なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

PIG DESTROYER『Book Burner』

PIG DESTROYER


90年代の半ばにANAL CUNTを脱退したスコット・ハル(g)が
AGORAPHOBIC NOSEBLEEDとは別に始めた、
米国東海岸のヴァージニア州リッチモンド出身のベースレス・グラインドコア・バンドの新作。
トータル・タイムが短めのデビュー作『Explosions In Ward 6,』(98年)をアルバムと捉えるなら、
これで5作目になる。
NAPALM DEATHやNASUMと行なった今年8月の日本ツアーで見せたライヴが蘇る強力盤だ。


RELAPSE Recordsのバンドをはじめとしてマスタリング・エンジニアとしても活躍する、
スコット・ハルがレコーディングに関する作業のすべてを行なっている。
殺傷力に富む冷厳な色合いのギターをはじめとするミディアム・パートなどのリフなどに
SLAYERのようなメタルの要素を含みつつ、
ユニークなギターの変調やリズムのズラしで持っていく。
DISCORDANCE AXISがスラッシュ・メタルにファックされたかのようだが、
脳に響くシンナーみたいな音域のドライなサウンドで胸焼けならぬ“頭焼け”必至であり、
ときおりインターネットのウイルスのように“サイバー・ノイズ”も侵入してくる

MISEY INDEXのメンバーでもあるアダム・ジャーヴィス(ds)が昨年加入したことも大きい。
ブラスト・ビート以外のパートでもスピード感が止まらずバンドの音を変えるほどの凄腕ドラマーで、
MISEY INDEXではメイン・ソングライターだからPIG DESTROYERの曲作りにも貢献したと思われる。
アダムのドラムによりアタック感も五割増しでメリハリついて楽曲のフックも良い。

非デス声のヴォーカルの生々しさもこれまでの喉を上回る。
ヘイト・フィーリングが肥大して加速しきれないところがリアルで、
猟奇性もはらむ歌詞は政治性を絡めるにしてもクレイジーだ。
ブックレット掲載の歌詞に添えられた切り絵とも墨絵とも言いかねる不気味な画は
BLACK FLAGのアートワークでお馴染みのレイモンド・ペディボンも思い出すが、
それを眺めながら聴くと政治も社会もヘッタクレもない暴発寸前の鬱な狂気が血を流す。


ボーナス・トラックとして『Blind Deaf And Bleeding EP』というタイトルの7曲が追加されている。
すべて80年代のUSパンク/ハードコアのカヴァーという非常にうれしいオマケだ。
BLACK FLAGの「Depression」、
MISFITSの「Wolfs Blood」、
ANGRY SAMOANSの「Lights Out」、
NEGATIVE APPROACHの「Can't Tell No One」、
CIRCLE JERKSの「Deny Everything」、
MINOR THREATの「Betray」、
VOIDの「Who Are You?」
をやっている。
最後のインスト・シークレット・トラックはYOUTH OF TODAYの曲の一部のカヴァーにも聞こえる。

アルバム本編と続けて聴くとこれらのカヴァーがポップにも聞こえ、
初期USハードコアのハジけた魅力を引き出したプレイにもなっている。
“グラインド・コア・ヴァージョン”ではなく原曲に忠実にもかかわらず
PIG DESTROYERならではのストロングな音でハジき出しているから“完コピ”に留まらず、
特にパンク・ロックから大きく逸脱したパワーのドラムがでかくてなかなか異様だ。
ヴォーカルはコピーに努めたように聞こえるが、
感情が入りすぎてMINOR THREATの「Betray」あたりになるとこれまた我流。
内向性炸裂のプリミティヴな“ファック・オフ!”アティテュードが表れたセレクションで、
PIG DESTROYERのセンスと本質が見え隠れするのであった。


ユニークな音の動きに吸い込まれながら聴き惚れて身動き取れない最高傑作。


★ビッグ・デストロイヤー『ブック・バーナー』(リラプス・ジャパン YSCY-1249)CD
ボーナス・トラック7曲追加の約44分26曲入り。
20ページのオリジナル・ブックレットに加えて日本盤は本編の歌詞の和訳付。
MISEY INDEXとAGORAPHOBIC NOSEBLEEDのメンバーがゲスト・ヴォーカルで参加している。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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