なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『二つの祖国で・日系陸軍情報部』

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『マリリンに逢いたい』(88年)や『ホーンテッドハイウェイ』(2006年)などで知られる、
すずきじゅんいち監督の日米合作映画。
滞米11年の中で思いが高まって制作していき、
『東洋宮武が覗いた時代』(2008年)と『442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍』(2010年)に続き、
いわゆる日系アメリカ人の第二次世界大戦時の歴史を描いた三部作のラストである。
喜多郎が音楽を手がけ、
すずきの妻でもある女優・榊原るみが“監督の監督”をしている。

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原題が『MIS-Human Secret Weapon』のこの映画は、
米国陸軍の秘密情報機関=MIS(ミリタリー・インテリジェンス・サーヴィス)の中心メンバーだった、
日系二世の元兵士たちの証言がベース。
アメリカで生まれて育った二世等の日系アメリカ人と
日本に戻って学んでアメリカに移った“帰米”の人とにも分けられる彼らの話を核に、
第二次世界大戦/太平洋戦争中や終戦後などのニュース映像なども盛り込んだ構成だ。

ドキュメンタリー映画は本人たちの語りだけだと締りに欠けかねなかったりするが、
もともと米国で上映されたために英語とはいえ
ナレーションの語り口とその挿入のタイミングが絶妙で引き込まれる。
こういうところでもリズムは大切なのだ。
そして何より当事者の方々の言葉と顔。
話のほとんどは英語で(日本語字幕付)ときおり日本語も混じるが、
複雑な“痛み”を突き抜けた顔と生々しく落ち着いている声がすべてであり、
彼らに真正面から向き合ってストレートに捕えた作りゆえリアルに伝わってくる。

「二つの祖国で」サブ4

太平洋戦争中の米国側の極秘情報を取り上げていく中で、
当時の日本軍の情報管理のぬるさと甘さも炙り出されていく。
良くも悪くも全世界に対して終始臨戦態勢のアメリカと
どうしても内向き志向に陥りがちな日本との間に横たわる、
視点の深さと視野の広さの差は今も昔も根本的に変わってない。
それはともかくアメリカは日本の良さや習性をよく調べて、
日系軍人を“人間秘密兵器(Human Secret Weapon)”として活かしていく。

はたして自分が何者なのか?何人なのか?と悩んでアメリカで差別も受けていた日系人の男性には、
自らアイデンティティを確認するために米軍に入隊した人も多かったようだ。
日本語も使えるから前述の“帰米”の人は“情報戦”でも活躍。
当時から乱暴な対応が多かったという米人とは違い、
日本の捕虜に対してタバコやビールや演歌といった“飴”と“情”で心を開かせていったという。

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そういう場はともかく一般の兵士の何倍も日系米国兵士は精神的にハードな場面に直面もした。
ビルマで談笑しながら歩いていた日本兵を奇襲した時の話がキツい。
自分が尋問していた時に食ってかかってきた日本兵を他の仲間が袋叩きにして
止められず死んだことで罪の意識を覚えた日系米国兵士などなど。
“個”が抹殺されてどこかに“所属”しなければ生きていけなかった立場の恐ろしさをあらためて知る。

アメリカの沖縄侵攻を知って複雑な気持ちになった日系米国兵士も登場。
アメリカに対する誤解を解くべく情報を流して沖縄の人を救った話も紹介される。
幼少期を沖縄で暮らしてからアメリカへ移ったが、
再び沖縄に戻って痩せた父と再会するも兄弟で“いさかい”が起きて非国民とも呼ばれる。
翻訳で協力して結果的に東京大空襲の大虐殺に手を貸してしまった日系米国人は罪悪感が消えず、
息を吐くように自責の言葉を綴る。
別れ別れになってしまって父や祖父の国と戦う葛藤にさいなまされた者もいる。
敵国人の自分は日本に行っても叔父にお礼も言えなかったと涙を流す一幕も。
米国の原爆投下一か月後に通訳として広島に赴いた日系人は、
子供と女性とお年寄りしか横たわっていないその光景を“サイレント・ムーヴィー”と語る。


ある一人が口にした言葉がAnti Warではなく“Hate War”。
“反戦”なんて生ぬるい。
“憎戦”がリアルな思いだと脳天から落とされる映画である。
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MISの“働き”は終戦を2年早めたという説もあるが、
結果的にという部分も含めて現実問題として多くの人を救った。
帰国して飢餓に驚きゴミを漁る子供たちを目にして涙を流しながら、
少なくても“帰米”の人をはじめとして日本語ができる日系米国(元)兵士が
いわゆる日本本土と沖縄の復興に尽力したことも事実だ。
マッカーサー、東條英機、昭和天皇に終戦のもない頃に接した際の思いやエピソードも吐露する。
第二次世界大戦の終戦はアメリカなどにとってはソ連(>現ロシア)との冷戦始まりでもあり、
コミュニズムの浸透を警戒して日本でアメリカ占領政府がシベリア拘留者の帰国後に尋問。
国際的に気が抜けない状況下ならでは生々しい話が続く。


“日本人って何?”とも問いかける映画だ。
いや日本人だけではなく何をもって“~~人”と呼ぶのかということもあらためて考えさせられる。
国籍? 民族? じゃあ混血だったらどうなる?
掘り下げれば掘り下げるほど混乱すると再認識するだけでも現在の様々な問題とつながる。
特に移民国家のアメリカ合衆国は成り立ちからしてカオスで、
“アメリカ人って何?といっても人種で決められない。
当時の日系米国兵士にとっては特に“人種ではなく忠誠心の問題”と覚悟を決めざるを得なかった。

必然的に祖国はどこか?という話もなってくる。
それが断定できない人が現在も世界中にたくさんいる。
何が愛国で何が亡国か。
内戦や分裂で愛すべき祖国が亡くなっている人も世界中にたくさんいる。
見ていくうちに各地の現在進行形の状況と様々な思いが錯綜していった。

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そんな流れだからこそ
靖國神社が映し出されているのも日米の狭間で生きた方々の映画として必然だろう。
政治や宗教を越えた自然な感情である。
と同時に祖国の英雄としてアメリカが彼らに名誉を与えたシーンを盛り込んでいることも特筆したい。
人間の感情も含めて物事そんなに単純じゃないのだ。

戦争中のことを語るにしても置かれた立場によって空気感は大きく変わる。
南京でのことを語った方々との佇まいの違いにも考えさせられた。

“大和魂と我慢スピリット”を核にし、
“GO FOR BROKE(当たって砕けろ)”を合言葉に生き抜いたMISの方々は80~90歳代である。
撮影してから公開までに亡くなられた方もいらっしゃるが、
ときおり物憂げな表情を浮かべながらみな生き生きと語る。
軋轢を突き抜けた顔は“個”としてのアイデンティティをまっとうした顔で晴れやかに見える。

示唆に富む佳作だ。


★映画『二つの祖国で・日系陸軍情報部』
2012年/日米合作/カラー&BW/ステレオ/HDCAM/100分/英語の部分は日本語の字幕付
日米開戦の日の12月8日(土)より、
新宿K’s cinemaと横浜ニューテアトルで全日上映、
銀座テアトルシネマでモーニング1回上映、
銀座シネパトスで
『東洋宮武が覗いた時代』(2008年)、『442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍』(2010年)、
『二つの祖国で・日系陸軍情報部』(2012年)の三部作を一挙公開。
他、全国順次ロードショー。
http://mis-film.com/ja/
©MIS Film Partners


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コメント

Hate war.

おはようございます。【CRASS】【CONFLICT】が身を危険にさらしながらも反戦・反核に傾倒していた意味を今更ながら理解できるような気がします。

検視官さん、書き込みありがとうございます。
こういうヘヴィな映画に関心もってもらえてさいわいです。こういうテーマも、トレンディーになりえない埋もれがちなもののひとつです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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