なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『チェリーボーイズ』

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古泉智浩の同名漫画の映画化。
林遣都と栁俊太郎と前野朋哉が演じる25歳の童貞トリオが良からぬことを企む映画で、
池田エライザが絡んだシリアス・コメディの怪作であり、
“周回遅れ”の情けない青春を描いた快作である。
『アフロ田中』(2012年)で監督デビューした松居大悟が脚本を担当し、
西海謙一郎が初の長編映画監督を務めている。

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とある田舎町が舞台。
通称クンニ(林遣都)はバンドを組むために東京に行っていたが、
父親の病気を機に一時帰郷して家業の酒屋で配達をする口先だけの見栄っ張りの一応リーダーである。
通称ビーチク(栁俊太郎)は地元の市役所で働き、
イケメンながらイジくりすぎで変形した乳首がコンプレックスで裸を見せられない。
通称カウパー(前野朋哉)はパチンコ屋に勤める処女志向の強いシャイな性格。
こだわりだけは強くプライドだけは高いがゆえに3人とも童貞の25歳である。

地元を仕切るDQNの通称プーチン(石垣佑磨)とその舎弟に、
そんな3人は学生時代から変わらずイジメられ続けていて童貞であることをバカにもされていた。
3人はフラストレイションが溜まる一方だったが、
そんな中でクンニは一念発起して童貞に別れを告げるべく犯罪を企てる。
ターゲットになったのは東京の風俗店で働いていた笛子(池田エライザ)で、
“させ子”として有名という地元の噂も決め手になったようだが、
実のところ“一線”は守る純情一途な女だった。

そんな中でクンニは仕事が縁で瓶ビールのラッパ飲みが好きな笛子と交流を持ち始める。
ビーチクはDQNプーチンに強制的な童貞喪失の場を作られる。
カウパーは職場の女の子と親密になる。
だが3人に転機が訪れ、
“武器”使用の予行演習で頓挫していた邪悪な計画が再び鎌首をもたげるのであった。

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永遠の青春テーマの映画だから色々な作品を思い出す。
『パンツの穴』も頭をよぎり、
特に菊池桃子主演で84年公開の『パンツの穴』映画第一弾の終盤は『チェリーボーイズ』とダブる。

“ポリティカリー・コレクト”に抗う!とまでは言わないが、
過剰な正義と締めつけで息苦しくて破天荒な表現を殺す今の世の中に対して痛快なほど挑戦的な映画だ。
かつて永井豪が『ハレンチ学園』(漫画+テレビ・ドラマ+映画)で掻きまわしたことにも通じるし、
EXPLOITEDの初期の名曲のタイトルがふさわしい「Sex & Violence」なストーリーという点でも、
永井豪の一連の作品にリンクするといっても過言ではない。
破廉恥だの不謹慎だのを腰砕けにする“マイナス・パワー”がトロトロ先走っている。


荒唐無稽にも映る物語だが、
田舎町ならではの“風習”など色々絡めていて都会的な洗練映画とは一線を画すキテレツさだ。
原作がそうだから漫画ちっくになりかねないわけだが、
不自然になるギリギリのところで踏みとどまったリアリズムのストーリーである。

三馬鹿男たちは最初から最後まで温度が低く、
わざとらとしく大げさな演技をするほどの気力がない役柄も奏功した自然体だ。
あちこちで天然の間抜け風味を振りまき、
ユーモアを狙わなくても存在自体が滑稽だから苦笑の連続である。
3人があまりにヘタレすぎてダラダラしかねない作品でもある。

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そこでまずは池田エライザが映画を引き締めている。
設定的にやや近い映画版『みんな!エスパーだよ!』での演技すら大人しく見えるほどの体当たりぶりに、
“そこまでやるか!?”ってぐらいにビックリした。
「(出演をオファーしても)絶対に出てもらえないと思っていた」という監督の言葉も当然の役で、
本名・釈笛子/通称フェラ子という名前どおりの技を披露するVシネ級のエロシーンに覚悟を感じた。
演技が上手いかどうか知ったこっちゃない彼女の佇まい自体が絵になっている。
本人が言うように「母性全開」でありつつ同じく彼女の本質であろう攻めの姿勢も全開で、
アクション・シーンもなかなかクールだ。

スクラップ工場で生活をする一匹狼バイカーのゴキ役の般若も重要なポジションに立ち、
エクストリームなヴァイオレンスを含むストロングな演技がビシッ!と筋を通す。

先輩後輩上下社会の産物の如き極端なDQNぶりがハンパないプーチン役の石垣佑磨や、
そのエロエロ恋人役の松本メイ、
カウパーのパチンコ屋同僚役の山谷花純もいいアクセントになっている。

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映画作り自体には直接タッチしてないのだろうが、
今も3日に2本は観るという原作者の漫画家・古泉智浩の映画好きの意思も宿っている。
ほとんどを神奈川の県秦野市で撮ったというロケ地の風景も適度な田舎風味を醸し出している。
音楽で必要以上に盛り上げず、
淡々としたリズムで話が進行しているのもこの映画らしい。


もしかして結局やっぱり感動ものか!?と思わせる展開も見せるが、
やっぱり救いようのない筋金入りの三馬鹿である。

ある意味ナンセンスだし、
意味不明のラスト・シーンが象徴的。
けどこの最後の顔と声、
馬鹿馬鹿しいようで一皮剥けた自信を感じさせる。


★映画『チェリーボーイズ』
2018年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/113分/R15+
2月17日(土)より シネ・リーブル池袋、渋谷TOEIほか全国ロードショー
配給:アークエンタテインメント
Ⓒ古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン
http://cherryboys.net/


映画『ローズの秘密の頁(ページ)』

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子殺しの疑いで40年もの長い月日を精神科病院で過ごしてきたローズのエクストリームな愛の物語。
アイルランドのジム・シェリダンによる5年ぶりの新作で、
第二次世界大戦時にアイルランドで花開いたロマンスから始まる女性の数奇な人生を
ミステリーとサスペンスも絡めてデリケイトかつ容赦なく描いた佳作である。

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精神科病院の取り壊しが決まって転院する患者たちの再診のために訪れた精神科医(エリック・バナ)は、
産んだばかりの赤ん坊殺しの罪で“精神障害犯罪者”として40年もの間収容されている
老女ローズ(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)を看ることになる。
赤ん坊殺しの罪を否認し続けるローズは何十年も自分の聖書のページに日記を書き綴ってきたが、
親身になって話を聞いてくれる精神科医と出会ったことにより、
彼女は日記を辿りながら半世紀前の記憶を遡って自分の人生を語り始める。

現在と過去を行き来する形で、
老女ローズが述懐していく過去のシーンが大半を占めるが、
激動の若い頃のみに限られていて中年期は削ぎ落しているからテーマが凝縮されている。

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第二次世界大戦の影響でアイルランドの田舎に避難してきた若き日のローズ(ルーニー・マーラ)は、
宗教的圧力と古く保守的な風習が根付く街で無意識のうちに蠱惑的な魅力を醸し出していた。
そんな中でローズに近づこうとした若い神父(テオ・ジェームズ)らによりスキャンダラスな注目を集め、
叔母の判断で町を追い出されて山奥のコテージに隔離されてしまう。
そんなある日、コテージの近くで1機の航空機が墜落した。
操縦していたのは地元から義勇兵としてRAF(イギリス空軍)のパイロットになった
マイケル(ジャック・レイナー)だった。
コテージに連れ帰り介抱するローズと惹かれ合うが、
マイケルはアイルランド国家主義の反逆者として追われていて、
屈折した前述の神父との三角関係も相まってローズの運命は翻弄されていく。

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オープニングの老女の独白でいきなり打ちのめされる。
弱っているお年寄り、
特に非業の人生が刻みつけられた顔の女性は見ていてつらい。
だがその目は不屈の意思と意志に貫かれ、
こっちの目もそむけることができない。

ローズが精神科病院に“連行”されてからは非情の嵐で、
そこでの仕打ちは目を覆いたくなるほど容赦無く、
厳選して見せているだけに一つ一つが心臓に突き刺さる。
いたたまれない。

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アイルランドと英国の当時の政治背景やカトリックとプロテスタントの宗教の問題が、
さりげなく溶かし込まれているところもポイントだろう。
そういう背景をわかっているとより深く味わえる作品だが、
予備知識がなくても夫と子どもへの深い愛と底無しの絶望の念を堪能できる。

ただ1940年代当時のアイルランドにおけるカトリック教会の保守的な女性観が
ローズの人生をズタズタにしたこともまた事実である。
誘惑したわけでなくても男を欲情させる佇まいというだけで女性は精神科病院に連れ込まれ、
カトリック教会や修道院が運営する収容施設では残酷に扱われたらしい。
ローズがこっそりと何十年も書いていた日記が、
余白を利用しつつ聖書の言葉の数々に上書きする形で綴られていたことで彼女の心理を深読みもできる。

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教会の権威ゆえに一人の神父が一人の女性の運命を支配することも可能な時代だったという。
そんな男の嫉妬の恐ろしさと“人間味”も知らしめる。

誰にも迷惑をかけてないのに拘束する警察の不当逮捕みたいな調子で精神科病院に収容される。
さらにハードな状況下で一人で産んだばかりの子供のヘソの緒を自分で叩き切ったがゆえに
目撃者から赤ん坊殺しの疑いをかけられて“精神障害犯罪者”扱いにされる。
その間に最愛の男はどうなっていたのか。
その間に以前からローズを狙っていたた神父は何をしていたのか。
悲劇にミステリーとサスペンスを絡めてうねりを打つ壮絶な波に観ている者は飲み込まれていく。

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若い頃も老女になってからも大半が断末魔であるローズ役の女優二人の必死の演技はもちろんのこと、
ローズの永遠の恋人のマイケルと深い闇を感じさせる神父役の二人の男優、
疑心暗鬼になりながらも老女ローズと真正面から向き合う誠実な精神科医の男優も好演だ。

ほとんどの時期が厳寒のローズの心模様と共振している凍てついた色合いの映像にも身が引き締まる。
当時のファッションを反映させた服装などのアイテムも見どころの一つだ。
べートーヴェンの「月光」などの静謐なピアノをはじめとするクラシカルな音楽のささやかな挿入も、
ひとつひとつのシーンの心理とひそかに寄り添っている。


ハッピーエンドなのかどうかはわからない。
でも終盤、
これを救い、
そして赦しと思いたい。


★映画『ローズの秘密の頁(ページ)
2016年/アイルランド/108分/英語/原題『The Secret Scripture』
2月3日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開。
© 2016 Secret Films Limited
http://rose.ayapro.ne.jp/


レコード・コレクターズ 2018年2月号

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●2017年リイシュー・アルバム・ベスト
今回も“パンク/ニュー・ウェイヴ”部門を担当させてもらいました。


●リイシュー・アルバム・ガイド
ドアーズ『まぼろしの世界:50thアニヴァーサリー・デラックス・エディション』
★トリトナス
・『トリトナス』
・『ビトウィーン・ジ・ユニヴァース』

GIST『Holding Pattern』
★GIST『Holding Pattern』(Tiny Global Productions PICI 0009-CD)CD



映画『犬猿』

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一組の兄弟と一組の姉妹の愛と憎しみをコミカルにシリアスにシビアに描いたリアリズムの傑作。
窪田正孝、新井浩文、江上敬子(ニッチェ)、筧美和子がメインの出演俳優で、
監督・脚本が吉田恵輔(『純喫茶磯辺』『さんかく』『ヒメアノ~ル』)、
という具合にまさに“役者”が揃っているから悪かろうはずがない。

試写会で笑いが絶えなかった。
と同時に僕の隣で観ていた若い女性のように泣いている方もいた・・・そんな映画は珍しい。
かといって笑いと感動の映画!って単純な作品じゃないからこそ僕は心の底から入れ込んだ。

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兄弟と姉妹の別々の“きょうだい”の物語。

地方都市の印刷会社で働く営業マンの弟(窪田正孝)は、
イケメンながら真面目かつ堅実で老後のために毎月わずかな貯金をする地味な生活を送っていた。
そんなある日、彼のアパートに、
強盗の罪で服役していた兄(新井浩文)が刑期を終えて転がり込んでくる。
弟とは対照的に“人生はギャンブル!”みたいな生き方でオイシイ話に目がない与太者である。
弟は父親が友人の連帯保証人になって作ってしまった借金を一人でコツコツと返済もしてきたが、
ヴァイオレントな兄に対してずっと文句も言えない中でフラストレイションを溜め込んでいた。

一方、上記の営業マンの弟(窪田正孝)が頻繁に仕事を依頼する小さな印刷所があって、
そこには親から引き継いだ会社を切り盛りする別の家族の姉(江上敬子)がいる。
仕事テキパキで家事もバッチリの女だが、ヴィジュアルはイマイチで男慣れしてないメガネっ娘純情派。
対照的に妹(筧美和子)は姉の下で印刷所の手伝いをするも仕事ができない女だが、
ヴィジュアルが良くて雑誌のグラビアやイメージDVDにも登場して女優を目指すタレントの卵。
シモの世話も含む寝たきりの父親の介護をはじめとして家のことを一人で奮闘する姉は、
取引先の男にもチヤホヤされるも家のことは何もしない妹に対してフラストレイションを溜め込んでいた。

仕事上の付き合いからプライヴェイトに付き合いに発展していく中で兄弟と姉妹は交流し、
二組とも同性の“きょうだい”ならではの様々な嫉妬が三角関係を経て燃え上がる中で、
“兄はツケ”が回ってきて“姉”は心が折れて二組各々が“最期”を覚悟する局面に進んでいく。

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まずメインの出演俳優がグレイトな演技で、
よくぞこの4人を揃えた!と膝をポン!と打ちたいほど配役の勝利の映画である。
漫画ちっく一歩手前で、
ウソ臭くなるギリギリところに踏みとどまった大げさな演技でリアリティを際立たせている。
コミカルに描いてるからヘヴィに感じさせない作りながら、
笑いを抑えたくなるほど生々しくナチュラルな立ち振る舞いだからこそ重い。

窪田正孝は超売れっ子なのも納得のオドオドした逆噴射の演技で、
昨秋のテレビドラマ『僕たちがやりました』から就職しても変わらない感じのヘタレぶりが素晴らしい。
新井浩文は凶暴な佇まいが素の姿そのままと思わせるほど天然の凄味のある兄だ。
筧美和子も色々な意味を込めて地でやっているんじゃないかと思わせるほどの世渡り術がハマった妹。
そして江上敬子は残酷なぐらいの必死さが観ていて笑えないほどの痛々しい熱演で息を呑む。
4人全員多少なりともズッコケ・キャラなのだが、
江上はユーモアとペーソスを超越したエクストリームな崖っぷちの領域にまで達している真の芸人だ。

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シンプルでわかりやすい話の展開にもかかわらずツボを心得ていてリアルで深い脚本も見事。
それぞれの兄弟と姉妹にとってヘヴィな問題がお互いが絡み合ったことで加速していく話だが、
深刻なネタなのにそう感じさせないテンポのいい展開とコミカル・スパイスが絶妙で、
しかも作品の肝は妥協してない。

アートな撮り方をしているわけではないが、
対象の人物が置かれている状況と精神状態を見事に捉えたカメラ・アングルも特筆したい。
明るすぎず暗すぎないナチュラルな映像色も生々しい仕上がりに一役買っている。

いわゆる粗削りの作りでもないが、
とにかく綺麗綺麗に仕上げようということより俳優と制作者のすべての熱情が映画に凝縮されている。
だから胸を打つのだ。

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損してばかりの人間がいる。
格差社会がどーのこーのとか調子いいこと言っていても、
損する者がいるから得する者がいるからこそシステムが成り立っているのが現実だ。
要領よく立ちまわる人間が人生を楽しんで自由を謳歌する。
平等みたいな感じで役割分担するパターンもあるだろうが、
家族や“きょうだい”の中は社会の縮図のようで、
責任から逃げない限り一生しがらみに縛られるから一般社会の百万倍残酷だ。
親のために働くなど家族の責任を一人が背負う“きょうだい”も多いし、
特に二人“きょうだい”はどちらか一方が貧乏くじを引く。

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絶えることのない“きょうだい”の間の殺伐とした事件のようなケースと違って、
この映画の“きょうだい”はいざという時には助け合おうという気持ちもあるからまだ救われる。
でも忍耐には限界がある。
とある人物がそれっぽいセリフを心の中で吐くが、
「(相手が)死なないと自由になれない」のが行き着きところまで行った“きょうだい”や家族の姿。
“きょうだい”を比較する親の一言が“きょうだい”の片方を恐ろしく傷つけることもそれとなく見せてもいる。

そういう心情の描き方も深刻になりすぎずにさりげないからこそ、
この映画はヘヴィな話が苦手な方にも入ってくると思う。

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映画の中でも誰かが口走っている“家族なんだから”とか“きょうだいなんだから”とかいう言葉に
重苦しさを感じる方も、
観ると少しは楽になると思う。
さらに
「お兄ちゃんは、変わらないって。変われないんだよ。」というリアリティに満ちたセリフを吐く、
諦観めいた窪田正孝の表情にグッとくること請け合いだ。
ウソがない。

終盤はいわゆる感動の映画の流れで進むが、
最後の最後がコレかよ・・・って感じで、
例によってコミカルな見せ方をしつつ
ラスト・シーンでまた現実を叩きつける監督の容赦ないセンスに舌を巻く。

大スイセン。


★映画『犬猿』
2017年/日本/カラー/ビスタ/DCP5.1ch/103分
2018年2月10日(土)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー
(配給:東京テアトル)
ⓒ2018『犬猿』製作委員会
http://kenen-movie.jp/


HUSKER DU『Savage Young Dü』

Hüsker Dü ‎– Savage Young Dü


80年代のオルタナティヴ/ギター・ロックの代表として知られる米国ミネアポリス出身のバンド、
HUSKER DUのパンク・ロック/ハードコア・パンク時代の驚愕の音源集。
ここではCD3枚組のものを紹介する。

リリース・レーベルのFacebookによれば昨年の11月に発売されたらしい。
今月売りの某誌で選んだ2017年のリイシュー・ベスト10には間に合わなかったが、
昨年の“パンク~ニュー・ウェイヴ”のリイシューものの中で、
パッケージも含めてRAMONESのセカンドとサードに匹敵するグレイトなブツである。


79~82年の録音の69曲入りの大ヴォリュームで、
80年のデビュー・シングル「Statues」、82年のEP『In A Free Land』、
83年のLP『Everything Falls Apart』の全曲が収録されているとはいえ、
47曲が未発表音源。
しかも未発表曲がてんこ盛りで曲のダブりもほとんどないという恐るべき内容なのだ。
デモやリハーサル音源に加えてライヴ・テイクも多いが、
みな音質良好。
82年ライヴ盤『Land Speed Record』を今回収めてない代わりという感じで、
その収録日から約3週間後にほとんど同じセットリストでやったライヴが入っているのもポイントだ。

極初期はRAMONESの影響が強いパンク・ロックである。
RAMONESが「Chinese Rock」という曲名で録る前にHEARTBREAKERSが先に録音した曲の、
「Chinese Rocks」のカヴァーもやっている。
そこからPUBLIC IMAGE Ltd.(PiL)の初期やJOY DIVISIONなどのポスト・パンク風の曲を経て、
ハードコア・パンクに加速していく過程が生々しく記録されている。
というか本作の過半数はハードコア・パンクだ。
もちろんウルトラ猛烈な“非メロディック”ハードコア・パンク。
様式美もヘッタクレもない。
まるでハードコア・パンクのレコードを2~3枚聴いて「俺らもやってみっか!」ってな感じで
パンク・ロック・スタイルから急速に天然スピードアップした様相なのだ。
とはいえところどころで後期のギター・ロック・スタイルの顔も覗かせ、
本作の終盤のライヴ・テイクが
パンク・ロック時代の総決算作『Metal Circus』(83年)の曲という流れもナチュラルである。

聴いていて熱くなるし切なくもなる。
たまに漏れてくるメロディが切ないということ以上に、
“どこかの誰かさんみたいじゃないもの”を生み出そうとするモーレツな熱情ゆえのことである。


まさに満載!のメンバー写真等(ほとんどがモノクロなのも味がある)と超長文ライナー、
79~82年のライヴ・データ(フライヤーも満載)などで彩った、
150ページ近いブックレット綴じ込みのハードカヴァー・ブック仕様。
収納の小箱(スリップケース)も含めて味のある紙質で仕上げられ、
CDを収める部分がロゴのくり抜きだったりして細部にこだわった非常に丁寧な作りのリイシューである。


★Hüsker Dü『Savage Young Dü』(NUMERO GROUP NUM200)3CD


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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