なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Cocoon's『21g ~ やすらかに死ね~』

Cocoons.jpg


テッチャン(EXマッドギャング)のメンバーである
Cocoon(THE INDEX)とYUTAKA(元RUDE BOYS)とCOBA★YOUNG(元GARLIC BOYS)が中心になった、
6人組のインスト・ロック・バンドの約54分14曲入りCD。
エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、キーボード、ドラムス、タンバリン、カホン、ハミング、ベース、
マンドリンを使い、
ゲストがフィドルを入れている。

インスト・ロックといっても多くのポスト・ロックみたいに無味無臭なやつじゃない。
細かいジャンル問わず80年代の米国ヒット・チャートにランク・インしたポピュラー・ミュージック群や、
ニュー・ミュージックと呼ばれた音楽などの昭和50年代のやさしいメロディの日本のチャートものを思い出すほど、
親しみやすいキャッチーな曲ばかりだ。
明るいポスト・パンクやパワー・ポップの骨にAORやフュージョンの肉を付けたようなインストでもある。
聞き覚えのあるメロディやフレーズも漏れてきて、
たとえば色んな人が次々と“バカヤロー!”と吐いていく曲の「バカヤロー!」は
末期SEX PISTOLSの埋もれた名曲「Silly Thing」やPROFESSIONALSの曲を思い出す。

2本のギターが引っ張ってギンギンのギター・ソロも弾きまくりスケールがでかい。
ところによってダブを絡めて一部トランス風味も効いているが、
しっとりした鍵盤楽器がリードする曲も捨てがたい。
テクノ以降のインスト・ロックとは一線を画すアナログ感もポイントで、
CDの盤面はレコード盤みたいなデザインになっているし、
レコード+レコード袋のパッケージを撮った写真をそのまま印刷したみたいなジャケットも象徴的だ。

個人的には、
GARLIC BOYS全盛期の90年代に堪能したタイトなビート健在のCOBA★YOUNGのドラムが聴けてうれしい。
あっちゃん、ナボ(以上、NEW ROTEeKA)、BUTAMAN、KAKINUMA(以上、鉄アレイ)らの多数のゲストが
一部の曲にコーラスで参加して盛り立てている。

澄み切った響きが気持ちいい開かれた一枚。


★Cocoon's『21g ~ やすらかに死ね~』(KINGCOBRA PROMOTION KCP-003)CD
現物のジャケットは↑の画像より灰色がかっているペーパー・スリーヴ仕様の約54分14曲入り。


Lou Reed『Transforming Berlin 1973』

Lou Reed『Transforming Berlin 1973』


73年12月14日の米国東部のロードアイランド州におけるライヴを収めた約79分12曲入り。
まだまだ続く“権利関係はクリアーしていると思しき蔵出しルー・リードCD”って感じだが、
ラジオ番組ように録音されたためか音質はまずまずである。
1枚に収めるべくCDの物理的収録時間の限界を考慮してMCを削除した編集と思われるが
VELVET UNDERGROUND時代に発表したルーの代表曲「Sweet Jane」も途中でフェイドアウト)、
パフォーマンスが侮れない音源である。

オフィシャル・ライヴ盤の『Rock 'n' Roll Animal』と『Lou Reed Live』に収めた公演の1週間前のステージだから、
2人のギタリスト、ベーシスト、ドラマー、キーボード奏者を擁した5人のバック・バンドのメンバーは、
その2作と同じ。
本作のクレジットではルーもギターを弾いていることになっているが、
ステージではシンガーに徹していた時期だから実際に演奏しているのかわからない。

タイトルとジャケットどおりに
ルー・リードの72年のセカンド・ソロ『Transformer』や73年のサード・ソロの『Berlin』の曲と、
VELVET UNDERGROUND時代の曲でルーが終生歌い継いだ6曲で構成したセットリスト。
「Caroline Says 1」以外は『Rock 'n' Roll Animal』~『Lou Reed Live』にも入っているが、
やっている曲はほとんど同じでも曲順は入れ替えてないだろうし、
例によって同じツアーの中で同じ曲をやってもアレンジは同じじゃない。

録音状態かマスタリング等の仕上げの関係か、
この時期アリス・クーパーとも一緒にやっていたスティーヴ・ハンターとディック・ワグナーのギターは
『Rock 'n' Roll Animal』や『Lou Reed Live』ほどメタリックな質感ではない。
でもザクザクの音の「White Light/White Heat」をはじめとしてやはりギンギンに目立っているし、
これはこれでバランスの良いレコーディングとして楽しめる。
VELVET UNDERGROUNDのファーストに収めた「Heroin」も、
まさにヘロインなトロトロの歌と演奏で14分半近くヌルッと加速していって聴きどころの一つだ。

ルーの歴史の中で最もハード・ロックンロールの時代。
ふてぶてしくさりげなくサイケデリックな歌声も調子上々のパフォーマンスが記録された一枚である。


★Lou Reed『Transforming Berlin 1973』(ALASKA 32029)CD


Bentham『ExP』

Bentham『ExP』


2010年結成の東京のシャープ&ポップなロック・バンドの“ベンサム”が、
サードEP『OMG』から8か月ぶりにリリースした4枚目のCDになる7曲入り。

いわゆるフル・アルバム・サイズの作品をあえて出さず、
シングルとは違うまさにEPと呼ぶべき5~8曲入りのEPのリリースを続けている4人組だ。
長すぎず短すぎずのEPの尺が似合うコンパクトな曲と音と言葉で今回も短編映画のような物語を編み、
またしてもいい意味で長く感じる濃い作品である。

今回もTGMX(SCAFULL KING~FLONTIER BACKYARD)がプロデュース。
メタルとポスト・パンクをブレンドしたかのようでジョン・フルシアンテがスピード・アップしたみたいな2本のギター、
小技を利かせながら弾むベース、
小回りの効いた軽快なドラム
を演奏する4人が4人ともアクセントのある小粋なプレイでシャキッとした音をハジキ飛ばす。
ほんのり切ないメロディに彩られた7曲はすべてタイプが違いし、
臆せずに挿入するギター・ソロもふくめて聞かせどころを設けたアレンジとコーラスも冴え、
“もう一展開、もう二展開”するポップ・ミュージックを練り上げている。

やさしく高い声域のヴォーカルで飄々とクールに放たれる歌はほとんどがラヴ・ソングと思われ、
個人的には気恥ずかしくなる言葉も聞こえてくるが、
ヒガミ屋の僕にもすんなり聞かせてしまう力がある。
全曲走っている音に引き込まれるし、
ひねっているようで作為がなくまっすぐだし、
何よりすべての針が振り切れているからだ。

最後の曲が終わってもまた頭からもう一度聴きたくなるCD。


★Bentham『ExP』(KOGA KOCA-91)CD
8ページのブックレット封入。


鶴ヶ屋『鶴ヶ屋』

鶴ヶ屋


2000年から東京拠点に活動して4枚のアルバムを出していたソニックアタックブラスターを前身とし、
2014年の4月に現在の5人でスタートしたバンドの鶴ヶ屋が自主レーベルから出したファースト・アルバム。

90年代以降のラウドなオルタナティヴ・ロックを日本の土壌で発酵させたかのようである。
ヴォーカル/ギター、ギター、ベース、ドラムスに加え、
様々な和太鼓が全編で炸裂したパーカッシヴなサウンドがポイントだ。
LED ZEPPELINの「Kashmir」のインスト・カヴァーもそういう流れでハマっており、
オリジナル曲と同じく妙に体裁を気にすることない演奏でなかなか健闘している。
曲によってはダブやトランス・ミュージックの感触もナチュラル・ブレンドし、
時には連呼状態になる景気のいいコーラスも嫌味なく快活なのだ。

薄井啓亨(vo、g)が
http://ginbansha.com/tsurugaya/?p=517
に書いた曲解説を読むとソングライティングのモチーフやら何やら色々と興味深い。
日本語のみで綴られた歌詞は、
本来の意味での風俗、風習、文化などの日本の伝統を踏みしめて命を咲かせる。
もちろん内向き志向にとは一線を画し、
世界に放つ意識はヴォーカルにもよく表われている。
ところによってはNEWEST MODELがゴツくなって砕けたような歌い方のヴォーカルは、
民謡と演歌と童謡の間を豪快に巡り廻った節回しの堂々たる歌いっぷりで圧倒するのであった。

臆せぬ“再デビュー盤”である。


★鶴ヶ屋『鶴ヶ屋』(銀盤社 GBS-0005)CD
約32分9曲入り。
紙質とデザインにも気を使った読みやすい縦書きの四つ折り歌詞カード封入のデジパック仕様。


藻の月(MONOTSUKI)『Tum』

藻の月


70年代の末から自殺、コックサッカーズ、ウィスキーズ、CANON、WAXなどでプレイしてきた
ジョージ(vo、g)が2000年代初頭に結成し、
2005年頃から藻の月に改名して活動中のバンドの1年4か月ぶりのCDになる4曲入り。

ジョージ以外のメンバーは、
竹中邦夫(g、コーラス)、
ムーン安井(b)、
栗田陽輔(ds)である。
フル・アルバムの前作『IDORA』に引き続きクールな作品で、
4曲で一つのドラマを展開している短編映画のような構成で“歯ごたえあり”のCDだ。


最初の2曲の「Tum’」「堕天使」は、
しっとりしたゲストのピアノも溶け合ったやさしいタッチでまったりと進む“ロックンロール”。
3曲目の「Random」はガレージ・サイケとR&Bのブレンドでゆっくりと持って行かれる。
ゆったりした曲が続いた後、
ラストの「Mec」では生意気盛りのROLLING STONESが反復する感じでつっかかってくるが、
オチも心憎い。

芝居がかったrawなレコーディングで肝をごまかしていない。
ある意味ポップ&タイトで適度にモダンな音作りの一方で、
さりげなくブルースの破片が飛んでくるワイルド&デリケイトな音の仕上がりだから
バンドの魅力がしっかりと伝わってくる。
何しろヴォーカルも楽器も歌心がロックンロールしているサウンドなのだ。

歌詞の中の“~ぜ”“~さ”といった語尾には日本のロックンロールの伝統を感じさせるが、
その語尾や一人称の“俺”から思い浮かびがちな不良自慢やドヤ顔なんてもんじゃなく、
音に溶け込んでいる繊細な歌い口のヴォーカルも心を弾ませる。
わざとらしいメッセージ性とは一味違う深いシンプルな歌詞にもうならされ、
特にラスト・ナンバー「Mec」の潔さに痺れる。

帯の表に日本語で“藻の月”、
背の部分にローマ字で“MONOTSUKI”と表記されているところも特筆したい。
たとえばロシア語やギリシャ語やヘブライ語など通常のアルファベットではない言語でバンド名等が書かれていると、
意味も読みもどうにもならないケースに時々出会ったりする。
音楽そのものに表れているように、
内向きや閉鎖的にならない開かれた意識がこういうところにも表れたりするものだ。

そもそもこのCDは日本以外にも十二分にアピールする作品なのだから。
歌詞の英訳は付いてないが、
それは日本語の意味がわからない人でも楽曲と歌とサウンドだけで心に響くCDという自負にも思える一枚。

オススメ。


★藻の月(MONOTSUKI)『Tum』(Messr Works MW0003)CD
今回もジョージによるユニークなイラストも味わえるアートワークの約19分4曲入り。
読みやすく歌詞も載っている。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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