なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

本『ヘドバン・スピンオフ ヘドバン的「メタルの古典」100枚』

メタルの古典


11タイトルのアルバムを書かせてもらいました。
字数たっぷりです。


<シンコー・ミュージック・ムック>
A4変型判 96ページ
税込み ¥ 1,296


レコード・コレクターズ 2017年5月号

RC-201705.jpg


【特集】 『レココレ』読者が絶対に聴くべき21世紀の名盤(創刊35周年/通巻500号記念企画)
★2001年以降に発表された洋楽ロックの新作アルバムから
60~70年代的なサウンドを意識して厳選された200枚。
OPETHBLOOD CEREMONY、デイヴィッド・シルヴィアン、Antony And The Johnsons、
グレッグ・グラフィン、パティ・スミスAC/DCJUDAS PRIESTGHOST
のアルバムを書かせてもらいました。
★筆者アンケート~読者にお薦めする“こだわりの"もう一枚。


●ミック・ロック
デイヴィッド・ボウイルー・リードなどの撮影で知られる、
ロック写真家/映像作家のインタヴュー。


●リイシュー・アルバム・ガイド

CHAOS Z『Ohne Gnade』
★CHAOS Z『Ohne Gnade』(ALICE IN... AIW 183)CD

CHAOS Z『45 Jahre Ohne Bewährung』
★CHAOS Z『45 Jahre Ohne Bewahrung』(同 AIW 182)CD


Lou Reed+V.A.『The Many Faces Of Lou Reed』

Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』


昨年の終り頃に発売された3枚組CD。
79年のアルバム『The Bells』のジャケットを加工したようなジャケットからして
これまた怪しい企画盤のブツだが、
一般のディストリビューションで流通しているし安価で販売されているから紹介する。


ディスク1はルー・リード関連の様々なレア音源集の約69分12曲入り。
1曲目はフェルナンド・ソーンダースが2012年のソロ・アルバム『Happiness』に収めた
VELVET UNDERGROUNDの「Jesus」のカヴァー。
フェルナンドは82年前半からほぼ最期までベースとバッキング・ヴォーカルでルーを支えた人で、
ここではギターを持ったルーとデュエットしているが、
ほぼルーがリード・ヴォーカルをとっている。
2曲目はブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. & the M.G.s)の「The Bronx」で、
やはりルーが参加している。
3曲目から10曲目まではVELVET UNDERGROUNDのライヴ。
録音日は不明でライナーによれば69年のステージとのことだ。
オリジナル・アルバムでは未録音の「Sweet Bonnie Brown」と「It's Just Too Much」のメドレーは、
『1969: The Velvet Underground Live』に入っていることでファンには知られているが、
ディスク1の他のVELVET UNDERGROUNDのライヴ音源もそのアルバムのテイクと同じに聞こえる。
そのライヴ盤のMCや観客の歓声等をカットしたもののように思えるが、
ともあれ臨場感十分の音質良好硬質サウンドである。

ディスク1の終盤の11曲目と12曲目はルーのソロ・ライヴで、
ライナーによれば約71分のディスク2の12曲と合わせて
76年の“ロックンロール・ハート・ツアー”の中の一回分のステージがすべて収められているという。
これまた録音日は不明だが、
こちらも音質良好で熱い。

約49分のディスク3は14組によるVELVET UNDERGROUNDやルー・リードの曲のカヴァー集。
曲順は変更されているが、
2003年発売の『After Hours: A Tribute to the Music of Lou Reed』の曲が丸ごと入っている。
VELVET UNDERGROUNDの曲が過半数を占め、
ルーがソロで発表した曲もほとんどが70年代前半の曲だ。
僕の知らない参加者がほとんどで調べてもあまり情報が出てこないアーティストが多いが、
どのヴァージョンもけっこう引きつけられる。
メロディ・メイカーとしてのルー・リードの魅力を伝えるカヴァーがほとんどで、
「All Tomorrow’s Parties」を「All Tomorrow’s(Beach)Parties」と改題して
サーフ・インスト・カヴァーに仕立てたヴァージョンも楽しい。
72年のセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバム収録の「Going Down」や、
84年の『New Sensations』収録の「Turn To Me」、
92年の『Magic And Loss』収録の「Cremation」のカヴァーも目の付け所が面白いしクールだ。
VELVET UNDERGROUND時代に未発表のルーの曲「I Love You」「Temptation Inside Your Heart」の
カヴァーも渋い。


★Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』(MUSIC BROKERS MBB7241)3CD
デジパック仕様。


周尾淳一『The Third』

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“三島由紀夫、ジム・トンプスン、稲垣足穂(以上、作家)、
柳町光男、アレハンドロ・ホドロフスキー、アンドレイ・タルコフスキー、松本俊夫(以上、映画監督)、
コニー・プランク、SUICIDE、ジム・フィータス、エイフィックス・ツイン、ヤニス・クセナキス、
デイヴィッド・チュードア、ハリー・ベルトイア(以上、いわゆる音楽家)に捧げる。“

本人によるそんな言葉がハッタリではない作品が日本の東北からリリースされている。
岩手県花巻市を拠点にしている周尾淳一(Schuo Jun’ichi)の6枚組CD-Rだ。

『山海経』(2008年)と『Variation V』(2009年)に続く周尾の3作目で、
もともと一般的なディストリビューションではなく、
“ディスクコンサート”会場で希望者のリクエストにより1~6枚コピーして販売する音源発表を
2015年から行なってきた作品である。
極一部の人にしか聴かれないのは惜しいと思っていたが、
このたび6枚セットでインターネットを通じても入手可能になったから紹介する。


再生して1秒で場の空気が一変する。

パッケージは簡素でCD-Rというフォーマットながら、
安易な音の作りとは対極の執念すら感じさせる緻密な仕上がりだ。
制作に用いた機材や手法等は不明ながら音の方も手作りの様相で、
デリケイト極まりない“気”が静かに熱くみなぎる。
一度耳にしたら一生忘れないほど彫りが深く研ぎ澄まされた我流の音像に聴き惚れ、
音の中に引き込み吸い込んでいくエネルギッシュなうねりに目が覚める。


一般的な感覚だとノイズ(・ミュージック)といえばノイズ(・ミュージック)なのかもしれないが、
THROBBING GRISTLEのようなインダストリアル・ノイズとも
日本伝統のハーシュ・ノイズとも一線を画す。
アンビエントもドローンもミニマル・ミュージックもすべて飲み込み、
“雑音”というより、
響きのひとつひとつをていねいに磨き上げて研ぎ澄ました音の“群像”である。
これぞまさに“音響彫刻”だ。
だがこの金属質の音は決してひとつの所に留まっていない。
“精”を吹き込まれて自由な生命体として動いている。

全トラックが違う。
しゃべくっているようでもあり、
無数のヒダの動きもあり、
フリー・ジャズっぽくもあり、
おちゃめでポップでもある。
ただ音声のサンプリングのようなものも聞こえてくる一方で、
静かなパートも含み、
ヘヴィにも轟き、
持続低音に圧倒され、
鈍く光る音の層の美しさに息を呑む。

金属を使って音を放射させるライヴをイメージするサウンドの広がりもあり、
細かい音の粒の渦が炉を成した鉱物みたいであり、
音圧も十分。
インプロヴィゼイションのようで一つの流れを成すように“作曲”され、
“メロディ”も“リズム”も密かに息づく聞かせどころを設けた構成力も見事。
動きが克明に見えてくる立体的で生々しい音の仕上がりも驚愕だ。

何より音に芯がある。
だから折れることはない。
飛ばされて覚醒される380分近くに及ぶ力作だ。


★周尾淳一『The Third』(No Label Shu01~Shu06)6CD-R
Disk-1は約74分16秒3トラック入り、
Disk-2は約60分2トラック入り、
Disk-3は約53分3トラック入り、
Disk-4は約77分3トラック入り、
Disk-5は約48分1トラック入り、
Disk-6は約66分1トラック入り。
ディスクノート盛岡で入手可能だ。
http://www.morioka-record.com/


映画『パージ:大統領令』

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“1年に一晩12時間だけ殺人を含むすべての犯罪が合法化される”という法律の是非を問う、
米国大統領選の真っ只中のカオスを描いた2016年のアメリカ映画。
『パージ』『パージ:アナーキー』に続く“パージ”シリーズの第三弾である。
ロックンロールを産んだ地だけに良くも悪くももともと馬鹿げた気風を持つ国だが、
荒唐無稽ながら銃社会で何が起こっても不思議はない今の米国ならあながち誇大妄想とは思えぬ設定だ。
スリラー/ホラー・テイストに彩られたテンポのいいエンタテインメント作品ながら、
リアリスティックに仕上げられていて最後まで目が離せない。
デイヴィッド・ボウイの「I'm Afraid Of Americans」などの音楽も場を盛り立てる。


オーエンズ牧師率いる極右政権NFFA(New Founding Fathers of America)が支配するアメリカ。
政府は犯罪抑制の最終手段として、
“パージ(purge[粛清])”こそがアメリカを偉大にしていると容認していた。
だが“パージ”が貧困層や弱者を排除しようとしていると訴える無所属のローン上院議員らの台頭により、
賛成派と反対派との間で国内は分断されてこの映画の舞台のワシントンDCでも加熱。
選挙戦でオーエンズ牧師が苦戦を強いられている大統領選の真っ只中で
警察も病院も機能しない“パージ”の12時間が幕を開け、
ローン上院議員がNFFAに狙われる。

以上がストーリーの序盤の大筋である。

メイン

まず映画館のスクリーンで見る価値ありありのダイナミックな映像に引き込まれる。
アメリカン映画ならではの派手なヤり合いが堪能できるし、
血も大量に流れるからホラー映画としても楽しめる。
ただ会話の端々にはクスッと笑えるユーモアもまぶされているが、
すべてにおいて中途半端なジョークに逃げることはない。

この映画がハロウィンの大人版みたいなコスプレでもって“パージ”しているところに、
お祭り騒ぎで人殺しをすることに対する皮肉を感じる。
お菓子のチョコバーの万引きを咎められた女子高生が店主にリベンジするレベルのものとか、
ほとんど単なる腹いせレベルで“生贄”をヤることも多く、
イージーな殺人事件の多発を表しているようにも見える“パージ”だ。
戦争などだけでなく一般的に“死”を軽く扱う風潮へのグロテスクな警告にも映る。
だから殺しのシーンも真剣で、
『バイオレンスジャック』や『北斗の拳』を彷彿とさせる漫画ちっくなシチュエーションを
シリアスな表現力で強靭なものにしている。
こういうことをリアルな事象として捉えて描いた映像と脚本だからリアルに響いてくる。

夫婦間のもつれ等のワケありの“パージ”も行なわれるが、
いわば“ガス抜き”でストレス発散の単なる弱い者いじめが多い。
“パージ”は浄化であり社会の役に立たない“ゴミ”の大掃除が目的ということになっている。
なんでもかんでも“クリーン”を良しとして“汚れ”を許さない妙な潔癖症の最近の日本も思い浮かぶ。

サブ1

本物の米国大統領選真っ只中に制作された映画ならではの生々しく生臭いエグさに引き込まれる。
ラフな作りのようで米国の様々な”要素“を緻密に引っかけて示唆に富むところがポイントだ。

ローン上院議員とオーエンズ牧師がメインの登場人物と言えるが、
大統領候補ながら一種の黒幕みたいな存在になっているオーエンズ牧師はそれほど表に出てこない。
暗殺のターゲットになったローン上院議員はもちろんこと、
彼女を“守る”人たちが映画にヒューマンな肉付けをしている。
ローン上院議員のボディガードを仕事で担っている男もいるが、
全員が“パージ反対”とはいえ偶然の出会いで彼女をガードすることになった人たちだ。
その面々が、
犯罪歴を持ちながら“アメリカン・ドリーム”よろしくとばかりにコツコツ努力し“社会の底辺”で更生し、
米国の良き部分のDIY精神で自分の生活/存在基盤を築いた者ばかりというのも特筆したい。

脚本が書かれたのが2014年ということに驚かされる。
2年後を予見していたみたいなカオスで、
撮影当時は候補者の一人だったトランプ大統領の誕生を意識したかのようなディテールなのだ。

トランプを支持したのはいわゆる“ラスト・ベルト”をはじめとする貧困層が目立つらしいが、
この映画の“パージ”がホームレスなどの最極貧層を標的にしている点も興味深い。
“反パージ”の面々が黒人中心ということと、
“反パージ”を殲滅せんとする白人至上主義の傭兵の存在に象徴されるように、
人種問題を反映しているようにも思える。
ヒスパニックの問題は昔からとはいえメキシコ移民の男も主要登場人物にしているのも驚きだ。
監督らがヒラリー・クリントンを支持していたかどうかは関係なく、
“パージ”反対を訴えるこの大統領選の“対抗馬”のローン議員が女性という設定も、
トランプやそのブレイン達の女性蔑視への異議を意識していると解釈できてしまうほどだ。
大統領選の有力候補のオーエンズ牧師が仕切る“処刑”が教会で行なわれ、
それがまたイスラム国を思わせるプリミティヴな手法なのも宗教問題への強烈な批評である。
DEAD KENNEDYS(『In God We Trust, Inc.』収録の「Moral Majority」参照)やMDCなどの、
米国の政治的なパンク・バンドが歌ってきたモラル・マジョリティの問題もイメージする。

サブ2

“反パージ”の人間も一枚岩ではなく結束し得ないところもリアリティがある。
ギャングが一種の“義賊”になって鍵を握り、
“正邪”が入り乱れていることも本作の“隠れメッセージ”にも思える。
“クリーン”を唱える絶対的な正義こそ恐ろしいのは“パージ派”を見ればわかろうってものだ。

話し合いを試みた狂信者が殺されたからこそ生き延びられたような人もいる。
殺さなければ殺される。
それがUSA!と言ってしまえばそれまでだが、
理想を現実のものにするためにナイーヴな楽観性はお呼びじゃないのが冷厳な現実。
だから終盤も“大団円”で収まらず、
混乱が続くことを示すエンディングも現在進行形の世界と共振している。

一見の価値あり。


★映画『パージ:大統領令』
2016年/アメリカ/109分/スコープサイズ/ドルビーデジタル5,1ch/R15+
4/14(金)からTOHOシネマズ 日劇他にて公開。
製作:ジェイソン・ブラム(『パラノーマル・アクティビティ』『インシディアス』)
×マイケル・ベイ(『トランスフォーマー』)
監督・脚本:ジェームズ・デモナコ(『パージ』『パージ:アナーキー』)
主演:フランク・グリロ(『パージ:アナーキー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』)他。
ユニバーサル映画  配給:パルコ  
製作:プラチナム・デューンズ、ブラムハウス、マン・イン・ア・ツリー・プロダクション製作
(C) 2016 Universal Studios.
http://purge-movie.com/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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