なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『スカイラブ』

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C)Paolo Woods


女優としても活躍する女性映画監督3人の3作品を上映する企画の
“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”の一環で上映される一つ。
80年代の半ばからジャン=リュック・ゴダールなどの作品に出演して
『恋人までの距離(ディスタンス)』で女優として脚光を浴びた、
69年フランス生まれのジュリー・デルピーの監督による長編映画の3作目だ。

老若男女の大家族が集った79年の“サマー・パーティ”を描く。
ただそれだけなのに、
脚本を書き女優としても出演しているジュリー自身の体験を活かしているからリアルでおもしろい。
のどかでエキサイティングな宴とスリリングなアフター・パーティで綴る、
ちょっぴり甘く切ないファミリー・コメディだ。

サブ1

11歳のメガネっ娘を中心に物語は進む。
祖母の誕生日に親戚一族が集結し、
推定30人前後が広大な庭先と屋内で盛り上がる。
ほぼすべてが “あたしはあたしは”“俺は俺は”で自意識とキャラの立った人間だから、
テーブルを囲っている時間は言葉が絶えることはない。
大人たちは音楽も政治も夫婦生活も同じレベルで知性と本能が入り混じったおしゃべりを展開し、
子供たちは子供たちで遊びまわる。
のど自慢やカード・ゲームやサッカーやテレビ視聴などで楽しみ、
後半はメガネっ娘が父親や従妹らと出かけた海やディスコ・パーティで恋を意識して“おんな”に目覚める。

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(C)Luana Rossi

映画のタイトルのスカイラブは70年代に米国が打ち上げた宇宙ステーションから引用している。
その機体等が墜落する可能性のニュースが伝えられる不安感の中で繰り広げられているのだが、
ビッグなドラマが用意されているわけではない。
だが日常にもドラマがあるようにフツーの親戚にもちょっとしたドラマがある。
いやフツーというよりちょっとばかりアクの強い人間ばかりが集まっているように見えるが、
少なくても日本では少なくなっている大家族ならではのカオティックな熱量に持っていかれる。

家族は絆に守られて甘えが許されてしまうからこそ容赦なくエゴをぶつける場にも成り得る集合体で、
素晴らしいものに成り得るとは限らないのが現実ではある。
でもやりたいことをやる言いたいことを言い合う大家族のこの映画は、
お互いのエゴがあちこちで炸裂して火花を散らしながら家族の中でポップに気持ちよく昇華されている。
人数が多いから家族や親戚以前に一種の“コミュニティ意識”で包容されていくのだ。

サブ3 (C)Luana Rossi
(C)Luana Rossi

大人げない人間の集まりだからこそおもしろい
清廉潔白っぽい人間がほとんどいないからウソがない。
人間の衣食住の人間の普遍的な営みを原始的にワイワイ執り行なう。
解体シーンこそないとはいえ野で飼っている羊の丸焼きをみんなで食べるシーンに象徴されるように、
ぜんぶあけっぴろげ。
あけすけである。

政治の話もそういったプリミティヴなノリの延長である。
誕生会の主役のおばあちゃんが「もういいかげんにして!」と怒って言うも聞き耳持たず、
“左”と“右”の白熱しすぎの政治論議も周りに流されず我が道を行く国のフランスらしい。
日本の日揮関係者も犠牲になった最近の人質事件の遠因でもあるフランスとアルジェリアの話にも言及。
身内だろうがなんだろうが知ったこっちゃない。
真剣に向き合って勝負しているからこそ「死ね!」という言葉も心から飛び出す。
母親役の一人として出演しているジュリー・デルピー監督が政治論戦の場で目立つのも興味深く、
全部自身の本音と思しきリベラルな立場で保守的な思想の親戚連中に対して一歩も引かず痛快だ。

当然険悪なムードも立ち込める。
でも下ネタがすべてを御破算にする。
思想関係なくエロの偉大さも再認識させられるのだ。

サブ5

老いも若いも女も男も下ネタ大好きな人たちである。
大人は言わずもがな、
親の背中ではなくナニを見て育ったのか“この親にしてこの子あり”で子供たちも無邪気にエッチ。
演技指導したわけではなくみんないつものノリでやったとしか思えない天然ぶりだ。
おちゃめな“マセガキ”ぞろいの中でウブなメガネっ娘もなかなかのもんである。
というわけで眠れないからって兄弟の奥さんを目の前で寝取ろうとする男もいたりするが、
それもまた親戚内での現実味十分の話。
すべてリアリティ満々なのだ。

下ネタ以外にもユーモアが脈打っている。
エスプリと呼ぶには卑俗なウィットが出演者全員の血に流れている。
試写会の場でも笑いのシーンは人によって分かれていて、
ぼくはやっぱりしょーもなさすぎて素晴らしい下ネタと政治ネタが馬鹿馬鹿しくて笑えたのであった。
もちろん他人を引っぱたいて笑いを取る“芸”とは百万光年掛け離れているが、
志村けん~ドリフターズみたいな大衆性もたっぷりなんである。

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会話のウエイトも高い映画だが、
メガネっ娘をはじめとして多数の出演者一人一人の表情が非常にチャーミングだ。
優雅な貴婦人を気取った女性たちもひっくるめてみんな垢抜なくて、
さながらフレンチB級グルメの美味である。
奇をてらっているわけではないのに動きのひとつひとつが天然でおかしい。
舞台になったフランス北西部の端に位置するブルターニュ地方の緑と水に囲まれ、
フツーの老若男女がよそ行きの場で着る79年のフランスのファッションも相まって、
あったかく匂い立つカラフルな映像作品としても楽しめる

前半部は会話をはじめとするスピード感で押し、
後半もメガネっ娘のほのかな恋のビート感で押す。
アメリカンな脳天気とは一味違う微妙にとぼけたノリながらも
人間がみんなハジけているから、
自然に包まれたのどかな雰囲気の中で全編リズムが躍動している。

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(C)Paolo Woods

というわけで音楽もポイントである。
雰囲気ぶちこわしな挿入はせず、
登場する人物の気持ちに沿った必然性のある場面に流し込んで見る者の気持ちを高めている。
音楽のスーパーバイザーとの共同作業で音楽をセレクトしたそうだが、
監督自身が2003年にはアルバム・デビューしてツアーを行なったシンガーでもあるだけに
ポイントを押さえている。
ギルバート・オサリバンの72年のヒット曲「Alone Again (Naturally)」やシャンソンも使われているが、
メガネっ娘がドキドキしながら参加したディスコ・パーティでDJが流す2曲が映画の肝である。

そのうちの一曲はフランスの男性シンガーのパトリック・ヘルナンデスの「Born To Be Alive」。
この映画の時代のリアル・タイムなディスコ・ヒット曲で、
問答無用にイケイケアゲアゲの音もベタな歌詞もピッタリだ。

そしてもう一曲はDEAD KENNEDYSの「Too Drunk To Fuck」。
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メガネっ娘が「パンクしてくる!」と言って恋心を抱く男の子と踊る本作のスポットライトのシーンで
いきなりDJがかける。
81年の曲が79年に!?というツッコミをはるか彼方に吹き飛ばす、
政治的なパンク・バンドのDEAD KENNEDYSの中で最高にナンセンス&ファニーな名曲が炸裂。
“酔っぱらいすぎてヤれねぇ”って意味でも
“酔いしれすぎてヤれねぇ”って意味でもイケる
一種の“人生訓”と“真実”の曲だからまたまたピッタリ!だ。

最後の最後にこの2曲を“オチ”にして締める作りでも『スカイラブ』のセンスがわかろうってもの。
痛快作である。

7繧オ繝厄シ・(C)Paolo+Woods_convert_20130226114326
(C)Paolo Woods

★映画『スカイラブ』
2011年/113分/デジタル
“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”
『グッバイ・ファーストラブ』『スカイラブ』『ベルヴィル・トーキョー』
3月30日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて3作品同時、6週間限定ロードショー。
全国順次公開。
http://mermaidfilms.co.jp/ffnw


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コメント

これは是非とも観てみたい作品です!


アドレナリンが出ているうちにチェックしてみます(^O^)

ITOさん、書き込みありがとうございます。
使われている大メジャーな曲も一つ文章に追加しました。

幼女好きが気に入りそうな映画ですね。
さすが行川さん。

VITOってのは智ちゃん?

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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