なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『二度めの夏、二度と会えない君』

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赤城大空の同名小説を原作にした青春ラブストーリー映画。
“バンドやろっ!♪”って感じでバンドを始める高校生たちの物語だ。
“みんなで力を合わせて頑張ろう”というまっすぐなストーリーが基本ながら、
意味深なタイトルどおりに映画の作りが一筋縄ではいかないユニークな心理劇でもある。
主演でバンドのギタリストは最近だと『武曲 MUKOKU』に出た村上虹郎で、
ヒロインでバンドのシンガーは“たんこぶちん”のヴォーカル/ギターの吉田円佳だ。


燐(吉田円佳)は文化祭でライブをするという夢を叶えるために転校してきた。
ほとんどの人にとってはそんなことが夢にはならないだろう。
でも燐には“時間”がなかった。
智(村上虹郎)、姫子(金城茉奈)、六郎(山田裕貴)にバンド・メンバーが固まるも、
その高校ではバンド活動が禁止されていた。
教頭(本上まなみ)にも厳しい目で見られていたが、
生徒会長(加藤玲奈)が手助けし、
楽器店/リハーサル・スタジオのオーナー(菊池亜希子)もサポート。
夏の文化祭に向けてバンドは練習に励む。

夏のおわりに智は燐に自分の想いを伝える。
“今、言っておかなきゃ後悔する”と思ったのだろう。
だがそれは取り返しのつかない言葉として燐の胸に突き刺さる。
「なぜ、あんなことを言ってしまったのだろう」と思ったある日、
半年前にタイムリープした智は燐との関係をやり直すチャンスを手にして、
“二度めの夏”に挑む。

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同名小説の原作がある映画とはいえ、
ネタバレを避けるべくオフィシャル・サイトでも映画の肝に触れてない。
↑で書いた話の筋は映画の7割ぐらいのストーリーを大まかにまとめてはいるが、
ある意味、映画のイントロダクションしか書いてない。

でもこの映画を観に行った人は序盤のたぶん5分ぐらいで一種の“結末”を見せられてしまう。
最初に“最期”を見せてしまう映画だからである。
ある意味、まず“一度めの夏”の結末をさらし、
“二度めの夏”で主人公が人生の物語を書き変えようと悪戦苦闘する映画なのだ。

やり直そうとする目的は恋、
いや人間関係、
いやいわゆる異性関係である。
友達と恋の間の“好き”の微妙なラインは今も昔も変わらないのだろうか。
いや、そもそも、友達と恋との違い・・・いやその二つに決めつけられない関係もあるのではないか。
そういう永遠に結論の出ないテーマが描かれているようにも思えるが、
やっぱり純愛物語に見える。
ほろ苦く、切ない。

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“あの時ああすればよかった”“ああ言えばよかった”と
“ああ言わなきゃよかった”“ああしなければよかった”というのがある。
僕は前者の後悔が多いが、
後者で大問題を引き起こすことも多い。
この映画の主人公も“ああ言わなきゃよかった”だったが、
実は“(あの時)ああ言えばよかった”であった。
だから“二度めの夏”で“二度と会えない君”に真正面から向き合う。

映画の中でスマホの類をほとんど使ってないところにも注目したい。
メールやLINEとかで気持ちが通じきれるわけがない。
直接言わないとダメだし、
何より面と向き合わないと伝わるわけがない。
たとえそれがこの映画の序盤みたいに誤解であったとしても。


ぐずぐずした村上虹郎や歌は地でやっている純情な吉田円佳をはじめとして
バンド・メンバーの演技はもちろんのこと、
うっすらと三角関係も匂わせながら真面目キャラそのままの加藤玲奈(AKB48)がいい味を出している。
本上まなみも堅物の役がピッタリだ。


★映画『二度めの夏、二度と会えない君』
2017年/日本/カラー/106分/5.1ch/スコープ・サイズ   
© 赤城大空・小学館/ 『二度めの夏、二度と会えない君』パートナーズ
9月1日(金)、新宿バルト9他全国ロードショー。
www.nido-natsu.com


映画『戦争のはらわた』[デジタル・リマスター版]

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第二次世界大戦下におけるドイツとソ連の戦闘の中の人間模様を描いたサム・ペキンパー監督映画が、
公開40周年記念として8月下旬からデジタル・リマスター版で上映されることになった。
デジタル・リマスタリングにより一番前で観て粗が目立つどころか迫力に飲み込まれるばかりだし、
CGを使わず現場の匂いまで漂ってくる戦闘シーンのリアリズムはスクリーンで体感すると全身が痺れる。
彫りの深い映像で人物の表情が生々しく映し出されていて心理描写の彫りの深さもより実感できる。

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ソ連は現在のロシアとその周辺一帯を占めた当時の大国・ソビエト連邦のこと。
ドイツが侵攻した1941年以降のロシアが舞台で、
ドイツの苦境の戦況から察するに1943~1944年頃と思われる。
もちろんドイツはナチス時代でヒトラーの写真やハーケンクロイツは当たり前の“アイテム”だが、
いわゆるナチにまつわるイメージの話はほぼ無し。
逆にナチス・ドイツであまり話題に上がらないネタであり、
ヒトラーの軍隊が繰り広げた展開の一つで壮絶だった対ソ戦の中で、
敵の猛攻にあい絶望的な状況に追い込まれたドイツ小隊の人間たちの心の動きがクールに描かれる。

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いわゆる非戦闘員を描いて一方的に殺される戦争映画も多いが、
これは武器を持つ軍の人間同士の話。
話し合いでは解決不能な最前線の姿だ。

現在進行形の映画としても観られる。
戦争反対!なんて寝言でしかない地域は今も世界中にたくさんあるのだから。
たとえば最近だと、
イスラム国(IS)に支配されたモスルなどの自国の地を奪還するのに
語られることのないイラクの兵士たちがどれだけ壮絶な戦いをしたのかも想像させる。

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戦車も使われているとはいえ爆弾投下で一気に!というよりは一人一人の人間の手で撃つ。
食うか食われるかじゃないが、
撃つか撃たれるか。
まさに撃たねば撃たれる。
“戦争”というより“戦(いくさ)”と呼ぶがふさわしいプリミティヴな状況に息を呑む。
断末魔の兵士一人一人の意識の加速を映像化したような編集も相まって、
カオスの現場に居合わせている気分になるほどだ。

もちろん悲惨なシーンも多いが、
戦場では血も死も当たり前で兵士にとっても見慣れたものみたいに扱われている映し方で、
嘆いている暇もなく屍が景観の一部みたいな様相。
センチメンタリズムを極力排したハードボイルド・タッチの筆致にヤられる。
ドイツで使われてきた鉄十字章の名をタイトルにした原題『CROSS OF IRON』どおりの重厚な映像だが、
邦題の生々しさも捨てがたい。

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ただこの映画の肝は人間たちの心理の流れだ。
修羅場をくぐってきたベテラン兵士である現場主義の主人公の伍長と、
新任の中隊長として派遣されてきたが実戦経験がなくプライドと名誉欲は高い大尉をはじめとして、
劣勢の戦場における人間関係の緊張感と面白さが演技とセリフから滲み出ているのだ。
誰もが人間臭くギリギリの状況だからこそあちこちから湧き出るユーモアも、
ギスギスしかねない物語に潤いをもたらしている。
ソ連の女性兵士の“アジト”に乗り込んだ場面の“オチ”もリアルだ。

“敵”に復讐するかと思いきや、
“我々”の真の敵を見据える終盤の展開が意外なようで現実の戦争心理だろう。
“戦友”が顔を見合わせるラスト・シーンの苦々しい粋な笑顔が、
この映画を象徴する。

必見。

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★映画『戦争のはらわた』
1977年/イギリス=ドイツ/カラー/1.85:1/133分/原題:CROSS OF IRON
監督:サム・ペキンパー
プロデューサー:ウォルフ・C・ハルトヴィッヒ
脚本:ジュリアス・J・エプスティン、ウォルター・ケリー、ジェームズ・ハミルトン
撮影:ジョン・コキロン 音楽:アーネスト・ゴールド
出演:ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メイソン、デヴィッド・ワーナー、
センタ・バーガー
提供:キングレコード 配給:コピアポア・フィルム 字幕翻訳:落合寿和
© 1977 Rapid Film GMBH - Terra Filmkunst Gmbh - STUDIOCANAL FILMS Ltd
8月26日(土)より新宿シネマカリテほか 全国順次公開
URL: cross-of-iron.com


映画『きっと、いい日が待っている』

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子どもたちが抑鬱になった60年代後半の首都コペンハーゲンの養護施設における事件が基の、
2016年のデンマーク映画。
さりげなく重い邦題がピッタリの明日の見えない抑圧状況の中で
宇宙に対する“夢”をエナジーにしながら、
兄弟が命がけで“ファック・ユー!”アティテュードを炸裂させる。
60年代の空気感が醸し出されている落ち着いた発色の映像も奏功し、
音楽も含めて感動を押しつける作品とは一線を画した胸のすく佳作だ。

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13歳の兄と10歳の弟は母親と3人で貧しいながらもつつましく幸せに暮らしていたが、
1967年のある日、病気が悪化した母親が入院することになり、
兄弟だけでは生活していけないと役人に判断された二人は男子児童向けの養護施設に預けられる。

宇宙飛行士になるのが夢ながら足の悪い弟にも過酷な労働作業が課せられ、
上級生からのイジメや制裁と
校長をはじめとする教職員たちの体罰の毎日。
出る杭は“平手”で打たれる。
目を覆いたくなるほど容赦ない。
子どもたちには「no!」という選択肢はない。

人一倍反骨心が強いわけでもない。
ただ自分らに向き合わずに聞く耳を傾けない連中が気に食わないだけだ。
協力してくれる大人もいるが、
なかなか事が上手く進まない。
施設から“解放”されることになりかけるも状況は悪化する一方で決死の行動に出る。

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わかりやすいストーリーだからネタバレを避けるべくかなり大ざっぱに話の筋を書いたが、
教職員の“責め”と兄弟の“攻め”の、せめぎあいから生まれた、
事件、トラブル、アクシデント、挑戦、反抗がスクリーンに刻まれていく。
キワドイ話だからぼかして描いたと思われるが、
同性愛も絡んだ性的児童虐待と想像できるシーンも織り込まれている。

「いずれ私たちに感謝するようになる」みたいな言葉が最後まで一貫した口癖で
自分の名誉のことしか考えてない鬼畜極悪校長に対し、
観ている僕でも殺意の絶えない映画だ。
子どもがどんな状況であろうと“持論”を曲げずに手を上げる校長をはじめとしてここの教職員たちは、
規律と懲罰で子どもたちを一般社会で通用する人間に育てようとしているのだろうが、
規律と懲罰で子どもたちを支配しているようにしか見えない。
絶対的な力を持つ者による弱い者いじめだし、
正義の味方を気取って善人ヅラした高圧的な“モラリスト”の恐ろしさとインチキ臭さも知る。

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“その他大勢”の子どもたちも含めて登場する俳優のすべてが熱演だ。
たとえぱこういう映画を日本で作ったらイケメン少年がズラリと並んでウソ臭くてシラケるが、
少年院みたいな不良の集まりとも違うほんと素朴な少年児童がもっさりした佇まいでリアルである。
とりわけ兄弟役の二人は長編映画初出演とは思えない生々しい演技で、
意識の流れが見えてくる心理描写に引き込まれる。

兄はストレートな熱血漢であり、
弟はいい意味でクレヴァーでもある。
特に弟は宇宙関連の豊富な知識と言葉を使った創作力が施設内で知られるようになり、
徐々に一目置かれていく。

兄弟も生き延びるために本音を隠してウソの心情を吐くことを覚えていくが、
まっすぐな人間ほどウソも方便になる。
不条理を突き抜ける目的を遂げるために。
従順に、従順に、耐え忍ぶ姿が痛々しい。
『The Day Will Come』という本作の英語の原題にならうと“その日”が来るのを指折り数えて待っている。
だがその期待が裏切られた時に炸裂する“静かなる殺意”の行動も痛々しい。
そして大切な人が死にそうになった時に決死の“テロリズム”に走る。

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施設内の友人や一部の“大人”のサポートを得つつ、
兄も弟も一人で立ち上がって行動を起こしているところに注意したい。
つるんでないのだ。

仲間を信用してないわけではなく、
むしろ仲間を大切に思っている、
だからこそつるまない。
自分の問題で立ち上がったわけだから巻き添えを食わせたくなかったりかもしれないが、
そもそも団結して云々という発想はなかった。
あくまでも自分自身のための闘いだからだ。

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まずは兄が弟を気遣ってリードして激昂した勢いで“傷”を付け、
兄から勇気をもらった弟が後を継ぐように“破壊”する。
文句を垂れながらの二人の兄弟愛もジェラシーを覚えるほどイイ。

米国のアポロ計画で人類が月に行く時代で映画中にそういうネタがちりばめられたところもポイントだ。
ヘヴィな物語の中で風通しを良くしている。
この映画の弟も施設に入ろうが宇宙飛行士への夢がふくらむ一方だったが、
意志がみなぎる中で追い詰められ、
“ある人”が住む天国に近い“月”に飛び立とうとするシーンがクライマックス。
ただファンタジックな要素もちりばめながら漫画みたいな“奇跡”で現実感を薄めることなく、
リアリティのある見せ方をしている。

兄弟にインスパイアされて仲間たちもゆっくりと手を挙げて意思を表すようになっていく。
さりげなく友情を感じさせるラスト・シーンも好きだ。


★映画『きっと、いい日が待っている』
2016年/デンマーク/デンマーク語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/119分/PG12/
原題:Der kommer en dag 英題: The Day Will Come/配給:彩プロ
8月5日(土)より YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
©2016 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa International Sweden AB.
http://www.kittoiihigamatteiru.ayapro.ne.jp/


映画『俺たちポップスター』

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映画監督デビュー作『40歳の童貞男』(2005年)がいきなり大ヒットした、
1967年米国生まれのジャド・アパトー製作による2016年のコメディー映画。
一つのヒップホップ・グループとそのフロントマンの栄枯盛衰+再生の物語を、
ドキュメンタリー映画タッチで作った作品である。
<スタイル・ボーイズ>という架空のトリオ・グループの設定ながら、
“ヒップホップ・アレルギー”の人もまったく問題なく楽しめるし、
そういう人も取り込む開かれた馬鹿パワーがいっぱいの映画である。

<スタイル・ボーイズ>の3人を、
実在のコメディ・トリオの“ザ・ロンリー・アイランド”が演じているところがポイント
(ちなみに3人とも製作と脚本も担当して、そのうち2人は監督も担当)。
これってホントに本人?って疑ってしまうほど大御所多数のゴージャスなカメオ出演陣も話題だ。

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<スタイル・ボーイズ>は幼馴染みの男性3人による世界的に有名なヒップホップ・グループだったが、
<スタイル・ボーイズ>の人気を自分一人が作ったと勘違いしたのか
フロントマンが突然ソロ・デビューして解散。
他のメンバーのうちの音担当の一人は彼の専属DJ(といっても“機材”は1台のiPodのみ)に成り下がり、
作詞担当だったもう一人は引退して農場主となるが、
フロンマンの男性はファースト・アルバムが大ヒットするも前途多難。
彼はフォーマーとしての素養が抜群とはいえ自分大好き傲慢男で、
音作りや作詞も創作力が不明で<スタイル・ボーイズ>のようにはいかずに、
仕掛けに頼ったライヴ・ショウを行なうも小学校低学年みたいなエロ生き恥をステージでさらす。
懲りない馬鹿男に幼馴染の二人はあきれるが、
三つ子の魂百までといった具合にガキの頃にできあがってた性根は直らないことに気づく。

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音楽グループの活動ネタは、
いわば“あるある!”である。

メンバー間がこういう役割分担みたいな関係で創作表現をしているようなグループ、
というかバンドは古今東西いくらでもいそう。
グループやバンドの人気が出ると自分一人が才能あると思ってしまうフロントマンも多そうだ。
結局どの世界でも目立ちたがり屋で要領がいい人間がしあわせになって、
踏み台になった人間たちは落ちるだけなのが事実みたいなこともほのめかしかかるが、
しあわせに見える人間も謙虚さに欠けるとブレイクをキープできないことも示す。

一種の友情物語で、
思い切りふざけ続けていても結局は真面目に楽しく終わるところが
自由奔放なようで伝統を踏まえて安泰なアメリカ映画の王道と言える。

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ユーモアとペーソスが乱交する躁状態の映画であることに変わりはない。
アパトーが監督もした2015年の“前作”映画の、
『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』みたいに、
お下劣露悪趣味がダラダラ続くというのはない。
というかその反動のように、
エロネタ含みとはいえわざとらしい見せ方はない。

セリフの言葉も下品すぎずに何より展開も含めてナチュラルだから映画の中に入っていけるし、
お馬鹿ネタもスピード感を損ねない程度に抑えている。
主人公のフロントマンみたいに放蕩の限りを尽くしている映画のイメージのようで、
メイン登場人物の他の二人の生活姿勢と共振してむ映画自体も意外とストイック。
身内楽しければいいみたいな無駄なシーンを削ぎ落せるかが映画も濃度を高める大切なところで、
この映画は馬鹿馬鹿しいシーンの連続のようで肝を絞ってビシッ!とハジけていて引き込まれる。

相変わらずの過剰なまでのおもてなしtoo muchサービス精神やりすぎの映画ながら、
監督が違うというのもあるのだろう映画全体のシマリが良くて、
何しろテンポがいい。
いつも言うように、
ためになること言ったり感動させようとしたりしてもリズムに欠ける映画は
頭デッカチでウソを感じてしまう。
この映画は頭は脳天気かもしれんが、
裏表を隠さないハートと躍動を止めないカラダのプリミティヴなハーモニーに持っていかれる。

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ちなみにカメオ出演の人たちは以下のとおりだ。
マライア・キャリー、リンゴ・スター、NAS、アッシャー、50セント、シール、RZA、クエストラヴ、
キャリー・アンダーウッド、サイモン・コーウェル、アダム・レヴィーン、エリック・アンドレ、
ピンク、ビッグボーイ、DJキャレド、エイサップ・ロッキー、ケヴィン・ニーロン、マリオ・ロペス、
ウィル・アーネット、チェルシー・ペレッティ、マイク・バービグリア、アシュリー・ムーア、
ビル・ヘイダー、デンジャー・マウス、T.I.、ファレル・ウィリアムス、ジミー・ファロン、ザ・ルーツ、
ウィン・バトラー、レジーヌ・シャサーニュ、スティーヴ・ヒギンズ、マーティン・シーン、エイコン、
ウィル・フォーテ、スヌープ・ドッグ、マイケル・ボルトン、イモージェン・プーツ、クリス・レッド、
エドガー・ブラックモン、ジェームズ・バックリー、エマ・ストーン、ジャスティン・ティンバーレイク。

カメオ出演はほとんどが“本人役”で、
音楽ドキュメンタリー映画の王道(が陳腐だと皮肉っているように見えるのは深読み?)みたいに、
<スタイル・ボーイズ>を称賛するようなコメンテイターとして登場する人が多い。
必ずしも数秒ちょっとだけ顔を出す程度に留まっているわけではなく、
マライア・キャリーなんてかなり長時間出演していてオチャメなやり取りをしているのであった。


★映画『俺たちポップスター』
86分/2016年/米国
8/5(土)より、新宿シネマカリテ他にて全国順次ロードショー。
© 2016 UNIVERSAL STUDIOS
http://popstarmovie.jp


映画『心が叫びたがってるんだ。』

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一昨年に劇場公開された同名の劇場版オリジナル・アニメの実写映画版。
アニメとはまた違った感じで楽しめるだろうし、
アニメの方を観てなくてもまったく問題なく楽しめる。
みんなで力を合わせて!という高校生物語ではあるが、
青春映画を超えてインスパイアされる作品だ。

中島健人(注:今回このブログでは画像をアップできなかったので写真はHP参照)と芳根京子を核に
石井杏奈と寛一郎が絡んで高校生を演じ、
大塚寧々が芳根の母親役で荒川良々が教師役を務めている。

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成瀬順(芳根京子)、坂上拓実(中島健人)、仁藤菜月(石井杏奈)、田崎大樹(寛一郎)は
高校三年生で担任の教師から、
「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命されてクラスの出し物がミュージカルになる。

成瀬は幼い頃に自分の一言で両親が離婚してしまったトラウマで言葉を発せられなくなっていた。
無理やり声を出そうとすると腹が痛くなる状態だったが、
歌なら思いを告げやすいとインスパイアされ、
主役に立候補して物語も考えて作詞もすることになる。
そんな成瀬に触発されて坂上は、
元々教育も受けていた音楽の素養を活かしてベートーベンの曲などをアレンジ。
チアリーダー部の仁藤は優等生らしくみんなの潤滑油となり、
野球部の元エースの田崎は傲慢な性格を正しながら協力的になっていく。

水面下では切ない“三角関係”がひそやかに揺らめいていく。
特に成瀬は恋に突き動かされて歌える自信もついてくる。
そしてミュージカル当日を迎える。

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成瀬がなかなか声を発せられないだけにスマートフォンも大切なツールになっている映画ではあるが、
声に出して気持を伝えることの大切さをあらためて知る。

うわべだけの言葉はあっちいけ!って感じで置いておいて、
目の前の一人に思いを伝えるにはエネルギーが要る。
深い深い必死の思いであればあるほどむずかしい。
人によって違いはあるだろうが、
不平不満の文句の類や悪口をぶつける方がまだたやすい。
目の前の一人に心からにポジティヴなことを言うのはもっとエネルギーが要る。
特に覚悟を決めた「好き」を言うのはとてつもなく膨大なエネルギーが要る。

でも何か重い経験をした者は口が重くなってしまう。
自己愛の強い人や想像力に欠ける人は相手のことなんか知ったこっちゃないから置いておいて、
一人に発した一言で何人かの人生をネガティヴな方向に変えてしまう言葉の重みを知ると、
調子のいい言葉は出てこなくなるものだ。

順

成瀬は両親の離婚が自分のせいであると一心に思い込んで言葉が出なくなった。
ひとたび自分が口を開けば他人を傷つけてしまうと思い込んでしまったかのようだ。
自分が見たもの思ったことをすぐ口に出してしまう包み隠さないオシャベリな女の子だったがゆえに
その反動で真逆の性格になってしまった。

事実をそのまま言ったことで人間関係を破滅に導いた。
気を使ってその人のためと思ってかけた言葉が相手の逆鱗に触れて心無い言葉を返されて深手を負う。
そんなことを幼少の頃に経験した成瀬。
でもやっぱり正直に言葉に出すことの大切さ、
何より好きと言葉に出して言うことの大切さを、
逆流する感情の中で自分の言霊に焼きつけていく。
おのれを乗り超える過程の彼女のエネルギーに圧倒される。

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必死の思いで声を発する者のパワーをあらためて知る。
もちろんポップな歌も一生懸命なら素敵だが、
ジャンル関係なく音楽も、
やっぱりギリギリのところから発した声はメロディもリズムも超えて五線譜も突き抜けて心を打ち撃つ。

そういう声がこの映画の成瀬の声で、
見ようによっては脂汗にも見えるほど涙でグチャグチャになった顔も見せながら必死で声を出す。
感情がゆっくり加速する成瀬役の芳根京子の熱演には身震いもした。
終始まさに“心が叫びたがっている”顔である。
と同時に終盤で本音を吐きまくるシーンには笑った。
他の出演者も好演で彼女を盛り立てる。
成瀬と一緒に住み続けている母親役の大塚寧々も、
サディスティックなまでの娘への無理解な演技で映画を盛り上げる。

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映画のカギを握る卵などのちょっとした“アイテム”の使い方も上手い。
埼玉県の北西部の秩父市と横瀬町でのロケもいい感じだし、
終盤のミュージカルのシーンは“ミュージカル映画”としても楽しめる。
クラムボンのミトらが担当した音楽もぴったりだ。

ストーリー自体も後半は“こうきたか・・・”とひねりの効いた展開でうならされたが、
最近の日本映画には珍しく感動の尾を引かせずに終わる潔いラスト・シーンもお見事。
でもエンドロールの途中で席を立ってはいけない。
最後の最後に用意された“オチ”にもヤられた。


★映画『心が叫びたがってるんだ。』
119分/配給:アニプレックス
(C)2017映画「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会 (C)超平和バスターズ
7月22日(土)全国ロードショー
http://kokosake-movie.jp/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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