なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

JOJO広重(Jojo Hiroshige)『Triple Echo 2』『Triple Echo 3』

“キング・オブ・ノイズ”を標榜するバンドの非常階段のリーダー、
JOJO広重のギターによるドローンミュージック・アルバムの第二弾と第三弾。
どちらも昨年の9月13日のレコーディングだ。
共に限定100枚プレスで税抜3000円という意識的と思しき値段設定も含めて、
覚悟を決めて向き合うに値する作品に仕上げられている。
広重のイメージからは遠いようで聴感イメージは近いクサが彩るジャケットや
ここ数年の広重のイメージに近い陰陽の大極図を使ったジャケット内のデザインと、
ミックス+マスタリングを、
ここ数年の非常階段のライヴなどに参加もしているナスカ・カー・ナカヤが手掛けている。

jojoecho2.jpg
『Triple Echo 2』は「Triple Echo from Inner Mind Music Part 2」という74分1秒の1曲入りだ。
エレクトリック・ギターのみ使用とは思えぬ音で、
神経の糸みたいに細い音の帯のような高音域のドローンを展開。
マニアックなほど重度の“真性”サイケデリック・アルバムとも言える。
スピーカーから聴くとしたら、
スピーカーに向き合う耳の角度によって聞こえ方が違って意識が“無限大(∞)”になり、
至福のユートピア・・・いや桃源郷の門が開かれる。
CDケースのトレイ下には
“By playing three CD’s at the same time…the third eye may open”と書かれている。
僕のところの再生システムでは今回シリーズの3タイトルのCDを同時に鳴らすことは今できないが、
3枚のCDを同時再生すると、
ELP(Emerson, Lake & Palmer)の73年のアルバム『Brain Salad Surgery』の邦題である
“『恐怖の頭脳改革』”な気分に浸れそうだ。

jojoecho3.jpg
かたや『Triple Echo 3』は、
「Triple Echo from Inner Mind Music Part 3」という74分1秒の1曲入り。
こちらもクレジットによれば音源はエレクトリック・ギターのみを使用とのことだが、
電源というかエネルギーの源みたいなCDから“無限大(∞)”の音がビリビリ放射される。
こちらのCDトレイの下には
“Stay High - Stay High - Stay High - Stay High”とクレジットされている。
音圧もあるが、
“電圧”が宿っていると思うほどエレクトリックな磁場が強烈でいつのまにかハイになる。
『Triple Echo 1』と『Triple Echo 2』にもそういうニュアンスを感じるが、
このCDはさらにルー・リードの『Metal Machine Music』のように無限大の幻覚の旅へと誘う。
表情がゆっくりと移り変わりながら“やさしいメロディ”の繰り返しと重なりが永遠に連なるところは、
クラウス・シュルツのソロ初期作をはじめとする70年代のジャーマン・エレクトリック・ミュージックも思い出す。
こちらもリアル・サイケデリックな逸物だ。


やっぱりもし世界を変える音楽が存在し得るとしたら、
免罪符の裏返しの文句ばかりで無責任に調子いいことを歌う上っつらのメッセージ・ソングより、
人間の意識の深いところまでブッ刺すこういう響きの“音楽”だとあらためて実感する。
地球から産まれたな“多幸な危険物”の2種である。


★JOJO広重『トリプル・エコー2』(アルケミー ARCD-254)CD
★同『トリプル・エコー3』(同 ARCD025)CD
以上、2月8日発売。


加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『Trio Edge』

trioedgej_convert_20170128121456.jpg


早川岳晴(b~HAYAKAWA、KIKI BAND、麗蘭、元・生活向上委員会、DUBほか)と、
藤掛正隆(ds、エディット、エンジニア~BIRGIT、渋さ知らズほか、元ZENI GEVA、#9)を核にし、
様々なセッションを繰り広げてきたEDGEの最新作。
今回は奇才・加藤崇之(g)を迎え、
横浜のストーミー・マンデイでレコーディングされたCDである。

三人とも色んなことをやってきているミュージシャンだけに何が飛び出してくるかわからない。
何かと気心が知れていてリスペクトし合っている思しき三人だけに容赦も躊躇も遠慮もない
ギターとは思えぬ宇宙音も飛ばしながらシャープなトーンで“変態”を続ける加藤、
浮遊音込みでハジける早川、
手数多いヘヴィ・ロック・ドラムの藤掛が、
弛緩と加速を繰り返す。

政治性抜きのThe POP GROUPと 70~80年代のKING CRIMSONが、
ジャズ/ファンクをキーワードにダブ/レゲエなんかも密かにまぶしてセッションしているかのようでもある。
叙情性こそほぼないにしろKING CRIMSONでいえば『Island』あたりの静寂まで飲み込み、
ロバート・フリップがワイルドになったかのようなギターも漏れてくる。
“マイルス meets オーネット”なフリー・ジャズの現在進行形みたいなパートも含めて
インプロヴィセイションに聞こえるが、
曲名が付けられており、
あらかじめ作曲してあった曲を演奏しているようにも聞こえるコンパクトな編集も特筆したい。

表現物は正直な“生き物”である。
映画や文章と同じく音楽も向き合えば表現者の意識が浮かび上がってくるし、
複数でやっている音楽は人間関係も見えてくる。
このCDからは音での会話、
いや対話が聞こえてくる。
自己主張しながら他の人間の色を引き出す挑発もたびたびである。
媚びも驕りも支配も被支配もなく心地良く張りつめたハーモニーの関係性も見て取れる誠実な一枚。


★加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『Trio Edge』(フル・デザイン FDR-1034)CD
約51分6曲入りの薄手のプラケース仕様。


SOLDIER GARAGE『NOSTALGIA(2nd issue)』

ソルジャーガレージ


『小説現代』の挿画を描くなどイラストレイターとしても活動している、
日本の男性音楽家のソロ・ユニットによる約25分のCD-R作品。

PSF RecordsからリリースされたCD『赤い星』は2012年の私的ベストの一枚にも選ばせてもらったが、
これまた目の覚める一枚である。
再生して一秒で気配が変わって胸が静かにざわつく。

ギターとヴォーカルで紡ぐ「Shigure Shinjyuu」と「NOSTALGIA」の2曲を収めている。

1曲目の「Shigure Shinjyuu」はエレクトリック・ギターを弾く22分ほどの曲。
灰野敬二のエレクトリック・ギター弾き語り(CDなら91年年末録音の『慈』)や
不失者のゆっくりした歌ものナンバーも思い出す。
インスト・パートが多めながら、
鉛色の金属質のギターもすべてがもちろん“歌”である。

2曲目の「NOSTALGIA」はアコースティック・ギター弾き語りの3分弱だが、
エゴ丸出しの日本のフォークの流れとはまったく違う次元で鳴り響く。
崩れ落ちそうなほどのサイレント・アシッド・フォークであり、
これまた、やっとの思いで息を吐くように放たれる歌に心地良い胸騒ぎが止まらない。

デリケイトでスケールの大きいリアル・サイケデリックの絶品だ。


★SOLDIER GARAGE『NOSTALGIA(2nd issue)』(SGR-8(2))CD-R
“ふろしき包み”状の簡素な手作りペーパー・スリーヴ(注:現物の色は↑の画像より濃い)とインナーに
CD-Rが包まれた仕様になっている。
http://www.shimizumigiwa.com/


V.A.『Giga Noise』

『Giga Noise』


今年5月15日に東京・秋葉原で行なわれた“GIGA NOISE”フェスティヴァルから抜粋した2枚組CD。
当日出演した日本の全25組のライヴを収めている。


収録アーティストは以下のとおり。

<Disk 1>(約70分)
01:夢咲みちる
02:緊那羅:DESILA
03:井澤翔太
04:上田英生
05:Youko Heidy
06:山本邦彦
07:崎山洋孝
08:石上和也
09:佐藤諒
10:古舘健
11:沼田順
12:纐纈淳也
13:LES BELLES NOISEUSES
14:IMAIKILL
15:CazU-23
16:Kazuma Hyakutake
17:多井智紀・千洋
18:山本雅史
19:ファミコン地獄
20:DJ-SPEEDFARMER
21:竹下勇馬×中田粥
22:ドリーム・スカム・トゥルー
23:AXONOX+野本直輝

<Disk 2>(計約50分)
01:アストロ+HairStylistics(約34分)
02:JOJO広重+電子たくあん+ドラびでお(約16分)


新鋭の独演中心のDisk 1は要所を押さえて各々3分程度に抜粋してコンパクトにまとめ、
金太郎飴みたいな作りとは一線を画して厳選した全25組の特徴が凝縮されている。
14歳の中学生から壮年~年配のノイジシャンまでが揃い、
非常階段やMERZBOW、INCAPACITANTSといった日本の大御所からの影響を感じるどころか、
彼らを超えん!とばかりの勢いでノイズを放出している。
ユーモラスなノイズ、スペーシーなノイズ、ドローン・ノイズ、クラブ系ノイズ、ポップ・ノイズなどなど、
ストロング・スタイルのハーシュ・ノイズは意外と少なく、
TURTLE ISLANDでギターを弾くCazU-23のサイケデリック・ノイズも素晴らしい。
ジャケットに記された“Future of Noise”というフレーズの意味がノイズそのもので示されていき、
“ショートカット”で何が飛び出してくるかわからない鉄砲玉みたいなスリルのCDだ。

ベテラン中心のノイジシャンの2つのセッションから成るDisk 2はロング・パフォーマンスである。
アストロ+HairStylisticsは“水と油が反目しながら混ざっていく貫禄とユーモアのノイズで、
JOJO広重+電子たくあん+ドラびでおは非常階段の別ヴァージョンのような趣でも楽しめる。


音の“かたち”が見えてくるほど良好な音質も特筆したい。
だからこそノイズの妙味も楽しめるオムニバス盤だ。


★V.A.『ギガノイズ』(アルケミー ARCD-252/253)CD
全25組の写真で彩った8ページのブックレットに加え、
どらびでお/一楽儀光(非常階段のJOJO広重とともに本作のプロデューサー)のライナーや
全25組の紹介文がん載った六つ折りインナー封入。
実際のジャケットの色は全体的にもっと濃いめです。


田畑満+金子ユキ『Caño Cristales』

田畑


ACID MOTHERS TEMPLEなどで自由な活動を30年以上続ける元ZENI GEVAの奇才・田畑満と、
ACID MOTHERS TEMPLEの河端一らとのFLOATING FLOWERで活動してきて
今年1月には勝井祐二とのCD『Mythos』も出している金子ユキの、
コラボレーションCD。

単なる一時的なセッションとは一線を画す一種のユニットで、
これは一昨年のセルフ・タイトルのアルバム以来のセカンドになる作品である。
田畑が“guitar with guitar synthesizer”、
金子がelectric violinを演奏し、
一昨年の11月に神戸と京都と大阪で録音した約58分4曲入りだ。


インプロヴィゼイションでオーヴァーダビング無しとのことだが、
あらかじめ作曲された曲を演奏しているかのごとく琴線に触れる“サウンド眺望”である。
“虹色の川”とも呼ばれる南米コロンビアのキャノ・クリスタレスをアルバム・タイトルにしているだけに、
色の表情が変移していく幻惑の音宇宙を創造していくパフォーマンスで、
もちろん合成着色料の音ではなく天然の“無限色”をたたえている。

マジカルで幽玄な佇まいながら人なつこく、
コズミックにリズカルで躍動する鮮烈な響きだ。
ところによってはオリエンタル・テイストでインドっぽい旋律も丁寧かつダイナミックに綴れ織り、
アグレッシヴな絡みはスリリングですらある。
アンビエントものやポスト・ロックものとは別次元で飛翔し、
必ずしも多幸ではなく暗鬱な調べにも彩られたデリケイトな生気が溢れている。
ブルースもドローンも息づき、
いわゆるシスコ・サウンドとトニー・コンラッドとのミッシング・リンクのような音像にとろけるしかない。

底無し沼の至福の冥界にゆっくりと吸い込んでいく、
たおやかに研ぎ澄まされたリアル・サイケデリック・ミュージックの佳作である。


★田畑満+金子ユキ『Caño Cristales』(スローダウン SDRSW 05)CD
薄手のペーパー・スリーヴ仕様ながらCD盤は厚紙CD袋に収納されていて折れにくいパッケージだ。
レコードみたいな“33RPM”や“45RPM”ではなく、
“480RPM”というCD盤に書かれた表記もたいへんオチャメである。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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