なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『コックファイター』

main繝。繧、繝ウ_convert_20121224105607


『断絶』(71年)『果てなき路』(2010年)で知られる、
1932年ニューヨーク生まれのモンテ・ヘルマン監督による1974年の映画。
35mmニュープリントで日本劇場初公開となる。

主演は『ガルシアの首』などでお馴染みのウォーレン・オーツだが、
製作がロジャー・コーマン
ということで言うまでもなく素晴らしきB級ど真ん中である。
原題は『COCKFIGHTER』。
“ちんこファイター”ではない。
闘鶏に人生を賭けた男のロード・ムーヴィーだが、
そういった誤解を招くような怪しいタイトルからしてタダモノじゃない。
なんてことがないようで人間の“業”すら感じさせる示唆に富み、
カルトな鮮血が映像と脚本の動脈に流れる“怪作”である。

4繧オ繝厄シ農convert_20121224105244

闘鶏トレーナーの中年フランクは、
プライベートな闘鶏の場でライバルのジャックに勝利宣言の大口を叩きながらも負けて以来、
自分の鶏が大会でメダルを取るまではしゃべらない!と宣言。
その後、ジャックとの賭け試合にも負け、
各地で闘鶏に臨むための住居でもあったトレーラーに載せたモバイル・ホームなどを差し押さえられ、
一緒に暮らしていた若いガールフレンドも“オプション”でジャックに“くれてやった”。

その後、実家を訪れたフランクは、
そこに住む弟夫婦に内緒で新たな鶏の“ホワイト・ライトニング”を買うために家を売り払う。
そんな中でフランクは幼馴染の婚約者とも故郷で再会。
すべてを犠牲にして人生を注いでいる自分の仕事の内容に嫌悪感を抱き
他の男から求婚されたという“最後通告”を叩きつけてきた彼女に対し、
すげない態度を取りつつ「一度闘鶏を見に来てくれ。俺にチャンスをくれ」と手紙を書く。
その甲斐もあってフランクがチャンピオンシップを争う場に彼女が訪れるのであった。

2繧オ繝厄シ胆convert_20121224104904

昔ほどではないとはいえ闘牛はもうちょいメジャーな気もするが、
闘鶏はアンダーグラウンドなイメージが強い。
それこそ屠殺と同じく陽の当たる場所に出てくることはほとんどない。
けど闘鶏の鶏は食われるために殺されるわけではなく一部の人間の娯楽のために戦わされて死ぬ。
トレーニングに加えて動物的な生存本能に由来する部分もあるのかもしれないが、
“食うか食われるか!”の意識で一対一の場が設けられたら自然と闘争心を剥き出しにして戦い、
その結果命を落とすことも少なくない。

闘鶏の試合中はフランクなどの関係者や鶏に加えて観客もたっぷり映し出している。
賭けが絡みながらも素朴な風情で興奮しながら“殺し合い”に声援を贈る姿が妙にシュールだ。
決して多くはない観客たちに囲まれた二羽の鶏は、
逃げも隠れもできない運命の修羅場に置かれてしまったら闘うしか生き延びる術はない。
すべてが原始的だからこそ、
昔は奴隷同士がこうやって戦わされていた人間社会の縮図で
現代の人間社会の不条理と変わらないとも思えてくる。
だが闘鶏は傷を舐め合う集団行為はしない。
あくまでもタイマン勝負の死闘。
潔いから美しく、
はかないからこそ尊い。
熱狂がなくクールな筆致が静かに諦観のゆらぎをもたしている。

そんな鶏と鶏が闘う場面は基本的に“ドキュメンタリー”である。
実際は血まみれになることが少ないにもかかわらず一度編集を終えた後に監督のあずかり知らぬところで、
製作者のロジャーが闘鶏シーンをもっと残忍に見えるように手を加えて再編集したらしいが、
一度試写会を行なった時に観客が嫌悪感を抱いたために血のシーンのいくつかを取り除いたという。
でも派手な仕掛けを施さずに“事実”を映し出しているからこそ生々しい。
口ばしや爪といった“天然の武器”だけでなく米国では足に金属製の“凶器”を取り付けて闘わせる。
闘鶏場が使えずにホテルの部屋で行なった闘鶏シーンでは死んだ鶏がバスタブに放り込まれている。

3繧オ繝厄シ点convert_20121224105058

極一部の人間のためのストレス発散やエンタテインメントにはなっているのかもしれないが、
闘鶏が社会のためになっているとはあまり思えない。
鶏肉を食べていると思しきシーンもさりげなく挿入しつつ、
動物愛護団体からの抗議云々のシーンもちょろりと挿入されている。
自分の鶏が殺された側のトレーナーが逆上して勝利者のトレーナーが殺されかかったこともある。
にもかかわらず闘鶏をやめない男がいる。

自分の仕事が世間的に評価されるか称賛されるかなんてことは知ったこっちゃない。
人殺しとかの類いの法に触れる“仕事”でなければとりあえずは続けていける。
むなしく無益なことにお金だけでなく自分の一生を賭けるというある種の馬鹿馬鹿しいライフスタイルに、
ぼくはロックンロールを感じる。
チャンピオンになるまで一切の言葉を発することを封印したストイックな姿勢とクールな情熱も、
愛おしいほどしいほどナンセンスではないか。

中年男につきまとう悲哀とは無縁で悠々自適な中年闘鶏トレーナーのフランクは、
なかなかオシャレで小ぶりながらも渋い魅力が滲み出ている。
ろくでなしにも映る生き様は無頼漢であり風来坊でもあるが、
すべてを投げ出して仕事に打ち込む人間ならではの赤茶けた美学がいぶし銀の輝きを呈している。

5繧オ繝厄シ廟convert_20121224105420

主人公のそういうキャラに加えて、
まったりした音楽の挿入も生ぬるい妙な風を呼び込んでいる。
AOR(アダルト・コンテンポラリー・ロック)のシンガーソングライターとして脚光を浴びる直前の
マイケル・フランクスが担当した“ほっこり”したインスト・ナンバーが実に怪しくて、
土臭い本作にピッタリだ。
血で血を洗うシーンを含むにもかかわらず
当時のメインストリームのアメリカン・ロックのタイム感そのままで、
アメリカンな湿度が気持ちいいドライなムードを醸し出している。

適度にスローモーションを使いつつセンチメンタリズムを削ぎ落とした闘鶏シーンの映像は
デス・メタルにも似た残酷なアートである。
すえたような明るく褪せた色合いの淡い映像美もたまらない。
ほのかに血と肉(=flesh、≠meat)の匂いが漂ってくるし、
レイドバックした時間の流れでの淡々とした展開だからこそ不気味な空気がじわじわと湧いてくる。

1繧オ繝厄シ狙convert_20121224104726

格調が高いとされる映画を見てみたら実は気取っていてるだけでつまらないことがある。
音の中に血が流れてないアカデミックな音楽がつまらないようなものだ。
意味があることがそんな優れているのか。

名作ではないかもしれない。
だが“迷作”でもない。
ただ埋もれさせたくない。

ラストの“愛の告白”が実にクールだ。
目が覚めて明日に向える。


★映画『コックファイター』ニュープリント版
1974年/アメリカ映画/74分/ヴィスタサイズ/35mm/カラー。
2013年1月19日(土)より、
4週間限定渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開。後に全国順次公開
(C) 1974 Rio Pinto Productions, Inc. and Artists Entertainment Complex, Inc.
www.cock-f.com


スポンサーサイト

コメント

脚光を浴びる前だとしても、この内容でマイケルフランクスを起用するっていう所もタダ者じゃないですね(怖)。サントラとかあったら絶対欲しいですね。

でたー!!

私もこの映画は大好きです。もとは「ガルシアの首」でウォーレンオーツに夢中になって、次にぶつかったのが、この「コックファイター」でした。確かにハデな演出など無いのですが、すごく生々しかったのを覚えています。しかし当時は興行的には散々だったようですね。私が子供だった頃、近所の神社でおっさん達が昼間から酔っ払い、畳でリングを作って闘鶏してたのも思い出しました。あれもホントに異様な熱気というか空気が漂ってました(話がそれてスイマセン)。
とにかくもうこれは是非スクリーンでもう一度観たいです。

書き込みありがとうございます。
>かくさん
ミュージシャンがパブリック・イメージと違う場でやっている音楽は裏の顔=本性が出るものだから、サントラでまとめて聴くと面白そうですね。
>chumbaさん
闘鶏そのものの映画ではないですが、そのシーンは作り物ではないのでこの映画からも異様な熱気が伝わってきます。シンプルだからこそ面白い映画の典型ですね。見られる環境の方でしたらスクリーンで体験すると闘鶏の観客の気分にもなれます。
興業的にはさんざんだったようで無数のロジャー・コーマン制作映画の中で激レアな赤字映画だったそうで、そのへんを書くと長くなるからオフィシャル・サイトを参照していただけたらさいわいです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/929-621a5eb4

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん