なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NEUROSIS『Honor Found In Decay』

NEUROSIS『Honor Found In Decay


サンフランシスコ近郊のオークランド拠点の“ヘヴィ・ロック・バンド”による5年ぶりの10作目。

BLACK SABBATHとBLACK FLAGDISCHARGEAMEBIXの影響下から80年代の半ばに産まれたが、
KING CRIMSONやPINK FLOYDなどのプログレッシヴ・ロックの色が90年代に強まったバンドで、
いわば“ヘヴィ・ロック進化形バンド”の大本になる。
NEUROSISが存在してなかったら2000年代以降のヘヴィ・ロックはまったく違ったものになっていた、
と言い切れるほど影響が絶大のバンドである。
王者という言葉は似合わないが、
そういった風格の重さが物理的も精神的にも音楽に表れているアルバムだ。


ベースとドラムのヘヴィネスは格別で先鋭的なキーボードの音も染み入ってくる。
ナレーション以外のゲスト参加はクレジットされてないから音はすべてメンバーが出したのだろうが、
サンプラーを駆使したのか民族楽器みたいな音がけっこう聴こえてくるのも興味深い。
優美な響きで静けさも司り、
映画音楽を思わせるデリケイトな揺らめきの音使いは現在進行形のサイケデリックですらあり、
苦渋の喉を震わせるトラッドのような歌ものもトライバルな曲も含めて包容力に満ちている。
すべて5分以上で10~12分の曲が3曲という長い曲が例によって多いが、
取っつきやすい。

他のバンドからは生まれ得ないサウンドの磁場を生み出しているのは間違いない。
だが一方で複雑な気分になる“横綱相撲”でもある。

スティーヴ・アルビニの録音は今回で5作連続ということになる。
だから安定してはいる。
一緒にやりやすいということだろうが、
アルビニが手がけた最初のアルバム『Times Of Grace』(99年)、
いやその次の『A Sun That Never Sets』(2001年)の路線の流れを続けたい意識が見えてもくる。

アルビニが録音してきたNEURORISのアルバムは、
アルビニの自分のバンドであるSHELLACのレコーディングに近い音の空間の使い方をしている。
バリバリのハードコア・パンクのVITAMIN Xのアルバムを聴くと、
アルビニが録音に際して必ずしも自分の色を付けるわけではないこともわかるが、
NEUROSISは毎回同じような空気感のアルバムになっている気もする。
そろそろ・・・というか、
たまにはアルビニではない人とやってみたらいいのではないか。
たとえばCONVERGEのカート・バルーなんかが録ればもっとエキサイティングになるのではないだろうか。

曲はグレイトだ。
けどライヴとスタジオ・レコーディングを分けて考えていると言われればそれまでだが、
ライヴだともっと凄まじいものになるのではないかと思ってしまうのも
今回のアルバムだったりする。
NEUROSISに対して“もうダメかも…”と思いつつ『Live At Roadburn 2007』を聴いてぼくは惚れ直した。
たとえライヴでなくてももっと違ったレコーディングをしたら
もっと今のNEUROSISの魅力が表れるのではないかという複雑な気分を引きずりながら、
このアルバムも何度も何度も聴いている。
粗探しだけでなく実際繰り返し聴きたくなるアルバムでもあるからだ。

前作から5年の間にメンバーが他で色々やってきたことが活かされたところもゼロではない。

今回のアルバムで目立つところが、
歌ものの音源を発表もしたスコット・ケリー(vo、g)とスティーヴ・フォン・ティル(vo、g)のヴォーカル
と言う人も多いだろう。
これまでと同じく今回もぼくが惹かれたのは
デイヴ・エドワードソン(b)とノア・ランディス(kbd、syn他)の響き。
この二人がNEUROSISの肝を支えているとすら思う。
デイヴはNEUROSISでも昔は野太い声をたっぷり発していたが(本作でそれっぽい声も聞こえてくる)、
そういうヴォーカルもとるJESUS FUCKING CHRISTとベーシストとして参加のKICKERで、
ハードコア・パンクもやっている。
ノアはNEUROSIS加入前にやっていたCRIST ON PARADEの2008年の再編日本公演でギターを弾いた。
デイヴはそれらのバンドで生き生きした音を出しているし、
ノアもIT’S YOUなどが対バンだった来日公演で生き生きした表情で演奏し歌っていた。
二人ともフラストレイションが溜まってないのだろうか・・・と邪推したりもする。

2000年の目下唯一の日本ツアー時にNEUROSISと対バンした某バンドのメンバーが
「もっと熱いバンドと思っていました」と言っていたことも思い出す。
『Through Silver In Blood』(96年)の頃のライヴ映像を見ると
あらためてとんでもないバンドだとも感じさせられる。
ライヴも含めてまだまだイケると思うだけに、
もどかしさも残る・・・、
そしてまた聴いてしまうアルバムである。


★NEUROSIS『Honor Found In Decay』(NEUROT RECORDINGS NE 065)CD
16ページのブックレット封入の約61分7曲入り。
ぼくが買ったCDは比較的厚手の二つ折り紙ジャケット仕様だった。


スポンサーサイト

コメント

はじめまして
新作が出る度に1stから聞き返すことをしていますが
Enemy of the SunとThrough Silver in Blood辺りで毎回CDをリピートさせてしまい、なかなか先に進めません。

大横綱故に

どうも、グリーンデイの書き込みでリクエストさせて頂いたのは本作でした

Neurosisに既に馴染みのある人間にとっては聴く前からグレイトだと分かっている
その事前の確信が、伝統芸能への信頼なのか予定調和に対する盲信なのか
実際に聴いていて分からなくなる自分がいたりします

年4場所休場、出場2場所は優勝。ライブも含めそんな横綱にも写る気がします
より精力的に、かつまだ進化できる。Neurosisにはそうあってほしいものです

書き込みありがとうございます。
>kiloさん
そのあたりで止まるのもわかる気がします。全曲通して聴くのは骨も折れますが、そういうアルバムだからこそ渾身だった『Through Silver in Blood』がエナジー的にはピークだったのかなとも思います。
>真一郎さん
GREEN DAYとかつてレーベル・メイトだったバンドがNEUROSISというのは思いつかなかったです。ALCHEMY, LOOKOUT!, ALTERNATIVE TENTACLES, ALLIED, RELAPSE・・・と、そうそうたるレーベルからリリースしてきているところからも、彼らの意識の流れが見えてきます。自分たちのレーベルから出すようになったあたりから落ち着き始めた気もします。
“確信”“信頼”“盲信”の言葉、うなずけます。“年4場所休場、出場2場所は優勝”というのも上手い表現ですね。家庭の事情か以前よりもツアーをしなくなって、バンドとして外にあまり出てないのも影響しているかと思います。だから特にフロントの二人が内向きになっている感じもします。
思い入れが強いバンドだけに期待もでかくなってしまいますね。個人的には、バンドから直接メールオーダーでTシャツを買ったバンドはNEUROSISだけです。

安住は死を意味する

こんばんは、行川さん。

私もNeurosisの新作には複雑な心境を抱きました。本来Neurosisのようなバンドは進化/深化が義務付けられているバンドだと思います。しかし、ここ数作のNeurosisの新作からはそれが感じられません。ですが、やはりどこかNeurosisだから許されている部分もあると思うのです。現に私も複雑な気持ちに陥りながら何回も聴いてしまいます。

Neurosisの影響を受けた後続のバンド、例えばIsisなんかは最後まで進化/深化に拘り続ました。正直、今のNeurosisにもそういう姿勢が欲しいです。

ライヴ動画及び作品を聴いても、やはり凄まじいバンドであることを再認識してしまいます。まだまだNeurosisは進化/深化する余地はあるのではないかと。

今のNeurosisに最も足りないのはエナジーだと思います。大好きなバンドだけに安住を選ばず、いつまでも進歩的であって欲しいものです。

安住は死を意味する。これがNeurosisが後続に最も影響を与えたアティテュードですよね?

長文失礼いたしました。これかも楽しくブログを拝見させて頂きます。


O)))さん、書き込みありがとうございます。
NEUROSISに限らずバンドに限らず安住はぼくが大嫌いな内向きの一因になったりしますし、やっぱりエナジー減退の一因にもなります。というかエナジー減退が安住に向かうのかもしれませんが。
進化しなきゃダメだってわけではなく、たとえばMOTORHEADもNOFXも“進化”の“化[化ける・・・変化する]”はないとしても今だ“進(んでいる)”と思いますから。やっぱりエナジーの問題です。
ISISは最も影響を受けたNEUROSISをある時点で超えましたが、NEUROSISを反面教師みたいにしてピークでISISを止めたところもあるのかもしれません。ただそれはそれで潔いですが、解散後のメンバーの展開に満足しきれないので、いまだ解散が残念に思います。
基本的にぼくは続ける人間が好きなのでNEUROSISには踏ん張ってほしいです。進むために原点を見つめ直して、やはりデイヴ・エドワードソンもまたもっと前に出してトリプル・フロントマン体制でいくとか。とにかく安住意識を最も象徴している、スティーヴ・アルビニ録音はしばらく止めにするのが先決だと思います。

確かに物足りない

はじめまして

僕も一通りNeurosisは聴いてきましたが、ちょっと今回のは物足りない気はします。
とは言え凡百のバンドが束になっても敵わないくらいの出来ではあるとは思います。
でもやっぱり及第点どまりかなぁと。

あまり過度の期待もNeurosisメンバーにとっては酷だとは思いますが、しかしNeurosisならばまだまだもっと上のレベルに行けるんじゃないだろうか?と期待をしてしまうのもまた人情。それだけの歩みを残してきたのですからね。

追伸
行川さんの執筆活動はDOLL誌上でよく拝見させていただいたのですがDOLL無き現在はどういった活動を主になさってらっしゃるのでしょうか?

ggさん、書き込みありがとうございます。
期待が大きかったのは久々のアルバムだったからでもあるかもしれません。80点でも安定した横綱相撲は
見ていてもあまりエキサイトしないようなものかなと。ジャンルは違いますしバンドだと自由が利きにくいところもあるでしょうが、スコット・ウォーカーの新作を聴くと安住しないで進むことはまだできると思ったりもします。やっぱり今はまずスティーヴ色を薄めてデイヴ色を強めてロックな道を進むべし・・・自分がプロデューサーならそう言いますね。
雑誌ではミュージック・マガジンとレコード・コレクターズ、CDジャーナルでちょこっと、あとクロスビート、ときどきギター・マガジンとベース・マガジンで書いている状況です。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/916-3ede82b4

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (239)
JOB/WORK (287)
映画 (236)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (41)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (395)
EXTREME METAL (127)
UNDERGROUND? (87)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (117)
FEMALE SINGER (41)
POPULAR MUSIC (24)
ROCK (77)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん