこちに出たがりみたいです・・・・それもあり!ですね。

返信ありがとうございます。

音楽はもちろん、音楽について書くこと、というかやること全てが同じかもしれないですね。
熱量がないと、人の五感にうったえかけてこない。自分も頑張らないと。。

おっしゃるとおり、日本での過小評価が残念です。00年代前半に、他にもTHE PEEPSHOWS、PUFFBALL、GLUECIFERなど、北欧のハイエナジーなロック(ンロール)が日本でもプッシュされてたと思いますが、根付かなかったですね。
暑苦しいのとか、灰汁が強いのはあまり受け入れられないのかなと思います(ニッケはどこかスマートですし)。

溝口さん、書き込みありがとうございます。
熱量は大切です。生命の源ですから。頭デッカチなものが多すぎてウンザリです。
当時日本も音楽業界がわりと好調だったからでもあるでしょうが、PEEPSHOWS、PUFFBALL、GLUECIFERは日本盤も発売されていましたし。本文中で書いたミュージシャン/バンド名の幅広さが象徴するように、TORBONEGROみたいにシンプルなようで雑種成分たっぷりのロックンロールは、色々な意味で根がずっと内向き志向の日本では難しいのかもしれません。
ニッケはいい意味でバランス感覚に長けてロックンロールを愛するナイス・ミュージシャンですが、中期HELLACOPTERSあたりからRADIO BIRDMAN的な路線が続いていますね。DEATH BREATHみたいなこともやってほしいものです。

このバンド、まったくもって、ミラクルです。今のメンバー、問題無し!!

Re: タイトルなし

SEKIさん、書き込みありがとうございます。
現ヴォーカルもグレイトですね。僕もホント大好きなバンドでパンク/ロックンロールの正直な理想形だと思っています。
オフィシャル・サイトとかを見たら健在でライヴをしているようで、新作も早く聴きたいところですね。

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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