なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ギターウルフ『野獣バイブレーター』

KSCL+2203・・0_convert_20130306115835


11作目のフル・アルバム。
ここではCD+DVDの初回生産限定盤を紹介する。


まずアルバム本編の11曲入りのCDだが、
録音とミックスとマスタリングは2年4か月前にリリースした前作と同じく中村宗一郎である。
粗いだけでは終わらず、
ギターウルフのハジけた曲のバッテリー源であるドラムの風通しのいい音作りが特に素晴らしい。
つぶれて音像が平坦になった薄っぺらな爆音アルバムではなく奥行きがある。
音数が減ったように聞こえるのはよりストイックにおのれと向き合っているからに他ならない。
だがむろんここぞとばかりに急所を抉り尽くすギターは太さを増している。

ギターウルフがrawな音に甘えないのは曲作りが確かだからである。
ライヴだけでなく、
自分を追い込む自己鍛錬に近い血の滲む曲作りにも命を懸けているバンドだ。
前作『宇宙戦艦ラブ』に引き続きこのアルバムも挑戦的なほどヴァラエティに富んでいる。

「野獣バイブレーター」「メソポタミアロンリー」「ガソリン子守歌」「幽霊ユー」「ロボットマリア」
「バッティングセンター」「サファイヤCITY」「マグマ信長」「ゲロナイト」「地球 VS エイリアン」
「女マシンガン」の全11曲。
曲名が決まった段階で勝負が決まるバンドだけに、
完璧なタイトルの言霊が曲を司ってサウンドを導くロックンロール・マジックに満ちている。

爆音爆走一直線ではない侘び寂びにも貫かれた驚きの曲の連発だ。
リチャード・ベリーの「Louie Louie」とルー・リードの「Street Hassle」のパンク・ミックス風の曲あり、
CRAMPSの血が逆流したサーフ&サイコな曲あり、
AEROSMITHの70年代を思い出すリフの曲あり、
AC/DCの70年代が頭をよぎるリフのあり曲、
THEMとMC5のR&B感覚をスペーシーにブレンドしたような曲ありで、
剛直な音がギラリと光るラスト・ナンバーは数秒間だけ披露する“寸劇”も聴きどころだ。

周りに流されてコロッと変わるバンドは多いが、
ギターウルフは何が起ころうと動じない
ブックレットで確認できるヴィジュアルの変わらなさも素晴らしい。
かといって狼三匹が守りに入っているわけじゃない。
アグレッシヴな姿勢のソングライティングで
世界旅行みたいなロックンロール・アドヴェンチャーを繰り広げているアルバムなのだ。

アルバム・タイトルの真意は定かじゃないが、
ぼくにとっては英国のVIBRATORSとリンクする。
切ない歌心がほとばしるからである。
それにしてもいつまでも初々しいセイジ(vo、g)のヴォーカルはどうだ。
ワイルド&シャイなロックンロール・ハートが永遠にこだまする。


一方で初回生産限定盤に付く計24分のDVDは、
2012年のライヴ6曲と
「ジェットサティスファクション」「フーチークーチースペースマン」のミュージック・クリップで構成。
ライヴは数か所のものを極端に“ミックス”して昔のブートレッグ思わせる映像作品になっており、
以前スプリットCDを出したLIGHTNING BOLTファンの心臓をも射抜く強烈な音の仕上がりだ。
ミュージック・クリップの2本は気合の中に潜むギターウルフの童心が暴れていて面白い。


トータルでギターウルフの得体の知れない存在感が露わになっている作品である。


★ギターウルフ『野獣バイブレーター』(キューン KSCL 2203~4)CD+DVD
初回生産限定盤はDVD付で16ページのブックレット封入。


スポンサーサイト

コメント

こんばんは

本作、自分の周りでは非常に評判がいいです。
各楽曲のクオリティーはもちろん、曲タイトルのキレ味も。

音源を購入する予算が毎月限られている中、彼らのような、
作品毎の音の違いがそんなに無いベテランバンドはどうしても
後回しになってしまいがちで、歯がゆい思いをしています。

>こえん様
書き込みありがとうございます。
RAMONESやMOTORHEADなど、コンスタントにリリースしているロックンロール・バンドにけっこう言えることですね。特にギターウルフはプロデューサーを自分たちで意識的に変えて音作りを変える、ということをあまりしないから余計音の違いがあまりないとも思います。
ぼくも新作を買うのを後回しにしてしまうベテラン・バンドがいますが、ギターウルフは曲作りに対する挑戦がやはり素晴らしいです。曲のタイトル決定、楽曲/歌詞完成、あとは気合入れてやるだけ、その繰り返しでも毎度フレッシュなのが嬉しいですね。
今回、リリースのインターバルが彼らにしてはちょっと空いたのも好作用をもたらしたと思います。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/979-3c8bf9b1

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん