なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(DVD)

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米国テキサス生まれのシンガーだったジャニス・ジョプリンのドキュメンタリーDVD。

昨年日本公開もされた映画で、
本人や関係者の話と映像/写真でシンプルに構成し、
1943年1月の誕生から1970年10月の他界までを順に追ったオーソドックスな作りである。
地味な仕上がりが実はジャニスらしいし、
それがまた切ない。
音楽ドキュメンタリー映画によくある他のミュージシャンなどの“絶賛トーク”は本編に含めず、
ハードボイルドな編集で勝負。
やんちゃで早くも進取の精神に富んでいた子供の頃やイジメられた高校/大学時代を経て
人前で歌うようになり、
脚光を浴びる中でバンド・メンバーや色々な人との確執や軋轢が増していくまでの流れが
わかりやすく描かれている。

ライヴやインタヴュー等におけるジャニスの昔の映像や写真はもちろんのこと、
コンサートの観客の様子やニュース・フィルムの映像からも時代の匂いが漂ってくる。
テレビ番組やスタジオなどでのジャニスはあまり屈託を感じさせずにオチャメで豪快にも見えるが、
だからこそ逆に心に刻まれ続けた深手がひしひしと伝わってくる作品だ。
この映画を観るとステージでの彼女はいつも重い。
解き放たれるために歌っているように映る。

あまり悩みを公けにはせずに笑い飛ばそうとする気質もあって、
当時のジャニスのインタヴューではせいぜいほのめかす程度しか孤独や“痛み”が語られていない。
彼女が抱え込んだものは、
この映画のために収録したものと思しき関係者たちの談話で炙り出される
ジョン・レノンなど当時話している映像も一部あり)。
妹、弟、幼馴染、高校時代やテキサス時代の男友達、歌い始めた頃に“同棲”していた“彼女”、元彼、
バンド・メンバー、ローリング・ストーン誌の記者、レコード会社の人、テレビ番組の司会者、
映画『モンタレー・ポップ』の監督らが、
ジャニスを率直に語っている。

母親をはじめとする家族にマメに送っていた手紙をたくさん公開しているのも特筆したい。
米国の女優が代読してナレーションのようになっているのも効果的で、
家族に対するジャニスの思いもこっちに染み込んでくる。

スキャンダラスな人だけに関係者の発言も慎重にピックアップしたと思われるが、
それでも赤裸々な言葉も多い。
何かと言い訳を付けて本質を隠す“伏字文化”の日本の音楽ドキュメンタリーではなかなかない作りだ。
とりわけ活動後期はヘロインとアルコールに浸かっていたようで、
“セックス、ドラッグ、ロックンロール”のイメージを体現していたようにも映る。
容姿に対するコンプレックスをハングリーなエナジーに昇華して
“自己実現”への執念に燃えていたようにも見えるが、
似て非なるものでヤリマンというより“恋多き女”と言いたい。

「しあわせになりたいだけなのに」という、
とある人物に宛てた手紙のシンプルな言葉がとても心に響く映画だ。


DVDの映像特典についても触れておきたい。
映画のために行なった関係者のトークがほとんどで、
本編に含めたら散漫になって全体の流れを削ぐとはいえ公開しないのは惜しいもので構成されている。
ジャニスの酒呑みの話やジャニスがヘルズ・エンジェルスと向き合った話など、
そそられるエピソードがいっぱいだ。
この映画の監督らが制作秘話明かすトーク番組、
Big Brother and the Holding Companyの3人の新規収録アカペラ、
メリサ・エスリッジなどがジャニスからの影響を語る映像、
映画の予告編(2ヴァージョン)も観られる。


★『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(キング KIBF 1460)DVD
本編104分+映像特典計約53分。


レコード・コレクターズ 2017年3月号

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【特集】ブリティッシュ・ハード・ロックの誕生
●ブリティッシュ・ハード・ロック・アルバム選 1966-1971
ブリティッシュ・ハード・ロック黎明期のアルバムの11タイトルを書かせてもらいました。


●パブリック・イメージ・リミテッド(PiL)
『Metal Box』『Album』のデラックス・エディションの紹介原稿。


●リイシュー・アルバム・ガイド
★マーク・ボラン(T・レックス)『トゥーペニー・プリンス』
★イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ『テルリック・カオス~ライヴ・イン・シブヤ 2004』
★ブルース・スプリングスティーン『チャプター・アンド・ヴァース』(LP)
★ガール
・『シアー・グリード』
・『ウエステッド・ユース』

BLADES『Surf City Punkrock』
★BLADES『Surf City Punkrock』(GUMMOPUNX GPR023)LP


映画『ミス・サイゴン:25周年記念公演 in ロンドン』

『ミス・サイゴン 25th』メインビジュアル(横)


ミュージカル『ミス・サイゴン』25周年記念公演の“映画化”作品。

『ミス・サイゴン』はもともと1989年9月20日初演の舞台だ。
今回の映画はその上演25周年を記念して
2014年9月にロンドンで1回のみ敢行されたアップデート・ヴァージョンのステージを基に、
映画のために後日観客を入れずに行なわれた追加撮影分を合わせて仕上げられている。
2回の休憩タイムをはさむ“3部構成”で3時間を越える大作だが、
いっときたりとも目が離せないダイナミック&デリケイトな快作だ。


ベトナム戦争末期のサイゴンのナイトクラブで働く少女とアメリカ大使館軍属の運転手の悲恋が描かれる。
ロマンスや親子関係/夫婦関係といった人間のつながりをテーマにしつつ、
ベトナム戦争で負ったアメリカンの精神的な後遺症(いわゆるPTSD)も含む
政治的な側面もさりげなく絡められている。
わかりやすいストーリー展開で結末はショッキングだが、
ポジティヴなエナジーがすべてにみなぎる作品だ。

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本作のエナジーの源は役者たちの猛烈な熱演である。
主演の二人は言わずもがな、
数えきれないほど多数のすべての出演者がこの瞬間に賭ける圧倒的な熱量で演じている。
やはり撮り直しができる一般的な映画とは違う舞台演劇ならではのライヴ感が凄まじい。

ミュージカルだからセリフのほとんどは“歌”になっていてテンポが抜群に良く、
鍛えられた発声に舌を巻くと同時に表現力に痺れる。
大声だけで終わらず感情の機微が表われた声を自然体でエモーショナルに震わせ、
言葉数は多いがシンプルな言葉ばかりで説明的でなくストレートでありながら機知とユーモアに富む。
もちろん“セリフ/歌詞”は字幕付で作詞家/翻訳家として知られる岩谷時子担当の日本語ヴァージョンだ。
役者たちの動きも大きいから、
パンチの効いた声と身振り手振りでおのれを解き放つ“全身表現”のパワーを思い知らされるばかりである。

ベトナムのサイゴンがメインでタイのバンコクがサブのロケーションゆえに
ナイトクラブ関係の女性から軍の兵士までアジア系の人が多数出演しており、
黒人も鍵を握る人物の一人として好演し、
人種が混じっているところも特筆したい。

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ミュージカルだから音楽もチャーミングだ。
音はロック・ミュージックと違うかもしれないが、
ドラマチックな曲自体は、
70年代前半のアリス・クーパーデイヴィッド・ボウイからQUEENやMUSEまでも思い浮かぶ。

追加撮影の映像を組み込んだ効果も大きいのだろうが、
圧倒的な映像力にも打ちのめされる。
いきなりナイトクラブの豪華絢爛なムードに引き込まれ、
かなりエロチックな絡みがステージのあちこちで繰り広げられる様はドキドキ圧巻である。
もちろんラインダンスなどの“ショータイム”も見どころで、
軍服含めて衣装も目を引く。
“表と裏”といった感じで、
ベトナム戦争の終結と言える“サイゴン陥落”の混乱の中でヘリコプターがアメリカ兵を救出するシーンなど、
映像技術を駆使した作りに息を呑む。

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舞台本編の“第一部”と“第二部”はズームアップ等を多用してステージ上のみを映し、
ポイントを押さえたカメラと編集で一般の劇映画のように俳優のみの映像で魅せてくれるが、
“第三部”の<25周年記念スペシャル・フィナーレ>は音楽のライヴ映像に近い。
いわばコンサートのアンコールのような感じで、
いわゆる芝居のシーンはなく歌と踊りとトークが構成されるステージに加え、
盛り上がっている観客の姿も多少盛り込まれている。

89年初演時のオリジナル・キャストの面々やプロデューサーたちも集い、
『ミス・サイゴン』の予備知識があまりない僕でさえ観ていてワクワクして胸に迫るものがあった。
引きつがれることの大切さや、
みんなで一致団結して力を合わせて創作して物事を成し遂げることの良さも考えさせられて、
個人的にもたくさんインスパイアされた。


オススメ。


★映画『ミス・サイゴン:25周年記念公演 in ロンドン』
<出演>ジョン・ジョン・ブリオネス、エバ・ノブルザダ、アリスター・ブラマー、タムシン・キャロル、ヒュー・メイナード、ホン・グァンホ、レイシェル・アン・ゴー、ほか多数。
<25周年記念スペシャル・フィナーレ>
ゲスト出演:ジョナサン・プライス、レア・サロンガ、サイモン・ボウマン
製作:キャメロン・マッキントッシュ、脚本:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク、
歌詞:アラン・ブーブリル/リチャード・モルトビー・ジュニア、追加歌詞:マイケル・マーラー
音楽:クロード=ミッシェル・シェーンベルク、監督:ブレット・サリヴァン
© 2016 CML
http://miss-saigon-movie-25.jp/
2017年3月10日(金)より、TOHOシネマズ 日劇をはじめ各地で順次ロードショー。


そこに鳴る『METALIN』

そこに鳴る『METALIN』


2011年に大阪で結成されたバンドが『YAMINABE』以来約1年ぶりに出したCD。
無料配布音源を除けば3タイトル目と言える作品で、
約24分7曲入りというヴォリュームながら今回も聴き応えありだ。
KAgaMIが手掛けたジャケットもぴったりの世界観で迫る。


KILLSWITCH ENGAGEをはじめとする2000年代以降の米国産メタルコアのエッジとメロディを抽出し、
ハードコアっ気の代わりに、
テクニカルなギターと“J-ポップ・ミュージック”の甘い歌心を流し込んだかのようなサウンドだ。
デス・メタリックなフレーズ込みで加速する“日本語スピード・メタル”とも言えそうで、
リリカルなプログレやクサい歌謡ポップスのメロディとタッピング奏法もさりげなく挿入する
テクニカルなギターと、
ブラスト・ビートも四つ打ちも挿入するドラムが炸裂する。

楽器の音はなかなか熾烈苛烈で遠慮無したが、
その音の波に乗るギタリストとベーシストの男女ヴォーカルは中性的。
甘く終始クールで飄々として“日本語シューゲイザー”とも言うべき佇まいだ
2曲目の「新世界より」が大阪の繁華街“新世界”と関係あるのかどうなのかなど、
色々と深読みができる歌詞も面白い。

これまでの作品以上にメタリックな音が目立つ一方、
欧州歌謡のメロディをアレンジした日本の歌謡曲のメロディというか、
洋楽の音を使いつつ“大和な情緒の旋律”に包まれている。
ラヴソングが大半と思しき歌詞は日本の最近の青春映画をイメージし、
そういう映画のサントラにもピッタリの曲が続く。

ありえないジャンル乱交で度肝を抜いてきたマイク・パットン(FAITH NO MORE、FANTOMAS他)が、
スリリングにJ-POPとまぐわったみたいでもある。
新世代ならではのハイブリット感だが、
涼しい顔をしながらキャッチーにロックしているところが何より大切な一枚。


★そこに鳴る『METALIN』(KOGA KOCA-93)CD
KAgaMIがイラストレーション・デザインをジャケット等を担当し、
つるつるの紙を使った帯と8ページのプックレット付。
実際のジャケットの色は↑の画像よりも濃いです。


JOJO広重(Jojo Hiroshige)『Triple Echo 2』『Triple Echo 3』

“キング・オブ・ノイズ”を標榜するバンドの非常階段のリーダー、
JOJO広重のギターによるドローンミュージック・アルバムの第二弾と第三弾。
どちらも昨年の9月13日のレコーディングだ。
共に限定100枚プレスで税抜3000円という意識的と思しき値段設定も含めて、
覚悟を決めて向き合うに値する作品に仕上げられている。
広重のイメージからは遠いようで聴感イメージは近いクサが彩るジャケットや
ここ数年の広重のイメージに近い陰陽の大極図を使ったジャケット内のデザインと、
ミックス+マスタリングを、
ここ数年の非常階段のライヴなどに参加もしているナスカ・カー・ナカヤが手掛けている。

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『Triple Echo 2』は「Triple Echo from Inner Mind Music Part 2」という74分1秒の1曲入りだ。
エレクトリック・ギターのみ使用とは思えぬ音で、
神経の糸みたいに細い音の帯のような高音域のドローンを展開。
マニアックなほど重度の“真性”サイケデリック・アルバムとも言える。
スピーカーから聴くとしたら、
スピーカーに向き合う耳の角度によって聞こえ方が違って意識が“無限大(∞)”になり、
至福のユートピア・・・いや桃源郷の門が開かれる。
CDケースのトレイ下には
“By playing three CD’s at the same time…the third eye may open”と書かれている。
僕のところの再生システムでは今回シリーズの3タイトルのCDを同時に鳴らすことは今できないが、
3枚のCDを同時再生すると、
ELP(Emerson, Lake & Palmer)の73年のアルバム『Brain Salad Surgery』の邦題である
“『恐怖の頭脳改革』”な気分に浸れそうだ。

jojoecho3.jpg
かたや『Triple Echo 3』は、
「Triple Echo from Inner Mind Music Part 3」という74分1秒の1曲入り。
こちらもクレジットによれば音源はエレクトリック・ギターのみを使用とのことだが、
電源というかエネルギーの源みたいなCDから“無限大(∞)”の音がビリビリ放射される。
こちらのCDトレイの下には
“Stay High - Stay High - Stay High - Stay High”とクレジットされている。
音圧もあるが、
“電圧”が宿っていると思うほどエレクトリックな磁場が強烈でいつのまにかハイになる。
『Triple Echo 1』と『Triple Echo 2』にもそういうニュアンスを感じるが、
このCDはさらにルー・リードの『Metal Machine Music』のように無限大の幻覚の旅へと誘う。
表情がゆっくりと移り変わりながら“やさしいメロディ”の繰り返しと重なりが永遠に連なるところは、
クラウス・シュルツのソロ初期作をはじめとする70年代のジャーマン・エレクトリック・ミュージックも思い出す。
こちらもリアル・サイケデリックな逸物だ。


やっぱりもし世界を変える音楽が存在し得るとしたら、
免罪符の裏返しの文句ばかりで無責任に調子いいことを歌う上っつらのメッセージ・ソングより、
人間の意識の深いところまでブッ刺すこういう響きの“音楽”だとあらためて実感する。
地球から産まれたな“多幸な危険物”の2種である。


★JOJO広重『トリプル・エコー2』(アルケミー ARCD-254)CD
★同『トリプル・エコー3』(同 ARCD025)CD
以上、2月8日発売。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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