なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TRAGEDY『Darker Days Ahead』

TRAGEDY.jpg


米国北西部ポートランド拠点のハードコア・パンク・バンドが約6年ぶりにリリースした4作目のアルバム。
LP待ちでようやく聴いた。
録音はSLEEPや初期HIGH ON FIREのアルバムでも知られる"ストーナー仕事人"のビリー・アンダーソン。
というわけで心して臨む。


活動フィールドは違えどCONVERGEの『Jane Doe』(2001年)と共に、
2000年代のハードコアに絶大な影響を及ぼしたデビュー作『Tragedy』(2000年/2001年説もあり)は、
ほんとフォロワーが続出したアルバムだった。
だが古今東西ジャンル問わずシーンを塗り替える歴史的なアルバムを作ったバンドやミュージャンは
その時からさらなる苦闘が始まるわけで、
両バンドとも各メンバーが他での表現活動にも精力的なのはその表れにも思える。
以降なかなか『Jane Doe』を超えるアルバムを作れないCONVERGEと違い、
TRAGEDYはセカンドの『Vengeance』(2002年)もファーストに匹敵する名盤だった。
でもサードの『Nerve Damage』(2006年)は苦しかった。
そして6年が経った。


この『Darker Days Ahead』も苦しい。
だがポジティヴな重苦しさである。
米国のイラク戦争突入時に作った『Vengeance』ですら突き抜けていたが、
これはひたすら重い。
『Why』から「Dooms Day」までのDISCHARGEの2012年ヴァージョンみたいな、
冷厳な情景描写と荒涼とした心象風景が続く。
行先不明で永久に歩き続ける明日無き行軍みたいだ。
突破するために、
おのれも省み、
もがく。
家族や自国で話を終える“身内エゴ”もない。
世界中に関わるUSAを掘り下げることは、
ソマリアやアフガニスタンやスーダンやシリアやコロンビアを描くことでもあり、
地球全体にも行き着く。

歌詞だけに頼らず普遍的な意識の響きで進む。
ミディアム~スロー・パート主導の曲が多い。
AMEBIXがメタル・クラストと言い切れないように、
ドラマチックなソングライティングをはじめとしてクリエイティヴな音楽姿勢も健在だ。
一回鳴らしただけでは底が見えない。
みんなで一緒に“反~~!”を唱えるナイーヴなサウンドじゃなく、
“個”を実感させる音楽。
特定の敵が見えない現実に向き合っているからこそ、
くぐもっていて窒息しそうなほど息詰まる閉塞感に覆われている。
哀愁のメロディが滲み出す余地がないほど涙も枯れ果てたようなサウンドが脈打つ。
気が滅入る。

脳天気なカラ元気もない。
欺瞞に満ちた共同幻想もない。
なにより逃げがない。
これぞハードコア。

私的年間ベスト・アルバムには入れなかったが、
今後永遠に聴き続けたい向き合うべき佳作である。


★TRAGEDY『Darker Days Ahead』(TRAGEDY Ⅵ)LP
分厚い紙で手触りなどにもこだわったジャケットに厚手の紙のレコード袋が封入された重厚なパッケージも、
自分たちがコレクターだからというだけでなく自己表現に妥協をしないTRAGEDYらしい。
CDのジャケットは文字の部分などの色が若干違うようだ。


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コメント

私は現在、棚にしまい聴いていません。

結果が微妙だったのです...。

正直、TRAGEDYというバンド名で購入しました。


EP盤やLP盤、SPLIT盤等が全てグレイトだった為、残念です(;_;)

いやぁ、文章唸りました。個人的にこのアルバムは、まさにあるがままの目茶苦茶男らしい、そして狂おしいほどパンクな1枚で聴き込んでいます。「POWER FADES」でのヴォーカルは泣けるほど力強い。前とは違うかもしれないけど、個人的には本当に色んな意味で(行川さんが全てを書いていると思います)非常にパンク度数が高くて素敵過ぎますね。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
前作以上に賛否が分かれるでしょうね。最初に聴いてイマイチで時間が経ってもエキサイティングに聞こえないと思える作品も多いですが、これは半年後でも一年後でも棚から取り出して再トライしていただくといいかと思います。
>かくさん
バンドと身近な関係者の話では、CDよりLPのリリースがかなり遅れたのはマスタリング等にこだわって完成までに時間がかかったからとのこと。もしかしたらCDだともっと突き抜けた音に仕上がっているかもしれませんが、LPは徹底的に閉塞感に覆われた感触にしたかったのかとも想像できます。
このバンド名を背負った彼らならではの空気感のアルバムとも言えます。確かにいわゆるニューヨーク・ハードコア的な筋肉質のものとは違う骨太さを感じます。やっぱり語りがいがあるアルバムですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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