なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

VENOM『Black Metal』[deluxe expanded edition]

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“エクストリーム・メタルのゴッドファーザー”とも呼ぶべき英国のトリオが、
82年の1月にリリースしたセカンド・アルバムのデラックス版。
シングルなどの11曲のボーナス・トラック入りのCDはマスタリングも2002年の再発盤と同仕様だが、
今回はDVDもプラスされた2枚組である。
VENOMの音源も手を変え品を変えのリイシューが続くとはいえ、
個人的にはこのデラックス版まで待った甲斐があった作りでありがたい。


衝撃度はノイズまみれのファーストの『Welcome To Hell』(81年)に譲るが、
やはりVENOMの代表作はこの『Black Metal』だろう。
アルバム・タイトルから想像される今でいうところのブラック・メタルのスタイルの曲とは一味違い、
当時のMOTORHEADからブルース五割減でメタルとノイズが五割増しの“ロックンロール・メタル”だ。
とはいえブラック・メタルの産声の邪悪な音に変わりはないし、
それっぽい歌詞やヴィジュアルなどイメージ的にはまさにブラック・メタルの黎明期の佇まいである。

アルバム・タイトル曲をはじめとしてスラッシュ・メタルの原型の曲がクールなのは言うまでもないが、
全体的には必ずしもスピード命ではなく70年代のハード・ロックみたいなトーンも混ぜこぜ。
というわけでRELAPSE Records周辺のバンドの匂いがてんこもりなのだ。
むろん先頭を切って、
80年代半ばのUKパンク/ハードコア・シーンにメタルの洗礼を浴びせた“邪悪”な存在。
吐き捨てるつぶれた歌い方にしてもガリガリの金属質の音にしてもクラストそのものではないか。
ヘヴィ・メタルとハードコア・パンクの混血という意味でメタル・コアのルーツでもある。

ただMOTORHEADのレミーは一貫してVENOMを評価していない。
昔インタヴューしたときは“何もかもが嫌い”みたいなニュアンスのことを言っていた。
芝居がかったところがフェイクに映るのか音楽的にMOTORHEADの曲解だからか。
ああ見えてロックンロールの最低限の“貞節”を重んじる頑固オヤジだから、
音もひっくるめてあまりの俗悪ぶり下劣ぶりが我慢ならないのだろうか。

スロー・ブルースを盛り込んでエロ風味をプラスした音とMな性的嗜好性が表れたしょーもない歌詞満載の、
「Teacher’s Pet」みたいな変態モロ出しの曲も聴きどころ。
VENOMは存在自体が笑える愛すべきお馬鹿さんだ。
インテリが馬鹿を気取っているのは見苦しいだけだが、
VENOMは“真性”である。

だが“馬鹿”で何が悪い。
ロックが普及したといっても、
当時も今も激臭を発するロックはリベラルを気取る“優生思想の連中”によって差別される。
その象徴みたいなVENOMだからこそ世界中の外道たちに愛され続けているのだ。


そういう臭みが素晴らしい“勇姿”が日本製のプレイヤーでも拝めるDVDは、
昔ビデオ・テープでリリースした『The 7th Date Of Hell』にプロモーション・ビデオ3曲を加えた構成である。

『The 7th Date Of Hell』は84年6月にロンドンで行なったライヴを約57分収録。
同年のサード・アルバム『At War with Satan』の曲は外しており81年のファーストからも1曲のみで、
『Black Metal』とその前後に出したシングルの曲がほとんどだ。
フロントの二人はスタッズで固めた衣装でキメ、
当時としてはステージの仕掛けもなかなか派手である。
ベース・ソロのシーンはどういうわけかアヴァンギャルドだったりするが、
それでも不思議とファニーに映るのがVENOM。
メイクも施してないからメンバー一人一人が妙に病的でもあり、
意外と青白い客層も含めてVENOMを取り巻く当時の状況が見えてきて面白い。

一方の3曲のプロモーション・ビデオは、
ファーストの「Witching Hour」と本作のCDに追加された「Bloodlust」はライヴ映像で、
85年のシングルの「Nightmare」は多少凝っているが、
こちらでも稀代のエンタテイナーぶりを確認できるのであった。


●VENOM『Black Metal』[deluxe expanded edition](UNIVERSAL 2711804)CD+DVD
四面デジパック仕様でUNIVERSALデラック・エディション特有のケース入り。
歌詞が不掲載とはいえ、
唯一のオリジナル・メンバーとしてVENOMを率いるクロノス(vo、b)の最新インタヴューを盛り込んだ、
16ページのブックレット付である。
それにしても業界内の統合か再発ものも色々な音源がUNIVERSALグループに集中してきているが、
VENOMもか…と思うとまた考えさせられる。


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コメント

このエディションずっと迷ってましたが、行川さんの文章でよくわかりました。ありがとうございます。このデラックスエディションシリーズはベルベットの1stをはじめ、過去のものとの抱き合わせが多いですね。これの前にSHM-CDで出た時は逆に買いました(笑)VENOMほどSHM-CDに用はないバンドはいないと思いました。中域出すのはVENOMにはマイナスな効果です(笑)クラストっていう言葉、VENOMでは意識していませんでしたが、音質そのものから確かにもクラストですね。個人的にこれに入ってる4曲目の「RAISE THE DEAD」は、今だにリピートで聴いてしまうぐらい惚れ込んでます。全体的にはある意味ミスプレイ的な所も気合いで乗り切ってる1stが好きです。

かくさん、書き込みありがとうございます。
何度も出しなおされると迷いますが、今まで最初期のCDしか持ってなかったので、このエディション、ぼくはDVD目当てで買った感じです。2枚組デラックス・エディションは、オマケによって買うかどうか決めます。
リマスタリングには多少購買欲はそそられますが、ぼくはSHM-CDだからという点で買うことはないです。同時期に海外盤で買ったSiouxsie & The BANSHEESのリイシュー数枚と、同リマスタリングと思しきSHM-CDリイシューでレヴューでまわってきた同じアルバムを、レヴューするから神経集中して聞き比べたのですが、違いがよくわからなかったです。
VENOMはファーストが革命的でしょう。クラストの質感の元祖でしょうし、あの“勘違い感”は他方面に影響大です。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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