なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

阿部怪異『阿部怪異』

阿部怪異


非常階段JOJO広重やT.美川(INCAPACITANTS)も参加して80年代初頭に活動していたユニット、
阿部怪異(ABEKAII)の唯一の単独作であるカセット・アルバムのCDリイシュー。
そのカセットのA面とB面がCDの一トラックにすべて収められているが、
一つのトラックに数曲分収められているようにも聞こえる2トラック入りだ。
ちなみにカセット・テープでのオリジナル版のリリース元は、
灰野敬二やタコ(TACO)のファーストも出したPINAKOTHECA Recordsである。

各々のセッションによって5~6人が参加していたようで、
ドラム、ギター、キーボード、ベース、シンセサイザー、サックスなどを使い、
ほぼインストのフリー・ミュージックといった趣。
とはいえパワフルなドラムが鍵を握っている演奏だからけっこうノりやすく、
ロックである。

フリー・ジャズ、ポスト・パンク、ミッド・テンポの宇宙音楽、純プログレ、
ショート・カット・パートの繰り返しなどなどで構成され、
ちょいポップ、でもフリーキー、ところによってファンキー。
不失者、THIS HEAT、CONTORTIONSを思い出す瞬間もある。
もちろんエエかっこしいみたいなのじゃないしサブカル臭もなく、
パンク・ロックから逸脱していた初期関西パンクの流れをしっかりくんでいるやんちゃな演奏で、
RAMONESのディー・ディー・ラモーンばりの“カウント”もところによっては聞こえてくる。

セリフなどが入っているわけではなく音楽オンリーだが、
何が飛び出してくるかわからない“ドラマ仕立て”の流れ。
ユニット名を時代劇『子連れ狼』の登場人物から引用したことに納得の珍妙な緊迫感に包まれた怪盤、
いや快盤である。


★阿部怪異『阿部怪異』(ALCHEMY ARCD-257)CD
ユニット名の名付け親でもある美川のライナー付の約47分2曲入り。


20 GUILDERS『2』

20 GUILDERS『2』


近年はACID MOTHER TEMPLEやGREEN FLAMESで世界的に多彩な活動を展開し続けているタバタミツル
みみのことのフロントマンでもあるスズキジュンゾによる、
“20ギルダーズ”が結成10年目に放った約5年ぶりのスタジオ録音セカンド・フル・アルバム。

タバタは80年代から、
のいずんずり、BOREDOMS、LENINGRAD BLUES MACHINE、ZENI GEVAでキャリアを重ね、
スズキはソロでも多作しているミュージシャンだ。
タバタは、ヴォーカル、エレクトリック・ギター、アコースティック6弦・12弦ギター、ベース、
コーラス、シンセサイザー、オルガン・マシーン、
スズキは、ヴォーカル、アコースティック6弦・12弦ギター、エレクトリック・ギター、コーラス、
シュルティ・ボックス、ベース、ハーモニカなどを担当。
高橋幾郎(元HIGH RISE、光束夜、MAHER SHALAL HASH BAZ、Che-SHIZU、不失者/
現・血と雫)が全9曲中6曲でドラムを叩き、
リチャード・ホーナーがエンジニアを務めている。

曲ごとにリード・ヴォーカルをシェアし合う体制で
陽性の侘び寂びが滲む“日本語エレクトリック・アシッド・フォーク・ロック”が繰り出される。
お茶目でストレンジなポップ・アレンジも施されている中で、
さりげなく筋金入りの真正ナチュラル・サイケデリック・チューンの連続に酔わされるばかりだ。
LED ZEPPELINのサードに入っていても不思議はないリリカルな曲や、
“エレクトリック・ニール・ヤング”のような9分近くに及ぶ曲にも痺れる。

歌ものと言えるだろうが、
必ずしもヴォーカルが前に出てきているわけではない。
楽器もたっぷり歌っており、
ヴォーカルと音とのハーモニーを楽しめるミックスにもなっている。

もちろん声は生だ。
なんらポーズつけぬデリケイトきわまりない歌声も心に響く。
初々しいタバタのヴォーカルは、
90年代前半に活動していた伝説のバンド“ハカイダーズ”時代も思い出す繊細歌唱だ。
晴れやかに苦み走ったスズキの歌唱も渋くてたまらない。
曲によっては60年代後半から70年代前半の軽やかな日本のフォーク・ミュージックも思わせるほど
人なつこいが、
“バターになった三匹の虎”を歌う「焚曲」をはじめとして、
“業”を感じさせる歌詞は底無し沼の諦観と達観の境地に達している。

深い、深い、歌心がゆっくりところがる。
オススメ。


★20 GUILDERS『2』(gyuune cassette CD95-67)CD
8ページのブックレット封入の約47分9曲入り。


ホアチョ×藤掛正隆(Whacho×Fujikake)『2.6METS』

FDR2027j.jpg


ホアチョ(KILLING TIME、ウズマキマズウ、スプラトゥトラプス他)と
藤掛正隆(元ZENI GEVA~#9、現・渋さ知らズ他)による打楽器中心のCD。
横浜ストーミーマンデーにおける2014年4月のライヴ音源を
藤掛が編集とミックスを行なって仕上げた約70分7曲入りの作品である。

ホアチョはパーカッション、ULTサウンド、ウェイヴ・ドラム、toycussion、エレクトロニクス、
藤掛はドラム、リズム・ボックス、エレクトロニクスで音を鳴らす。
藤掛が力強いドラムで足腰を担い、
ホアチョが遊び心を転がしていくパートが多いとはいえ、
相性バッチリの二人だけにはっきりした役割分担がないような演奏だ。

反復リズムを基本にプリミティヴな音がポップに踊り躍り、
諧謔精神も滲み出ているが
人を食ったような滑稽演奏もひっくるめて全部もちろん真剣プレイ。
頭デッカチじゃなくパワフルな肉体演奏である。
ジャングルと宇宙と海中を行きかうようで、
ところによっては四つ打ちも挿入され、
ところによってはベーシストが参加していると錯覚するダブっぽいグルーヴ感も内包し、
ところによっては声みたいな音声も聞こえてくる。

インプロヴィゼイションというより“曲”だし、
エレクトロニクスによるものと思しき哀愁メロディなどいわゆる音階も感じられるから親しみやすい。
様々な“ビート”の彩り豊かな音色や弾力感もしっかり収めた仕上がりも特筆したいCD。


★ホアチョ×藤掛正隆『2.6METS』(FULL DESIGN FDR-2027)CD
本作の雰囲気がよく表われているホアチョ撮影の写真のジャケットが封入された薄手のプラケース仕様。
二人それぞれとユニット等をやってきているホッピー神山のライナー付。


RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』

藤田亮


柳川芳命などの様々なミュージシャンと共演する一方で須原敬三らとバンド活動も行ない、
大阪拠点に多彩な活動を繰り広げている1976年生まれの藤田亮の新作。
いわゆる他の打楽器類も使っているように聞こえるが、
オーヴァーダビング無しのドラム独演一発録りと思しき約22分1トラック入りだ。


藤田がインスパイアされたバンドCHAOS UKの83年のファースト・アルバムを思い出すジャケットだが
(ちなみに裏面[↓の画像]はINUの『メシ喰うな!』)、
パロディというよりオマージュの気持ちが感じられる。
音の方はノイズ・コアではなく、
あえて轟音と正反対の、ちいさな、ちいさな音で勝負したかのようで、
ジャケットの4つの黒い四角形を手描きしたことに象徴されるように、
音も手作りの佇まいだ。

祭太鼓みたいなリズムやマーチング・ドラムのリズムも息をしていて、
いわゆるロックのリズムとは一線を画す。
かといってジャズでもなく、
いかにも民俗音楽とも違う。
原始のリズムであり、
太古(ancient)からのリズムにも聞こえるが、
すべては藤田自身の律動である。

実際は使っているのだが、
バス・ドラム(キック)の音はほとんど聞こえてこないほどの打ち方だ。
スネアの音は転がり、
ところによってはスティックを使わずに手で叩いているようでもある。
たいへんデリケイトにシンバルを多用しているところも特色で、
個人的には様々なジャンル含めて最近の作品ではあまり聴いたことがないほど高音域が際立つ。

静寂を司り、
贅を削ぎ落とし殺ぎ落とし、
研ぎ澄まされている。
精気が静かに息づく覚醒の調べに、
霊魂(soul/spirit)を呼び起こすような意志と意思が宿る。
祈祷の音楽といっても過言ではない。

灰野敬二のパーカッション・ソロ・パフォーマンスも思い出す。
ただし藤田はドラム・セットを使っていると思われ、
いわゆるロック・バンドのドラム・ソロのダイナミズムも内包しているのが嬉しい。

マイクの立て方などの録音方法やマスタリングなどにも気を配ったと思しき、
音の定位が見えてくる立体感抜群のレコーディングの仕上がりも特筆したい。
ドラムを打っている腕の動きも見えてくるほどだ。
だからこそヴォリュームによって聞こえ方が違い、
ヴォリュームを下げてもドラム・セットの各部分の響きがしっかり聞こえてくるが、
それでもなお“プレイ・ラウド!”とも言いたくなる。

確かな個性が光る一枚。

藤田亮 ジャケット裏

★RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』(No Label, No Number)CD-R
薄手のプラケース仕様ながら厚手の紙のしっかりした作りのジャケット封入。
https://www.facebook.com/rfujita3


JOJO広重(Jojo Hiroshige)『Triple Echo 2』『Triple Echo 3』

“キング・オブ・ノイズ”を標榜するバンドの非常階段のリーダー、
JOJO広重のギターによるドローンミュージック・アルバムの第二弾と第三弾。
どちらも昨年の9月13日のレコーディングだ。
共に限定100枚プレスで税抜3000円という意識的と思しき値段設定も含めて、
覚悟を決めて向き合うに値する作品に仕上げられている。
広重のイメージからは遠いようで聴感イメージは近いクサが彩るジャケットや
ここ数年の広重のイメージに近い陰陽の大極図を使ったジャケット内のデザインと、
ミックス+マスタリングを、
ここ数年の非常階段のライヴなどに参加もしているナスカ・カー・ナカヤが手掛けている。

jojoecho2.jpg
『Triple Echo 2』は「Triple Echo from Inner Mind Music Part 2」という74分1秒の1曲入りだ。
エレクトリック・ギターのみ使用とは思えぬ音で、
神経の糸みたいに細い音の帯のような高音域のドローンを展開。
マニアックなほど重度の“真性”サイケデリック・アルバムとも言える。
スピーカーから聴くとしたら、
スピーカーに向き合う耳の角度によって聞こえ方が違って意識が“無限大(∞)”になり、
至福のユートピア・・・いや桃源郷の門が開かれる。
CDケースのトレイ下には
“By playing three CD’s at the same time…the third eye may open”と書かれている。
僕のところの再生システムでは今回シリーズの3タイトルのCDを同時に鳴らすことは今できないが、
3枚のCDを同時再生すると、
ELP(Emerson, Lake & Palmer)の73年のアルバム『Brain Salad Surgery』の邦題である
“『恐怖の頭脳改革』”な気分に浸れそうだ。

jojoecho3.jpg
かたや『Triple Echo 3』は、
「Triple Echo from Inner Mind Music Part 3」という74分1秒の1曲入り。
こちらもクレジットによれば音源はエレクトリック・ギターのみを使用とのことだが、
電源というかエネルギーの源みたいなCDから“無限大(∞)”の音がビリビリ放射される。
こちらのCDトレイの下には
“Stay High - Stay High - Stay High - Stay High”とクレジットされている。
音圧もあるが、
“電圧”が宿っていると思うほどエレクトリックな磁場が強烈でいつのまにかハイになる。
『Triple Echo 1』と『Triple Echo 2』にもそういうニュアンスを感じるが、
このCDはさらにルー・リードの『Metal Machine Music』のように無限大の幻覚の旅へと誘う。
表情がゆっくりと移り変わりながら“やさしいメロディ”の繰り返しと重なりが永遠に連なるところは、
クラウス・シュルツのソロ初期作をはじめとする70年代のジャーマン・エレクトリック・ミュージックも思い出す。
こちらもリアル・サイケデリックな逸物だ。


やっぱりもし世界を変える音楽が存在し得るとしたら、
免罪符の裏返しの文句ばかりで無責任に調子いいことを歌う上っつらのメッセージ・ソングより、
人間の意識の深いところまでブッ刺すこういう響きの“音楽”だとあらためて実感する。
地球から産まれたな“多幸な危険物”の2種である。


★JOJO広重『トリプル・エコー2』(アルケミー ARCD-254)CD
★同『トリプル・エコー3』(同 ARCD025)CD
以上、2月8日発売。


« 新しい日記に行く  | HOME |  古い日記に行く »

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (239)
JOB/WORK (287)
映画 (238)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (41)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (395)
EXTREME METAL (127)
UNDERGROUND? (88)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (117)
FEMALE SINGER (41)
POPULAR MUSIC (24)
ROCK (77)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん