なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

キキミミズ『トランスファー』

キキミミズ


久しぶりに“純な自主制作盤”に出会った。
裏ジャケット等のどこにもにバーコードが印刷されていないところも自主制作らしい。
アートワーク的にマイナスという点でもバーコードを拒絶するリアルDIYパンク・レーベルと同じく、
キキミミズのワダとシンガーソングライターの亀山純輝が立ち上げた、
リアル・インディペンデント・レーベルからのリリースである。

静岡県焼津市を拠点に活動している男性シンガーソングライターのワダが中心になった、
キキミミズ(Kikimimizu)のセカンド・フル・アルバムだ。
デビュー盤と言える2010年の『バランサー』はUP-TIGHTの青木智幸が録音し、
2009年には望月冶孝(サックス)とスプリット7”レコードを出したことが象徴するように、
サイケデリック系やフリー・ミュージック系の音楽家とも交流している人ならではの
フリー・フォームの“ロックンロール”と言いたい作品である。


曲によってワダ以外は多少参加メンバーが異なるが、
ロック・バンド形態でレコーディングされていると言ってもいいだろう。
楽器はエレクトリック/アコースティック・ギター、ベース、ドラム、パーカッション、
シンセサイザー、サックス、ピアノ、ハーモニカが使われている。
シンガーソングライターのソロ・アルバムっぽく、
曲の表情を引き出すべく適宜5人の演奏者が参加。
静岡市のライヴ・ハウス騒弦のオーナーである針谷総一が録音とミックスを手掛け、
すぐ目の前で歌っているみたいな生々しい録音状態も特筆したい。
すきまの多いシンプルな音作りで一曲一曲ていねいに仕上げたことが伝わってくる。

基本的には歌を前面に出したロックでオーソドックスといえばオーソドックスだが、
どういうものから影響を受けたか見えてこない。

歌い方が似ているわけじゃないし一声でねじ伏せる迫力とは対極の佇まいだが、
感情の揺れと自由形の曲作りとアレンジはルー・リードの様々なソロ作を思い出すし。
エレクトリック・ギターの軋みもルーっぽい。
疾走する曲あり、
フォーク調の曲あり、
レゲエ/ラテン音楽を溶かし込んだような曲あり、
9分を越える曲が2曲あり、
7分近くの曲もありで、
多彩な光景を見せる張りつめた空気感にゆっくりと飲み込まれていく。

やさしげながらまっすぐで骨っぽくたいへんデリケイトな歌声の震えは、
昨日今日歌い始めた人みたいなヴォーカルに聞こえるほど初々しく瑞々しく不器用で硬い表情をたたえ、
エキセントリックな歌い方をしてない天然だからこそ一度聴いたら忘れない。
「荒野のおおかみ」「クレイジー・サマー」「サイン」「自由」「ありふれた日々」「連続する世界」
「ステージ」「待ち続ける」「トラフィック」
といったタイトルの曲で構成されているが、
歌詞からは音楽をやり続けている自分に対する自問自答と意思表明みたいなものを感じる。
穏やかなトーンの曲でも響きはどれもヒリヒリしていて意志の音楽にも聞こえる。

貴重なほど研ぎ澄まれた音空間に目が覚める力作。


★キキミミズ『トランスファー』(DEAD COMPUTER DCPT-001)CD
三つ折り歌詞カードが封入された丁寧な作りのペーパー・スリーヴ仕様の約50分9曲入り。
http://axxe.cart.fc2.com/ca6/36/p-r-s5/
https://youtu.be/JYRFtRk5NPE


VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, Jan 10th 1969』

Boston Tea Party, Jan 10th 1969


これまた非オフィシャル・リリースながら権利関係はクリアしていると思しきタイトルどおりのライヴ盤。
ディスク1が49分51秒、
ディスク2 が39分14秒の2枚組CDである。
ヴォーカルは遠いが、
リマスタリング効果か楽器の音は各パートよく聞こえ、
ある程度のマニアならば問題ない音質だろう。

サードの『The Velvet Underground』のレコーディング終了直後でリリースする2か月前のステージ。
「I'm Gonna Move Right in」や「I Can’t Stand It」といったアルバム未収録曲をやっているほどだから、
発売前のオリジナル・アルバムの曲をやることは当たり前のバンドだった。
新しくできた曲をすぐ観客に聴かせるバンドだったし、
しかも現在進行形のアレンジで披露するバンドだった。

VELVET UNDERGROUNDはジョン・ケイルが去って過激な音が薄らいだともされるが、
少なくてもライヴは荒々しかったことがわかる。
モーリン・タッカーのドラム/パーカッションが目立つ音のバランスも相まって、
かなりパーカッシヴなサウンドなのだ。
ゴツゴツしている。

最後は約21分の「Sister Ray」で、
セカンドの『White Light/White Heat』のヴァージョンに比較的近いアレンジなのも興味深い。
元気になる。
いまだ“ヒント”になるネタがあちこちだと気付かされた実況録音盤である。


★VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, Jan 10th 1969』(SPYGLASS SPY2CD3001)2CD
ライナーと写真が載った8ページのブックレット封入。


Lou Reed『American Poet』

170430 Lou Reed『American Poet』


2001年にリリースされたライヴ盤の新装版。
権利関係はクリアーされていると思しきルー・リードの非オフィシャル・リリースの中でも
一番知られていると思しきもので、
何度か再発されているが、
これは昨年の11~12月にジャケットを微妙に変えて2枚組CDで発売されたものだ。

2枚ともリリースしたばかりのセカンド・ソロ・アルバム『Transformer』のツアーで、
もちろんVELVET UNDERGROUNDの曲も半数を占める。
ルーはヴォーカルに専念し、
ツイン・ギターを擁する4人編成のバンドとのステージだ。
『Transformer』に参加したミュージシャンも有名なミュージシャンも演奏してないし、
ルーがソロ・ツアーを始めた頃だと思うが、
グッド・パフォーマンス。
共に音質まずまずだ。

CD1は72年の12月26日のライヴが11曲で、
6トラック目にインタヴューが入っている計約62分のCD。
以前のCDにも入っていた音源である。
スローな「I'm Waiting For The Man」をはじめとして、
もちろんスタジオ録音ヴァージョンそのままではやってないが、
基本的にソロ初期2作の路線のけっこうストレートなロックンロール・アプローチだ。

CD2は今回の追加CDで73年1月27日のライヴが約74分14曲入っている。
「Rock ‘n’ Roll」は曲の途中からだが、
CD1に未収録の「Wagon Wheel」「New Age」「I Can’t Stand It」「Sister Ray」も聴ける。

本作のアート・ワークの写真を撮ったミック・ロックにインタヴューした際に
レコード・コレクターズ誌5月号に掲載)、
彼曰く「(様々な意味で)ルーは人を試す」とも言っていた。
それは絶対的な本気のコミュニケーションを求めていたからだとあらためて思うライヴ盤である。


★Lou Reed『American Poet』(EASY ACTION EARS119A)2CD
CD盤は2枚とも無地の紙袋に収納されていて、
ミック・ロックが72年の夏に撮影した写真が彩りライナーが付いた16ページのブックレット封入の
二つ折り紙ジャケット。


藻の月『inframince -アンフラマンス-』

藻の月


70年代末から自殺、コックサッカーズ、ウィスキーズ、CANON、WAXで活動してきたジョージ(vo、g)が
2000年代初頭に東京で結成したロック・バンドの藻の月(MONOTSUKI)の新作。
CDとしては『Tum』以来の約1年ぶりでフル・アルバムとしは約2年半ぶりの4作目だ。

メンバーは、
ジョージ - Vocal, Guitar、
竹中邦夫 - Guitar、
ムーン安井 - Bass、
KRITER - Drumである。

なかなか多彩で“ロックンロール”と呼ぶことにためらいも覚えるロック・アルバムだ。
もちろんほとんどを藻の月が作った曲自体が細かいジャンルから自由だからでもあるが、
メンバーがプレイしてない曲を含むほどゲスト陣の演奏等の影響も少なくない。
その面々は以下のとおりだ。

HOL-ON(meroro records) - Electronics+1曲の作曲
柴田エミ(稲生座) - Piano
芝井直実(N-unit) - Alto Sax
村上雅保(THE FOOLS) - Percussion
桑原延享(DEEPCOUNT) - Trumpet
川崎知 - Tenor Sax
pocopen(SAKANA) - Vocal+1曲の作詞
高八 - Strings, Guitar
松井亜由美(PASCALS) - Violin

意外なミュージシャンも参加しているが、
きらきらした音楽性と表現の広がりと深みを象徴している。

エレクトロニクスよるアンビエント・チューンで幕を開け、
シスコ・サウンドっぽい透明感あふれる開かれた音でゆっくり疾走しながら
ちょっぴりトランス感覚で反復する曲が続く。
エッジが効いてピアノもハジけるROLLING STONES風のロックンロール・ナンバーあり、
パーカッション入りのファンク・グルーヴの上でトーキング・ヴォーカルが歌う曲あり、
ジャズ・ファンク調の曲あり、
フリー・ジャズっぽいバックとポエトリー・リーディングの曲あり、
透明感いっぱいの音のやさしいR&Bチューンあり、
ヴァイオリンが光る穏やかな曲ありだ。
とにかくいい具合に力の抜けたヴォーカルも含めてデリケイトだし、
静かなパートを大切にした彩り豊かで芳醇なサウンドが“スウィング”している。

さりげなく社会性も帯びて毒を含む意味深長な歌詞はほぼすべて日本語だが、
曲名が「Faune ファウネ」「Black Kite ブラックカイト」「Satanael サタナエル」「D2」
「Fantomas ファントマ」「Peri ペリ」「Khamma カンマ」「Simourgh スィームルグ」
「Même メーム」といった具合に、
日本語ではなく、英語もほとんど使ってないところがユニークだ。
どことなくマジカルな音楽を暗示しているようでもあり、
古代イタリアの神格やイラン神話などの様々なキーワードにも思えるし、
音と相まって想像力をふくらませる。


ジョージが描いたジャケットにも表れたアーティスティックな情趣が滲む一枚。


★藻の月『inframince -アンフラマンス-』(Messer Works MW-004)CD
約45分9曲入り。


Lou Reed+V.A.『The Many Faces Of Lou Reed』

Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』


昨年の終り頃に発売された3枚組CD。
79年のアルバム『The Bells』のジャケットを加工したようなジャケットからして
これまた怪しい企画盤のブツだが、
一般のディストリビューションで流通しているし安価で販売されているから紹介する。


ディスク1はルー・リード関連の様々なレア音源集の約69分12曲入り。
1曲目はフェルナンド・ソーンダースが2012年のソロ・アルバム『Happiness』に収めた
VELVET UNDERGROUNDの「Jesus」のカヴァー。
フェルナンドは82年前半からほぼ最期までベースとバッキング・ヴォーカルでルーを支えた人で、
ここではギターを持ったルーとデュエットしているが、
ほぼルーがリード・ヴォーカルをとっている。
2曲目はブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. & the M.G.s)の「The Bronx」で、
やはりルーが参加している。
3曲目から10曲目まではVELVET UNDERGROUNDのライヴ。
録音日は不明でライナーによれば69年のステージとのことだ。
オリジナル・アルバムでは未録音の「Sweet Bonnie Brown」と「It's Just Too Much」のメドレーは、
『1969: The Velvet Underground Live』に入っていることでファンには知られているが、
ディスク1の他のVELVET UNDERGROUNDのライヴ音源もそのアルバムのテイクと同じに聞こえる。
そのライヴ盤のMCや観客の歓声等をカットしたもののように思えるが、
ともあれ臨場感十分の音質良好硬質サウンドである。

ディスク1の終盤の11曲目と12曲目はルーのソロ・ライヴで、
ライナーによれば約71分のディスク2の12曲と合わせて
76年の“ロックンロール・ハート・ツアー”の中の一回分のステージがすべて収められているという。
これまた録音日は不明だが、
こちらも音質良好で熱い。

約49分のディスク3は14組によるVELVET UNDERGROUNDやルー・リードの曲のカヴァー集。
曲順は変更されているが、
2003年発売の『After Hours: A Tribute to the Music of Lou Reed』の曲が丸ごと入っている。
VELVET UNDERGROUNDの曲が過半数を占め、
ルーがソロで発表した曲もほとんどが70年代前半の曲だ。
僕の知らない参加者がほとんどで調べてもあまり情報が出てこないアーティストが多いが、
どのヴァージョンもけっこう引きつけられる。
メロディ・メイカーとしてのルー・リードの魅力を伝えるカヴァーがほとんどで、
「All Tomorrow’s Parties」を「All Tomorrow’s(Beach)Parties」と改題して
サーフ・インスト・カヴァーに仕立てたヴァージョンも楽しい。
72年のセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバム収録の「Going Down」や、
84年の『New Sensations』収録の「Turn To Me」、
92年の『Magic And Loss』収録の「Cremation」のカヴァーも目の付け所が面白いしクールだ。
VELVET UNDERGROUND時代に未発表のルーの曲「I Love You」「Temptation Inside Your Heart」の
カヴァーも渋い。


★Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』(MUSIC BROKERS MBB7241)3CD
デジパック仕様。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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