Eliane Radigue『Vice Versa, etc…』『Triptych』 2009.10.14
OMやMERZBOWもリリースしているIMPORTANT Recordsからのリリースだ。

『Vice Versa, etc…』(IMPORTANT IMPREC259)は70年の録音の2枚組CD。
その数年前から実践していた2台のテープレコーダーによるフィードバックを再構築する制作に、
一区切り付けた音源のようである
29分55秒のディスク1も29分23秒のディスク2も4トラックずつで、
元はオープン・リールのテープの作品らしく、
後者はその逆回転ヴァージョンのようだ。
共にドローンで微妙な揺らぎの反復ながらも十二分に“音楽的”だし、
なにより得体の知れぬパワーが迫ってくる。
むろんリズムやトーンなどに注意を払いつつも本人としてはただ音を出しているだけなのかもしれないが、
無意識のうちに“念”を発している。
精神を安定させつつ神経に変調をもたらすほどだ。

『Triptych』(IMPORTANT IMPREC260)の方は78年に録音した未発表の約62分3トラック入りCD。
ライナーによれば彼女がチベットの仏教にインスパイアされた後のシンセサイザーによる最初の音源で、
“water”“air”“fire”“earth”といった根本的な要素の精神性から導き出されているようだ。
風が吹いているような音でもあり、
静謐な揺れの持続でもあり、
恐ろしくデリケイトでもあるが
音圧もが凄い。
ビートはないが当時のTHIS HEATとも共振していた音像とも思ったし、
研ぎ澄まされてサイケデリックすら言える。
どちらもルー・リードの『Metal Machine Music』みたいに一日中流しっぱなしにして、
落ちているときに落ち着かせるのにも絶好である。
底が見える雑音とは違う精神集中の音の波が生き物に働きかけることの可能性もあらためて考えた。
共に味のある紙質で当時の模様を記録した重みのある写真掲載の8ページのブックレット付。
コメント
はじめまして。
Eliane Radigueで検索していたらこのブログを発見しました。
パンク・ハードコアを熱心に聴いていた頃は行川さんのレビューを参考にし、灰野敬二や友川カズキなどを知ったきっかけも行川さんでした。
行川さんはロック寄りの音楽を聴く方だとばかり思っていたのでEliane Radigueのレビューは意外に思いました。
本当に有名無名、ジャンル問わず様々なものにアンテナを張り巡らしていらっしゃるんですね。驚きます。
レビューの内容は電子音楽を専門に聴いている人とは違った角度から書かれていて、とても興味深く読ませていただきました。
個人的には上記の2作品は微妙な出来だったのですが、もう一度聞きなおしてみようと思います。
ふと思ったのですが、行川さんはどうやって音楽の情報を得ているのでしょうか?本当に幅広く聞かれているので気になりました。
初めてのコメントだったにも拘らず長文失礼しました。2012.04.26 | URL | boo #3C.k2WDA [ 編集 ]
booさん、書き込みありがとうございます。
ロック寄りというより聞く音楽の9割以上ロックです。
これは東京・明大前駅近くのレコード店モダーンミュージック経由で知った感じです。今はインターネットでたまたま出会った情報も多いですが、それも含めてレコード店の情報が中心です。日本のバンドに関してはライヴによく行く人からの情報も多いですね。
パンク/ハードコアは大好きですが、やっぱり形を聞いているわけではなく意識に耳を傾けているので。あと、いかにも決まりきった括りの中で守りに入りたくないので、こういうものも聞く一方デス・メタルなどもガンガンいきます。まあそれはリベラルを気取っている人間に限って多いメタル差別に対して抗う気持ちも強いのですが。
映画関係の方によく言われるのですが、映画に関してと同じく専門外のものは専門家とは違う見方をしているらしく、それを興味深いと思っていただけるとうれしいです。常にいい意味で疑ってかかっているので、世間と違う見方になるのかもしれません。2012.04.27 | URL | 行川和彦 #FiPkFC0s [ 編集 ]
こんにちは、主に映画ブログをやっているChristopherといいます。
「映画関係の方によく言われる」とは、行川さんは映画関係にも顔が広いんですね!さすがです。
監督さんや脚本家さん、俳優さんで親しいのはどんな人でしょうか?
行川さんが女優さんと結婚しちゃったりして・・・?(笑)2012.04.27 | URL | Christopher #- [ 編集 ]
Christopherさん、書き込みありがとうございます。
映画関係に顔はまったく広くないですよ。監督さんや脚本家さん、俳優さん云々の話では、試写会で出会った監督さんに知り合いになった人がいるという程度です。そもそも試写会の話をいただけるのは外国映画が多いですし。ただ新宿の歌舞伎町を歩いているとき、ブログでも取り上げた映画の監督さんが声をかけてくれたりされたりして、けっこう顔とか覚えていてもらえているのはうれしいです。
ちなみに、ぼくが知り合う映画関係の人は、“仕事上”直接やりとりする宣伝や配給担当の方が大半です。2012.05.02 | URL | 行川和彦 #qmxI3Q0U [ 編集 ]
