なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BIB『Pop』

BIB POP


以前デモ音源を紹介した米国ネブラスカのハードコア・パンク・バンドが、
昨年末ぐらいに出したと思われる正規デビュー盤と言うべき5曲入りのレコード。
WHITE LUNGも出してきて入手が比較的しやすいカナダのDERANGED Records盤を紹介する。

僕が買ったレコードはA面もB面も残念ながら“傷盤”だったが、
レコード盤に傷が入っていてノイズを発していることにしばらく気がつかないほどの音をブチかます。

ヴォーカルも含めて
80年代のBAD BRAINSがラスタの道に入らずに2010年代にも活動していたら
こうなっていただろうみたいなサウンド。
全部熱く煮立っていて暑苦しい。
「Anxiety」「Psychedelic Paralysis」「Pseudo Punk」「Empty」「P.M.F.」
という怪しい曲名も彼らのサウンドにふさわしい。
「P.M.F.」という曲がBAD BRAINSのアティテュードであるP.M.A.をもじったと思えてならない。

これぞカオティック・ハードコア・パンク。
素晴らしき胸やけ必至である。


★BIB『Pop』(DERANGED DY296)7”EP+DLクーポン
インナーシート封入。

BEYOND DESCRIPTION『The Robotized World』

BEYOND DESCRIPTION『The Robotized World』


近年はメンバーの事情であまりライヴができない状態のようだが、
88年から東京都下のハードコア・パンク・シーンを拠点にマイ・ペースで活動を続けているバンドが、
『An Elegy For Depletion』以来約4年ぶりに発表した新作。
昔は7"EP等で音源を細かく何枚も出していたが、
フル・アルバムとしては5作目に数えられる作品で、
イタリアのレーベルからのリリースだ。


「このアルバムの音楽ジャンルは?」と問われたら僕は迷わず「ハードコア・パンク」と答えるが、
ディスクユニオンのジャンル分けでパンクの方ではなく
“HARD ROCK / HEAVY METAL”のコーナーに置かれているのもちょっとはうなずける。
近年推し進めているクロスオーヴァー(ハードコア・パンク×スラッシュ・メタル)路線を深化させ、
ハードコア・パンク・バンドともスラッシュ・メタル・バンドとも対バンができる作りなのだ。

BEYOND DESCRIPTIONのfacebookでは、
“punk”“hardcore”“metal”といった言葉がほとんど見つからない。
彼ら自身が“punk”“hardcore”“metal”に思い入れが強いからこそあえて使ってないと思われる。
その代わり
“Thrashing crossover from JAPAN”“We're THRASHING since 1988.”というフレーズが躍っており、
それがまたハマっているサウンドだ。

ドライな質感のドラムをはじめとしてアメリカン・クロスオーヴァー勢ともダブる音だが、
S.O.D、サード以降のD.R.I.、CRYPTIC SLAUGHTER、MUNICIPAL WASTEのような、
酔っ払って馬鹿騒ぎ!のライトなノリとは違う。
80年代の日本のメタルコアとも違う。
しいて言えばCONCRETE SOXやSACRILEDGEなどの
80年代の半ばから終盤までのUKハードコア・バンク・シーンのクロスオーヴァーのニュアンスだ。
色々な音楽を好む人たちとはいえ本作のブックレットに載っている写真で、
メンバーがONSLAUGHTやUNSEEN TERRORのTシャツを着ているのも象徴的である。

クロスオーヴァーといっても他で聴けないスタイルだ。
緩急のパートを織り交ぜて楽曲はよく練り上げられていてヴァラエティに富み、
ギターの音使いはストイックでベースも目立ち、
音のエッジを利かせすぎてないところがへヴィ・メタルというよりパンク・ロックである。
いわゆるニューヨーク・ハードコアちっくな気合コーラスや曲のテーマに沿ったSEも適宜挿入。
気持ちが上がって微妙に語尾が上がるヴォーカルはMETALLICAも頭をよぎる歌い方だが、
日本語を嚙み砕くラフな発声はジャパニーズ・ハードコア・パンク以外の何物でもない。
自問自答するように吐く簡潔な歌詞は日本語で歌う伝統的な日本のハードコア・パンク直系で、
世界を見据えた普遍的な視座は90年代も含むS.O.Bも思い出す。

ジャケットがまた“クロスオーヴァー”している。
エド・レプカを彷彿とさせるイラスト……
……と書きながらブックレットのクレジットをチェックすると、
エド・レプカ本人がジャケット画を描いていることが発覚。
ファンタジックなテイストを織り込んだリアリスティックな画で
以降の“メタル/パンク/デス/ハードコア”系のジャケットに大きな影響を与えた人である。
MEGADETHとDEATHのジャケットが有名な画伯だが、
NOFX、S.O.B、MUNICIPAL WASTE、TOXIC HOLOCAUSTも手掛けてきており、
そういうバンドの並びに連なる作風といっても過言ではない一枚。


★BEYOND DESCRIPTION『The Robotized World』(PUNISHMENT 18 P18R 123)CD
歌詞とその英訳も載った8ページのブックレット封入の約27分12曲入り。。


BAD BRAINS『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』(DVD)

BAD BRAINS『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』(DVD)


映画『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』のDVD。

映画自体に関してはこれ以上書くと説明過剰になりそうだからやめておく。
以前このブログに載せた文章は試写会で一回観ただけで書いたものだが、
ただあらためてDVDでじっくり観るとまた発見多々あり。
監督がBAD BRAINSを“弁護”しつつ“容赦”もしていないことが編集ぶりでわかるし、
H.R.の“怪人ぶり”は公開しても問題なさそうな映像を厳選したと思しきこの映画でもわかる。

DVDには映画の予告編映像が追加された。

さらに↑の初回限定生産のボックス仕様版には、
Mサイズの特製Tシャツと、
80年代のUSハードコア・パンク・バンドを出身地ごとに記したアメリカの地図が表で
僕が書いた文章“about BAD BRAINS”などが裏に載った
ポスターが折り込み封入されている。


★BAD BRAINS『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』(キング KIBF-91478)DVD
↑のカタログ・ナンバーは初回限定生産のボックス仕様版のもの。

forget me not、REDSHEER、kmkms、WHAT EVER FILM『Confidence』(4way split作品)

REDSHEER収録4way split


愛媛のレーベルから出た2枚組7”レコードとCDのパッケージ作品。
カオティック・ハードコア/マスコアのネクスト・レベルの激情エナジーをはらむ日本の4つのバンドが
1曲ずつ提供し、
収録曲は同じながら実際に聴く時の曲調の流れを考慮したのか
レコードとCDでは曲順が異なっている。


レコードの方の曲順で紹介する。
まず共に7分近い曲ゆえの物理的な関係で33回転盤になっていると思しきA/B面のレコードから。
リリース・レーベル主宰者も在籍するforget me notは
じっくりと曲を進めつつ反復込みの一ひねり二ひねりある展開で、
米国のFRODUSの99年の来日公演を思い出すソリッド&パーカッシヴな音に打たれた。
オルタナティヴ・ロックというより無意識のうちに“ハードコアの次”を試みているような曲である。
抒情の調べも滲むサウンド同様に内面を切り開いてくような日本語の歌詞やヴォーカルも含めて、
まさに“生”の表現だ。

東京拠点のREDSHEERは、
ドラムか何か別のパーカッションにも聞こえる“打楽器”のオープニングがまず静かなる衝撃である。
まもなく当然炸裂してタイトなドラムとファットなベースが交錯する中で、
戦闘的なメタル・リフを研ぎ澄まされた音で叩きつけつつ
ノイジーでもありながら誤解を恐れずに言えばエロティックなメロディを弾き出すギターがリード。
ヴォーカルをはじめとして錯綜しながら展開するもエンディングがまたREDSHEER流儀だ。


C/D面の方は物理的に収録時間に余裕があって音質重視のためか45回転のレコードである。
愛知のkmkmsはヘヴィな音の切り込みと叩きつけで肉体を打ってきて、
ツイン・ギター編成を活かした厚みのある強靭な音のアタック感が心の“みぞおち”に響く。
リアルな情景が広がる言葉を解き放っていくヴォーカルも印象的で、
しばらく続く語りから一瞬のシャウトへと至るまでの張り詰めた空気感がたまらない。
ユニゾンと“ズレ”をギリギリで組み合わせてじっくり聞かせる演奏陣のリズム・センスも特筆ものだ。

そしてレコードだと“トリ”を飾る山形のWHAT EVER FILMは善悪の心の推移みたいな曲の流れで、
ヘヴィにうねりつつも歯切れ良くてポップな切れ味の鋭利なサウンドで目を覚まさせる。
エイト・ビートで疾走するパートもひっくるめて、
“ポスト・ハードコア・パンク・ロック”とも言いたくなる胸のすく曲だ。
渦を巻く音と拮抗する深手のヴォーカルが叩き込む言葉も、
“偽善と正義”の現実を投射していて胸に迫るのであった。


ほんと、どのバンドも1曲で一つの張り詰めた作品として完結させていて聴きごたえ十二分。
だから一曲終わるごとにレコードを引っ繰り返して耳を傾ける“作業”もしっくりくるのだ。
奥行きもあって輪郭のくっきりしたCDの方の音の仕上がりも良好だが、
この作品のレコードの音の彫りの深さは
個人的にここ数年の内外の新発売レコードではなかなか体験できなかった生の旨みに満ち、
響きの骨格が見えてきて思わずヴォリュームを上げて聴いてしまうほどだ。

ヒリヒリした質感の響きでの最終的なレコーディングの仕上がり、
楽曲の仕上がり、
ジャケットの仕上がりも含めて、
パッケージ全体のトータル・ワークでたいへん丁寧な作りの逸品。
お早めに。


★forget me not、REDSHEER、kmkms、WHAT EVER FILM『Confidence』(Impulse imps-86)7"x2+CD


SWARRRM、killie『耐え忍び霞を喰らう』(split 12”レコード)

SWARRRMとkillie


“CHAOS & GRIND”を標榜する神戸出身のバンドのSWARRRMと、
“地下”にこだわる活動でカルトな支持の厚い東京拠点のバンドであるkillieのスプリット・レコード。

実は何年も何年も前に制作が決まっていた企画で、
こだわりの2バンドだけに仕上がりまで何年もかかったが、
待った甲斐のあるグレイトすぎる作品だ。
レーベル通販も含めて5月29日発売ながら、
“犯罪者と同姓同名”と題された昨日の東京・新大久保EARTHDOMでのライヴ
(killie、SWARRRM、WRENCH、Nepenthesが出演)で先行販売されたから紹介する。


SWARRRMはキャッチーなツボを設けながら“攻め”の2曲を提供。
「愛のうた」「あなたにだかれこわれはじめる」という、
これまでのバンド・イメージを更新するタイトルのムードで突き抜ける曲の連発だ。
「愛のうた」は静かでスローなオープニングからブラスト・ビートで駆け抜ける展開の雄大な曲で、
ヴォーカルは語りから豪胆な泣きの咆哮歌唱へと突き進み、
誤解を恐れずに言えばサビの部分は小林旭が歌っても違和感のないほど熱いメロディでぐいぐい引き込む。
「あなたにだかれこわれはじめる」はスリルとサスペンスの展開で、
昭和三十~四十年代/1950~1970年代の日本映画の音楽みたいなロマンが溢れ、
ブラスト・ビート込みで流星のように加速していく。
ある種の“色気”が最近のSWARRRMのテーマの一つになっているらしいが、
それも納得の艶っぽさで目頭が熱くなっていくドラマチックな2曲だ。

かたやkillieは鬱積した感情のはらわたが12分近く震え続ける戦慄の1曲を提供。
観ていて固まるほど凄まじかった昨日のライヴが蘇る驚愕の曲である。
“kill + lie”とも“嫌い”とも深読みできるバンド名どおりに、
「お前は労力」という曲名が象徴するシニカルでリアルでダイレクトな音と曲と歌詞に打ちのめされる。
オープニングからエンディングまで緻密な構成ながら頭デッカチとは対極で、
スカしたエモや激情系はお呼びじゃない!とばかりに日常から発した肉体と精神の生の表現が渦を巻く。
息がつまる音作りとアレンジで麻痺させるサウンドが途切れず緩急織り交ぜながらも加速度が絶えない。
米国のGRAVITY RecordsやEBULLITION Records周辺のバンドがエクスタシーに達したかのようであり、
山崎春美のバンドのガセネタにCONVERGEがファックされて
インプロヴァイズしながらトランス状態に陥って彼岸の彼方で逝ったかのような混沌の情景が広がる。
ヴォーカルも体裁関係なく炸裂して音が強靭なパンク・ロックでありハードコア・パンクそのものだ。


色々な意味で敷居の低い作品ではない。
真剣に向き合う覚悟を決めさせるようなブツである。
だがGAUZEのアルバム『面を洗って出直して来い』を思い出す書体でタイトルが綴られたジャケット、
歌詞が載った二つ折りインナーシート、
Transparent Green Vinylのレコード盤の丁寧な作りも含めて、
心血を注ぎ込んだ表現にとにかく身震いがする。
トータル・ワークとして重み十分の逸品だ。


★SWARRRM、killie『耐え忍び霞を喰らう』(-3LA- LongLegsLongArms 3LA-020)12”EP+ダウンロード・クーポン


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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