なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SCOUR『Scour』

SCOUR.jpg


フィリップ・H・アンセルモ(vo、元PANTERADOWN~SUPERJOINT RITUAL)、
デレク・エンゲマン(g、CATTLE DECAPITATION)、
チェイス・フレイザー(g、元ANIMOSITY)、
ジョン・ジャーヴィス(b、PIG DESTROYER~AGORAPHOBIC NOSEBLEED)、
ジェシ・スコベル(ds、STRONG INTENTION)
によるバンドの約14分6曲入りのデビュー作。

アンセルモは各国の政治家トップ・レベルの失言/妄言/放言で“毎度お騒がせします”な人である。
自己愛が強くて他人の気持ちなんか知ったこっちゃない本音を隠せぬお馬鹿さんということだが、
不良を気取ってたくせにトレンドに乗って自分を棚に上げて愛と平和と正義を語り出す善人気取りでブレまくりの
調子がイイ人間よりよっぽど信用できる。
アンセルモが色々とやってきているプロジェクトは
なんだかんだいっても一定のクオリティは超えているし、
今時珍しくビッグ・ネームになろうが感情の“波”と“揺れ”が激しい正直な素行不良ぶりも変わらない。

このCDも良からぬことを企んでいる不穏な空気がうなりを上げている。
ハードコア・パンクとブラック・メタルの邪悪な邂逅とも言うべき音像で、
本作のカタログ・ナンバーが“HardCore”と不吉な数字“666”を組み合わせいるのも偶然できない。
クラスト・コアとドゥーム・メタルも“不幸な形”で混ざり込んでいる。
作曲とアレンジはエンゲマンが手掛けているが、
アンセルモが関わるバンドに共通するいい意味でキャッチーな作りも特筆すべきで、
斬新ではないかしれないがポイントを押さえた応用力も健在だ。

失意が悪意が敵意に深化して殺意に至る過程みたいな人間の自然な意識の流れも見えてくる。
原初的ブラック・メタル・スピリットが息づく妄想が逆噴射した歌詞も相変わらずイカれている。

自分だろうが他人だろうが殺したくなったらこれを全身に浴びよう。
手遅れになる前に。


★SCOUR『Scour』(HOUSECORE HC0666EP)CD
デジパック仕様の約14分6曲入り。


HELLCHILD『・・・To The Eden』

HELLCHILD『…To The Eden』


14年間の“冬眠”を経て昨年再始動した、
東京拠点の“エクストリーム・メタル・バンド”のリイシュー盤。
HELLCHILDの初のCDだった92年リリースの4曲入りの作品『・・・To The Eden』に、
87~91年録音の5本のテープ作品に収めた22曲と未発表ヴァージョンの1曲を加えた、
計約122分27曲入りの2枚組CDである。

93年にファースト・フル・アルバム『Where The Conflict Reaches』を出す前の初期音源集とも言える。
ジャンル問わず引っ張りだこの中村宗一郎のマスタリングも奏功し、
カセット収録のデモやライヴの曲も含めて各パートがしっかり聞こえる音像に仕上がっているCDだ。


デス・メタル・バンドとして認知されているバンドだが、
その範疇に留まらないバンドである。
大半のデス・メタル・バンドと違ってギタリストが一人ということで音作りの方法論が異なるし、
マッチョに押し倒す大味サウンドとも違って緻密かつコンパクトに迫る。
活動停止直前はドゥームがかったヘヴィ・ロックになっていたし、
2001年にはCONVERGEとのスプリット盤『Deeper The Wound』が
そのヴォーカルのジェイクのレーベルであるDEATHWISH Records第一弾として出たことも象徴的だ。
いわばスラッシュ/デス・メタルからドゥームメタル~メタル/カオティック・ハードコアまで包容してきたバンドで、
本作で言うならば特に80年代にレコーディングした曲はデス・メタルと言い切れない。
「Hellchild」という曲をやっているVENOMの流れをくむ“外道メタル”を進化させていったバンドということが、
よくわかる構成だ。


まずこのCDの中で一番新しい録音である本編の『・・・To The Eden』の4曲から始まるが、
これぞHELLCHILDスタイル!と言うべきデス・メタルだ。
デス・メタルには記憶するのが難しい曲も多いが、
キャッチーなギター・フレーズを織り込んでいるのもHELLCHILDならではで、
かなり久々に聴いて僕も全4曲しっかり覚えていた。
ブラスト・ビートは使わず、
DEATH meets OBITUARY”とも言いたくなる叙情性とスラッシーなリフが際立つサウンドだ。
そして現在はSWARRRMなどでも喉を震わせるツカサ・ハラカワの骨っぽいヴォーカルも
巷のデス・メタルのデス・ヴォイスとは完全に一線を画すストロングな芯に貫かれているのであった。

ツカサの加入が影響したのかどうかは定かじゃないが、
彼が咆哮するようになった90年以降の録音の他の15曲に耳を傾けると、
それ以前よりも曲を練っていてデス・メタル色が強まっている。
ギターもエッジが尖っていてリフがクールに研ぎ澄まされ、
ミディアム・テンポの曲のカッコよさも再認識させるのだ。


前記した『…To The Eden』の4曲が終わって5曲目以降は時系列で曲が並べられ、
進化していく様子が見えてくる。
極初期の87年と88年の録音はスラッシュ/デスとも呼びたくなるサウンドで、
その2本のテープのパッケージに
“スラッシュ・コア”“ニュー・ウェイヴ・オブ・スラッシュ”という言葉が躍っているのも納得のサウンドだ。
BATHORYあたりに通じるデス/ブラック・メタルとハードコア・パンクの接点になるような音楽性で、
当時のヴォーカルのタカマサ・ホソノの歌い方はもっとバンカラでハードコア・パンクとブラック・メタルの色も強い。
ブッつぶれたギターをはじめとして粗削りの音もたまらないし、
ニュースクール・ハードコアの先駆けみたいな曲もやっていて興味深すぎるのだ。


ジャンル関係なく一生懸命に取り組んでいるどんな初期表現に対しても言えることだが、
このCDも新しく何かを生み出そうする熱気に圧倒される。
アウトローな“エクストリーム・メタル”好きはもちろんのこと、
内外問わずアンダーグラウンドのロック全般が好きな方の心にも響く発見多々のグレイト・リイシューだ。


★ヘルチャイルド『トゥー・ジ・エデン』(RITUAL RRJP-1369)2CD
クレジット、本編の歌詞、本作収録曲の初出の作品のアートワーク、ライヴのチラシ、
オリジナル盤もリリースしたRITUAL Recordsの主宰者ならではの事実関係を綴るライナー等で彩った、
12ページのブックレット封入。


DOOM『No More Pain~Complete Explosion Works Session』

DOOM『No More Pain』


英国のクラスト・コア・バンドより先にDOOMの名で活動していた
東京拠点の“プログレッシヴ・エクストリーム・メタル・トリオ”が、
87年にリリースしたファースト・アルバムの新装リイシュー盤である。
かつてリリースされたLPヴァージョンとCDヴァージョンの音源を2枚のCDに振り分け、
それらの他に、
当時東京・神楽坂のライヴ・ハウスのエクスプロージョンが運営していたインディ・レーベルの
EXPLOSION Recordsが世に出した盤のすべてを網羅。
中村宗一郎がリマスタリングを施している。


ディスク1は『No More Pain…』のLPヴァージョン中心の約60分14曲入り。
LP『No More Pain…』の8曲+86年のデビュー7”EP『Go Mad Yourself!』の4曲+
LP『No More Pain…』初回プレス分に封入されていたソノシートの2曲(音質良好なライヴ・テイク)
が収録されている。

82~84年のDISCHARGE
曲によってはG.I.S.Mがメタル度を高めてプログレ化したようにも聞こえる。
KING CRIMSONやPINK FLOYDのドラマチックな曲展開も混入しつつ、
BOLT THROWERの先を行っていたクラスト・デス・メタル・テイストも味わえる。
ドゥーム・メタルも無意識のうちに絡めながら、
10年早すぎたカオティック・ハードコアにも聞こえる。
そしてもちろんカナダのVOIVODの“同志”であり、
VOIVODのデモをリイシューしたジェロ・ビアフラ(元DEAD KENNEDYS)が、
けっこうリアル・タイムで聴いて早々とインタヴューでフェィヴァリットを表明したのも納得だ。

洗練されすぎないアンダーグラウンドな音質もこのアルバムの作風にピッタリである。
ジャズ・ロックに通じる知的な音の波が胸をすく諸田のフレットレス・ベースも、
変拍子で叩いてもハード・ロック魂がまぶしい広川のドラムも、
スラッシーなリフを弾いてもオールド・ロックのブルージーな味を忘れちゃいない藤田のギターも、
ざらついた苦悶の声で英語を吐く藤田のヴォーカルも、
すべてポーズ無しの生である。
やはりブックレットに歌詞が載ってなくても本物だったら伝わるものは響きで伝わるのだ。

7"EP『Go Mad Yourself!』とソノシートの曲は
ちょいテクニカルな“メタル・クラスト・スラッシュ・チューン”で、
80年代後半のUKハードコアとも共振していた。
これまた生硬でたまらない。

聴けば聴くほど発見があるし味が染み出てくる。
未知のものを産み出さんとする創造の無限の力におののくしかない。


ディスク2は89年に発売されたと思しきCDヴァージョンの曲順/ミックス等の約52分12曲入り。
JURASSIC JADEの『Gore』と同様に、
当時EXPLOSION RecordsはLPそのままのCD化はしなかった。
LP『No More Pain…』の曲間に86年のデビュー7”EP『Go Mad Yourself!』の4曲を入れ、
全体の流れを考慮しながら曲順も多少入れ替えて『No More Pain…』を再構成した作りである
リミックスが施されてLP『No More Pain…』とは微妙に違うことを意識したからか、
フィンランドのハードコア・パンク・バンドRATTUSの『Rattus』(84年)を思わせるLPヴァージョンのジャケットも
マイナー・チェンジしてCDでリリースされていた。

こちらのミックスは真ん中に音を集めたようであり、
塊みたいにも聞こえてくる。
元の録り音は同じながらLPヴァージョンと別物の形で当時発表したのもうなずける。
今回のリイシューはリマスタリング音質で聴き比べられるから、
各々の良さに耳を傾けるいい機会にもなった。


とにかくスラッシュだメタルだということ以前にクールなロックとして歴史に刻まれるべき名盤。
ヴォリュームたっぷりの2枚組CDにも関わらず値段も抑えられており、
これは買い!だ。

そして来年3月2日、
DOOMは約16年ぶりのニュー・アルバム『Still Can’t The Dead...』をリリースする。


★ドゥーム『ノー・モア・ペイン~コンプリート・エクスプロージョン・ワークス・セッション』(13TH REAL RECORDINGS 13RR 1001/1002)2CD
オリジナルLPに準じたアルバム・カヴァーながら昔のCD版のジャケット等も載った12ページのブックレット封入。


GOD MACABRE『The Winterlong』

GOD MACABRE『The Winterlong』


スウェーデンの伝説的デス・メタル・バンドが93年にリリースした唯一のアルバムの
11曲入りの新装リイシュー盤。

91年12月にレコーディングした7曲入りのデビュー・アルバム『The Winterlong』に4曲追加されている。
ブラスト・ビートも使っていてクラスト色も強い前身バンドMACABRE ENDが
90年9月に録ってその翌年に出した7”EP『Consumed By Darkness』の3曲と、
マスタリングも含めて2013年に完成させたMACABRE END時代のものらしき未発表の1曲だ。
すべて2000年にリミックスされた音源で、
2013年にリマスタリングなどを施した音が使われている。
ちなみに全曲もともとの録音は、
ENTOMBEDやDISMENBERをはじめとしてスウェーデンのデス・メタル名盤群を多数手がけていた
トーマス・スコグスベルがエンジニアを務めている。

ジャンルごとの妙なエリート意識や差別意識が薄いお国柄か、
スウェーデンも80年代からヘヴィ・メタルとハードコア・パンクがいい感じで混ざっていて、
その流れが粗削りのまま結晶になったようなサウンドだ。
初期デス・メタルにクラスト・ハードコア・パンクがブレンドされたような作品だが、
MOTORHEADVENOM~HELLHAMMERのドライヴ感や
IRON MAIDENANGEL WITCHの楽曲構成力も肉体化。
ところによってはENTOMBEDやセカンド~サードあたりのCARCASSも思い出すが、
さらにドゥーム・メタルの閉塞感溢れるスロー・チューンや、
プログレ・バンドのトラッド・ナンバー風のアコースティックなパートも自分たちのものにしている。

多くのデス・メタル・バンドと同様に歌詞は空想の悪魔云々ではない。
かなりリアリスティックだ。
GOD MACABRE時代とMACABRE END時代の2つの録音が入っていて
屠殺がモチーフと思しき曲の「Spawn Of Flesh」をはじめとして、
人間としての内省的な視点からも誠意を感じる。

メンバーがGOD MACABRE前後に有名バンドのメンバーになっていればもっと注目されていただろうが、
まだ歴史とシーンの狭間で埋もれてしまっている。
だがオススメだ。


★ゴッド・マカブラ『ザ・ウィンターロング』(リラプス・ジャパン RLJP-1383)CD
日本仕様版は12ページのオリジナル・ブックレットに載った歌詞と英文ライナーの和訳付。


NILE『What Should Not Be Unearthed』

NILE『What Should Not Be Unearthed』


90年代前半から活動している米国東南部サウス・カロライナ州出身のデス・メタル・バンドが、
『At The Gate Of Sethu』以来約3年ぶりにリリースした8作目。
エジプト・フェチ”なデス・メタルに磨きをかけた佳作である。

MORBID ANGELの流れをくむサウンドながら戦闘的というより残虐、
そして猛々しい。
さりげなく演奏力を炸裂させてはいるが、
前作ほどテクニカルに感じさせずNILEとしてはストレートに押すアルバムだ。
ますますねちっこく、
しかし抜けが良く、
積年の憎悪の横溢の如くサウンドが轟く。
中近東風のメロディやリズムも70年代のFLOWER TRAVELLIN’ BANDを思い出す手法で溶かし込まれ、
あからさまな挿入だった初期よりもオーガニックにブレンドされていてNILEの血肉になっている。

適切な音作りも奏功して各パートがしっかり聞こえてくるのも大きいのだろう、
音が詰まっているにもかかわらず絡まり合いが見えてくるほど聴きやすい。
オーケストラと共演してほしいほどのビッグ・スケールの複雑な楽曲展開にもかかわらず、
以前より数段ツボを突きポイントを押さえた曲作りも特筆したい。
地に足の着いた深化と進化を止めることはなく、
フックのあるリフや印象的なフレーズで攻めて責めて攻め抜くのである。
完全に独自のスタイルを築き上げているバンドならではの作曲力の成長と言えるし、
覚悟を決めて30歳でNILEを始めたカール・サンダース(g、vo、b)がリーダーのバンドならではの
職人肌のソングライティングの成長とも言える。

むろん獰猛なツイン・ヴォーカル体制で吐く歌詞のほとんどはエジプト中心に中近東関連が“ネタ”である。
自分の身の周りや自分の国のことしか考えてない人が多いが、
国外の地域に異様な関心を抱く人も少なくない。
NILEと同じく同じくエジプトからの多大な触発を表現に活かしているD・O・Tのネコもその一人。
NILEだって自分の国に無関心というわけではない。
“9.11”直後あたりのインタヴューでも“葛藤”しながら母国への愛を語っていた。

歌詞自体は暗喩的/普遍的に書かれているから
エジプトだけでなく様々なシチュエーションをイメージできる。
とはいえ本作のモチーフの中心は、
曲ごとに綴られた解説で明らかなようにエジプトのことである。
エジプトの知識が豊富で英語が堪能な方でも1時間では読み通せないと思われる濃い内容と膨大な量で
リーダーのカールが書いた曲解説にも偏執狂と紙一重の熱量が充満している。
表現したいことが山ほどあるってわけだ。

古代エジプトや中東の文化などからインスピレーションを得てテーマにしてきているバンドだけに、
いわゆる“アラブの春”前後から現在に至るまでの中東の混乱からの影響もゼロではない。
今回そういうことにまつわる事件がきっかけの曲も含むが、
NILEは基本的にポリティカルな打ち出し方はしない。
必ずしもそういう歌詞ではないが、
怒りと嘆きの二重奏のサウンドは中東周辺の地で行なわれてきている処刑をイメージもさせる。
だが彼の地の戦いの歴史を感じさせるロマンと現実が錯綜する歌詞からは
エジプトへの熱い愛が溢れている。

音楽だけが持ち得る力をあらためて知る一枚。


★NILE『What Should Not Be Unearthed』(NUCLEAR BLAST 334-2)CD
歌詞とともに曲解説(セルフ・ライナー)がビッシリ載った24ページのブックレット封入で、
エンボス加工されたスリップケース付の50分10曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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