なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『鉄路の男』

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巨匠と呼ぶには若くして亡くなったアンジェイ・ムンクの監督デビュー作でもある1956年製作の代表作。
ポーランド映画らしい重厚な肌ざわりの“力作”である。
近年は『アンナと過ごした4日間』『エッセンシャル・キリング』を監督した
イエジー・スコリモフスキ
監修の“ポーランド映画祭2012”の一つとして今回劇場公開される。


走行中の列車が信号機の不良で大惨事になる寸前に止まるも、
その運転手を助手にしていた元・老機関士がはねられて他界した事件を掘り下げる物語。
ただそれだけのストーリーにもかかわらず心の奥底まで苦くディープな味わいを残し、
映画にしかできない凄味を呈している。
『羅生門』にも触発されたという緻密なテクスチャーで編まれた一種のミステリー作品であり、
ハードボイルドな筆致ゆえに一人一人の人格が浮き彫りなっている人間ドラマだ。

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とにかく主人公の老機関士が極度に曲者。
笑っちゃうほど頑固一徹の尊大な“問題児”だ。
ポーランド国家の“富国方針”に対する反逆であるかのように、
時代に逆行して石炭を浪費するなど昔ながらのやり方で我が道を行く“職人肌”の機関士である。
当時憧れの仕事で職に就くまで苦労を重ねてきたからだろが、
他の人間の手抜かりを探しては叱咤して助手を下僕扱いする。
誰ともつるまず会合で孤立しようが知ったこっちゃない。
“上司”の所長の言うことすら聞かない。
いくら敵を作ろうが自分を曲げない。
パンクである。
いやハードコアである。

一緒に仕事をしたらケンカが絶えず疲れること必至のオヤジだ。
聴く耳持たない単なる嫌なクソジジイと思いきや、
職場を離れたら気のいいおじさんの一面をチラリとだけ覗かせた老機関士。
すべては仕事に対する人並み外れた矜持と情熱ゆえの行動だったのかもれないが、
「我が国の鉄道員に対する侮辱」と解釈され、
あまりにも全体の秩序に影響が出るためにとある残酷な命令が下る。
それからまもなく迎えた死。
恨みを買った者による他殺か、
職を全うできなかったショックで自暴自棄になったうえでの自殺か、
はたまた“殉死”か。

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これまたモノクロならではの映像美だけでも持っていかれる。
鈍い陰影に富み、
映画の大半を占める夜のシーンではやや黒くつぶれ、
昼間のシーンではやや白が飛ぶ。
その色合いが淡く美しい。
画面のシャープな切り取り方も秀逸と言うほかない。
音楽はほとんど使われず機関車の音をはじめとする生々しい“仕事の響き”もたまらない。

蒸気機関車の輝きにもしびれる。
機関車の外観といい、機関室内といい、走行光景といい、
カッコいいと言うほかない。
アナログのメカの美がやはりアナログなモノクロ映像によっていぶし銀の輝きを増している。
映画『ジャライノール』のところで書いたように
ぼくもかつてモノクロで鉄道写真を撮っていたから鉄道ファンがなぜ絶えないのかにもまた思いをはせ、
惚れ惚れした。

鉄道ものにはロマンに加えてドラマがあり、
松本清張ものに代表されるようにミステリーもある。
鉄と化石燃料の匂いに加えて汗の匂いもある。
『鉄路の男』にはそのすべてが息づいている。

ハードボイルドだからこそ、クールな情感がひたすら熱い。
一見あと腐れないエンディングだからこそ逆に胸が詰まる後味を残すラストも素晴らしい。
これぞ映画。
これまたスクリーンで味わいたい名作である。


★映画『鉄路の男』
1957年/89分/デジタル
11月25日(日)16:00、12月3日(月)13:30、12月7日(水)18:30
渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開。
以下のイベントの一環で『灰とダイヤモンド』『ビーツ・オブ・フリーダム』などと共に上映される。

・「・偵・繧ケ繧ソ繝シjpeg_convert_20121030102333
“ポーランド映画祭2012”
2012年11月24日(土)-12月7日(金)2週間限定
渋谷シアター・イメージフォーラムにて開催。
公式サイト www.polandfilmfes2012.com


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コメント

影響

おはようございます。【羅生門】などの黒澤作品が当時の海外の若手監督に影響を与えていたことは日本人として嬉しいです。

検視官さん、書き込みありがとうございます。
小津と共に昔から海外の映画監督への影響大のようですね。ぼくもそういうつながりで古典も見ていきたいと思っています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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