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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

mitsuru tabata『Get the Car』

Mitsuru tabata『Get the Car』


20 GUILDERSをはじめとして真に多彩な活動を35年近く続行している田畑満の久々のソロ・アルバム。

ヴォーカル、ギター、ベース、ミディ・プログラミング、ノイズを使ったほぼ独演で、
全編自作自演自宅録音でプロデュースも行なっている。
ミックスとマスタリングを担当したのは、
裸のラリーズ~Los Doroncosなどで活動してきている高田"Doronco"清博。
「ある日、家に遊びに行ったら、突然ベースを弾かされました」と帯の裏でコメントした、
亀川千代(元・ゆらゆら帝国、元・不失者ほか)らが、
数曲にゲスト参加している。


何かの映画の一シーンっぽいアルバム・カヴァーや、
どこかの国に観光旅行中と思しき本人の写真の怪しい天然ムードに包まれた作品である。

スペーシーなインストのオープニング・ナンバーで始まり、
VELVET UNDERGROUNDの「Sunday Morning」のアジアン・ヴァージョンみたいな
日本語のプリティな歌ものアシッド・ソフト・フォーク・ロックが続く。
いわゆるレア・グルーヴ風のキッチュな音の映画音楽っぽいインストでダンスした後は、
電子音も鳴る危険な歌もの、
BECKも思い出す打ち込みの歌もの、
静かで穏やかなポップ・アンビエント・ナンバー、
クラウト・ロックとVELVET UNDERGROUNDのブレンドに初期LIZARDの歌メロが混ざったような曲、
ルー・リードの「Walk On The Wild Side」っぽいベース・ラインのデリケイトな歌ものなどなど。
瞑想チューンかと思いきや
歌いっぷりよく気のふれたSUICIDE風ヴォーカルとイカれた音が飛び込んできて、
ちょい冥界へと誘う10分近くに及ぶ曲で締める。

田畑の奇才ぶり本領発揮のオチャメな怪作である。


★タバタ ミツル『ゲット・ザ・カー』(CHAOTIC NOISE CHAOTIC-033)CD
三つ折りのカードボード状のペーパー・スリーヴ仕様。
約57分9曲入り。


LAPIZ TRIO『Shine Your Way』

LAPIZ TRIO『Shine Your Way』


FRICTIONの初期と1990年前後のギタリストとして知られるラピス(vo、g)、
80年代初頭のJUNGLE’SやCANNONを経てまたThe GODなどで活動中の中村清(ds)、
80年代後半~90年代初頭のREALを支えて他界前の山口冨士夫とも活動した横山玲(b)
によるバンドのファーストCD。

個人的には初見のライヴで衝撃を受けて早5年、
待った甲斐のある快作だ。

リリース・レーベルのサイトによれば
“1972年から2017年に作られたLAPIZの作品”とのことで、
45年もの間にラピスが書き溜めた曲の中から厳選した7曲を昨年12月にレコーディング。
エンジニアは中村宗一郎である。


CDの幕を開けるエレクトリック・ギターにいきなり殺られ、
BLACK SABBATHジミ・ヘンドリックスに感電したのようなヘヴィ・ロックになだれ込み、
オープニング・ナンバーからカオスに巻き込む。
STOOGES meets MC5”とも言いたいアップテンポの曲が続き、
山口冨士夫のフットワークの軽い開放的な曲を思い出す曲あり、
Iggy and The STOOGESがハード・ロック化したみたいな曲あり、
ラヴ・ソングに聴こえる10分強の曲あり。
聴いているとカラダが火照ってくるのがわかるし、
その一方で繊細なロック・チューンがまたチャーミング。
アルバム全体が一つの流れを成すヴァラエティに富む作品だ。

大半の曲は日本語で歌われているが、
“パンク・ハード・ロック”なヴォーカルから切ない歌唱まで、
これまたラピスの色んな表情が楽しめる。
巧いかどうかを超えた味のあるヴォーカルだからこそフックのあるソングライティングが際立ち、
曲によってはいい意味で昭和40年代の歌謡曲風(not J-POP)にもなるキャッチーなサビに
ニンマリさせられる。

全曲ヴォーカル入りでラピスの名がリードするグループ名になっているが、
バンド感たっぷりの仕上がりもうれしい。
単なるバック・バンドの一員というのとは真逆の演奏で、
中村と横山が自分自身のリズムとフレーズで曲をふくらませているのだ。
もちろんスロー・ナンバーでも静かな曲でもギターは響きわたっていて、
やっぱり全編聴きどころ。
ギター・ソロがまたクールだし、
やさしいギターもまた渋い。
英語の歌ものでひっそり締めるところがまた心憎いのであった。


FRICTIONのライヴ作品『Dumb Numb CD』以外に
ほとんど音源が出回ってないというのもあって過小評価されてきた、
ラピスのミュージシャンとしての輝きまでもが確かにレコーディングされている。
ラピスをはじめとするメンバー一人一人の“人間”が刻まれて染み込んでもいる。
だから重み十分なのだ。

オススメ。


★LAPIZ TRIO『Shine Your Way』(GOTTHEIT OWN DRIVES GODR-0002)CD
二つ折りのカードボード状のペーパー・スリーヴ仕様の約44分7曲入り。
帯付き。


20 GUILDERS『Acoustic Motherfuckers』『Il Grande Silenzio: Guitar Improvisation 2017』

20 GUILDERS『Acoustic Motherfuckers』1


のいずんずりや極初期BOREDOMS、ZENI GEVA、LENINGRAD BLUES MACHINEなど
無数のバンドで活動してきた奇才・田畑満(vo、g)と、
みみのことなどのバンドをやってきているスズキジュンゾ(vo、g)による、
東京拠点のユニットのCD。
どちらも自身のレーベルからのリリースだ。


『Acoustic Motherfuckers』は発売間もないアルバム。
GYUUNE CASSETTEレーベルから一昨年出した『20 Guilders 2』と一緒に、
2016年5月にアコースティック・ギターを手にしてスタジオ・ライヴで録り、
今年に入ってからミックスし直した作品である。
全7曲のうち4曲は2010年のファースト・アルバム『20 Guilders』に収めた曲で、
未発表曲も収録。
マスタリングは裸のラリーズ~Los Doroncosの高田"Doronco”清博が行なっている。

ROLLING STONESの同名のブートレッグに似たジャケットで
こちらも名曲がアコースティックで歌われていくが、
クリアーで光が射し込む音質だ。
曲によってメイン・リード・ヴォーカルが変わり、
スズキは男臭く実直、
田畑は人懐こく愛らしく朗々とした歌唱を聴かせる。
ニール・ヤングのデリケイトなアシッド・フォーク・ヴァージョンの中に
VELVET UNDERGROUNDがブレンドしているような味わいたっぷりだ。
演奏でも魅せる長めの曲が多く、
歌心バッチリで繊細すぎる瑞々しい二人のギターにもとろける。

「震える声 沈む部屋(Trembling Voice, Sinking Room)」「円盤(Enban)」
「打ちひしがれた肩越を突き抜ける光(Light That Breaks Through)」
「エマヌエルは別(Except Emanule)」「片翼の影(Shadows Of Faded Wings)」
「デアー・パピ(Dear Papi)」「抱きしめたい(Dakishimetai)」
といった曲名からもアルバムの空気感が伝わってくる。

「抱きしめたい」はBEATLESのカヴァーではない。
二人のキャラがよく表れたオープニングに続いてガール・ポップみたいなメロディ・・・
というかUNDERTONESの「Teenage Kicks」のリメイクに聴こえるではないか。
オリジナルの歌詞のニュアンスも日本語で綴った切なくグレイトな締めだ。


20 GUILDERS『Acoustic Motherfuckers』
一方の『Il Grande Silenzio: Guitar Improvisation 2017』は1年ほど前に発表した作品。
こちらは初のギター・アンビエントのライヴCDで一昨年7月の東京・千駄木で収録されている。

田畑のパートは“Guitar [Aerophonics]”とクレジットしていて、
“aeroponics(水耕/空中栽培)”を意識したかのようだ。。
スズキのパートは“Guitar [Hydrophonics]”とクレジットとしていて、
“hydroponics(水耕法/水栽培)”を意識したかのようだ。
けどそれぞれ“aero + phonics”と“hydro + phonics”という具合の造語と思えば、
音楽的なニュアンスが伝わってくる。

ミニマルとはいえ確かにギターを弾いている音であり、
真正かつ真性のサイケデリック・ミュージックであり、
アンビエントと呼ぶには硬質な響きになっていく研ぎ澄まされた流れが素晴らしい。
アルバム・タイトルは1968年のマカロニウエスタン映画『殺しが静かにやって来る』の原題に近く、
その音楽をエンニオ・モリコーネが担当していることを思えば、さもありなんである。
ジャケットもどこかで見た記憶が・・・というのは気のせいだろうか。
こちらもオススメだ。


★20 GUILDERS
『Acoustic Motherfuckers』(GULDEN MUSIEK Ltd. SGM 0003)CD
キュートな“アー写”の裏面はポスターとして壁に貼ることも可能な六つ折りペーパー・スリーヴ仕様の
約40分7曲入り。
★『Il Grande Silenzio: Guitar Improvisation 2017』(同 SGM 002)CD
こちらも裏面はポスターとして壁に貼ることも可能な六つ折りペーパー・スリーヴ仕様の
約43分2曲入り。
実際のジャケットの色は↑の画像よりもっと明るい。


非常階段『極悪ライブ'81+凶悪ライブ'81』

非常階段『極悪ライブ81+凶悪ライブ81』


“キング・オブ・ノイズ”を標榜するノイズ・バンドの非常階段による2つの初期ライヴを収めた映像作品。
かつてDVD-Rで販売されていたものの2 in 1でのDVD化だ。


「極悪ライブ’81」と題された1981年8月28日の新宿ロフトでのライヴは、
イベントの“FLIGHT 7DAYS unbalance day”出演時の23分のノーカット版。
暗めで鮮明な画質はではないが、
多数のメンバーが乗ったステージ上での動きがしっかり記録されているドキュメンタリーだ。
前から撮っているから観客の目線で楽しめる。
はっきりとは確認できないが、
生魚、ミミズ、ゴカイ、納豆が飛びかっていたらしく、
嘔吐や放尿もありだから床がすべって立てないようなシーンも映しこまれている。

好き勝手な放任状態ながら、
アナーキーな“調和”が感じられるのが非常階段ならでは。
ヴォイスとドラムとサックスを含む演奏はフリー・ジャズの加速度で、
エレクトリック・ギター中心の容赦無き高音域際立つ熾烈ノイズに突き動かされ、
みんなノリノリだ。
ノイズに殺られたのかノイズに憑かれたのかは定かじゃないが、
演奏してないメンバーは一心不乱に何かブツをしばいたり、
覚醒陶酔して夢遊病者みたいな動きも見せて舞踏にも見えるパフォーマンス。
ところによっては際立つ、
『Velvet Underground & Nico』の裏ジャケット風のサイケデリック・テイストの映像色も特筆したい。


「凶悪ライブ’81」と題された京都・同志社大学至誠館24番教室で行なわれたライヴの方は、
1981年11月27日の学園祭会場でのステージを19分収録。
カラーながら天然のセピア色っぽい映像色でモノクロにも近くて生々しい効果を生んでいる。
いわゆるステージのないスペースと思われ、
プレイしている周りから様々なアングルで撮られているから、
メンバーの目線というかステージ上で観ている気分にもなる。
やはりエレクトレック・ギター、ドラム、サックスを含む演奏で、
ルー・リードの『Metal Machine Music』がハード・ロック化したように硬質ノイズを放射し、
まさに“無限大の:幻覚”のイメージを体現したようなサウンドだ。

演奏前から既にパフォーマンスが始まっているようなライヴで、
電子音が鳴りわたる中で準備しているみたいなメンバー映像がオープニング。
こちらも何人がメンバーか判然としないところもまたフリー・フォームで、
幾人もの人が音を発して何かのブツをしばいている。
ステージと客席の境目がない感じでどれが観客かメンバーがわからないフロアーだから、
観客もまぎれこんでいるかのような雑然とやりたい放題。
ノイズに酩酊してうろつきつつ物投げたり転げたり叫んだり他の人間に絡んだり、
アブないパフォーマーたちのプリミティヴな行ないが目立つ。
撮っている人も何が飛んでくるかわからない状況だから、
しだいに遠めのカメラになっていき、
“ドクター・ストップ”みたいな感じで映像が終わるのもリアルだ。


まさにロックの極北をナマで記録した映像作品である。


★非常階段『極悪ライブ'81+凶悪ライブ'81』(アルケミー ARDVD-006)DVD


稲冨英樹+小池克典『Au Revoir les Enfants さよなら こどもたち』

稲冨英樹+小池克典


元IDIOT O'CLOCKの高山謙一が率いるツメタイイキノママのアルバムにも参加していた、
稲冨英樹(vo、g、b、ハーモニカ/ドールハウス)と
小池克典(コーラス、kbd、ds、night bird/元b-flower~アンティーク・フォークロア)による
京都拠点のユニットの新作。

二人は2008年から稲冨英樹+小池克典という名義で活動を始め、
2013年にファースト・アルバム『Un captif amoureux』をリリースし、
本作も引き続き稲富主宰の自主レーベルが制作。
曲によって隣人の宮部らぐの(g)と真嵜めぐみ(ds)、
アートワークのイラストとデザインも手掛けたシンガーソングライターのフジコ(コーラス)が
参加している。


長野友美の曲のフレーズから思いついたタイトルのオープニング・ナンバーの「冬のこども」は、
まさに“(メロウな時の)VELVET UNDERGROUND meets バート・バカラック”。
ギターとキーボードが溶け合ってヘヴィ・ソフト・ロックとも言いたくなる曲である。

2曲目の「花火」は、
90年代初頭あたりまでのPRIMAL SCREAMSTONE ROSESっぽくもあるグルーヴが面白い。
と同時に日本語でまっすぐ歌うヴォーカルも際立ち、
終盤に入るハーモニカもクールな“ソウル・ロックンロール”だ。

ピアノが導いていく3曲目の「ハミングバード」はドラムも目立ってゆっくりドライヴ。
しっとりした趣きをキープしつつ後半にフィードバックが入ってサイケデリックな磁場が強まっていく。

4曲目の「夜の鳥」も序盤はピアノがミニマルに続いてヴォーカルが重なる。
稲冨英樹+小池克典が最初にやった曲がBorisもカヴァーしたPYGの「花・太陽・雨」というのも納得の、
サイケデリックな鈍い光がまばゆいドラマチックな曲である。

ラストの「記憶」はオープニングとエンディングがエリック・サティの「ジムノペディ」も頭をよぎる曲。
ミニマル・ミュージック風のリズムで神経に響くピアノからもデリケイトなギターからも
シンプルだからこそ濃厚なサイケデリック・テイストがゆっくりと立ち現れ、
その中をヴォーカルがじっくりと歌い進めていくうちにアルバムの幕が閉じる。


ジャン・ジュネの著作と同名だったファーストに続き
今回のアルバム・タイトルもフランス絡みで、
ルイ・マル監督の1987年の映画から引用したという。
そんな流れで曲も音も歌詞もシャンソンの香りがほのかに漂る趣きだが、
やはり日本の歌。
「冬のこども」「花火」「ハミングバード」「夜の鳥」「記憶」という曲名からもイメージが伝わってきて
和の情趣が滲む歌詞の日本のロックだ。

何度も練り直して作った曲がていねいに仕上げられ、
人間が匂い立つ佳作である。


★稲冨英樹+小池克典『Au Revoir les Enfants さよなら こどもたち』(HK HK-002)CD
紙質にも気を使ったミニ・ポスター状の六つ折りペーパー・スリーヴ
(裏面は歌詞とその英訳、クレジット等で構成)の約31分5曲入り。
ディストリビューションはギューン・カセット・レーベル
http://gyuune.net/
が行なっている。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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