なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

FUTURA『Futura』(DEMO 2017)

FUTURA.jpg


FUMIGADOSの女性シンガーを擁したLA拠点のハードコア・パンク・バンドによる
4曲入りのデビュー・デモ・カセット。

オープニングで狼煙を上げる。
ABRASIVE WHEELSあたりの80年代初頭のキャッチーなUKハードコア・パンク・バンドが
若干エッジの尖った音作りで攻めているような、
粗削りのパンク・ロック・サウンドが痛快だ

スペイン語の歌詞が主体のFUMIGADOSと違い、
こちらは1曲以外英語。
飯を食うための仕事のことやトランプ大統領のことを歌い、
最後はラヴソングだろうか。

素朴で日常感じたことをそのまま歌う自然な姿勢、
背伸びしてない言葉も含めて、
プリミティヴな裸のピュア・パンク・ロック作品。
リアル・アンダーグラウンドながら今後注目が集まりそう。


★FUTURA『Futura』(VERDUGO VD_16)Cassette
ジャケットはもちろんのことカセット・テープ自体のパッケージもしっかりデザインされた丁寧な作りだ。


加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『崖っぷちセッション・リマスター』

崖っぷちセッション・リマスター


加藤崇之(g)と早川岳晴(b)と藤掛正隆(ds、エレクトロニクス)によるライヴ・レコーディング盤。
以前2枚のCD-Rで発表した音源のリマスタリングCDリイシューだ。
今年『Trio Edge』を出したトリオで、
今回のCDも早川と藤掛によるフリー・セッション・シリーズの“崖っぷちセッション”に
加藤が“参戦”した時の実況録音である。


本編の6曲は2007年に東京・荻窪のルースター・ノースサイドでやったライヴ。
2007年にCD-R盤で少数出していた『from Gakeppuchi Session』(FCDR-2007)が元だ。
「track A」「track B」~といった曲名から察するにインプロヴィゼイション演奏と思われるが、
“作曲された曲”にも聞こえる。
藤掛の好エディットも奏功しているというのもあるが、
演奏がダラダラしていなくてフリー・フォームながら引き締まっているからだ。

ジャズ・ロックに聞こえるところも多いが、
ファンクやダブ、ラテン音楽、民俗音楽、アンビエント・ミュージックなどなど、
“音楽モラル”なんて関係なくナチュラル・ブレンドされている。
静かなパートを設けつつ、
もったいぶって小難しくせず、
3人ともかなり持っている演奏テクニックに溺れず、
あくまでもダイナミックに展開。
音は強靭だし、
ほとんどの曲は加速し、
のびのびとクールな情熱を炸裂させている。

シリアスだが、
さりげなく頓智の効いた音も鳴らし飛ばす。
普段やっている音楽とはかけ離れているだけに、
加藤流の硬質なハード・ロック・ギター・リフとハード・ロック・ギター・ソロも聴きどころだ。


ボーナス・トラックとして2014年に横浜のストーミー・マンデイでやったライヴを1曲追加。
前述の『Trio Edge』のレコーディング時のアウトテイク「Last Drive」で、
そのCD発売記念ライヴ時に限定配布されたCD-R(FCDR-2026)に入っていた曲である。
グルーヴィなリズム隊と謎の音を発し続ける加藤が拡散と収斂を繰り返しながら、
本作の締めにふさわしい加速でデッドヒートする。


いずれも藤掛のドラムがいい意味でジャズにならないのが大きい。
NEUROSISのレーベルから2001年に『10,000 Light Years』を出した頃のZENI GEVAのメンバーで、
当時並行してBAKI(GASTUNK)や諸田コウ(元DOOM)らと#9をやっていたぐらいだし、
根がどうしょうもなくロックなのだ。
だから全体が肉体的。
そんな大切なことをあらためて思わせもする一枚である。


★加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『崖っぷちセッション・リマスター』(FULLDESIGN FDR-2030)CD
薄手のプラケース仕様の約72分7曲入り。


WIRE『Silver/Lead』

WIRE SILVER LEAD


70年代後半から活動を続ける英国のポスト・パンク・バンドのWIRE
アルバム・デビュー40年目の年に放った約1年ぶりの16作目。

リリースもコンスタントで、
特に2度目の再編後の2000年代に入ってからは精力的だ。
しかもブレ無し駄作無しなのだから恐れ入る。


ファーストの『Pink Flag』収録の「12XU」の流れと言えるWIRE流のハードコア・パンク・チューンが、
復活盤の10作目『Send』(2003年)以降のアルバムのアクセントになってきたが、
近作と同じく今回もそういう曲はない。
それどころかパンク・ロックっぽいアップ・テンポ・ナンバーすらほとんどない。

一度聴いたら耳から離れないロバート・グレイの“あのビート感”のドラムと
グラハム・ルイスのベースとコリン・ニューマンのエレクトリック・ギターは全曲に入っているし、
2010年加入のマシュー・シムズのエレクトリック・ギターも1曲以外の全曲に入っている。
一方で、
4曲でアコースティック・ギター、
1曲で12弦ギター、
1曲にラップ・スティールも使われている。
キーボードやシンセサイザーも効果的だ。
そのへんの楽器のバランスが近い前作『Nocturnal Koreans』の路線を深く推し進めたようにも聞こえる。

歌ものと言ってもいいかもしれない。
しかもやさしいまなざしの歌ものだ。
コリン・ニューマンがリード・ヴォーカルをとる曲は、
いくつになっても青い歌声でマイルドになってきているというのもあってどれもポップな佇まい。
3曲でリード・ヴォーカルをとっているグラハム・ルイスの苦み走ったヴォーカルは渋い。


いくらオリジナル・メンバー3人が還暦を越えようが、
ポスト・パンクの先駆バンドだけに哀愁なんて似合わない。
やっぱり冷めているし、
そんでもってへヴィ。
WIREにはふさわしくない言葉かもしれないが、
これは歌心と言ってもいいのではないか。
ポスト・パンクのオリジネイターならではのクールな歌心がさりげなくあふれ、
無機的な世の合理主義にこっそり抗うかのようだ。
心に染み入る佳作である。


★WIRE『Silver/Lead』(PINK FLAG PF 24)CD
デジパック仕様の約36分10曲入り。


RAD/XANTS[The CROISSANTS] split 7”EP

RAD/XANTS


北カリフォルニアのサクラメントを拠点にするパンク・バンド同士の好スプリット・レコード。

女性ヴォーカルを擁するRADは7”レコードの片面に11曲を叩き込み、
2013年のファースト・アルバム『Loud & Fast』からさらに加速している。
あえて元ネタを明かしているかのように、
情熱で焼け焦げた80年代前半のボストン・ハードコアのフレーズを折り込み、
女性の強さとしなやかさが混じったハードコア・パンク。
以前から影響が感じられたボストンのJERRY'S KIDSの「I Don't Belong」のカヴァーもカマす。
歌詞もひっくるめて原始的パンク・アティテュード全開。
あっというまでまさにグレイトだ。

XANTSの方は普段The CROISSANTSと名乗っているバンドで3曲提供。
ジョニー・サンダースのHEARTBREAKERSRAMONESの流れをくむパンク・ロックを
ハードコア以降の感覚で増幅している。
「Attraction To The Mainstream」「Don't Play Cool」「Everyone's A Rocker」といった曲名にも
RAMONES譲りのシニカルなテイストが表れていて、
スロー・テンポのラスト・ナンバーでI don’t careなboredomぶりが炸裂するラウドな気怠いサウンドも、
言うこと無しだ。

能書きなんかより五線譜をはみだしたサウンドそのものでパンクを伝える。
それが基本だとあらためて思う痛快盤。


★RAD/XANTS[The CROISSANTS](SACRAMENTO SAC0229)split 7”EP
↑の画像は二つ折りのジャケットの表を開いたもの(実際のパッケージはどちらか片面が表)。
左がRADのシンガーで、右はXANTS[The CROISSANTS]のドラマーと思われる。


SHORO CLUB『from 1959』

SHORO CLUB


大友良英(エレクトリック・ギター)、
不破大輔(コントラバス、エレクトリック・ベース)、
芳垣安洋(ドラムス、パーカッション)によるバンドの
SHORO CLUB(ショロークラブ)によるライヴを収めたCD。
昨年11月に名古屋の得三でレコーディングされ、
全6曲中の4曲に山本精一(エレクトリック・ギター、ヴォーカル)が参加している。

序盤はカヴァー2連発。
まずオーネット・コールマンの代表曲「Lonely Woman」で、
加速するフリー・ジャズの中からあの有名なメロディが聞こえてきて、
KING CRIMSONのロバート・フリップが数式をかなぐり捨てたようなギターが炸裂する。
続いてはブリジット・フォンテーヌのこれまた代表曲で、
「ラジオのように」という邦題で知られる「Comme à la radio」。
16分に拡長しようがキャッチーな曲の魅力も伝えるテイクだ。

ジャム・セッション風の演奏をはさんで4曲目は
チャーリー・ヘイデンの「First Song」の静かなカヴァー。
5曲目は石川啄木の詩に不破が曲を付けた「ひこうき」だが、
山本が朴訥に歌う曲ならではのまったりトーンで、
研ぎ澄まされたギター・ソロが光る“エレクトリック・フォーク・チューン”に仕上がっている。
そして山本・作詞/大友・作曲の「SORA」を、
ニール・ヤング with CRAZY HORSEも真っ青のギンギンにやって締めるのであった。

“ショローCLUBの回春行脚2016”というタイトルのライヴならではの、
“初老”が気を吐くエネルギッシュなロック演奏もけっこう聴かせるバンド・パフォーマンス。
と同時に不破と芳垣だけでなく大友もやっぱりジャズが基本の人だと勝手に思いもしたが、
山本不参加の曲における大友のヴィオラのような音のメロディアスなギターも聴きどころだ。


★SHORO CLUB『from 1959』(地底 B71F)CD
約66分6曲入りのデジパック仕様。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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