なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SITHTER/『Chaotic Fiend(混沌の悪鬼)』

SITHTER/『Chaotic Fiend(混沌の悪鬼)』


2006年から東京拠点に活動しているドゥーム・ロック/スラッジ・コア・バンド、
SITHTER(シスター)のセカンド・フル・アルバム。
先月東高円寺二万電圧で観たセルビアのHERETIC RITESとのツアーでのライヴは強烈だったが、
この作品も聴き応え十二分である。

EYEHATEGODからの影響が少なくないとはいえウワベだけでなく、
モダンなブルース感覚のギターもブライアン・パットン直系の旨みを消化。
クラスティなハードコア・パンク・パートを含む曲にも度肝を抜かれる。
ダーティなスラッジ・コアだが、
音はわざとらしくノイジーな露悪趣味には陥らずナチュラルだから躍動。
タメの効いたリズムのドラムとクルーヴィなノリのベースの絡みにより、
ところによってはSLEEPを思わせるドライヴ感で持っていかれる。
勢いを殺さずにじっくり練り上げられたフックのある曲作りも特筆すべきで、
ギター・ソロも渋い16分を越えるラスト・ナンバー「Jerusalem Axe Massacre」も一気に聴かせる。

嫌悪感を醸し出すヴォーカルは“GRIEF meets IRON MONKEY”といった佇まいだが、
パンクな持ち味でぐいぐい迫る。
映画『スターウォーズ』に登場するシス・マスター(Sith Master)が
バンド名の引用元というのもうなずける怪しい雰囲気なのであった。

西東京市のスタジオのノイズ・ルームでのレコーディングにより、
鬱な音像の中でノイズの粒もいい感じで舞い走っていて音の仕上がりも良好の力作である。


★シスター『混沌の悪鬼』(梵天 BTC-008)CD
約55分9曲入り。


KORN『The Serenity Of Suffering』

KORN『The Serenity Of Suffering』


ヒップホップやゴスとの交配で90年代半ば以降のヘヴィ・ロックを塗り替えた、
米国カリフォルニア州出身のバンドであるKORNの新作。
なんだかんだ言っても3年に一作はオリジナル・アルバムをリリースし続けてこれが12作目で、
ビッグ・ネームのポジションをキープしつつペースを崩さない創作意欲旺盛で仕事熱心な姿勢は、
本作にも表れている。

RUSHDEFTONESMASTODONも手掛けたニック・ラスクリネクスがプロデュースし、
プログレッシヴなメタルやハードコア/オルタナティヴ・ロック以降の進化したメタル、
エレクトロニクスを交えた“ポスト~”の音作りも絶妙に絡め、
キャッチーなフックを大切にした作りだ。
LAMB OF GODGOJIRAも手がけたジョシュ・ウィルバーがミックスし、
現在進行形の“生”のヘヴィ・ミュージック・サウンドに仕上がっている。


もはや変わっただの変わってないだのヘッタクレもない、
1秒でKORNとわかる匂いが漂ってくる。
LED ZEPPELINがそうであったように、
The POP GROUPがそうであるように、
戦略を必要とせず音そのものに自分たち自身が宿るバンドだから何をやってもKORNになる。
USAからしか出てこない“空爆サウンド”の中で、
よりドラマチックなソングライティングと歌いっぷりのいいヴォーカルで迫り、
キャッチーなサビを設けた曲が並ぶポピュラリティの高いアルバムだ。

8年ほど離れていたKORNで『The Paradigm Shift 』(2013年)から再びギターを弾くようになった
ブライアン“ヘッド”ウェルチ(g)の完全復帰作とも言える。
再加入まもないその前作では絡み切れてなかったヘッドのギター全開である。
とぼけているように見えて覚醒した顔で
バッキング・ヴォーカル(本作ではクレジットされてない)も取る脱退前のライヴ・パフォーマンスは、
宗教にのめりこんで一時抜けたのもうなずけるブッ飛んだ佇まいだったが、
やはりマンキー(g)とヘッドの“nu metalツイン・ギター”でこそKORNは本領を発揮する。
CUREあたりのポスト・パンク/ニューウェイヴ/ゴスなダーク耽美ギターもちりばめ、
メタルというより、
AEROSMITHをはじめとする70年代のハード・ロックのリフがひそかに息づいてもいる。

むろんKORNの肝のフィールディ(b)の音は、
ヒップホップをカオティックな形でロックに応用したサウンドの理想をアップデートしている。
二代目ドラマーのレイ・ルジアーも、
2010年の『Korn III: Remember Who You Are』で初めて聴いた時は前任のデイヴィッドとの違いに戸惑いもしたが、
メタル・サウンドの王道を叩く彼のタイトなパワー・ドラムが今のKORNの方向性を強めたとも思えるし、
歌い上げるパートが増えた今のジョナサンのヴォーカルにもフィットしている。
たおやかな穏やかな表情もたたえるジョナサン・デイヴィスの歌心がグルーヴし、
いわゆるマッチョ風味の音とゲイ・テイストなヴォーカルのブレンドで持っていく。

全世界の混血こそが命の現在進行形のロックがここにある。
そこまで深く考えてないだろうが、
けど、だからこそこのアルバムは、
世界中で起こっていることを飲みこんだ“愛の憎しみ”を放射する。

KORNが一番脚光を浴びていた90年代に当時CATHEDRALのリー・ドリアンにインタヴューした際、
KORNを“スポーツ・メタル”と皮肉っぽく評していたのを思い出した。
言い得て妙な表現だが、
ココロだけでなくカラダに響かないとロックは死ぬ。
しかも歌が前面に出ていようがギターもベースもドラムも歌の“奴隷”に成り下がることなく歌をファックし、
内向きを解放しないと小ぢんまりするばかりだ。
ちまちました狭ッ苦しい“サークル”にウンザリする中で、
いくらメインストリームに絡んでも打ちのめされぬどころか、
絡めば絡むほど逆にダイナミズムを増す強靭なボディ&ソウルの筋力に貫かれていているアルバムだ。

胆力たんまりの清濁混交エナジーがハジけたサウンドに爽快感を覚える。
ジャケットどおりに、
キャッチーでありながら不気味な異形の“ヘヴィ・ロック”健在の一枚。


★KORN『ザ・セレニティー・オブ・サファリング』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17459)CD
9つ折りのポスター・ジャケット仕様。
日本盤は、
米国盤などの“デラックス・エディション”に入っている「Baby」「Calling Me Too Soon」に加え、
捨て曲ではない佳曲の「Out Of You」も加えた約63分14曲入りで、
13曲の歌詞とその和訳が読みやすく載った28ページのブックレットも封入さけている。
コリー・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)が1曲にヴォーカルで参加。


OATHBREAKER『Rheia』

OATHBREAKER『Rheia』


女性シンガーを擁するベルギーの“ダークネス・バンド”が、
『Eros|Anteros』以来約3年ぶりにリリースしたサード・アルバム。
米国ではCONVERGEのシンガー主宰のDEATHWISH Recordsからリリースされている。
プロデューサーはDEAFHEAVENを手がけてきているジャック・シャーリーで、
透明感があって適度に抜けのいい硬質な音の仕上がりだ。

以前のアルバムではハードコア・パンクとブラック・メタルの交錯が肝で
いわゆるネオクラストのニュアンスも感じられたが、
そういった命を宿し続けつつ突破してトラッドの調べにまで行き着いている。
たおやかなアコースティック・パートやアンビエント・パートも含み、
90年代後半あたりのNEUROSISのようなヘヴィ・パートも盛り込み、
ほとんどの曲が5分以上で2曲が9分弱で曲が長めながら一発で耳に残るドラマチックな楽曲展開が光る。

ヴォーカルも研ぎ澄まされている。
音に呼応した加速パートではブラック・メタリックなスクリームも轟かせるが、
音楽的にもニアミスしている中期~後期Siouxsie and The BANSHEESの頃のスージー・スーに
K.U.K.L.やSUGARCUBES時代のビョークが混ざったような、
メロディアス歌唱の方が目立つ。
音の質感でも接点があるPORTISHEADのベス・ギボンズを彷彿させるほどのナマの声にも驚かされた。
歌詞は英語で、
やはり中期以降のSiouxsie and The BANSHEESを思い出す“私”と“あなた”の物語。
目の前にいる人間に向き合えなければ世界に向き合えるわけないのだ。

頭デッカチのゴスにもシューゲイザーにも堕することなく、
シンガーの声をはじめとして響きが生々しい。
雲の流れのようにナチュラルだからである。
もちろん濡れたヴォーカルは歌として鳴り響いているが、
インスト・パートも多いだけに楽器も“歌”として気持ちを綴れ織っているところが大切で、
デリケイトな情感をたたえている。

約64分10曲入りの堂々たる力作だ。


★オースブレイカー『レイア』(デイメア・レコーディングス DYMC-271)CD
三つ折り紙ジャケット仕様で歌詞の和訳付。


LED ZEPPELIN『The Complete BBC Sessions』[3CD/DELUXE EDITION]

LED ZEPPELIN『The Complete BBC Sessions』


LED ZEPPELINによる69~71年の6つのBBCセッションを編集したリイシュー盤。
数種類のフォーマットでリリースされているが、
ここでは僕が買ったCD3枚組のものを紹介する。

4作目までの曲+アルバム未収録のカヴァー等を収録。
約74分14曲入りのディスク1と約78分10トラック入りのディスク2から成る97年発売のものに、
約49分9曲入りのディスク3を新たに加え、
ジミー・ペイジ(g)が緻密なリマスタリングを施している。


半数近くの曲で観客の拍手等が聞こえてくるライヴ・レコーディングだ。
オリジナル・アルバムでレコーディグしたヴァージョンのアレンジを尊重しつつ、
スタジオ録音のプレイを繰り返す“ポップス”とは違い、
攻めが身上のロックだから日々アレンジをアップデートしていて“オギョーギ”が悪い。
テイク違いながらCD3枚の中で同じ曲が何度か出てきて、
D.O.A.やDICKIESやIDORAがカヴァーしたことが象徴するようにパンク/ハードコアに直結する曲の
「Communication Breakdown」は5回披露されるが、
やっぱり全部違う。
同じ演奏や同じヴォーカルは二度とない。

ディスク3は、
全体の完成度を高めるためか前回発売時のCDから外されたのも一応うなずける“ワケありテイク”が多い。
数曲は若干フェイドアウト気味だが、
もちろん全曲問題ないし、
まさに蔵出しテイクの面白さである。

“暴れん坊”の頃の初期のパフォーマンスということも相まって、
凝った作りで仕上げたオリジナル・アルバムとは一味違う五線譜をはみ出したダイナミズムが格別だ。
音質に多少バラつきがあり一部良好とは言いがたかいテイクを含めているからこそ新たな発見もある。
モコモコした音のテイクの音像は、
MINOR THREATやFUGAZIをはじめとする
ワシントンDCのハードコア・パンク/ポスト・ハードコアのDISCHORD Recordsの作品も思い出す。
こなれる前の80年代のスティーヴ・アルビニの録音物みたいでもある。

いわゆるコンプした最近のCD等の音圧に慣れた耳には貧相に聞こえるかもしれないが、
これぞ原始の音。
ひるまずに横着しないで可能な限りヴォリュームつまみを上げて聴いてくれ!と、
人力車みたいな馬力で発熱するこのサウンドが言っている。
ロックの魔力に打ちのめされて解放される3枚組だ。


★LED ZEPPELIN『The Complete BBC Sessions』[3CD/DELUXE EDITION](ATLANTIC 8122794389)3CD
97年発売時のライナーと新規ライナー/詳細なデータ等が載った24ページのブックレット封入の、
三つ折り紙ジャケット仕様。


GOJIRA『Magma』

GOJIRA『Magma』


リリース元のROADRUNNER Recordsの歴代バンド群の精を受け継いだサウンドながら孤高のボジションで輝く、
フランスの“プログレッシヴ・エクストリーム・メタル・バンド”のGOJIRAによる、
オリジナル・アルバムとしては『L'Enfant Sauvage』以来の約4年ぶりで6作目に数えられる作品。

思わず身を乗り出して聴いてしまう強靭な佳作である。
大ヒットはしてない。
だがこれだけ厳粛な空気感が渦巻いていて緊張の糸がピン!と張り続いているにもかかわらず、
母国はもちろんのこと欧米各国でこれまでで最高のチャート・アクションを記録しているのも納得で、
まろやかなメロディ・ラインと琴線に引っかかるリフがポピュラリティ十分で持っていかれる。
ときおり民俗音楽っぽい旋律も隠し味にしながらディープに迫るのだ。


90年代前半のSEPULTURAとNEUROSIS、すべての時期のフロリダのDEATHの、
音楽性と精神性から触発されつつさらにストイックに求道したかのようで、
ギターの刻み一つをはじめとして音の出し方ひとつにしても意識が表われている。
やっぱり響きに甘えがない。
大切なのはどこから音なり言葉なり画なりを出しているかだから。
どんなジャンルだろうが表現媒体だろうが基本はまずそこだから。

ISISのような弾力性の音の質感も内包し、
RADIOHEADやPORTISHEAD以降のロック・サウンドのシャープな味わいも醸し出されている。
クールなリフの組み立て方も特筆すべきで、
メタルのリフをお手軽に使ったバンドとの違いは一瞬の“鳴り”でわかる。
必要最小限で自分たちの中から紡ぎ出されるリフのひとつひとつがカッコいい。
おのれを磨き倒して導き出したデリケイトな響きのひとつひとつが、
ゆっくりと、ゆっくりと、聴き手を覚醒させていく。

ジャケットの“太陽神”の画が近いというのもあるが、
KING CRIMSONの『Larks' Tongues In Aspic』のメタル感とプログレ感をアップデートしたかのようでもある。
研ぎ澄まされたサウンド殺したての生肉の如き新鮮な響きだし、
映画と同じく音楽もさばき立ての生肉の如き命の匂いが大切だとあらためて思わされる。

米国産だけでなく日本産も含めてハードコア、メタルコア、スクリーモ、マスコア問わず、
スタイリッシュに叫んでいるだけでしかないハードコア風ヴォーカルはもういいかげん勘弁してほしい。
馬鹿の一つ覚えの“正義”を得意げな顔で説く歌声は形だけで意識が聞こえてこないのだ。
でもここで解き放たれているたおやかなヴォーカルにはナチュラルな歌心が宿っていてリアルこの上ない。

動物云々に対して強硬な姿勢を示すこともあるバンドだが、
主張の違いが刺激的で逆に触発されることも多い。
そもそも“みんなと一緒”ってやつほど恐ろしくて嘘八百なものはない。
すべて英語で綴られた歌詞はあくまでも暗示的だ。
いかにようにも解釈できるほどに、ほのめかす表現こそが意識の奥深くに働きかけると心得ているようでもあるし、
エゴを溶かした不穏な色合いを隠し持ちつつ実は慎ましやかな佇まいのサウンドと共振している。
シーシェパードに対するGOJIRAの今の思いがどんな感じなのか実際のところはなんとも言えないが、
音同様にゴリ押しとは一線を画す歌表現であることは間違いない。

冷厳な肌触りでありながらサウンドはあたたかい。
まったくもって心がこもっている。
言うまでもなく演歌みたいなのにしか心がこもってないなんてことは全くない。
そもそもドラムを含む楽器にだって心が宿り得ることはこのアルバムに耳を傾れればわかる。
シンプル&プリミティヴなアコースティック・インストのエンディングが象徴的だ。
表面的なメッセージではなくヒリヒリした感触にすべてが表われていて、
痛みを悼む意思と意志の音と歌で覚醒させる。
オススメ。


★GOJIRA『Magma』(ROADRUNNER RR7479-2)CD
8ページのブックレット封入の約44分10曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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