なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ELECTRIC WIZARD『Wizard Bloody Wizard』

ELECTRIC WIZARD『Wizard Bloody Wizard』


英国出身の真正ドゥーム・メタル・バンドが『Time To Die』以来約3年ぶりに出した9作目。


実は買ってすぐ数回聴いて微妙・・・と感じたからかなり日数を空けてもう一度耳を傾けてみると、
悪くない。
これはこれでOK。
聴きやすいようであなどれない。
一発でガツン!とはこないが、
十分ヘヴィだし、
じわじわじわじわ効いてくる。

例によって曲は長く全6曲のうち1曲以外は6分以上で最後の曲は11分を越えるが、
例によって曲の長さを感じさせない構成だし、
時間の感覚を失わせるプレイも健在だ。


まず唯一のオリジナル・メンバーのジャス・オボーン(vo、g)だけでなく
リズ・バッキンガム(g)も一緒にプロデュースしているクレジットが目を引き、
今回はジャスがミックスも手掛けている。
リズム隊がまた変わっていて、
ベースがSATAN’S SATYRのクレイトン・バージェス
ドラムが2012年頃に一時期ELECTRIC WIZARDに参加していたサイモン・プールだ。

ブルース・ドゥーム・メタルともドゥーム・ハード・ロックとも言いかねる
オープニング・ナンバー「See You In Hell」の時点で、
大丈夫か・・・・・?と思ってしまった、最初は。
若干レイドバックしている様相なのだ。
続く「Necromania」も、ゆるくてぬるい。
けどこれがハマる。
そもそもELECTRIC WIZARDがタイトだったことはないし熱いのも似合わない。
甘美な感覚も漂ってリズムが繰り返しでシンプルだから裸のラリーズの疾走をイメージし、
ELECTRIC WIZARDにしてはポップだから初期QUEENS OF THE STONE AGEも思い出すほどだ。

3曲目の「Hear The Sirens Scream...」は。だらけ寸前のグルーヴと曲のフックで持っていき、
4曲目の「The Reaper」は中近東経由のサイケデリック曼荼羅ワールド。
『Sabbath Bloody Sabbath』なアルバム・タイトルだけでなく、
モロにBLACK SABBATH風のリフが聞こえてきてビックリなのが5曲目の「Wicked Caresses」。
ラストの「Mourning Of The Magicians」は、
ジャスのヴォーカルが中性的でキム・ゴードンのようにも聞こえるしメロディも含めて、
80年代のSONIC YOUTH(特に『Bad Moon Rising』)を思い出すムードに覆われている。
むろん後半はドゥームに突入するのであった。

“電気の武者(electric warrior)”ならぬ
“電気の魔法使い(electric wizard”)にファックされたマーク・ボランみたいな、
今回のジャスのヴォーカルはクセになる。
酩酊というより覚醒している不吉なスウィート・ヴォイスが、
濃厚な果実酒の如き作風にフィット。
ラヴ・ソングに聴こえる曲もやっているが、
歌詞は“セックス、ドラッグ、ヴァイオレンス”といった佇まいで、
highとdownの気持ちを繰り返しながらドゥームの王道をゆっくりと転がっている。


クレジットによればジャケットのモデルはリズ・・・
と思ったが、もう一度クレジットをよく確認すると、
“Cover Photo by Liz Buckingham”と記されていてモデルは別の女性だった。
ブックレット内では表ジャケットの裸体の下部と思しき写真も拝める。

ELECTRIC WIZARD初心者不可!と言い切ろうともしたが、
このアルバムを入り口にするというのもありかも。
トータル43分の長さでELECTRIC WIZARDにしてはコンパクトなのもチャーム・ポイントだし、
甘口ながらちゃんと毒も盛られているからしっかり中毒になる一枚だ。


★ELECTRIC WIZARD『Wizard Bloody Wizard』(WITCHFINDER/SPINEFARM W004/SPINE754232)CD
8ページのブックレット封入の約43分6曲入り。


IRON MONKEY『9-13』

IRON MONKEY『9-13』


UKスラッジ・コア・キングの復活第一弾でもあるオリジナル・サード・アルバム。
90年代の前半に彗星の如くシーンに登場し、
96年のセルフ・タイトルのデビュー作はトイズファクトリーから日本盤も発売されたバンドである。
98年にセカンドの『Our Problem』をリリース後しばらくしてフェイド・アウトしたように見えたが、
脳ミソをどつきまわす快作を再び届けてくれたのであった。

トリオ編成になっている。
ファーストの時からずっとギターを弾いているジムがヴォーカルを兼任し、
ファーストの時のもう一人のギタリストのスティーヴがベースを弾いているようで、
ドラマーは新メンバーと思われる。
EARACHE Records時代のレーベル・メイトでもあった
PITCHSHIFTERの元メンバーのジョニー・A・カーターがプロデューサーというのも、
なんか嬉しい。


裏ジャケットで自ら“SLUDGE CORE”と標榜しているように、
迷いもブレもないスラッジ・コアのド真ん中である。
EYEHATEGOD meets GRIEF”といった王道を転がっていく。
けどやはり英国産だけに、
同種の鬱を炸裂させたEARACHE Records時代の“レーベル・メイト/先輩”である、
FUDGE TUNNELを思い出すもっと冷酷な残虐音である。
真正というよりビョーキ混じりの“真性”という言葉がふさわしいスラッジ・コア・サウンドだけに、
明快で潔い。
なんでもかんでも針が振り切れていればオッケー。
なぜならそれこそが本気の証しだから。
本物に古いも新しいもヘッタクレもないってことをあらためて知る。

何しろパワフルで精力たんまりである。
スローなだけでなく適度に抜けのいい音とツボを突く曲で袋小路を突き抜ける。
BLACK FLAGがスラッジーに加速したようなヘヴィ・ハードコア・パンク・パートも目立ち、
本来スラッジ・コアの“CORE”がハードコア・パンクの“CORE”であることも知らしめるのだ。
8ページのブックレットに写る写真で、
ヴォーカル/ギターのメンバーはCORROSION OF CONFORMITYのTシャツを着ているが、
新ドラマーが日本のBASTARDやFORWARDのTシャツを着ているところも見逃せない。
その小回りの効いたリズム・センスのビートもポイントのアルバムで、
前のめりのパンク・ロックのハジけた感覚に貫かれているのが今回の肝だ。

ジャパニーズ・ハードコア・パンク大好きなことも納得の気合満タンである。
スラッジ・コアと言えば基本的にルーズでダレたアティテュードだけに、
ここまで気合が注ぎ込まれているスラッジ・アルバムは前代未聞だ。
特にヴォーカルの気合がハンパないのは耳を傾ければわかろうってもので、
米国のメタルコアやビートダウン系ハードコアの百万倍の高濃度で迫る。

穏やかならざる音と共振して歌詞も期待を裏切らない。
免罪符が欲しいがための正義の味方気取りとは百万光年かけ離れている。
無慈悲なほど問答無用の純度120%のスラッジ・コアである。
露悪趣味に映るほど120%ネガティヴ・メンタル・アティテュードの言葉が詰まっているが、
ハードコア・パンクとブラック・メタルがまぐわった純な嫌悪感モロ出しのこのケダモノ声と
ハードコア・パンクとデス/ドゥーム・メタルがまぐわったこの蛮音を浴びれば、
ウソじゃないってことがわかろうってもんだ。
馬鹿の一つ覚えで魔女狩りならぬ“ヘイト狩り”に余念がない世界の心臓に憎しみを叩き込む。
おのれを解き放つために。

Buy, or Die。


★IRON MONKEY『9-13』(RELAPSE RR7379)CD
約48分9曲入り。


LEPROUS『Malina』

LEPROUS『Malina』


2000年代初頭結成でイーサーンのバック・バンドも務めてきたノルウェーの5人組のバンド、
LEPROUSが8月にリリースした約2年ぶりの5作目のアルバム。
ファルセットも使う濡れたヴォーカルをはじめとしてRADIOHEADとMUSEの間を進みながら
evilなメタルとプログレのニュアンスもおのれの血と肉にし、
さらに深化したデリケイトな佳作である。

プログレッシヴ・メタルというとDREAM THEATERのようなバンドを想像されてしまいそうだが、
ヘヴィではあってもメタルなリフはほとんどない。
あえて言うならいわゆるマス・ロックの方に近いスタイルだが、
血の通わないポスト・ロック系の音とは一線を画して単細胞な叫び声とも無縁。
エレクトロニクスも含めてNEW ORDERやジョン・フォックスあたりポップ感と黄昏感を内包し、
ポスト・パンク以降の感覚でコンパクトな楽曲に凝縮しつつ音はパーカッシヴで、
ダイナミック&ドラマチックに展開する現在進行形のプログレだ。

そしてLEPROUSにはしっかり歌えるシンガーがいる。
ただ歌が巧いだけで無味乾燥なやつじゃなくデリケイトに心の震えを伝える歌唱は、
今回の『Malina』でとんでもない領域にまで達している。
歌詞が英語とはいえ曲によってはシャンソンにも聞こえるほどの情感をたたえている。
7分半に近くのラスト・ナンバーでは重厚なストリングスと“デュエット”し、
じっくりと研ぎ澄ましていく流れに痺れるしかないのであった。

オススメ。


★LEPROUS『Malina』(INSIDEOUT 88985450572)CD
16ページのブックレット封入の約59分11曲入り。


SEPULTURA『Roots』[expanded edition]

SEPULTURA『Roots』[expanded edition]


へヴィ・メタルを剛直にアップデートしてきたブラジル出身のバンドによる、
96年リリースの歴史的な6作目のCD2枚組でのリマスタリング“拡大版”リイシュー。


まずディスク1には約72分実質16曲入りの本編を収録。
こちらも本編に関してはオリジナル盤の状態のものを今月発売のヘドバン誌で書かせてもらったから、
仁義上、客観的な事実と書き漏らしたことをここでは書く。

現物のCDを聴いて、
こちらも今回のリマスタリング音はいわゆるコンプかけすぎで音圧アップのCDとは一線を画し、
オリジナル盤の良さを活かしつつ埋もれていた音がいい感じで掘り起こされ、
アナログ感覚の彫りの深い音だからアルバムを聴き込んだ方でも納得の仕上がりである。

KORNの初期2作でヘヴィ・ミュージック・シーンの“時の人”になっていた
ロス・ロビンソンがプロデュースということでも話題を呼んだ。
けどSEPULTURAも当時のへヴィ・ミュージックのトレンドに乗ったか!?ってなことはない。
ロス・ロビンソンがKORN以降に手掛けたバンドの多くと違ってKORNみたいな音になってないし、
そもそもKORNで脚光を浴びた“グルーヴ・メタル(≒nu metal)”の音は、
SEPULTURAがいち早く前作『Chaos A.D.』で実践していたのだ。
本作のライナーに盛り込んでいるメンバーの言葉によれば
前作をプロデュースしたアンディ・ウォレスによるミックスの仕上がりの力が大きいそうだが、
だからこそそれ以前のロス・ロビンソンの音の状態を聴きたくもなる。

ヘヴィ・メタルに民俗音楽と融合しさせたことにより
ワールド・ミュージック方面でも反響を呼んだアルバムだが、
テーマはシリアスながらほとんど“宴”のような感じで参加面々と熱く盛り上がっている。

マイク・パットン(FAITH NO MORE他)、
ジョナサン・デイヴィス(KORN)、
デイヴィッド・シルヴェリア(当時KORN)、
カルリーニョス・ブラウン、
DJリーサル(当時HOUSE OF PAIN)、
ブラジルのシャヴァンテ族の人々、
という豪華ゲスト陣の顔ぶれも本作の“モダンな原始サウンド”を彩っている。
当時のSEPULTURAのアルバムでしかありえない取り揃えのメンツだ。

トゥー・マッチなヴォーカルをはじめとして
特にマックス・カヴァレラ(vo、4弦ギター)のテンションがレッド・ゾーン振り切りっぱなしである。
メンバー4人のバランスがギリギリで成り立っていた爛熟期にも聴こえるし、
まもなくマックスが抜けてSOULFLYを始めてバンドが分裂する兆しも聴こえてくると、
今だからこそ言える。


約72分17曲入りのディスク2は、
当時のシングル/EPなどで世に出した曲やデモに加え、
『Roots』レコーディング・セッションの時のアウトテイクなどの未発表音源7曲も入っている。
トライバルな本作にすら影響が濃いエクストリーム・メタルの元祖バンドである
CELTIC FROSTの「Procreation(Of The Wicked)」と、
エドウィン・スターがシングルで出して以降ブルース・スプリングスティーンや
FRANKIE GOES TO HOLLYWOODもやった「War」のカヴァーの同居に、
当時のSEPULTURAにしかありえない強靭な包容力を見る。
ありえないことをやってのけたアルバムなのだ。


★セパルトゥラ『ルーツ:エクスバンデッド・エディション』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17929/30)2CD[一般のCDプレイヤー等で再生可能なSHM-CD]
三つ折り紙ジャケット仕様。
28ページのオリジナル・ブックレットと、
そこに載った長文英文ライナー(メンバーの発言を盛り込んだ逸話満載)と本編の歌詞の和訳が読める
28ページの日本版ブックレットを封入。


LIVID『Beneath This Shroud, The Earth Erodes』

LIVID『Beneath This Shroud, The Earth Erodes』


米国ミネアポリスで2014年に結成されたドゥーム・メタル・バンドのファースト・フル・アルバム。

奇をてらわずにベーシックだからこそセンスや本気度が問われる。
ロックンロールの様式と同じで、
チャック・ベリーのスタイルをやっていてもグレイトなバンドが存在するのと一緒だ。

ホメすぎ承知で“Count Raven meets SLEEP meets EARTH”。
ミニマルなリフの反復で虚脱と解脱を繰り返しながらゆっくりと進んでいる。

いきなり桃源郷と涅槃を見せる葬送ムードのリリカルなオープニング。
以降も、たそがれつづける。
2本のギターはソロ演奏やリフがクールだし、
静かなパートでの研ぎ澄まされた音色にとろける。

どの曲もすっきり終わらずに感情の糸を引くエンディング。
わざとらしくrawな音に作り上げたりせず、
天然で歪み軋んだ音が宙を舞い、
フィードバックが放射する純なヘイト・フィーリングの光がまばゆい。

平易な英語で綴られた歌詞はネガティヴ・メンタル・アティテュード全開である。
曲名にもなっている“nothing”や“no~”という言葉が多い。
露悪趣味にも思われてしまいそうだが、
そういう歌詞がリアルなものとして息を吹き込むヴォーカルも濁声ではなくナチュラルな発声で、
ところによってはラウドにシャウトして吐き解き放つ。
それがまたとても生々しく響いてくる。

身に沁みる一枚。


★LIVID『Beneath This Shroud, The Earth Erodes』(PROSTHETIC PROS102921)CD
内側に歌詞が載ったデジパック仕様の約45分5曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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