なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SPIKE SHOES『Spectriddim』

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93年から仙台拠点に活動を続ける5人組のパンク・バンドが
自分たちのレーベルから約3年ぶりに出した5作目のアルバム。

“SDC(Sendai City)ハイブリッドHCサウンド・システム”、
“ラガ・スラッシュ・イン・ユア・フェイス”、
“パンク・ハードコア・ダブ・ロック”と自称しているフレーズがピッタリのサウンドだ。
2人のギタリストを擁する編成を強みにし、
ハードコア・パンクを基本にしつつ今回はさらにどこまでも広がっていく多彩な曲で攻める。


どの曲も“王道”から外れた混血ハイブリッド感覚に胸がすく。
気合の入ったメロディック・ハードコア・パンク(notメロコア)で勢い止まらずに走る曲でも、
くねるリズムとグルーヴ込みで持っていかれる。
ハードコア・パンク+レゲエwithファンクやドゥーム・ロック/スラッジコア+ダブといった曲でも、
2分ちょいの曲の中に数曲分のアイデアを詰め込み・・・いや溶かしこんでいる。
1曲の中で“場面転換”するにしても奇をてらったふうに聞こえず、
わざとらしくも取って付けたサウンドではない。
ギターのメロディの浮かび上がらせ方iにも嫌味がない。

色々なジャンルを混ぜてはいるが、
“つぎはぎ感”がないのは加速度をキープするドラムをはじめとして音楽センスも大きいが、
何より気持ちにブレがなく地に足が着いているからである。
あざとさを感じないし器用貧乏に陥ってないし
すべてが天然ナチュラル・ブレンドだ。


甲高い声も濁声も“ラガマフィン歌唱”も意識の流れのように放つヴォーカルも自然体だし、
ありのままだ。
日本語と英語を組み合わせた歌詞は曲によってどちらかの言語オンリーになるが、
日本語の比重が高いとはいえ多かれ少なかれ日本で暮らす人は日常生活で自然と両方使っているではないか。

歌詞の視野も広い。
オープニング・ナンバー「SLAM DOWN YOUR GABEL」の“マジョリティのクズとマイノリティのカス”と、
澄みわたったまったり歌もの日本語エモーショナル・パンク・ロック!(not EMO)のラスト・ナンバー「AWAKE」の
“俺は俺の朝を始めたい”というフレーズが特に好きだ。
こういった言葉が躍動の音とまぐわって命のグルーヴを生み出している。


一秒で場の空気が変わる音像で奥行きのある音の仕上げも特筆したい。
他の楽器に埋もれることなく各パートがしっかり聞こえてくるミックスで、
わざとらしいノイズでごまかすことなく正々堂々と勝負している。


個人的には音楽で楽しむことがますますなくなっている昨今、
このアルバムで久しぶりに音楽で楽しんだ。
気持ちいい刺激ももらえて頭の風通しも良くしてくれる。
約35分10曲入りながらいい意味で長く感じる濃いアルバムであり、
旅をしている気分になるナイス!なパンク・アルバムだ。


★SPIKE SHOES『Spectriddim』(TINY AXE TAXE-0002)CD
歌詞が載った12ページのブックレット封入の三面デジパック仕様。


GEWALTBEREIT『Ein Leben Lang Verreckt』

GEWALTBEREIT『Ein Leben Lang Verreckt』


ドイツのハードコア・パンク・バンドのファースト・アルバム。
エナジーが放射され続ける混沌の音像に飲み込まれていく凄まじいレコードだ。

グレイトなすべての作品に共通するように何かに似ているというのが思いつかない。
一般的なアメリカン・ハードコアみたいなカラッとしたサウンドとは真逆のガビガビの臭気が漂う。
米国を除く80年代初頭の世界中のハードコア・パンク・バンド、
特にラテン系やスカンジナビア半島のバンドの質感に近いが、
空気感としては80年代前半までの英国ブリストル産のDISORDERもイメージした。
“out of control”な切迫感に駆りたてられて何か物が飛んできそうなサウンドなのだ。
細かく分類された特定のパンク/ハードコアのジャンルを“研究”してこしらえた“優等生”じゃなく、
“パンクの五線譜”から、はみだしている。

ぶっこわれた扇風機みたいなドラムを核に加速するプリミティヴ極まりないサウンドの一方で、
勢い一発でもなく西欧や南欧のハードコア・パンク・バンドの流れをくむように、
よく練られていてツボを突く曲展開にも引き寄せられる。
簡潔なギター・ソロがさりげなくメロディアスで、
ミディアム・テンポの曲も渋く、
何しろ曲そのものがカッコいい。

濁声ヴォーカルもポーズ一切無し。
ほとんどの曲がドイツ語で歌われるというのもあって、
英語のスムーズ感とは違うゴツゴツ硬い語感のヴォーカルの響きがまた強烈なのだ。

まさに血湧き肉躍る。
これぞハードコア・パンク。
レコードの特性が活かされた彫りの深い音質も素晴らしすぎる。


★GEWALTBEREIT『Ein Leben Lang Verreckt』(ABFALL A.R.06)LP
味のある紙質のジャケットで二つ折り歌詞カード封入。


SWARRRM/DISGUNDER『Skylab Hurricane』

SWARRRM DISGUNDER


グラインドコアをネクスト・ステップに進める2バンドが2曲ずつ提供した7”レコード。

後期324のギタリストだったシンジ(g)や女性ヴォーカルを含む東京拠点のDISGUNDERは、
グラインドコアというよりは
英国のSACRILEGEが加速したようなハードコア・パンクの突進力の2曲だ。
スラッシュ・パンク(not metal)のスピード感ながら、
“クラスティーなファストコア”とも言いたくなる独特の質感のサウンドで迫る。
時にデス・メタリックでメロディもほのかに浮かび上がらせるギターはソロ演奏もクールだし、
ドラムとベースは緻密なリズムで突っ込んでくる。
デス・ヴォイスは使わずナチュラルな太い声で押す歌詞は英語で、
「UNREASONABLE EXECUTION」も「GHOST SYSTEM」も
ポリティカルなニュアンスを感じさせて興味深い。

神戸出身のSWARRRMはこれまた大胆果敢な挑戦を繰り広げている。
脇道にそれかねない“戒め”として20年前の結成以来自分たちにに課しているブラスト・ビート込みだが、
一筋縄ではいかない。
1曲目の「かりそめ」は“ブラスト・ビートぶちこみのパンク・ロック”で、
カオティックなアレンジの中にキャッチーなギター・ソロが切り込んでくる。
2曲の「首輪しゃぶってな」は日本語がところどころで聞き取れるヴォーカルと哀愁のギターが光り、
うねるベースやドラムと交錯してハーモニーを成す。
ドスの効いた声でタメを効かせた熱い歌唱が際立つ“男泣き”も十分で、
水原弘あたりの昭和歌謡すら思い起こさせるヴォーカルのの驚きの曲だ。


★SWARRRM/DISGUNDER『Skylab Hurricane』(BREAK THE RECORDS BTR-048)7”EP+DLクーポン


V.A.『Till Your Death Vol.3』

『Till Your Death Vol3』


“激情系”とも呼ばれるハードコア以降の音を鳴らす日本のアンダーグラウンドのバンドのオムニバスCD。
全11組が1トラックずつ提供しているが、
バンド名と曲名だけでもイメージが伝わると思われるから以下に記しておく。

●ANCHOR「物語」
●CYBERNE「Thrash -独裁-」
●Dead Pudding「Untended」
●kallaqri「水仙」
●NoLA「You're Useless」
REDSHEER「Reality To Disappear In The Letter Of Unnatural Fog/DistortionsContortions」
●URBAN PREDATOR「THE NORMAL」
●weepray「カルマ」
●wombscape「枯れた蔦の這う頃に」
●明日の叙景「花装束」
●冬蟲夏草「催奇性と道化」

いわゆるメイン・ストリームの“エモ”ではなく、
80年代後半以降のDISCHORD Records、GRAVITY Records、EBULLITION Records周辺の
“アンダーグラウンド・エモ”の流れを感じさせはする。
だがそこから25年進んだ今、
ポスト・ハードコア、ポスト・ロック、カオティック・ハードコア、カオティック・グラインド、
マスロック、ネオ・クラスト、ドゥーム・ロック、ブラック・メタル、プログレなどで
潤って炸裂したサウンドが奏でられて轟く。
力まかせにならず創意工夫で練られ、
どの曲も繊細かつ丁寧に作られている。

美麗メロディが紡がれるバンドも多くて日本の叙情も漂う。
もっと前から音楽活動をしているメンバーによるバンドも含むし、
彼らが触発されているかどうかは別として、
この界隈のシーンへのENVYが及ぼした影響をあらためて思い知らされる。
だがむろんネクスト・ステップに進まん!とするバンドばかりだ。

今回NoLAとREDSHEERが個人的なお気に入りで特に目が覚めるが、
提供しているのが1トラックでも11組すべて個々のバンドの色がよく伝わってくる一枚。
バンドによって質感に多少の違いはあれど音質良好で、
マスタリングもいいのか全体がデリケイトな響きの仕上がりになっているところも特筆したい。


★V.A.『Till Your Death Vol.3』(TILL YOUR DEATH TYDR015)CD
ペーパー・スリーヴ仕様の約52分11トラック入り。
インナーの類いはなく封入されているのはCD盤のみだが、
税抜1111円に抑えられている。


DEAD COPS『Kill The Cops + 13 Tracks』

DEAD COPS『Kill The Cops _ 13 Tracks』


83~84年に活動していた東京拠点のハードコア・パンク・バンドの音源集CDの再発盤。
ライナーを書かせてもらいました。


タツ(g~後にGASTUNK他)、
ロジャー(vo~後にSIC)、
ジャジャ(b~後にLIP CREAM、JUDGEMENT他)、
Redrum(ds)による、
84年リリースの唯一の音盤だったソノシートの曲がメイン。
その4曲は異様な音質も際立っている。

追加された13曲は
解散後に出たカセット・テープ作品『January '84 At Yaneura In Shibuya』の曲。
本編の3曲+音源化されてなかった10曲というセットリストだ。
ライヴ・テイクながらこちらはドラムの音もちゃんと聞こえる音質で、
GASTUNKの原型みたいな曲も聴けるし、
キャッチーな展開をする80年代半ば以降の日本のハードコア・パンクの原型みたいな曲も含み、
色々と発見多数である。


ちなみにライナー封入以外の今回の再発盤は2008年に発売されたものとすべて一緒だ。
厚手の二つ折り紙ジャケット(表裏はソノシート『Kill The Cops』の表裏のスリーヴで、
開いて右側はその歌詞、左側は『January '84 At Yaneura In Shibuya』に付いた英文ライナー)や
帯のデザインが完全に同じで、
カタログ・ナンバーも同じ番号である。
外見上は“2008年版”と“新装版”の違いがわからないから、
店頭のポップの文やサイトの説明文で“新装版”であることを確認していただけるとさいわいだ。


★DEAD COPS『Kill The Cops + 13 Tracks』(SSレコーディングス SS-919)CD


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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