なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ジャッジ・ドレッド』

メイン『ジャッジ・ドレッド』 小


英国のコミックのヒーローであるジャッジ・ドレッドの映画化。
シルベスター・スタローンの主演で95年に映画化されたが、
ある意味それを反面教師にしてまったく別の構想の下で作られたらしい。
原題は『DREDD』である。

ドレッド役は『ロード・オブ・ザ・リング』(2002~2003年)シリーズで知られるカール・アーバン。
ドレッドの相棒役を『JUNO(ジュノ)』(2007年)の助演で有名な女優オリヴィア・サールビーが務める。
非情の敵の“ママ”役は『300(スリーハンドレッド)』(2007年)などの主演のレナ・ヘディだ。

監督は『バンテージ・ポイント』(2008年)や
『エンドゲーム~アパルトヘイト撤廃への攻防』(2009年)を手がけたピート・トラヴィス。
撮影は最近だと『アンチクライスト』(2009年)や『第九軍団のワシ』(2011年)の強烈な映像で目を覚まさせた
アンソニー・ドッド・マントル!

そういった面々のクールな仕事も相まって強力なアクション・エンタテイメント映画に仕上がっている。

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核戦争後のアメリカ東海岸沿いに広がる無数の廃墟と高層ビルから成る犯罪多発都市が舞台。
ほとんど無政府状態の中で治安を守るのが
警察と裁判官と“刑執行”の権限が与えられた集団の<ジャッジ>と呼ばれる司法官で、
特にジャッジ・ドレッドなる男は悪党たちに恐れられている。
そんな彼は“人心透視”の能力を持つため試験的に採用された新人女性ジャッジのアンダーソンと共に、
ショッピング・センターや映画館も備えた200階建てのアパートメントに乗り込む。
だがそこは頬の巨大な傷を逆バネにのし上がってきた女性ギャングのママ率いる一味が中心になって
犯罪者が入り浸りスラム化した無法地帯で、
彼女らは新型ドラッグ“スローモー”の製造・密売を行なって縄張り荒らしには容赦無き制裁を与える。
ママ一味は高層ビル全体を支配しており、
一般住民を含めて人種のるつぼの一つの小都市みたいな高層アパートメントの中は
ジャッジ・ドレッドらにとって逃げ場のないコンクリートの戦場と化すのであった。

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ある意味ベタな展開の物語だが、
王道だからこそ見せ方や肝が問われる。
ロックンロールと同じだ。
まず無法地帯の中で二転三転する脚本がシンプルなようで緻密に練り上げられ、
情報端末やコンピューター・ルームなどデジタルな戦いも絡めている。

そんなストーリーを盛り上げるのがやはり映像力である。
“R15+指定”されているだけに残虐な映像も含むが、
いわゆるホラー映画よりもリアリズムが追求されている。
2Dや3Dでも上映される作りとはいえ
通常のシステムの試写会の場で見てもグレイトな映像だった。
カーチェイス多用の無暗やたらで無神経なスピード感とは一線を画す加速度が素晴らしい。
高層ビルの上昇と下降のシーンがたびたび出てくるが、
見ていて気圧の変化を感じる“映像マジック”にもなっている。
新型ドラッグの“スローモー”に引っかけてスロー・モーションの動きも適度に挿入。
そのすべてで幻覚作用をもたらすほどだ。

音楽が映像の生々しさに拍車をかける。
挿入される音楽はプログラミングによるものと思われるが、
打ち込みものの映画音楽が陥る雰囲気ぶちこわしの安っぽい装飾とは次元が異なる。
重低音の利いたブレイクビーツからサイケデリックなアンビエント・ドローンまで、
様々なインスト・チューンが個々のシーンの緊迫感を高めている。
映像の色合いにバッチリ馴染んでいるのはもちろんのこと、
鼻を突くような音色もポイントなのだ。

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警察と裁判と処刑のすべてを司るジャッジ・ドレッドは
近代国家必須の三権分立どころか“三権独占”である。
人権もヘッタクレもない。
スピーディに捕えてスピーディにジャッジを下してスピーディに処分する。
処理が遅れれば遅れるほど死者が増える。
それが現実。
情けは無用である。
荒唐無稽なようでリアリティが高い。
この映画の70%を撮影した南アフリカのケープタウンも含めて、
アナーコ云々が寝言にもならない“ジャッジ”必要な国や地域はいくらでもある。

ひたすら職務として遂行する冷厳なキャラのジャッジ・ドレッドは
気を抜くと殺されるから最前線の兵士にも近い。
善悪の判断がエクストリーム。
善のために悪にもなる。
決して超人ではない。
顔の大半を隠しているから表情がほとんど読めないジャッジ・ドレッドは
冷厳な低い声で表情を示す。

一方で新人女性ジャッジのアンダーソンはクールな“人間らしさ”をしっかりキープしている。
「いい街にしたい」という志でジャッジになったが、
殺さなければ自分が殺される敵だろうが殺したことで良心の呵責に悩むシーンもグッとくる。
『JUNO(ジュノ)』でのハイスクール・ガール役とは違うシャープなキャラのオリヴィア・サールビーが
とろけるほどかっこいい。

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無数の銃弾が飛ぶ映画だが、
こういう系統の映画にありがちな“強引な忙しさ”とは一線を画し、
主人公のジャッジ・ドレッドをはじめとして主要人物がみな落ち着いた佇まいなのも特筆したい。
だからこそ凄味を増しているのである。

むろんヴァイオレントなシーンも多いが、
爽快なカタルシスを追求するアメリカのアクション映画につきものの
打ち上げ花火の連発みたいな必然性のない派手な破壊などもない。
全体的にデリケイトな仕上がりなのは英国主導の製作だからとも言えそうな
じわじわ迫り来る寡黙な映像の強烈なアクション映画の快作と言い切りたい。


★映画『ジャッジ・ドレッド』
2012年/イギリス・南アフリカ/95分/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/R15+
2月16日(土)、渋谷TOEI、新宿ミラノ2他全国ロードショー
(c)Rena Films (PTY) Ltd. and Peach Tree Films Ltd.
http://www.judge-dredd.jp/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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