なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Lou Reed『American Poet』

170430 Lou Reed『American Poet』


2001年にリリースされたライヴ盤の新装版。
権利関係はクリアーされていると思しきルー・リードの非オフィシャル・リリースの中でも
一番知られていると思しきもので、
何度か再発されているが、
これは昨年の11~12月にジャケットを微妙に変えて2枚組CDで発売されたものだ。

2枚ともリリースしたばかりのセカンド・ソロ・アルバム『Transformer』のツアーで、
もちろんVELVET UNDERGROUNDの曲も半数を占める。
ルーはヴォーカルに専念し、
ツイン・ギターを擁する4人編成のバンドとのステージだ。
『Transformer』に参加したミュージシャンも有名なミュージシャンも演奏してないし、
ルーがソロ・ツアーを始めた頃だと思うが、
グッド・パフォーマンス。
共に音質まずまずだ。

CD1は72年の12月26日のライヴが11曲で、
6トラック目にインタヴューが入っている計約62分のCD。
以前のCDにも入っていた音源である。
スローな「I'm Waiting For The Man」をはじめとして、
もちろんスタジオ録音ヴァージョンそのままではやってないが、
基本的にソロ初期2作の路線のけっこうストレートなロックンロール・アプローチだ。

CD2は今回の追加CDで73年1月27日のライヴが約74分14曲入っている。
「Rock ‘n’ Roll」は曲の途中からだが、
CD1に未収録の「Wagon Wheel」「New Age」「I Can’t Stand It」「Sister Ray」も聴ける。

本作のアート・ワークの写真を撮ったミック・ロックにインタヴューした際に
レコード・コレクターズ誌5月号に掲載)、
彼曰く「(様々な意味で)ルーは人を試す」とも言っていた。
それは絶対的な本気のコミュニケーションを求めていたからだとあらためて思うライヴ盤である。


★Lou Reed『American Poet』(EASY ACTION EARS119A)2CD
CD盤は2枚とも無地の紙袋に収納されていて、
ミック・ロックが72年の夏に撮影した写真が彩りライナーが付いた16ページのブックレット封入の
二つ折り紙ジャケット。


藻の月『inframince -アンフラマンス-』

藻の月


70年代末から自殺、コックサッカーズ、ウィスキーズ、CANON、WAXで活動してきたジョージ(vo、g)が
2000年代初頭に東京で結成したロック・バンドの藻の月(MONOTSUKI)の新作。
CDとしては『Tum』以来の約1年ぶりでフル・アルバムとしは約2年半ぶりの4作目だ。

メンバーは、
ジョージ - Vocal, Guitar、
竹中邦夫 - Guitar、
ムーン安井 - Bass、
KRITER - Drumである。

なかなか多彩で“ロックンロール”と呼ぶことにためらいも覚えるロック・アルバムだ。
もちろんほとんどを藻の月が作った曲自体が細かいジャンルから自由だからでもあるが、
メンバーがプレイしてない曲を含むほどゲスト陣の演奏等の影響も少なくない。
その面々は以下のとおりだ。

HOL-ON(meroro records) - Electronics+1曲の作曲
柴田エミ(稲生座) - Piano
芝井直実(N-unit) - Alto Sax
村上雅保(THE FOOLS) - Percussion
桑原延享(DEEPCOUNT) - Trumpet
川崎知 - Tenor Sax
pocopen(SAKANA) - Vocal+1曲の作詞
高八 - Strings, Guitar
松井亜由美(PASCALS) - Violin

意外なミュージシャンも参加しているが、
きらきらした音楽性と表現の広がりと深みを象徴している。

エレクトロニクスよるアンビエント・チューンで幕を開け、
シスコ・サウンドっぽい透明感あふれる開かれた音でゆっくり疾走しながら
ちょっぴりトランス感覚で反復する曲が続く。
エッジが効いてピアノもハジけるROLLING STONES風のロックンロール・ナンバーあり、
パーカッション入りのファンク・グルーヴの上でトーキング・ヴォーカルが歌う曲あり、
ジャズ・ファンク調の曲あり、
フリー・ジャズっぽいバックとポエトリー・リーディングの曲あり、
透明感いっぱいの音のやさしいR&Bチューンあり、
ヴァイオリンが光る穏やかな曲ありだ。
とにかくいい具合に力の抜けたヴォーカルも含めてデリケイトだし、
静かなパートを大切にした彩り豊かで芳醇なサウンドが“スウィング”している。

さりげなく社会性も帯びて毒を含む意味深長な歌詞はほぼすべて日本語だが、
曲名が「Faune ファウネ」「Black Kite ブラックカイト」「Satanael サタナエル」「D2」
「Fantomas ファントマ」「Peri ペリ」「Khamma カンマ」「Simourgh スィームルグ」
「Même メーム」といった具合に、
日本語ではなく、英語もほとんど使ってないところがユニークだ。
どことなくマジカルな音楽を暗示しているようでもあり、
古代イタリアの神格やイラン神話などの様々なキーワードにも思えるし、
音と相まって想像力をふくらませる。


ジョージが描いたジャケットにも表れたアーティスティックな情趣が滲む一枚。


★藻の月『inframince -アンフラマンス-』(Messer Works MW-004)CD
約45分9曲入り。


Lou Reed+V.A.『The Many Faces Of Lou Reed』

Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』


昨年の終り頃に発売された3枚組CD。
79年のアルバム『The Bells』のジャケットを加工したようなジャケットからして
これまた怪しい企画盤のブツだが、
一般のディストリビューションで流通しているし安価で販売されているから紹介する。


ディスク1はルー・リード関連の様々なレア音源集の約69分12曲入り。
1曲目はフェルナンド・ソーンダースが2012年のソロ・アルバム『Happiness』に収めた
VELVET UNDERGROUNDの「Jesus」のカヴァー。
フェルナンドは82年前半からほぼ最期までベースとバッキング・ヴォーカルでルーを支えた人で、
ここではギターを持ったルーとデュエットしているが、
ほぼルーがリード・ヴォーカルをとっている。
2曲目はブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. & the M.G.s)の「The Bronx」で、
やはりルーが参加している。
3曲目から10曲目まではVELVET UNDERGROUNDのライヴ。
録音日は不明でライナーによれば69年のステージとのことだ。
オリジナル・アルバムでは未録音の「Sweet Bonnie Brown」と「It's Just Too Much」のメドレーは、
『1969: The Velvet Underground Live』に入っていることでファンには知られているが、
ディスク1の他のVELVET UNDERGROUNDのライヴ音源もそのアルバムのテイクと同じに聞こえる。
そのライヴ盤のMCや観客の歓声等をカットしたもののように思えるが、
ともあれ臨場感十分の音質良好硬質サウンドである。

ディスク1の終盤の11曲目と12曲目はルーのソロ・ライヴで、
ライナーによれば約71分のディスク2の12曲と合わせて
76年の“ロックンロール・ハート・ツアー”の中の一回分のステージがすべて収められているという。
これまた録音日は不明だが、
こちらも音質良好で熱い。

約49分のディスク3は14組によるVELVET UNDERGROUNDやルー・リードの曲のカヴァー集。
曲順は変更されているが、
2003年発売の『After Hours: A Tribute to the Music of Lou Reed』の曲が丸ごと入っている。
VELVET UNDERGROUNDの曲が過半数を占め、
ルーがソロで発表した曲もほとんどが70年代前半の曲だ。
僕の知らない参加者がほとんどで調べてもあまり情報が出てこないアーティストが多いが、
どのヴァージョンもけっこう引きつけられる。
メロディ・メイカーとしてのルー・リードの魅力を伝えるカヴァーがほとんどで、
「All Tomorrow’s Parties」を「All Tomorrow’s(Beach)Parties」と改題して
サーフ・インスト・カヴァーに仕立てたヴァージョンも楽しい。
72年のセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバム収録の「Going Down」や、
84年の『New Sensations』収録の「Turn To Me」、
92年の『Magic And Loss』収録の「Cremation」のカヴァーも目の付け所が面白いしクールだ。
VELVET UNDERGROUND時代に未発表のルーの曲「I Love You」「Temptation Inside Your Heart」の
カヴァーも渋い。


★Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』(MUSIC BROKERS MBB7241)3CD
デジパック仕様。


『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(DVD)

janis_DVD.jpg


米国テキサス生まれのシンガーだったジャニス・ジョプリンのドキュメンタリーDVD。

昨年日本公開もされた映画で、
本人や関係者の話と映像/写真でシンプルに構成し、
1943年1月の誕生から1970年10月の他界までを順に追ったオーソドックスな作りである。
地味な仕上がりが実はジャニスらしいし、
それがまた切ない。
音楽ドキュメンタリー映画によくある他のミュージシャンなどの“絶賛トーク”は本編に含めず、
ハードボイルドな編集で勝負。
やんちゃで早くも進取の精神に富んでいた子供の頃やイジメられた高校/大学時代を経て
人前で歌うようになり、
脚光を浴びる中でバンド・メンバーや色々な人との確執や軋轢が増していくまでの流れが
わかりやすく描かれている。

ライヴやインタヴュー等におけるジャニスの昔の映像や写真はもちろんのこと、
コンサートの観客の様子やニュース・フィルムの映像からも時代の匂いが漂ってくる。
テレビ番組やスタジオなどでのジャニスはあまり屈託を感じさせずにオチャメで豪快にも見えるが、
だからこそ逆に心に刻まれ続けた深手がひしひしと伝わってくる作品だ。
この映画を観るとステージでの彼女はいつも重い。
解き放たれるために歌っているように映る。

あまり悩みを公けにはせずに笑い飛ばそうとする気質もあって、
当時のジャニスのインタヴューではせいぜいほのめかす程度しか孤独や“痛み”が語られていない。
彼女が抱え込んだものは、
この映画のために収録したものと思しき関係者たちの談話で炙り出される
ジョン・レノンなど当時話している映像も一部あり)。
妹、弟、幼馴染、高校時代やテキサス時代の男友達、歌い始めた頃に“同棲”していた“彼女”、元彼、
バンド・メンバー、ローリング・ストーン誌の記者、レコード会社の人、テレビ番組の司会者、
映画『モンタレー・ポップ』の監督らが、
ジャニスを率直に語っている。

母親をはじめとする家族にマメに送っていた手紙をたくさん公開しているのも特筆したい。
米国の女優が代読してナレーションのようになっているのも効果的で、
家族に対するジャニスの思いもこっちに染み込んでくる。

スキャンダラスな人だけに関係者の発言も慎重にピックアップしたと思われるが、
それでも赤裸々な言葉も多い。
何かと言い訳を付けて本質を隠す“伏字文化”の日本の音楽ドキュメンタリーではなかなかない作りだ。
とりわけ活動後期はヘロインとアルコールに浸かっていたようで、
“セックス、ドラッグ、ロックンロール”のイメージを体現していたようにも映る。
容姿に対するコンプレックスをハングリーなエナジーに昇華して
“自己実現”への執念に燃えていたようにも見えるが、
似て非なるものでヤリマンというより“恋多き女”と言いたい。

「しあわせになりたいだけなのに」という、
とある人物に宛てた手紙のシンプルな言葉がとても心に響く映画だ。


DVDの映像特典についても触れておきたい。
映画のために行なった関係者のトークがほとんどで、
本編に含めたら散漫になって全体の流れを削ぐとはいえ公開しないのは惜しいもので構成されている。
ジャニスの酒呑みの話やジャニスがヘルズ・エンジェルスと向き合った話など、
そそられるエピソードがいっぱいだ。
この映画の監督らが制作秘話明かすトーク番組、
Big Brother and the Holding Companyの3人の新規収録アカペラ、
メリサ・エスリッジなどがジャニスからの影響を語る映像、
映画の予告編(2ヴァージョン)も観られる。


★『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(キング KIBF 1460)DVD
本編104分+映像特典計約53分。


そこに鳴る『METALIN』

そこに鳴る『METALIN』


2011年に大阪で結成されたバンドが『YAMINABE』以来約1年ぶりに出したCD。
無料配布音源を除けば3タイトル目と言える作品で、
約24分7曲入りというヴォリュームながら今回も聴き応えありだ。
KAgaMIが手掛けたジャケットもぴったりの世界観で迫る。


KILLSWITCH ENGAGEをはじめとする2000年代以降の米国産メタルコアのエッジとメロディを抽出し、
ハードコアっ気の代わりに、
テクニカルなギターと“J-ポップ・ミュージック”の甘い歌心を流し込んだかのようなサウンドだ。
デス・メタリックなフレーズ込みで加速する“日本語スピード・メタル”とも言えそうで、
リリカルなプログレやクサい歌謡ポップスのメロディとタッピング奏法もさりげなく挿入する
テクニカルなギターと、
ブラスト・ビートも四つ打ちも挿入するドラムが炸裂する。

楽器の音はなかなか熾烈苛烈で遠慮無したが、
その音の波に乗るギタリストとベーシストの男女ヴォーカルは中性的。
甘く終始クールで飄々として“日本語シューゲイザー”とも言うべき佇まいだ
2曲目の「新世界より」が大阪の繁華街“新世界”と関係あるのかどうなのかなど、
色々と深読みができる歌詞も面白い。

これまでの作品以上にメタリックな音が目立つ一方、
欧州歌謡のメロディをアレンジした日本の歌謡曲のメロディというか、
洋楽の音を使いつつ“大和な情緒の旋律”に包まれている。
ラヴソングが大半と思しき歌詞は日本の最近の青春映画をイメージし、
そういう映画のサントラにもピッタリの曲が続く。

ありえないジャンル乱交で度肝を抜いてきたマイク・パットン(FAITH NO MORE、FANTOMAS他)が、
スリリングにJ-POPとまぐわったみたいでもある。
新世代ならではのハイブリット感だが、
涼しい顔をしながらキャッチーにロックしているところが何より大切な一枚。


★そこに鳴る『METALIN』(KOGA KOCA-93)CD
KAgaMIがイラストレーション・デザインをジャケット等を担当し、
つるつるの紙を使った帯と8ページのプックレット付。
実際のジャケットの色は↑の画像よりも濃いです。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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