なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DOOM『No More Pain~Complete Explosion Works Session』

DOOM『No More Pain』


英国のクラスト・コア・バンドより先にDOOMの名で活動していた
東京拠点の“プログレッシヴ・エクストリーム・メタル・トリオ”が、
87年にリリースしたファースト・アルバムの新装リイシュー盤である。
かつてリリースされたLPヴァージョンとCDヴァージョンの音源を2枚のCDに振り分け、
それらの他に、
当時東京・神楽坂のライヴ・ハウスのエクスプロージョンが運営していたインディ・レーベルの
EXPLOSION Recordsが世に出した盤のすべてを網羅。
中村宗一郎がリマスタリングを施している。


ディスク1は『No More Pain…』のLPヴァージョン中心の約60分14曲入り。
LP『No More Pain…』の8曲+86年のデビュー7”EP『Go Mad Yourself!』の4曲+
LP『No More Pain…』初回プレス分に封入されていたソノシートの2曲(音質良好なライヴ・テイク)
が収録されている。

82~84年のDISCHARGE
曲によってはG.I.S.Mがメタル度を高めてプログレ化したようにも聞こえる。
KING CRIMSONやPINK FLOYDのドラマチックな曲展開も混入しつつ、
BOLT THROWERの先を行っていたクラスト・デス・メタル・テイストも味わえる。
ドゥーム・メタルも無意識のうちに絡めながら、
10年早すぎたカオティック・ハードコアにも聞こえる。
そしてもちろんカナダのVOIVODの“同志”であり、
VOIVODのデモをリイシューしたジェロ・ビアフラ(元DEAD KENNEDYS)が、
けっこうリアル・タイムで聴いて早々とインタヴューでフェィヴァリットを表明したのも納得だ。

洗練されすぎないアンダーグラウンドな音質もこのアルバムの作風にピッタリである。
ジャズ・ロックに通じる知的な音の波が胸をすく諸田のフレットレス・ベースも、
変拍子で叩いてもハード・ロック魂がまぶしい広川のドラムも、
スラッシーなリフを弾いてもオールド・ロックのブルージーな味を忘れちゃいない藤田のギターも、
ざらついた苦悶の声で英語を吐く藤田のヴォーカルも、
すべてポーズ無しの生である。
やはりブックレットに歌詞が載ってなくても本物だったら伝わるものは響きで伝わるのだ。

7"EP『Go Mad Yourself!』とソノシートの曲は
ちょいテクニカルな“メタル・クラスト・スラッシュ・チューン”で、
80年代後半のUKハードコアとも共振していた。
これまた生硬でたまらない。

聴けば聴くほど発見があるし味が染み出てくる。
未知のものを産み出さんとする創造の無限の力におののくしかない。


ディスク2は89年に発売されたと思しきCDヴァージョンの曲順/ミックス等の約52分12曲入り。
JURASSIC JADEの『Gore』と同様に、
当時EXPLOSION RecordsはLPそのままのCD化はしなかった。
LP『No More Pain…』の曲間に86年のデビュー7”EP『Go Mad Yourself!』の4曲を入れ、
全体の流れを考慮しながら曲順も多少入れ替えて『No More Pain…』を再構成した作りである
リミックスが施されてLP『No More Pain…』とは微妙に違うことを意識したからか、
フィンランドのハードコア・パンク・バンドRATTUSの『Rattus』(84年)を思わせるLPヴァージョンのジャケットも
マイナー・チェンジしてCDでリリースされていた。

こちらのミックスは真ん中に音を集めたようであり、
塊みたいにも聞こえてくる。
元の録り音は同じながらLPヴァージョンと別物の形で当時発表したのもうなずける。
今回のリイシューはリマスタリング音質で聴き比べられるから、
各々の良さに耳を傾けるいい機会にもなった。


とにかくスラッシュだメタルだということ以前にクールなロックとして歴史に刻まれるべき名盤。
ヴォリュームたっぷりの2枚組CDにも関わらず値段も抑えられており、
これは買い!だ。

そして来年3月2日、
DOOMは約16年ぶりのニュー・アルバム『Still Can’t The Dead...』をリリースする。


★ドゥーム『ノー・モア・ペイン~コンプリート・エクスプロージョン・ワークス・セッション』(13TH REAL RECORDINGS 13RR 1001/1002)2CD
オリジナルLPに準じたアルバム・カヴァーながら昔のCD版のジャケット等も載った12ページのブックレット封入。


GOD MACABRE『The Winterlong』

GOD MACABRE『The Winterlong』


スウェーデンの伝説的デス・メタル・バンドが93年にリリースした唯一のアルバムの
11曲入りの新装リイシュー盤。

91年12月にレコーディングした7曲入りのデビュー・アルバム『The Winterlong』に4曲追加されている。
ブラスト・ビートも使っていてクラスト色も強い前身バンドMACABRE ENDが
90年9月に録ってその翌年に出した7”EP『Consumed By Darkness』の3曲と、
マスタリングも含めて2013年に完成させたMACABRE END時代のものらしき未発表の1曲だ。
すべて2000年にリミックスされた音源で、
2013年にリマスタリングなどを施した音が使われている。
ちなみに全曲もともとの録音は、
ENTOMBEDやDISMENBERをはじめとしてスウェーデンのデス・メタル名盤群を多数手がけていた
トーマス・スコグスベルがエンジニアを務めている。

ジャンルごとの妙なエリート意識や差別意識が薄いお国柄か、
スウェーデンも80年代からヘヴィ・メタルとハードコア・パンクがいい感じで混ざっていて、
その流れが粗削りのまま結晶になったようなサウンドだ。
初期デス・メタルにクラスト・ハードコア・パンクがブレンドされたような作品だが、
MOTORHEADVENOM~HELLHAMMERのドライヴ感や
IRON MAIDENANGEL WITCHの楽曲構成力も肉体化。
ところによってはENTOMBEDやセカンド~サードあたりのCARCASSも思い出すが、
さらにドゥーム・メタルの閉塞感溢れるスロー・チューンや、
プログレ・バンドのトラッド・ナンバー風のアコースティックなパートも自分たちのものにしている。

多くのデス・メタル・バンドと同様に歌詞は空想の悪魔云々ではない。
かなりリアリスティックだ。
GOD MACABRE時代とMACABRE END時代の2つの録音が入っていて
屠殺がモチーフと思しき曲の「Spawn Of Flesh」をはじめとして、
人間としての内省的な視点からも誠意を感じる。

メンバーがGOD MACABRE前後に有名バンドのメンバーになっていればもっと注目されていただろうが、
まだ歴史とシーンの狭間で埋もれてしまっている。
だがオススメだ。


★ゴッド・マカブラ『ザ・ウィンターロング』(リラプス・ジャパン RLJP-1383)CD
日本仕様版は12ページのオリジナル・ブックレットに載った歌詞と英文ライナーの和訳付。


NILE『What Should Not Be Unearthed』

NILE『What Should Not Be Unearthed』


90年代前半から活動している米国東南部サウス・カロライナ州出身のデス・メタル・バンドが、
『At The Gate Of Sethu』以来約3年ぶりにリリースした8作目。
エジプト・フェチ”なデス・メタルに磨きをかけた佳作である。

MORBID ANGELの流れをくむサウンドながら戦闘的というより残虐、
そして猛々しい。
さりげなく演奏力を炸裂させてはいるが、
前作ほどテクニカルに感じさせずNILEとしてはストレートに押すアルバムだ。
ますますねちっこく、
しかし抜けが良く、
積年の憎悪の横溢の如くサウンドが轟く。
中近東風のメロディやリズムも70年代のFLOWER TRAVELLIN’ BANDを思い出す手法で溶かし込まれ、
あからさまな挿入だった初期よりもオーガニックにブレンドされていてNILEの血肉になっている。

適切な音作りも奏功して各パートがしっかり聞こえてくるのも大きいのだろう、
音が詰まっているにもかかわらず絡まり合いが見えてくるほど聴きやすい。
オーケストラと共演してほしいほどのビッグ・スケールの複雑な楽曲展開にもかかわらず、
以前より数段ツボを突きポイントを押さえた曲作りも特筆したい。
地に足の着いた深化と進化を止めることはなく、
フックのあるリフや印象的なフレーズで攻めて責めて攻め抜くのである。
完全に独自のスタイルを築き上げているバンドならではの作曲力の成長と言えるし、
覚悟を決めて30歳でNILEを始めたカール・サンダース(g、vo、b)がリーダーのバンドならではの
職人肌のソングライティングの成長とも言える。

むろん獰猛なツイン・ヴォーカル体制で吐く歌詞のほとんどはエジプト中心に中近東関連が“ネタ”である。
自分の身の周りや自分の国のことしか考えてない人が多いが、
国外の地域に異様な関心を抱く人も少なくない。
NILEと同じく同じくエジプトからの多大な触発を表現に活かしているD・O・Tのネコもその一人。
NILEだって自分の国に無関心というわけではない。
“9.11”直後あたりのインタヴューでも“葛藤”しながら母国への愛を語っていた。

歌詞自体は暗喩的/普遍的に書かれているから
エジプトだけでなく様々なシチュエーションをイメージできる。
とはいえ本作のモチーフの中心は、
曲ごとに綴られた解説で明らかなようにエジプトのことである。
エジプトの知識が豊富で英語が堪能な方でも1時間では読み通せないと思われる濃い内容と膨大な量で
リーダーのカールが書いた曲解説にも偏執狂と紙一重の熱量が充満している。
表現したいことが山ほどあるってわけだ。

古代エジプトや中東の文化などからインスピレーションを得てテーマにしてきているバンドだけに、
いわゆる“アラブの春”前後から現在に至るまでの中東の混乱からの影響もゼロではない。
今回そういうことにまつわる事件がきっかけの曲も含むが、
NILEは基本的にポリティカルな打ち出し方はしない。
必ずしもそういう歌詞ではないが、
怒りと嘆きの二重奏のサウンドは中東周辺の地で行なわれてきている処刑をイメージもさせる。
だが彼の地の戦いの歴史を感じさせるロマンと現実が錯綜する歌詞からは
エジプトへの熱い愛が溢れている。

音楽だけが持ち得る力をあらためて知る一枚。


★NILE『What Should Not Be Unearthed』(NUCLEAR BLAST 334-2)CD
歌詞とともに曲解説(セルフ・ライナー)がビッシリ載った24ページのブックレット封入で、
エンボス加工されたスリップケース付の50分10曲入り。


HATE ETERNAL『Infernus』

HATE ETERNAL『Infernus』


MORBID ANGEL脱退後の90年代後半にエリック・ルータン(vo、g)が結成した、
米国フロリダ出身のデス・メタル・トリオの新作。
『Phoenix Amongst The Ashes』以来の約4年ぶりの6作目である。

デス・メタルとしては元よりロックとしても素晴らしい。
もちろん今回も、
録音技師としても人気のエリックがプロデュース/エンジニア/ミックスを手がけている。
苛烈なサウンドの分離も抜けも良く、
シャープな音作りも冴える。
曲も音もコンパクトに凝縮してパワーを集中させつつ、
他のバンドとの仕事でもプロデューサーとしての才覚を発揮しているエリックがリーダーだけに、
バランス良く聴かせどころをビシッ!と設けている。

憂鬱な哀切メロディをさりげなく織り込みながらも、
3人とも運動が激しいプレイでデス・メタルが体力勝負であることを示し、
すなわちロックが肉体音楽であることも示す。
精神だけでなくギリギリまで肉体を駆使してこそ湧き出てくる熱いモノは確実にある。
新ドラマーも曲と取っ組み合ってブラスト・ビートを絡めて転がりまくる音をハジき出している。

殺らなきゃ殺られるとばかりの凄まじい攻勢が続く。
緩急織り交ぜてはいようが、
たるいパートがまったくない。
やはり加速度が途切れないところが大切なのだ。
音の加速は意識の加速も意味するから熾烈な音の流れに目が覚めるばかりだ。

歌詞も3人が曲と格闘しているプレイのサウンドそのままであり、
ジャケットからイメージできる“希望”の世界。
ダテにHATE ETERNALというバンドを自ら授けたわけではない自信すらうかがえる。

約45分が、あっというま。
凛々しい貫禄すら感じさせて活力みなぎる逸品。
お見事!


★HATE ETERNAL『Infernus』(SEASONS OF MIST SOM 363)CD
12ページのブックレット封入の約45分10曲入り。


MYRKUR『M』

MYRKUR『M』


北欧デンマーク出身の女性のブラック・メタル系プロジェクトによるファースト・フル・アルバム。
独演ではなくベースやドラムなどを演奏するトリオ・バンド編成を基本にした作りである。
クリストファー・アモット(元ARCH ENEMY、現ARMAGEDDON)が1曲でギターを弾いたのもちょっとした話題だ。

ツー・ビートで猛襲するところだけでなくアンビエントなバートも含めて、
ブラック・メタルから触発されている部分は大きいと思われる。
ただしブラック・メタルをきっかけにして表現を広げていっているアルバムである。

ヴォーカルを取るだけでなくピアノやギターも弾く女性のプレイの佇まいがナチュラルで、
残虐な喉も震わせつつクラシカルな趣を呈し、
たおやかな歌声のパートも自然体だ。
民謡風のメロディも漏れてきて曲によっては子守唄にも聞こえ、
CURVED AIRやCOCTEAU TWINSすら思わせる。
後期Siouxsie and the BANSHEESを想起するポップな曲も捨てがたいところだ。

鮮烈な音像の仕上がりもポイント高い。
歌詞と違って響きはウソをつかない。
そしてやっぱり歌心がすべてだ。

やりたいことを素直にやっている。
女性ならではと言えるやらわかい頭と物腰がいっぱいだ。
もちろん世間の流行りとは関係ないピュアな表現で研ぎ澄まされている。

オススメ。


★ミシュクル『エム』(リラプス・ジャパン RLJP-1359)CD
厚手の二つ折り紙ジャケット仕様の約37分11曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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