なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SUBVERSIVE RITE『The Demos』

SUBVERSIVE RITE


女性ヴォーカルを擁するニューヨーク州ブルックリン拠点のハードコア・パンク・バンドが、
昨年8月に録音して2本のカセットで発表した全9曲をまとめたレコード。

シルクスクリーンで作られたジャケットの画は
GASTUNKのデビューEPの裏ジャケットとSACRILEGEのファーストの表ジャケットのミックス風だが、
中身は“80~82年のDISCHARGE meets 極初期のSACRILEGE”といった趣だ。
曲はいい意味でよく練られていて、
デモ音源ながらアナログな質感を活かした音作りもバッチリでバランスもよく、
若干メタリックなギター・フレーズを弾き出しても音がつぶれている。
デモ録音ということもあってかヴォーカルにはそれほど必死感がないが、
COMESとDIRTとVICE SQUADとSACRILEGEをブレンドしたみたいな突き抜け方が心地よい。
“Subvert your Religion/Subvert your laws”といったフレーズが象徴するような、
簡潔にポイントを押さえた歌詞も好きだ。

往年のニューヨークのバンドであるKRAUTのTシャツをドラマーが着るセンスに表れているように、
パンク・ロックのハジけた感覚も十分なビート感も捨てがたい一枚。


★SUBVERSIVE RITE『The Demos』(BLOODY MASTER BMR003)LP
丁寧な作りの歌詞カード封入。


SACRIFICIO『Pulidores De Tumbas』

SACRIFICIO.jpg


2010年代の前半から活動しているメキシコのハードコア・パンク・バンドのファースト・アルバム。
同名のブラック・メタル・バンドがスペインに存在するので注意していただきたい。

アンダーグラウンドのラテン・パンクからイメージできるガビガビな音とは一味違い、
曲の展開もアレンジもよく練られていて、
80年代後半の日本のハードコア・パンクを思い出すキャッチーなツボの連発だ。
もちろんヴォーカルが前面に出すぎず、
飼い慣らされない野放図な音でラテン・ハードコアの熱情が炸裂。
世界中のハードコア・パンクをグツグツごった煮して粒の立った陽気な音がポンポン!ハジけている。

曲名から察するに歌詞はスペイン語と思われるし歌詞カードも付いてないから意味はわからないが、
ジャケットとこの音だけですべてを物語る。
レコード化するまでの過程のどこかの段階で失敗しているバンドが多い中、
レコードの特性を活かした彫りの深い音の仕上がりも素ン晴らしい。
聴き応えありありだ。

INSERVIBLESのメンバーが手がけたジャケットも強力でボール紙の手触りも味があり、
SACRIFICIOのメンバーらしき3人が馬に乗っかったインナーシートの謎のアー写も渋い一枚。


★SACRIFICIO『Pulidores De Tumbas』(SPHC SPHC-86)LP
14曲入り。


MUNICIPAL WASTE『Slime And Punishment』

MUNICIPAL WASTE『Slime and Punishment』


2000年代の頭から活動している米国東部リッチモンド出身のメタル/バンク・クロスオーヴァー・バンド、
“ミュニシパル・ウェイスト”の6作目。

『The Fatal Feast』以来の約5年ぶりのリリースだが、
その間にメンバーのうち2人は、
2010年代に入ってから結成されたIRON REAGANの方でアルバム3作を出している。
トニー・フォレスタはどちらもヴォーカルで、
フィル・ホール(ランドフィル)はIRON REAGANではギターだがMUNICIPAL WASTEだとベースを弾く。
本作のレコーディングは、
IRON REAGANの録音技師としても活躍しているそのフィルが行なった。


“余計な事”をしない潔いバンドだから今回も間違いなしだ。
実はギターが2本になった初の作品だが、
アルバム全体の中の心憎い位置に突っ込んであるインスト・ナンバーをはじめとして
簡潔にハーモニーも挿入するツイン・ギターが活きている。
楽器構成もIRON REAGANと同じになったわけだが、
もちろん演奏者とソングライターが違えば内容も違ってくる。
歌詞も含めてIRON REAGANが素朴なフラストレイション炸裂だとしたら、
MUNICIPAL WASTEはサウンドも含めて
さりげなくプリミティヴなインテリジェンスも感じさせる。

確かにクロスオーヴァーと言われてきたパンクとメタルの混血音楽スタイルだが、
米国のS.O.D.などのへヴィ・メタル・サイドからパンクにアプローチしたバンドとは一味違う。
もっと微妙にゆるいのだ。
スラッシーでエッジの効いた音だから、
MOTORHEADタイプのいわゆるメタル・パンクとも違う。
プラケースを包んであったビニールに貼ってあるステッカーに
“FROM THE SPEED METAL PUNKS!”と書かれているように、
“スピード・メタル・パンク”という言葉がピッタリだ。

2003年のファースト・アルバムを
CAPITALIST CASUALTIESのメンバーらによるレーベルから出したことに表れているように、
もともとハードコア・パンクのシーンから出てきたバンドだから、
パンク・ロックの流れをくむ音の抜けの良さが気持ちいい。
パンク・ロック・テイストは、
デイヴ・ウィッテ(元DISCORDANCE AXIS~BURNT BY THE SUN)のドラムによるところも大だ。
IRON REAGANのドラマー(元DARKEST HOUR)のビートも適度に軽妙でメタルすぎないが、
風通しが良くて適度に乾いたデイヴのビートは今回も実にいい味を出している。

80年代の米国のバンドだとCRYPTIC SLAUGHTERにも近いが、
ちょいメタルがかった80年代後半の英国のハードコア・パンク・バンド・・・
たとえばHERESYやRIPCORD、CONCRETE SOXあたりもところどころで思い出す。
ちょいギターが遊んでコーラスを多用するキャッチーな曲の構成は、
80年代後半のスラッシーな日本のハードコア・パンク・バンドっぽかったりもする。

ウソ臭い気合マンマンものはただ疲れるだけだが、
気持ちいいツボを心得た曲作りと音作りでビシッ!と仕上げ、
こういう曲が14曲続いても聴いていて疲れないセルフ・プロデュースもお見事。
ちょい高い声域のヴォーカルも押しつけがましくなくていい。
『Cause For Alarm』(86年)や『Liberty And Justice For...』(87年)といった
クロスオーヴァーな名盤も出してきた、
AGNOSTIC FRONTのリーダーのヴィニー・スティグマがヴォーカルで1曲に参加しているのも、
ちょっとした話題である。

ブックレット裏表紙のメンバー写真が示すようにビールが美味いアルバムであることも言うまでもない。
これまた最近のへヴィ・ローテーションだ。


★MUNICIPAL WASTE『Slime And Punishment』(NUCLEAR BLAST 3233-2)CD
12ページのブックレット封入。


STUPID BABIES GO MAD『LONG VACATION』

STUPID BABYS GO MAD『LONG VACATION』


静岡県拠点の“ハイ・スピード・パンク・ロックンロール・バンド”の4作目。
98年のアルバム・デビュー以来
IDORAなどとのsplit盤を含めてEP等も多数出してきたが、
アルバムとしては約11年ぶりのリリースになる。


『Ace Of Spades』『Iron Fist』の頃のMOTORHEAD
『Machine Gun Etiquette』の頃のDAMNED
『Hear Nothing See Nothing Say Nothing』の頃のDISCHARGEを、
ファーストのタイトルの『Speed, Thrill, Stupid!』といった感覚で混ぜたようなサウンドは健在だ。
むろん初期の肝だった伝統的なジャバニーズ・ハードコア直系の荒くれ感はさすがにないが、
今回もBorisのアツオがレコーディングに関わり、
録音とミックスをして微妙に凝った仕上がりになっている。

まずモノラル・ミックスで仕上げられているところが特筆すべきところで、
小技を効かせるベースと休み無しのドラムがグルーヴの塊になって特に真ん中からガンガン攻めてくる。
うなりを上げるエレクトリック・ギターが芯の太い電撃音であることに変わりはなく、
ブルースを感じさせつつも土臭くなくて硝煙と金属の匂いを噴き上がらせ、
鼓膜を殺る音域を狙って作ったかの如く相変わらず“耳痛”必至である。
ささくれだっているようでクールな音作りが施されてrawというより研いだ感じの響きで、
“軋みの雑音”が幻聴みたいな調子で漏れ聞こえてくるのもポイントだ。

ほとんどの曲がツー・ビートで爆走するが、
一ひねりしてもう一展開する曲作りも光り、
アルバム全体がドラマッチックな流れになっている。
ヴォーカルとギターが切なく“泣き”の感覚のメロディを滲ませ、
コーラス・ワークもバッチリで、
“殺伐としたメロディック・ハードコア・パンク”とも言えるほどだ。

繊細な声のヴォーカルは意外とシャウトが多くなく、
曲に言葉を切々と置いていくような胸に迫る独白調の歌い方が耳に残り、
こういうサウンド・スタイルにはあまりないタイプだ。
必ずしもヴォーカルを前面に出したバランスには仕上げられていないが、
歌詞の日本語はわりと聞き取れる。
収録曲のほとんどが“おまえ”に対する歌で、
ラヴソングにも聞こえるし、
“ファック・ユー!”ソングにも聞こえる。
ヴォーカルがずっと生々しくなっているのが嬉しい。

“歌”を感じる一枚。


★STUPID BABIES GO MAD『LONG VACATION』(Diwphalanx PX-319)CD
凝った紙質の12ページのブックレットが封入された約30分10曲入り。


木端微塵『ピンクの10月ウサギ 1991』

木端微塵『ピンクの10月ウサギ 1991』


脳不安(81年4月~82年1月)とFOMO=FAVEL(82年8月~83年2月)の
ベーシストとヴォーカリストらが結成し、
91年の5月から93年の1月まで活動した北海道・釧路のバンドの3曲入りのレコード。
裏ジャケットには“92年~”とクレジットされているが、
91年9月8日レコーディングとのことである。


“91年のポスト・パンク”と言いたくなる趣きだ。
ポスト・パンクと言ってもよくあるダークなやつじゃなく、
オルタナティヴ・ロック全盛の時代の突然変異で生まれたポップなサウンドである。
全曲ベースがぐいぐいリードし、
平均年齢24才とは思えないほど初々しい。

1曲目の「ブルガリアンボイスが聞こえる」はALLERGYがもっとポップになったかのようで、
後期BIG BOYSがニューウェイヴ化したみたいにも聞こえる。
2曲目の「くるくる」はところによってスカっぽいリズムも漏れてくるソリッド&タイトな音で、
初期あぶらだこっぽいコーラスもひっくるめてヘンテコぶりが楽しい“ポップ・パンク・ロック”である。
3曲目の「ピンクの10月うさぎ」は、
LAUGHIN’ NOSEの80年代半ばのメロウな曲を思い出す旋律ながら妙に躁状態のリズミカルなサウンドだ。

歌詞は曲名どおりの不思議な世界で、
妄想幻聴ワールドに聞こえる。
まさに日本語ポスト・パンクである。

硬めの紙を使ったていねいなジャケットの作りも、
ポップだろうがゴツゴツした質感の音も、
“インディーズ”というよりは正真正銘自主制作盤の匂いの一枚。


★木端微塵『ピンクの10月ウサギ 1991』(No Label PINK-001)7”EP
当時の告知ポスターに見立てたシリアル・ナンバー入りのA4サイズのミニ・ポスター封入。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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