なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Lou Reed+V.A.『The Many Faces Of Lou Reed』

Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』


昨年の終り頃に発売された3枚組CD。
79年のアルバム『The Bells』のジャケットを加工したようなジャケットからして
これまた怪しい企画盤のブツだが、
一般のディストリビューションで流通しているし安価で販売されているから紹介する。


ディスク1はルー・リード関連の様々なレア音源集の約69分12曲入り。
1曲目はフェルナンド・ソーンダースが2012年のソロ・アルバム『Happiness』に収めた
VELVET UNDERGROUNDの「Jesus」のカヴァー。
フェルナンドは82年前半からほぼ最期までベースとバッキング・ヴォーカルでルーを支えた人で、
ここではギターを持ったルーとデュエットしているが、
ほぼルーがリード・ヴォーカルをとっている。
2曲目はブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. & the M.G.s)の「The Bronx」で、
やはりルーが参加している。
3曲目から10曲目まではVELVET UNDERGROUNDのライヴ。
録音日は不明でライナーによれば69年のステージとのことだ。
オリジナル・アルバムでは未録音の「Sweet Bonnie Brown」と「It's Just Too Much」のメドレーは、
『1969: The Velvet Underground Live』に入っていることでファンには知られているが、
ディスク1の他のVELVET UNDERGROUNDのライヴ音源もそのアルバムのテイクと同じに聞こえる。
そのライヴ盤のMCや観客の歓声等をカットしたもののように思えるが、
ともあれ臨場感十分の音質良好硬質サウンドである。

ディスク1の終盤の11曲目と12曲目はルーのソロ・ライヴで、
ライナーによれば約71分のディスク2の12曲と合わせて
76年の“ロックンロール・ハート・ツアー”の中の一回分のステージがすべて収められているという。
これまた録音日は不明だが、
こちらも音質良好で熱い。

約49分のディスク3は14組によるVELVET UNDERGROUNDやルー・リードの曲のカヴァー集。
曲順は変更されているが、
2003年発売の『After Hours: A Tribute to the Music of Lou Reed』の曲が丸ごと入っている。
VELVET UNDERGROUNDの曲が過半数を占め、
ルーがソロで発表した曲もほとんどが70年代前半の曲だ。
僕の知らない参加者がほとんどで調べてもあまり情報が出てこないアーティストが多いが、
どのヴァージョンもけっこう引きつけられる。
メロディ・メイカーとしてのルー・リードの魅力を伝えるカヴァーがほとんどで、
「All Tomorrow’s Parties」を「All Tomorrow’s(Beach)Parties」と改題して
サーフ・インスト・カヴァーに仕立てたヴァージョンも楽しい。
72年のセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバム収録の「Going Down」や、
84年の『New Sensations』収録の「Turn To Me」、
92年の『Magic And Loss』収録の「Cremation」のカヴァーも目の付け所が面白いしクールだ。
VELVET UNDERGROUND時代に未発表のルーの曲「I Love You」「Temptation Inside Your Heart」の
カヴァーも渋い。


★Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』(MUSIC BROKERS MBB7241)3CD
デジパック仕様。


『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(DVD)

janis_DVD.jpg


米国テキサス生まれのシンガーだったジャニス・ジョプリンのドキュメンタリーDVD。

昨年日本公開もされた映画で、
本人や関係者の話と映像/写真でシンプルに構成し、
1943年1月の誕生から1970年10月の他界までを順に追ったオーソドックスな作りである。
地味な仕上がりが実はジャニスらしいし、
それがまた切ない。
音楽ドキュメンタリー映画によくある他のミュージシャンなどの“絶賛トーク”は本編に含めず、
ハードボイルドな編集で勝負。
やんちゃで早くも進取の精神に富んでいた子供の頃やイジメられた高校/大学時代を経て
人前で歌うようになり、
脚光を浴びる中でバンド・メンバーや色々な人との確執や軋轢が増していくまでの流れが
わかりやすく描かれている。

ライヴやインタヴュー等におけるジャニスの昔の映像や写真はもちろんのこと、
コンサートの観客の様子やニュース・フィルムの映像からも時代の匂いが漂ってくる。
テレビ番組やスタジオなどでのジャニスはあまり屈託を感じさせずにオチャメで豪快にも見えるが、
だからこそ逆に心に刻まれ続けた深手がひしひしと伝わってくる作品だ。
この映画を観るとステージでの彼女はいつも重い。
解き放たれるために歌っているように映る。

あまり悩みを公けにはせずに笑い飛ばそうとする気質もあって、
当時のジャニスのインタヴューではせいぜいほのめかす程度しか孤独や“痛み”が語られていない。
彼女が抱え込んだものは、
この映画のために収録したものと思しき関係者たちの談話で炙り出される
ジョン・レノンなど当時話している映像も一部あり)。
妹、弟、幼馴染、高校時代やテキサス時代の男友達、歌い始めた頃に“同棲”していた“彼女”、元彼、
バンド・メンバー、ローリング・ストーン誌の記者、レコード会社の人、テレビ番組の司会者、
映画『モンタレー・ポップ』の監督らが、
ジャニスを率直に語っている。

母親をはじめとする家族にマメに送っていた手紙をたくさん公開しているのも特筆したい。
米国の女優が代読してナレーションのようになっているのも効果的で、
家族に対するジャニスの思いもこっちに染み込んでくる。

スキャンダラスな人だけに関係者の発言も慎重にピックアップしたと思われるが、
それでも赤裸々な言葉も多い。
何かと言い訳を付けて本質を隠す“伏字文化”の日本の音楽ドキュメンタリーではなかなかない作りだ。
とりわけ活動後期はヘロインとアルコールに浸かっていたようで、
“セックス、ドラッグ、ロックンロール”のイメージを体現していたようにも映る。
容姿に対するコンプレックスをハングリーなエナジーに昇華して
“自己実現”への執念に燃えていたようにも見えるが、
似て非なるものでヤリマンというより“恋多き女”と言いたい。

「しあわせになりたいだけなのに」という、
とある人物に宛てた手紙のシンプルな言葉がとても心に響く映画だ。


DVDの映像特典についても触れておきたい。
映画のために行なった関係者のトークがほとんどで、
本編に含めたら散漫になって全体の流れを削ぐとはいえ公開しないのは惜しいもので構成されている。
ジャニスの酒呑みの話やジャニスがヘルズ・エンジェルスと向き合った話など、
そそられるエピソードがいっぱいだ。
この映画の監督らが制作秘話明かすトーク番組、
Big Brother and the Holding Companyの3人の新規収録アカペラ、
メリサ・エスリッジなどがジャニスからの影響を語る映像、
映画の予告編(2ヴァージョン)も観られる。


★『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(キング KIBF 1460)DVD
本編104分+映像特典計約53分。


そこに鳴る『METALIN』

そこに鳴る『METALIN』


2011年に大阪で結成されたバンドが『YAMINABE』以来約1年ぶりに出したCD。
無料配布音源を除けば3タイトル目と言える作品で、
約24分7曲入りというヴォリュームながら今回も聴き応えありだ。
KAgaMIが手掛けたジャケットもぴったりの世界観で迫る。


KILLSWITCH ENGAGEをはじめとする2000年代以降の米国産メタルコアのエッジとメロディを抽出し、
ハードコアっ気の代わりに、
テクニカルなギターと“J-ポップ・ミュージック”の甘い歌心を流し込んだかのようなサウンドだ。
デス・メタリックなフレーズ込みで加速する“日本語スピード・メタル”とも言えそうで、
リリカルなプログレやクサい歌謡ポップスのメロディとタッピング奏法もさりげなく挿入する
テクニカルなギターと、
ブラスト・ビートも四つ打ちも挿入するドラムが炸裂する。

楽器の音はなかなか熾烈苛烈で遠慮無したが、
その音の波に乗るギタリストとベーシストの男女ヴォーカルは中性的。
甘く終始クールで飄々として“日本語シューゲイザー”とも言うべき佇まいだ
2曲目の「新世界より」が大阪の繁華街“新世界”と関係あるのかどうなのかなど、
色々と深読みができる歌詞も面白い。

これまでの作品以上にメタリックな音が目立つ一方、
欧州歌謡のメロディをアレンジした日本の歌謡曲のメロディというか、
洋楽の音を使いつつ“大和な情緒の旋律”に包まれている。
ラヴソングが大半と思しき歌詞は日本の最近の青春映画をイメージし、
そういう映画のサントラにもピッタリの曲が続く。

ありえないジャンル乱交で度肝を抜いてきたマイク・パットン(FAITH NO MORE、FANTOMAS他)が、
スリリングにJ-POPとまぐわったみたいでもある。
新世代ならではのハイブリット感だが、
涼しい顔をしながらキャッチーにロックしているところが何より大切な一枚。


★そこに鳴る『METALIN』(KOGA KOCA-93)CD
KAgaMIがイラストレーション・デザインをジャケット等を担当し、
つるつるの紙を使った帯と8ページのプックレット付。
実際のジャケットの色は↑の画像よりも濃いです。


BOSTON『Clear As The Sun』

BOSTON『Clear As The Sun』


その名のとおり米国ボストンの“ビッグ・ネーム・ロック・バンド”のライヴ盤。
権利関係はクリアーしているリリースと思しき2枚組だ。

約60分のディスク1にはデビュー作『Boston』リリース1か月後である76年9月27日のオハイオ州での録音の11トラック、
約53分のディスク2には77年3月19日のカリフォルニア州での録音の10トラックを収めているが、
「Foreplay」と「Long Time」を分けているか続けた感じで1トラックにしているかの違いで、
実質的に同じ曲数だ。
曲順が多少違えどセットリストはほとんど同じだが、
「Don’t Be Afraid」と「This Time」がそれぞれ片方にしか入ってない曲である。


音質はまずまず。
ディスク1は全体的にテンポがやや遅く感じられるが、
ディスク2を聴くと曲が微妙に加速しているのが興味深い。

78年のセカンドの『Don’t Look Back』でレコーディングする、
「A Man I'll Never Be」と「Don’t Be Afraid」を初期ヴァージョンのアレンジで既にやっているのも興味深い。
未発表曲の「This Time」「Shattered Images(Help Me)」「Television Politician」も聴きどころで、
「Television Politician」は『Live Agora Cleveland 1976』でもやっているから当時のライヴの定盤だったようである。

プログレ云々とも呼ばれ続けているバンドだが、
スタジオ録音盤の忠実な再現なんか眼中にないパフォーマンスだし、
2つのライヴを聴き比べるとアレンジが違う曲も多い。
基本的にはいい意味でアメリカンなノリノリのポップ・ハード・ロックンロールだと再認識するCDだ。


★BOSTON『Clear As The Sun』(F.M.I.C FMIC032)2CD
内側にライナーが載った二つ折り紙ジャケット仕様。


町田町蔵+北澤組『腹ふり』LP

腹ふり


92年にリリースされた町田町蔵+北澤組のデビュー・アルバムのLP。
トータル約76分の長尺だからLP1枚に収めるのは物理的に無理があるので2枚組でのリリースだ。


“WAX GREAT REISSUE 2016”というタイトルで、
徳間ジャパンコミュニケーションズ内のWAX Recordsから日本のバンドの名盤がLPでリイシューされているが、
その一環の発売だ。
CDはWAX Recordsからリリースされていたものである。
180グラム重量盤のレコードで、
ジャケットは英国アナログ盤を意識したというE式PP貼りと呼ばれる手触りがつるつるの光沢仕様。
新デザインの帯の裏には、
昨年の紙ジャケットCDリイシュー盤で僕が書いたライナーの抜粋が載っている。
制作関係者によれば昨年CDリイシューされた際のリマスタリングの音を使っているとのことだ。


初LP化作品だから今回の企画の中でも“最目玉”であろう。
もともとLP用に作った音を昨年のCDリイシュー時にリマスタリングして使った今回のシリーズの大半のLPとは違い、
これはもともとCD用にレコーディングした音のアルバムだ。
もちろんこれも昨年のCDリイシュー時にリマスタリングされた音が使われているが、
LPへの“変換”はまずまずである。
高音域の伸びはCDの方が鮮やかでかなりヴォリュームを上げるとやや“苦しげな鳴り”になるLPだが、
中低音域の粘り気は十分。
町田が北澤組のことを表すべくホメ言葉として使った“土人”の音がCDよりリアルに感じられる。
特にベースはCDより数段格別で痺れる。
LPで聴いたら70年代初頭のキャプテン・ビーフハートに加え、
『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』や「Where There's A Will..」の頃の
The POP GROUPを思い出した。

『腹ふり』を長年聴きこんでいる熱烈なファンの方は発見多数で買っても損は無し。
まさに昔の“銀塩写真”の引き伸ばしの如く適度に粒子が荒れた表裏のジャケット写真もいい感じの仕上がりだ。


★町田町蔵+北澤組『腹ふり』(徳間ジャパンコミュニケーションズ TKJA10086)2LP
曲名などがシンプルにクレジットされた四つ折りインナー封入の約76分15曲入り。
なお実際のジャケットの地の色は↑の画像より白っぽい。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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