なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『グッバイ・ファーストラブ』

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オリヴィエ・アサイヤス監督の『8月の終わり、9月の初め』(98年)で女優デビューを飾るも、
映画作家の道を歩んでもいる81年パリ生まれのミア・ハンセン=ラブの長編監督映画3作目。
女優としても活躍する女性映画監督3人の3作品を上映する企画の
“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”の一環で今回上映される。

脚本も手掛けた監督自身の初恋をモチーフに作ったとことで、
瑞々しいラヴ・ロマンスであると同時にひとりの女性が生きる“現在進行形”を描いた
切なく甘酸っぱくまばゆい映画である。

サブ1

15歳のカミーユと17歳のシュリヴァンは相思相愛のカップル。
「そばにいて。独りじゃだめなの」「別れたら死ぬ」と常に一緒でないと不安なカミーユに対し、
そんな彼女を重く感じるシュリヴァンは自分の人生の目的も見つけるべく南米を旅することを決意。
旅立たれた後しばらくベッドで泣くカミーユは心を切り替えて
彼から届く手紙を心待ちにすることを楽しみにしていく。
だがある日ショッキングな一通が届く。

髪を短くしたカミーユは大学で建築を学び始め、
行きずりの関係を繰り返す“お手軽な女”とは一線を画す彼女はまもなく
才能が認められて自分を変えてくれた妻子持ちの教師と親密になる。
不安を抱えながらも「天職があるから生きられる」と言うカミーユは建築事務所で働き始めるが、
偶然がきっかけになってシュリヴァンと再会。
でもお互い“変わってなかった”。

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どの時代でもどの地でもあるようなことだからこそ
登場人物たちに自分を投影して楽しむことができるし、
“あれはないだろ!?”とか言ってそれぞれの行動に物言いをつけて楽しむこともできる。
物語はシンプルでベタとも言えるが、
ロックンロールと一緒で
“スタイル”がほぼ決まっている一見他愛のないストーリーはさらに深い表現力が問われる。
そして『グッバイ・ファーストラブ』は映画がもちえるすべてを内包して新しいものを見せてくれる。

まず俳優陣が一人一人とっても魅力的。
最初の1分でヤられる。
特に監督同様にオリヴィエ・アサイヤス監督の映画(2007年の『5月の後』)にも出演した、
ヒロインのカミーユを演じるローラ・クレントンの存在感が強力だ。
笑顔が貴重なクール・ビューティの顔とスリムなボディというシャープなヴィジュアルが際立ち、
“また彼女の映画を見たい!”と思わせる吸引力とオーラが半端じゃない。
「あなたがいないとダメなの」みたいなムードを漂わせつつ仕事もビシッ!と進め、
依存心が強いようで自立も試みる女性のまったりした佇まいがぴったりだ。
彼女のカジュアルなファッションも美どころである。
カミーユに惹かれる男二人も落ち着いた正直なキャラが滲み出ているし、
立場的に娘と“共振”したカミーユの親もいい味を出している。

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おしゃべりな人間がいないし言葉で説明したがる映画でもないが、
だからこそポイントを押さえたセリフのひとつひとつが響いてくる。
一般の人には馴染みが薄い建築用語が頻発するシーンも不思議とマニアックに感じさせず
ロマンチックに流されないこの映画をシャープに引き締めるアクセントになっているのも、
監督のセンスである。

そしてやはりグレイトな映画は理詰めではなく映像そのもので物を言わせる。
歌詞に頼っていて曲や音がおろそかな音楽と同じく、
ストーリーに頼っていて映像がおろそかな映画は深いところに入ってこない。

心の声を拾うべく躊躇せず人物に迫りつつ風景や静物もしっかり撮っている。
ドイツのバウハウス関連のものを含む様々な建築物と
植物や湖沼も呼吸をする山水などの自然がひとつの物語の中で“共生”し、
やわらかなハーモニーを成しているのだ。
そういった景色の中に人物をオーガニックに溶け込ませている映像力も筆舌に尽くしがたい。

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官能的な空気感に包まれた映画である。
しょっちゅうやっているようなセリフがありながら淡泊な描き方が若いだけに逆にリアルな
セックス・シーンだけの話ではなく、
最初から最後までぼくにとってはずっと官能的だ。

カミーユの教師の授業で建設における光の重要性を説くような場面が出てくるが、
光は映画全編の肝にもなっている。
もっと絞って言えば様々な意味で太陽の光の大切さを目で実感する作品だし、
濃淡の光を司る映像力にとろけるしかない。
やわらかいフランス語の響きと溶け合って官能的(organic & sensual)な空間が生まれている。
心の“ゆらぎ”を支える永遠にまっすぐですきとおったな光に包まれてカミーユは解き放たれ、
そよかぜにまかせて進む。

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いわゆるカメラの長まわしはあまり使わずカット割りが小まめなところも特筆したい。
それでいて忙しく感じさせないのは人間の律動にまかせているからだ。
まったりしたムードの作品にもかかわらずリズミカルな転換だから人間の静かな“ビート”を感じるし、
映像そのものが音楽的に感じるひとつの要因になっている。

もちろん適宜挿入される素敵な音楽も映像に寄り添って淡くムードを高めている。
シャンソンはもちろんのことポップな民俗音楽も効果的で、
ロンドンのフォーク・ミュージック系シンガー・ソングライターの
ジョニー・フリン(Johnny Flynn)の曲「The Water」で締めるラストも言うこと無しだ。

サブ5

とある場面でカミーユがストレートに漏らす言葉の「出会えて幸運」になぞらえれば、
出会えて良かった映画である。
くすぐったい佳作だ。


★映画『グッバイ・ファーストラブ』
2011年/110分/35mm
“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”
『グッバイ・ファーストラブ』『スカイラブ』『ベルヴィル・トーキョー』
3月30日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて3作品同時、6週間限定ロードショー。
全国順次公開。
http://mermaidfilms.co.jp/ffnw


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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