なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ドキュメント灰野敬二』(再up)

以前リクエストもいただいたので、
昨年の6月14日に削除した映画『ドキュメント灰野敬二』の文章などを再upさせてもらいます。
公開されてから半年ほど経ったから問題ないでしょう。
“今年→2012年”“昨年→2011年”という年の表記変更以外は手を加えていません。


メイン

やることすべてがロックであり研ぎ澄まされたサイケデリックになる音楽家、
灰野敬二のドキュメンタリー映画。

個人的にダントツでたくさんライヴを観てきた人だし、
とりわけ灰野関係のライヴが最も多かった90年代前半はむさぼるように観まくり、
特に不失者が90年代から2000年代初頭まで東京でやったライヴはほぼすべて観た。
一番影響を受けたアーティストの一人でもある。
というわけで興味深く映画を見た。

監督は白尾一博。
一緒に演奏しているミュージシャンなどの姿や声などもナチュラルな形で多少入るが、
そういった関係者の談話は一切無し。
ライヴのチラシ等も含む関連写真/映像などを織り込みつつ
灰野自身が語るエピソードと理論の言葉オンリーで進められる。

サブ6

52年5月3日に千葉県で生まれ、
谷津遊園の動物園によく行ったという幼少期の頃の話から始まる。
埼玉県川越市に引っ越し、
灰野の“アナーキーな価値観”を決定づけた<子供会>での出来事を含む小学生時代。
ロックと出会った中学生時代を経て、
“丸刈り反対!”の書名運動の先頭に立って初の“ステージ”にも立った高校時代。
70年代初頭にロストアラーフ(LOST AARAAFF)に加入して様々なライヴの場を体験するも、
一時ロックに幻滅してジャズに目覚めてリズムの“表と裏”を知る。
吉祥寺のライヴ・スペースのマイナーに通うようになり、
70年代の末に自己のリーダー・バンドの不失者を結成。
81年にはデビュー・ソロ・アルバム『わたしだけ?』をリリースし、
同年に英国出身のフリッド・フリスとのつながりがきっかけで初の海外公演を行ったのである。

サブ4

年々活動展開が広がっていった80年代半ばから先の“灰野ヒストリー”にはほとんど言及されない。
混乱を避けるためか歴史に関しては灰野の核ができあがった80年代初頭までを凝縮し、
そこから導き出された“表現理論”みたいなものの実践シーンをここ最近の映像でまとめている。
子供の頃の話などは灰野の不変の意識が表れていて普遍的に興味深い内容だが、
全体的な流れは必ずしもわかりやすくはない。
曲作りやライヴの照明の話などは
ぼくも一度見ただけでは飲み込みにくいところもあった。

灰野がよく使う言葉を借りれば“記号”ではなく“暗号”のような映画だ。

基本的に時系列で語られていくとはいえ、
シンプルな“バイオグラフィー”的構成ではない。
前半を占める80年代初頭まで“灰野ヒストリーの随所に、
前・不失者のメンバーの高橋幾郎(ds)+ナスノミツル(b)と灰野が、
“リハーサル&曲作り”みたいなことをやっているシーンなどが挿入されるのだ。
まるで過去と現在がリンクしていることを示しているとも言える。

サブ5

アレンジは毎回違うし様々なことをやるから一つのライヴや作品だけでは決してつかめない音楽家だ。
本人の内面と共振して混在しながら
大ざっぱに言えば灰野関係の“パフォーマンス”には2パターンある。
一つがエイト・ビート、歌もの、轟音、ハーディガーディや発振器のドローンで押すツカミOKのパート。
もう一つが灰野特有のリズムのズラしが目立ち静寂にポイントを置いたパート。
この映画は灰野関係のライヴ特有の問答無用の圧倒的なダイナミズムとは一線を画し、
前者をちりばめつつ全体的には後者のようなテクスチャーの仕上がりと言える。
灰野は直観的な人間だが、
会話は理論的でもある。
でも“理解する”というよりまずは“感じる”こと、
そして“おもしろがる”ことが大切だ。

実際はポップな面やユーモアもいっぱいのオチャメなキャラを隠し持つ人だが、
そういうところは削ぎ落とされている。
イージーな慣れ合いを拒絶するかのようで、
簡単にわかり得ない灰野の音楽と共振する映画でもある。
ただ灰野のバンドがスタジオでどういうことをやっているのか、
灰野関係のライヴの照明でどういう点にポイントが置かれているのかも、
なんとなくわかる。
不失者の歴代メンバーだけでなく、
これまでいくつも灰野が始めてはフェイドアウトした他のバンドのメンバーの“苦労”も想像できるし、
ライヴのライティング・スタッフの“苦労”も感じ取れる。

サブ3

もちろん難しい話を抜きにした見どころも色々ある。
灰野所有の“民族楽器コレクション紹介”のコーナーもその一つ。
やはり昔の灰野のルックスがどこまで明かされるかも注目であった。
幼稚園児や小学生の頃の話のシーンで集合写真がいくつか映し出されるが
(ただし数秒見ただけではどれが灰野かを判断するのは難しい)、
期待された中高生時代の灰野の写真は公開されない。
“シークレット・ゾーン”を大切にする灰野ならではとも言える。
とはいえ灰野の川越の家周辺の昔と現在の様子も随所に挿入し、
そこに灰野の姿が加わるとやはり少なからず生活感も醸し出される。
数か所で出てくる自分の親についての話も聞き逃せない。
80年代から不失者のベーシストとして灰野の大切な「“仲良し”ではなく“仲間”」(灰野の弁)だった、
小沢靖のことについてかなり時間を割いているのもダイハードな灰野ファンにはうれしい。

サブ1

懐かしのライヴ映像は大半がフラッシュバックみたいな形での挿入である。
灰野が前髪を揃える前の70年代の映像の他、
ステージ上でのたうちまわる83年の新宿JAM、
92年の福岡と東京・法大などでの不失者のライヴも断片が見られる。
ソロや不失者以外に様々なの人と種々雑多な形で無数行ってきたパフォーマンス・シーンは、
89年の吉沢元治(b)とのライヴみたいに例外はあるが、
2012年1月のジム・オルーク+オーレン・アンバーチとのものをはじめとして、
ここ最近のものを少しずつ見せる形に留めている。

映画の中で例として挙げられているパーカッション・ソロ・パフォーマンスに限らず、
灰野関係の音楽は聴くだけではなく“観る音楽”でもある。
ほとんどのライヴ映像は極一部の抜粋でもっともっともっともっと見たくなるものばかり。
2011年の1月に行なって早々と伝説になっている
高橋幾郎(ds)+工藤冬里(b)での不失者・大阪公演の模様が一瞬で終わるのももったいない。
あくまでも灰野の語りをメインに持ってきたかったのだろう。

サブ2

たびたび2012年1月収録のナスノミツル+高橋幾郎との不失者の映像が盛り込まれている。
その時期に電話で本人と話した時もその二人を高く評価していて“チェンジ”は考えられなかった。
だが今春電撃的に不失者の新メンバーが
以前から数回ライヴでやっていた亀川千代(b)とRyosuke Kiyasu(ds)に決まった。
亀川はゆらゆら帝国がブレイクする前に灰野関係のライヴをよく観に来ていたし、
KiyasuがずっとやっているSETE STAR SEPTはグラインド・コアといっても比較的フリー・フォーム。
面白くなりそうな予感はある。
この映画の中でも灰野+亀川+Kiyasuの演奏は、
灰野の最も有名でキャッチーなエイト・ビート・ナンバーで収めており、
現在進行形のメンバーの姿を入れてノスタルジーで終わらぬ仕上がりにもなっている。

古き良きものを愛しつつ灰野はいつだって攻めの音楽家だ。
“昔はよかった・・・”ってな思い出話より、
「今度こういうことやりたいんだよ。行川くん、いいメンバー知らない?」ってなふうに、
いつでも次にやる音楽の話をする方が百万倍好きなアグレッシヴ極まりない音楽家、
それが灰野敬二なのである。


★映画『ドキュメント灰野敬二』
2012年/日本/HD/カラー/95分
2012年7月7日(土)より、渋谷シアターNにてモーニング&レイトショー。
http://doc-haino.com/


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コメント

こんばんは

再upありがとうございます!

この前のSOLOのLIVEでは、途中でアンプの調子が悪くなり(後にメンバーの足にコンセントが引っかかって抜けたせいだと判明) 怒ってアンプを蹴り倒し中に引っ込んだと思ったら、ギターを置いてきて急遽『SCREAM VOICE』を披露するという一面を観られました。


個人的には、灰野さんとIRONFIST辰嶋さんのDUOが観たいです!

JADE#様

この映像ですね
http://www.youtube.com/watch?v=S69OUKhSSVk&feature=player_embedded#!

もう一度、灰野PILLのDUOが観たいです。

書き込みありがとうございます。
>JADEさん
その話とドラマー云々のことで小杉くんがドラマーだった90年代前半の不失者の渋谷ラママでのライヴを思い出しました。ライヴ中に怒って蹴飛ばしてドラム・セットが崩れて、それでも演奏を続けて。大変いただけないシーンで、あれ以降観に行かなくなった人も知っています。
>辺さん
PILLとの最初のデュオ・ライヴはぼくが観た灰野敬二ライヴの中でベストの一つです。

TEENGENERATE

TEENGENERATEの映画もやりますね!
楽しみだ
http://www.youtube.com/watch?v=xc0aBhG-beE

辺さん、書き込みありがとうございます。
近々試写会で見て来ます。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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