なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画“イタリア ネオ+クラッシコ 映画祭2017”

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東京・YEBISU GARDEN CINEMAで<イタリア ネオ+クラッシコ 映画祭2017>が開催中。
いわゆる古典と“新たなる古典”のイタリア映画18作品の上映で、
旧作のほとんどがデジタル・リマスター版だ。

ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』(1948年)や
フェデリコ・フェリーニ監督の『青春群像』(1953年)などの、
1970年以前の映画が大半を占める。
『フェリーニの道化師』と『汚れなき抱擁』以外の14本はデジタル・リマスター版による上映で、
大半がモノクロ映像だが、
モノクロでもデジタル・リマスター版はいい意味で人物や事物を現物に近い感じではっきりと見せる。

一方で2000年代の映画は、
パオロ・ソレンティーノ監督の『もうひとりの男』(2001年)と『愛の果てへの旅』(2004年)、
マッテオ・ガッローネ監督の『ゴモラ』(2008年)である。

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(『無防備都市』の一シーン)

その中から『無防備都市』をデジタル・リマスター版の試写で観た。
ロベルト・ロッセリーニ監督による1945年の映画で、
<イタリア ネオ+クラッシコ 映画祭2017>上映作で一番古い映画でもある。
1943年~1944年の史実を基にし、
ドイツ軍に占領されたイタリア・ローマで反ナチ闘争に従事するレジスタンスの闘士たちに加え、
民衆やナチも描く。
計103分の二部構成で、
共産主義者とカトリックの聖職者が組んだレジスタンスの面々が中心。
制作時期を思うとまさにリアルな作品だ。
第一部にはユーモアもちりばめられているが、
第二部では余裕がなくなって深刻に。
プリミティヴな道具が使われているだけに残虐性が際立つ拷問シーンや公開銃殺シーンも含めて
見せ方が絶妙で、
心理ドラマ的な展開も行なわれて人物たちの感情表現の彫りの深さにも痺れた。
今回5回上映される。


★映画“イタリア ネオ+クラッシコ 映画祭2017”
http://mermaidfilms.co.jp/neoclassicoitalia2017/


OLEDICKFOGGY『オールディックフォギー名作撰 破戒篇』『オールディックフォギー名作撰 絶海篇』

破戒


東京拠点に精力的な活動を続けているロック・バンドのOLEDICKFOGGYが、
現メンバーでベスト・セレクション・ナンバーを再録音した2種類の15曲入りCDをリリース。
どちらもアルバム・カヴァーの面にタイトルの漢字がエンボス加工された三面デジパック仕様で、
歌詞が読みやすく載ってメンバー一人一人の顔アップ写真が彩る16ページのブックレット封入だ。

音源発表がけっこう多いバンドだけに後追いでファンになると曲をフォローするのも大変だから、
ステージでよくやる曲を中心に収めた今回の企画はありがたい。
一昨年の8月にyossuxi(アコーディオン、キーボード)が正式加入し、
新しいケミストリーが生れてネクスト・レベルに進んだ体制でリレコーディング。
昔の曲ばかりながらライヴで練り続けて鍛え続けた楽曲群だからたくましくなり、
凝ったアレンジや仕掛けはしてない録音だから現在進行形のライヴの感覚も味わえる。

スッキリした作りで音がポップにハジけ、
OLEDICKFOGGYにもともと内包しているいい意味でのメジャー感も自然と醸し出され、
いわゆる日本のロックが好きな方もいけるはずだ。
クリアー(not クリーン)な音質で音の分離が良く、
ヴォーカルと楽器のバランス感もいい。
だから個々のパートのサウンドの味わいや楽曲の良さや歌詞の面白さもはっきりと直で伝わってくる。

絶海

サウンドのタイプで楽曲を振り分けたというよりは、
それぞれのCDタイトルのテーマに沿って歌詞や音のベクトルも考慮しながら曲を構成したと思われる。
パッケージの色のイメージで誤解を恐れずに言えば、
約63分の『破戒篇』は“黒魔術”、
約55分の『絶海篇』は“白魔術”のようなアルバムだ。

バンジョーやマンドリン、ウッドベース、アコーディオンが活躍するサウンドだから
ラスティックストンプとも呼ばれる音楽性だが、
日本語パンク・ロックとしても楽しめる。
と同時に日本のロックとしても楽しめるが、
もっと言えばバンド・サウンドで日本の叙情を綴る歌ものとしても楽しめる。
『絶海篇』の最後の曲の「郷愁と残像」なんか友川カズキのリリカルな曲も思い出すほどだ。
映画『歯車にまどわされて』の中でも歌をチラリと披露していたが、
尾崎紀世彦が好きというのも納得の伊藤雄和のクールな熱唱も聴きどころで、
1970年代・・・いや昭和40年代の歌謡曲やテレビ・ドラマの主題歌みたいな曲も少なくない。
J-POP以前の侘び寂びの効いた日本語の歌を
ラスティックな音で聴かせるのがOLEDICKFOGGYの魅力、
ということもよくわかるCDなのだ。

巧くなったのかもしれないが、
歌も演奏も“旨く”なっていることが大切。
そんなところにも耳を傾けたい2枚である


★オールディックフォギー『オールディックフォギー名作撰 破戒篇』(DIWPHALANX PX320)CD
★同『オールディックフォギー名作撰 絶海篇』(同 PX321)CD


20 GUILDERS『2』

20 GUILDERS『2』


近年はACID MOTHER TEMPLEやGREEN FLAMESで世界的に多彩な活動を展開し続けているタバタミツル
みみのことのフロントマンでもあるスズキジュンゾによる、
“20ギルダーズ”が結成10年目に放った約5年ぶりのスタジオ録音セカンド・フル・アルバム。

タバタは80年代から、
のいずんずり、BOREDOMS、LENINGRAD BLUES MACHINE、ZENI GEVAでキャリアを重ね、
スズキはソロでも多作しているミュージシャンだ。
タバタは、ヴォーカル、エレクトリック・ギター、アコースティック6弦・12弦ギター、ベース、
コーラス、シンセサイザー、オルガン・マシーン、
スズキは、ヴォーカル、アコースティック6弦・12弦ギター、エレクトリック・ギター、コーラス、
シュルティ・ボックス、ベース、ハーモニカなどを担当。
高橋幾郎(元HIGH RISE、光束夜、MAHER SHALAL HASH BAZ、Che-SHIZU、不失者/
現・血と雫)が全9曲中6曲でドラムを叩き、
リチャード・ホーナーがエンジニアを務めている。

曲ごとにリード・ヴォーカルをシェアし合う体制で
陽性の侘び寂びが滲む“日本語エレクトリック・アシッド・フォーク・ロック”が繰り出される。
お茶目でストレンジなポップ・アレンジも施されている中で、
さりげなく筋金入りの真正ナチュラル・サイケデリック・チューンの連続に酔わされるばかりだ。
LED ZEPPELINのサードに入っていても不思議はないリリカルな曲や、
“エレクトリック・ニール・ヤング”のような9分近くに及ぶ曲にも痺れる。

歌ものと言えるだろうが、
必ずしもヴォーカルが前に出てきているわけではない。
楽器もたっぷり歌っており、
ヴォーカルと音とのハーモニーを楽しめるミックスにもなっている。

もちろん声は生だ。
なんらポーズつけぬデリケイトきわまりない歌声も心に響く。
初々しいタバタのヴォーカルは、
90年代前半に活動していた伝説のバンド“ハカイダーズ”時代も思い出す繊細歌唱だ。
晴れやかに苦み走ったスズキの歌唱も渋くてたまらない。
曲によっては60年代後半から70年代前半の軽やかな日本のフォーク・ミュージックも思わせるほど
人なつこいが、
“バターになった三匹の虎”を歌う「焚曲」をはじめとして、
“業”を感じさせる歌詞は底無し沼の諦観と達観の境地に達している。

深い、深い、歌心がゆっくりところがる。
オススメ。


★20 GUILDERS『2』(gyuune cassette CD95-67)CD
8ページのブックレット封入の約47分9曲入り。


WARWOUND/WAR//PLAGUE『孤独』

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英米のベテランが組んでいるハードコア・パンク・バンドの2組を収めたスプリット作。
日本盤CDはそれぞれ1曲ずつ追加された計約18分6トラック入りである。


英国のWARWOUNDは2年ほど前にBOSS TUNEAGE Recordsから83年のデモのCDが発売されたバンドで、
数年前に復活している。
現メンバーは、
元VARUKERSでSACRILEDGEのダミアン(g)、
HELLKRUSHERのメンバーだったスティーヴィー(ds)、
2000年代の半ばから10年ほどDISCHARGEのフロントマンも務めたVARUKERSのラット(vo)、
元DECADENCE WITHINで
英国パンク史本『Burning Britain』シリーズの著者としても知られるイアン・グラスパー(b)だ。

D-beatハードコア・パンク/クラスト・コア・スタイルが基本ながら、
最近のDISCHARGEBROKEN BONESに近いメタル・テイストが加わった調子である。
大半のパートをツー・ビートで走るとはいえ適度に起伏を設けて最後まで持っていき、
ビシッ!としたサウンド・プロダクションで聴き応えありだ。
ちなみに2トラック目には2曲続けて入っていて、
ボーナス・トラックの「War Crime」は英国のDOOMの同名曲のカヴァーではない。


かたやWAR//PLAGUEは2000年代の終盤からコンスタントに音源を出している
米国ミネアポリス拠点のバンド。
メンバーは、
元PROVOKEDのルッツ(vo、g)、
同じく元PROVOKEDで本作やAMEBIXMISERYの近作のジャケットも手掛けて
TAU CROSSの一員としても知られるレフトン(g)、
そしてヴァーン(b)とチャド(ds)だ。

ミッド・テンポのパートとD-beatを絡めたメタル・クラスト・パンクを基調に緩急織り交ぜ、
最後はAMEBIXのようなドラマチック・ナンバーで迫る。
いい意味でじっくりも聴けるし、
頭の上ではなく腰のあたりで拳を握りしめて頭を振りながら楽しめる曲がクールだ。
クリーンとは違うが濁りすぎず音の分離のいい仕上がりで、
中低音がしっかり聞こえてきてヘヴィな空気感も伝わってくる。


どちらも歌詞はバンド名からイメージできる言葉も使われているが、
ナイーヴな“反戦ソング”とは一線を画した普遍的な内容で、
冷厳でインディヴィジュアル(individual)な視座ゆえに触発される。
曲と同じくよく練られた言葉で綴られていてナイスだし、
気持の入った喉を震わせているから深く入ってくる。

CDタイトルの“孤独”がしっくりくる重み十二分の一枚。


★WARWOUND/WAR//PLAGUE『孤独』(MCR COMPANY MCR-287)CD
歌詞と和訳が載った8ページのブックレット封入。


ホアチョ×藤掛正隆(Whacho×Fujikake)『2.6METS』

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ホアチョ(KILLING TIME、ウズマキマズウ、スプラトゥトラプス他)と
藤掛正隆(元ZENI GEVA~#9、現・渋さ知らズ他)による打楽器中心のCD。
横浜ストーミーマンデーにおける2014年4月のライヴ音源を
藤掛が編集とミックスを行なって仕上げた約70分7曲入りの作品である。

ホアチョはパーカッション、ULTサウンド、ウェイヴ・ドラム、toycussion、エレクトロニクス、
藤掛はドラム、リズム・ボックス、エレクトロニクスで音を鳴らす。
藤掛が力強いドラムで足腰を担い、
ホアチョが遊び心を転がしていくパートが多いとはいえ、
相性バッチリの二人だけにはっきりした役割分担がないような演奏だ。

反復リズムを基本にプリミティヴな音がポップに踊り躍り、
諧謔精神も滲み出ているが
人を食ったような滑稽演奏もひっくるめて全部もちろん真剣プレイ。
頭デッカチじゃなくパワフルな肉体演奏である。
ジャングルと宇宙と海中を行きかうようで、
ところによっては四つ打ちも挿入され、
ところによってはベーシストが参加していると錯覚するダブっぽいグルーヴ感も内包し、
ところによっては声みたいな音声も聞こえてくる。

インプロヴィゼイションというより“曲”だし、
エレクトロニクスによるものと思しき哀愁メロディなどいわゆる音階も感じられるから親しみやすい。
様々な“ビート”の彩り豊かな音色や弾力感もしっかり収めた仕上がりも特筆したいCD。


★ホアチョ×藤掛正隆『2.6METS』(FULL DESIGN FDR-2027)CD
本作の雰囲気がよく表われているホアチョ撮影の写真のジャケットが封入された薄手のプラケース仕様。
二人それぞれとユニット等をやってきているホッピー神山のライナー付。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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