なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLOODCLOT『Up In Arms』

BLOODCLOT『Up In Arms』


CRO-MAGSのジョン・ジョゼフ(vo)が始めた米国のハードコア・パンク・バンドで、
元MURPHY’S LAW~DANZIGのトッド・ユース(g)、
元KYUSS~QUEENS OF THE STONE AGEのニック・オリヴェリ(b)、
元DANZIG~QUEENS OF THE STONE AGEのジョーイ・カスティロ(ds)
と組んで録音したセカンドである。


意外な取り合わせのメンバーにも思えるが、
リズム隊の二人は新生BL'AST!のメンバーでもあるようだしバッチリとハマっている。
ほとんどの曲がジョンとトッドとジョーイの共作だが、
ニックはブンブンうなるベースの音で貢献。
ファーストの頃からCRO-MAGSで断続的に叩きつつ
BAD BRAINSの『Quickness』(89年)でドラマーを務めたことでも知られるマッキー、
元LEEWAYでジョンとBOTH WORLDSもやっていたA.J. ノヴェロ、
MONSTER MAGNETのフィル・カイヴァーノも、
一曲ずつソングライティングに参加している。

プロデューサーとエンジニアを務めたのはゼウス。
HATEBREEDSHADOWS FALLなどの2000年代以降のメタル/ハードコア系作品を
多数手がけてきた人だが、
本作はメタル度ゼロである。
ストレートなハードコア・パンクで、
王道とも言えそうなスタイルなのに抜けが良くへヴィなサウンドでえらく新鮮だ。
ファースト・アルバム『Age Of Quarrel』(86年)までのCRO-MAGSに
ラスタに染まる直前の82年頃のBAD BRAINSのグルーヴ感が加わり、
初期UKハードコアや伝統的な日本のハードコア・パンクも入り込んだような曲である。
初期のCRO-MAGS以上に速い。

ツボを心得たプレイにうならされる。
やっぱり演奏者一人一人の音そのものに個性があるバンドは強いし、
タイト&タフな音そのものでぐいぐい押してぐいぐい引っ張っていくのだ。
曲がシンプルでも演奏にクセがあるから味わい深く飽きさせない。


ジョンはソウルフルなヴォーカルでちゃんと歌えるシンガーでもあるが、
そういう人がシャウトをすると強靭だし声がよく通る。
とにかく元気だ。
歌詞は世界中を見据えたリアリスティックなモチーフがほとんどだ。
ミッド・テンポのパンク・ロック・チューンの「Siva / Rudra」は
ジョンならではのスピリチュアルな曲名だが、
やはり彼ならではの世界認識を綴り叩きつけている。
どの曲もアルバム・タイトルどおりに憤慨に突き動かされて書かれたような歌詞で埋め尽くされている。
ファッションでも理想郷でもなく現実としてアナーキーな無政府状態のソマリアで、
今月14日に起きた500人以上が死傷の“爆殺”もイメージさせる。
だがそんなネガティヴを突き抜けるべくリアル・ポジティヴなパワーが走る。

仏作って魂入れず、な作品は最近ますます耐えがたくなっている。
そんな中でさすがの会心作だ。
気合十分。


★BLOODCLOT『Up In Arms』(METAL BLADE 3194-15495-2)CD
12ページのブックレット封入の約30分12曲入り。


piggies『LONG VACATION』

Piggies『LONG VACATION』


96年から2001年まで活動していた神戸拠点の
“パワー・ギター・ポップ・パンク・バンド”の復活CD。
念のため女性トリオのThe Peggiesとは別バンドである。

ギタリスト2人が男性でリズム隊が女性というメンバーは嬉しいことに変わらず。
ついでに言えば録音エンジニアも2000年の唯一のアルバム『Piggies』と同じ約14分5曲入りだ。


パワー・ポップともギター・ポップともパンク・ロックとも言いかねるし、
その全部みたいなもんだから、
“パワー・ギター・ポップ・パンク”とでも言いたくなるサウンドである。

時代的に影響を受けていても不思議はないGREEN DAY以降のサウンドではなく、
しいて言えばRAMONES寄りだが、
直系の“RAMONEパンク”とは一線を画す。
いやそれだったら絶叫抜きだけどMUFFSが近いかも。
でもやっぱり「Piggies」という曲もやっているBEATLESの匂いがほのかに香る。
60年代のポップスを思いっ切り吸い込んでいて、
キャッチーでも安っぽくないソングライティングが美味しい。

4人のメンバー全員がヴォーカルをとるが、
曲によってリード・ヴォーカルをシェアする女性と男性のハーモニーもこれまたイイ感じ。
英語で書いていると思しき歌詞も無理がない。

適度にタイトで、
やわらかい音の仕上がりもナチュラルなポップ感が際立ってナイス。
わざとらしくrawを気取った音作りとは真逆のすっぴんの魅力いっぱいだ。
特にドラムは微妙&絶妙のパワーのテイストとリズム感で惚れ惚れする。
噛めば噛むほどみたいに、
ほんと聴けば聴くほど味が出るサウンドなのだ。

ヴィーガンや動物愛護の人間も含めて豚は蔑みの対象にされがちだが、
だからこそキュートなアートワークも愛すべき一枚。


★piggies『LONG VACATION』(KOGA KOCA-94)CD


CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』

CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』


2014年から米国テキサス拠点に活動しているグラインド・コア・バンドのファースト・アルバム。

元WARMASTER~ Türbokriegのベン(g)、
元INSECT WARFARE~Türbokriegのフランク(ds)、
元WARMASTERのスティーヴン(vo)らによるツイン・ギター体制の5人編成で作られている。
映画と同じく、
ルーズなロックンロールも含めて音楽もいかに贅肉を削ぎ落すかが濃度と強度の決め手になるが、
研ぎ澄まされたエナジーを17分に凝縮していて覚醒される凄まじい作品だ。

『From Enslavement To Obliteration』と『Mentally Murdered』の間のNAPALM DEATH
80年代のTERRORIZER
後期ASSUCK、
京都のMORTALIZED
そしてもちろんINSECT WARFAREをブレンドしたような、
伝統的で最新型のグラインドコアである。

デス・ヴォイスも含めてリズムのメリハリ十分だ。
適度にメタリックなリフやテンポ・チェンジを織り込みつつ一切の弛緩がなく、
息をつく間も与えない。
みっちり音を詰め込んで圧迫感のある押しつけがましい音の仕上がりとは一線を画し、
濃密でありながら風通しのいい音作りがあまりに見事である。
中途半端なノイズを売りにしたりノイズでごまかしたりもせず、
ストロング・スタイルで真っ向勝負。
ざらついていて、
しかもシャープこの上ない。
意識の表れのようにアメリカンらしくカラッと突き抜けた音に胸がすく。

ノスタルジックな“9.11”もヘッタクレもない。
メジャーな政治的トピックに埋もれたこれが今の世界中のあちこちの現実!とばかりに叩きつける。
目の覚める強力盤。


★CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』(RSR 169)CD
約17分15曲(CDの表示上では12トラック)入り。


LOS MALDITOS GATOS DE LIMA『Robocats』

LOS MALDITOS GATOS DE LIMA『Robacats』


女性ヴォーカルを擁したペルーのポップ“raw”パンク・ロック・バンドの
2003~2007年の音源をまとめた22曲入りのカセット・テープ。

RAMONES直系の曲が多いというか、
そのリメイクみたいな曲が多い。
「Rockaway Beach」の替え歌もあるし、
「Gata Gata Hey」や「Surfin Cat」なんて曲もある。
他にもSTOOGESの「I Wanna Be Tour Dog」の替え歌みたいな曲、
DEVOの「Mongoloid」を替え歌にしたような曲、
バットマンのテーマ曲をリメイクしたような曲などなど、
あちこちからあからさまに一部分をパクりまくっているが、
その取り込み方が潔くて痛快だ。
開き直りを超えて針が振り切れた躊躇無しのピュアな表現の生々しさに胸がすく。

愛嬌ありありで飛びまくりの憎めない女性ヴォーカルも絶好調だし、
男性ヴォーカルがリードするミニマルなパンク・ロックも、
ハードコア・パンクのスピードの曲も絶好調だ。
演奏もリズム・センス抜群だし、
あなどれないどころか美味しすぎる。
天然の油で揚げたみたいにカラッとした音の感触も美味しすぎる。

なんたってハジけている。
ネットでオベンキョーした特定のパンク様式にお手本に沿って完成度だけは高いバンドに欠けている、
“生”の熱気と臭気がむんむん。
情報不足の時代に生まれた80年代の日本のパンク・バンドみたいな勘違いと誤解の面白さにあふれている。

歌詞はほとんどがスペイン語と思われるから僕にはすぐ意味を知ることはできないが、
「Money Is All I Need」という英語のタイトルが正直でリアルだし、
ドイツ語のタイトルの「Ich Bin Punk Und Das Ist Mein Lied(私はパンクでこれは私の歌/曲です)」
も面白い。

まさにこれぞパンク!のサウンドなのだが、
パンクやロックや音楽云々以前に表現として大切なことを思い知らされる素敵な作品だ。


★LOS MALDITOS GATOS DE LIMA『Robocats』(ROCK SVB DISCOS 015)cassette
カセット本体もパッケージもしっかり作られたプロコピー仕様で、
大切に扱いたくなる12ページのブックレット付。


捕虜収容所『GREAT COCK HITS VOLUME 2』

捕虜収容所


放送作家として知られる鮫肌文殊(vo)が率いるバンドの24年ぶりのセカンド・アルバム。

80年代半ばまでのCOBRAを思い出すハードコア・パンク寄りのキャッチーな和製Oi!パンクだ。
CDを収めるトレイの部分のアートワークも
COBRAの85年のファースト・アルバム『Stand The Pressure』のジャケットを思わせ、
微笑ましいほど正直なバンドである。

とはいえ色々とネタを仕込んでいるアルバムだ。、
たとえばEXPLOITEDの「Fuck A Mod」が元ネタみたいな曲あり、
“4 SKINS meets 三上寛”な曲あり、
曲名だけADICTSの「Viva La Revolution」な曲あり。
吉田拓郎の「人間なんて」と同じタイトルの曲が象徴するように日本の70年代のフォークの匂いも漂う。

「第二次性徴期のうた2017」「犯されたら哭けばいい」「チン毛にシラッガー」
「生理中の彼女が握ったオニギリが喰えない」「宗右衛門町で逢いましょう」「人間なんて」
「VIVA LA EVOLUTION」「レッツゴーホスピタル」「がんばれハクホウ」「アイアンメイデン」
「イタリア」「女はみんなワキ毛を剃れ! 2017」「I BELIEVE IN SAKE 2017」「チンコマンコ音頭」
といった曲名からイメージできる世界観に覆われている。
音には毒気がないが、
歌詞の数々は露悪趣味にも聞こえ、
ヴォーカルが前面に出たシニカル&ナンセンスな日本語ロックとして楽しめる。

米国東部のスラッシュ・メタル・バンドのOVERKILLがカナダのSUBHUMANSをカヴァーした
EP『!!!Fuck You!!!』(87年)のジャケットの生々しい指使いには及ばないものの、
漫画ちっくながら中指立てるよりもハレンチな“睾丸”無恥ジャケットも、
なかなか天晴な一枚。


★捕虜収容所『GREAT COCK HITS VOLUME 2』(鮫肌 SAMEHADA-001)CD
12ページのブックレット封入のデジパック仕様14曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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