なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NO FUN AT ALL『Grit』

NO FUN AT ALL


スウェーデンのメロディック・パンク・バンドが約10年ぶりに出した6作目のフル・アルバム。
90年代前半に結成され、
2000年代以降は断続的な活動ながらまた新作が聴けてうれしい。
最近のへヴィ・ローテーションの一枚である。


調子がいいメッセージなんか吐かない(がさりげなく“主張”している)歌詞もひっくるめて、
正直だから大好き。
サウンドもひっくるめてNO FUN AT ALLにはウソがない。
わざとらしいポーズもない。

94年のファースト・フル・アルバム『No Straight Angles』から、
僕の中では快作の次にイマイチのアルバムを出すバンドというイメージもあった。
というわけで10年前の『Low Rider』が快作だったから今回は不安だったが、
杞憂であった。

BAD RELIGIONのスタイルを“本家”以上にアップデートしている。
潔く迷いもないから突き抜けている。
ポップスをソリッドな音でもって速くやっている感じだが、
シングル等の編集盤CD『EP's Going Steady』収録のカヴァーに現れた彼らの“パンク・センス”は
今回もバッチリだ。

盟友MILLENCOLINのマティアス・ファームがプロデュースと録音とミックスを行なっている。
かつてNASUMもSKITSYSTEMもPEEPSHOWSも手掛けた人だけにバランス感が良く、
NO FUN AT ALLの魅力をしっかりレコーディングしている。

正確に言うと唯一のオリジナル・メンバーであるミカエル・ダニエルソン(リズム・ギター)の
曲作りにブレがない。
全曲ツボを突く。
いい感じでヘタレたイングマーのヴォーカルも健在。
リード・ギタリストとベーシストのメンバー・チェンジがあろうが、
バンドの屋台骨のドラマーがレコード・デビュー当時の人というのも大きい。
やっぱりバンドはドラマーで決まるのだ。
とにかく簡単にマネできそうで誰にもできない“NO FUN AT ALL節”に磨きをかけている。
チラリと聴かせるツイン・ギターのハーモニーもバッチリだ。

中核メンバーがオッサンになったバンドならではの円熟テイストも滲みつつ変わらず瑞々しい。
NO FUN AT ALLをずっと聞いてきて良かった。
胸がすく一枚。


★NO FUN AT ALL『Grit』(BIRD ATTACK BAR-049)CD
カードボード状の三つ折り紙ジャケット仕様の約33分12曲入り。


映画『ガザの美容室』

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中東パレスチナ自治区のガザ地区の美容室で繰り広げられる実話をもとにした“騒動”の物語。

お客として集まった女同士のすったもんだの確執をエナジーにして進行し、
イスラエルの“軍事的監視下”にある地で本当にギリギリの状況だけに政治性も滲む。
でも不幸ネタ頼りで白黒つけたがる“プロテスト映画”とは別次元で、
政治的な予備知識がなくても楽しめ、
映画の可能性を感じさせる刺激的で示唆に富むユニークな佳作である。

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舞台はガザの美容室。
経営者の美容師と一人のアシスタントがてんてこまいなほど大にぎわいだが、
客は好き勝手に言いたいことを言う女性ばかり。
離婚調停中のワガママ高飛車主婦、
薬物中毒でエロ話好きの女性、
ヒジャブを被ったイスラム教徒の女性、
結婚式に向かう直前に髪などのセットに来た若い娘、
その花嫁の母親で喘息持ちの女性、
出産間近の妊婦、
スマホを手放さない若い娘、
その母親などなどが、
よもやま話に興じている。

総勢13人の女性がそんなふうに午後の時間を過ごしていたときに、
外で銃が発砲された音が聞こえてくる。
銃声が日常茶飯事の地とはいえまもなく送電が止まり、
美容室は戦火の中に取り残される。

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セリフのウエイトも高く、
特に序盤は目立とうとしているかのように自己主張していて言葉数も多いが、
一人一人のキャラの濃さに持っていかれる。
彼女たちの会話の半分ぐらいはパレスチナ云々はあまり関係ない内容で、
そこから普遍的な社会批評みたいなものが浮かび上がってもくる。

女性同士の会話が白熱して自己中心的な言い合いが重なっていくうちに
ストーリーがゆっくりと熱を帯び、
美容室の外が騒がしくなっていく頃には観ている方も張りつめていく。
でも女性がみんなどこか“抜け”ている。
欠点が人間臭くて笑っちゃう言動も地雷のようにちりばめられている。

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登場人物のほとんどが女性で、
ほとんどのシーンが美容室という密室の中で繰り広げられる‘特殊’な設定だ。
治安上の問題か窓がカーテンで覆われて外が簡単には見えない。
イスラエルに“国境封鎖”されているガザ地区の現状を否応なしにイメージさせるが、
そういったことを絶妙の撮影で生々しく捉えている映像に舌を巻く。
映像色もアングルも女性たちの息遣いと匂いが伝わってくるほどで、
美容室内の空気感をナマのままスクリーンに映し出している。

女性たちのおしゃべり以外の音声のウエイトの高さもかなりのポイントだ。
イスラエルが飛ばしているドローンの音はまだ序の口で、
中盤以降は見えない外から聞こえてくる響きの戦闘音が半端ない。
研ぎ澄まされたノイズ・ミュージックも適宜挿入され、
ブレンドした音声が閉鎖的な状況下で張りつめた雰囲気を高めるのに一役買っている。

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トランプ米国大統領がイスラエルの首都として認定したエルサレムの東部を含むヨルダン川西岸地区も
パレスチナ自治区だが、
この映画の舞台のガザはそこから離れの地でイスラエルに囲まれた海沿いの狭い自治区である。
前記のトランプの無神経な決定以降にまた激しくなっているように、
パレスチナとイスラエルの“交戦”の大半はガザで起こっている。

ただしこの映画の美容室の外で行なわれている戦闘は“パレスチナ vs イスラエル”ではない。
イスラエルに“幽閉”支配された困窮状態が原因とはいえ、
一種の“内部抗争”というところが映画の肝だ。
パレスチナ内の政治の世界でも穏健派ファタハと強硬派ハマスという二大勢力が“内部抗争中”だし
(注:ガザ地区を実効支配している組織だけにハマスは映画の中の女性がよく言及する)、
この美容室内も女たちの“内部抗争”である。
まるで敵は外ではなく内にいるとばかりに。

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そんな女同士の“争い”がオーヴァーヒートしていくうちに美容室内が停電。
イスラエルが色々と封鎖していて燃料等もなかなか入ってこない地だから節約しながら明かりを灯す中で、
美容室の外の爆音が激しくなっていく。
外で何が起こっているのかよくわからず恐怖感が高まったことで女たちが目覚めていく。
男たちが火器で争っているときに、
なぜ私たちは争っているのか、と。

戦争を起こすのは男だけとは限らない。
80年代の英国サッチャー首相はフォークランド紛争に“点火”した。
フランスの人気極右政党の国民戦線(国民連合)の党首マリーヌ・ルペンも、
前任の父親より現実的で穏健とはいえ政権を握ったらどうなるかわからない。

でもこの美容室からは女だらけの中で炙り出された天然のフェミニズムが漂ってくる。
もちろん説教臭くなくメイクやオシャレと同じく普段の生活の匂いで香ってくる。

“オチ”と言ってもいい結末は観る人それぞれの解釈にゆだねたい。

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★映画『ガザの美容室』
2015年/パレスチナ、フランス、カタール/84分/アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP
監督・脚本:タルザン&アラブ・ナサール
出演:ヒアム・アッバス、マイサ・アブドゥ・エルハディ、マナル・アワド、ダイナ・シバー、ミルナ ・ サカラ、ヴィクトリア ・ バリツカほか
字幕翻訳:松岡葉子 
提供:アップリンク、シネ・ゴドー 
配給・宣伝:アップリンク
6月23日(土)より、アップリンク渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開。
http://www.uplink.co.jp/gaza/


MEGADETH『Killing Is My Business And Business Is Good The Final Kill』

MEGADETH『Killing Is My Business And Business Is Good The Final Kill』


アルバム・デビュー前にMETALLICAをクビになったデイヴ・ムステイン(vo、g)率いる
LA出身のへヴィ・メタル・バンドが85年にリリースした、
デビュー作『Killing Is My Business... And Business Is Good!』の新装リイシュー盤。
結成35周年記念盤とも言える。

アルバム・タイトルがマイナー・チェンジされ、
アルバム・カヴァーは2002年のリイシュー盤のジャケット画を生々しくアップデート。
曲順とデモ3曲追加も2002年版を基にしつつ、
本作のオリジナル曲の1986~1990年のライヴ(音質まずまず)が本作の曲順で追加された。


新ミックスとリマスタリングでもって音のメリハリ五割り増し。
神経質で気難しく粗削りのギター・リフのソリッド感が際立ち、
インダストリアル・メタルの質感を先駆けたとも言えるメカニカルな金属感がしぶきを上げる。
と同時に高い声域のヴォーカルとグルーヴ感がLED ZEPPELINの流れであることも、
再認識させられる。

METALLICAの「The Four Horsemen」の“原曲”である「Mechanix」をはじめとして、
スリリングな展開を見せつつスラッシュ・メタルの“primal scream”そのもののサウンドだ。
アルバム・タイトルのイメージどおりの歌詞以前に、
ヴォーカルも含めてサウンドがフラストレイションでギラギラとげとげしい。
サウンドの破片から放射されるデイヴ・ムステインの気合と気負いがまぶしく、
ヒリヒリした熱情が混沌の渦を巻いている。

ボーナス・トラックのライヴ・テイクも含めて音が十分に分離された仕上がりである。
これで音質がどーこー言うのなら、
そんなに毒抜きされた音のロックが欲しいか!?って感じである。
角が立った音ってのはこういうもんだ。
タイトルが偽りじゃなく殺気立っている。
METALLICA、SLAYER、ANTHRAXとともにスラッシュ・メタル四天王と呼ばれる中で、
結局一番殺伐としていたのはこの時期のMEGADETHではないか。

2002年のリイシュー盤と同じく今回も本編ラストに入っている
「These Boots」の“新調ヴァージョン”も興味深い。
ナンシー・シナトラの1966年の大ヒット曲「These Boots Are Made For Walkin'」を
“リメイク”するも、
ソングライターのリー・ヘイズルウッドが歌詞等にクレームを付けてきて、
2002年のリイシュー盤では問題部分が“ピー音”で消されていた曲だ。
今回ヘイズルウッドの歌詞を尊重して新たなヴォーカルで録り直されており、
そういう処置もMEGADETHらしい。

というわけで非常にブレの多いバンドだが、
それもまたMEGADETHの、
というかデイヴ・ムステインの人間味に思えてくる必殺盤。


★メガデス『キリング・イズ・マイ・ビジネス-ザ・ファイナル・キル-』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP-31164)CD[BLU-SPEC CD2]
3面デジパック仕様で10曲のボーナス・トラックを含む約72分18曲入り。
日本盤のみ、
BLU-SPEC CD2で、
歌詞とともに8ページのブックレットに小さな文字で書かれたデイヴ・ムステインと
PANTERAのヴィニー・ポールのコメントの和訳付。


NEW YORK DOLLS『Personality Crisis: Live Recordings & Studio Demos 1972-1975』

NEW YORK DOLLS『Personality Crisis Live Recordings


レア音源集の決定版とも言うべきCD5枚組。

完全未発表ものではない。
僕がわかるだけでも、
権利関係はクリアして発売されたと思しき80年代初頭以降リリースの
カセットやレコードやCDで世に出た音源が多い。
必ずしもまるっきり同じ曲目ではないが、
『Lipstick Killers』『A Hard Night's Day』『Butterflyin'』『Red Patent Leather』の曲の
大半とダブっていると思われる。
とはいえそういうものを一つ一つフォローするのは今でも大変だから便利な編集盤だし、
リマスタリングされているからパーカッシヴに迫ってきて、
ジョニー・サンダース(g、vo)のワガママなエレキもまさにギンギンだ。
どれも音質良好である。


約72分18曲入りのディスク1と約71分18曲入りのディスク2は
1972年の6月と10月、1973年3月録音の3回分のデモを収録。
そのうち1973年の23曲のデモを聴くと、
ファーストの『New York Dolls』レコーディング直前でありながら
既に1974年のセカンド『Too Much Too Soon』の曲の大半ができあがっている、
ビリー・ムルシアがドラムの1972年の13曲はテンポが遅いのも興味深いが、
ジョニー・サンダースが数年後にHEARTBREAKERSを一緒に組むジェリー・ノーランが
ドラマーとして加入したことがいかに大きかったことが1973年のデモでわかる。
スピード感が五割り増しで、
リズム隊のコンビとしてアーサー・キラー・ケインのベースのヘヴィネスも五割り増しなのだ。

サニー・ボーイ・ウィリアムソンII、オーティス・レディング、チャック・ベリー、
マディ・ウォーターズ、SHANGRI-LASのカヴァーの他、
オリジナル・アルバム未収録のオリジナル曲も含まれている。

約80分23曲入りディスク3と
約78分17曲入りのディスク4と
約67分16曲入りのディスク5には、
1973~1975年の6回のライヴ音源の曲が入っている。
収録時間制限ギリギリかつ合理的に曲を詰め込んで一回分のライヴがCD2枚に分割もされているが、
一つのライヴ以外はフル・セットに近い収録と思われる。

全体としてまさにギンギンのうなりを上げるエレキのジョニーのギターが炸裂し、
オリジナル・アルバムのR&Bっぽさは薄れてHEARTBREAKERSの原型のパンク色が濃い。
ライヴは特にサウンドそのものが素行不良である。
こういうものを体感すると、
たとえ極悪イメージを打ち出していてもメタル的整合感の音のテクスチャーがえらく行儀良く聞こえる。
といっても1975年のライヴは疲れ気味で分裂寸前の空気感も伝わってくるのであった。


同じ曲が何度も出てきて通して聴くとゲップが出そうなほど
猥雑なロックンロールの肝が詰まった小箱である。


★NEW YORK DOLLS『Personality Crisis: Live Recordings & Studio Demos 1972-1975』(CHERRY RED CRCDBOX52)5CD
小箱ボックス仕様。
すべて別デザインの紙ジャケットにCDが収納され、
雑誌の表紙やポスター等の写真と長文ライナーなどで彩った28ページのブックレットも封入。


FUGAZI『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』DVD

FUGAZI『INSTRUMENT フガジ


数か月前に劇場上映も行なわれたFUGAZIの映像作品の日本盤DVD。


日本盤だけのジャケット/パッケージ・デザインで、
発言部分と歌入りの曲の大半の部分には日本語字幕が表示できる。
117分の本編に関してはこのブログでも書いたから今はあらためて触れないが、
イアン・マッケイ(vo、g)も主宰者の一人でこのDVDのオリジナル盤のリリース・レーベルの
DISCHORD RecordsによるフルHDリマスターが行なわれている。

音圧を上げすぎてないにもかかわらず演奏場面ではパーカッシヴな音に仕上げられていると同時に
この映像作品のバックで使うために作られたFUGAZIのインスト・ナンバーも深く染みてくる。
映像は妙に鮮明すぎず彫りが深く、
カラー映像も含めてフィルム感の高いトーン。
実際白黒映像も適宜使っているが、
モノクロ写真の味わいだ。
コンセプト先行の頭デッカチとは対極の映像そのものが表現だから何度観ても飽きない。

映像作品における編集センスの大切さも再認識する。
ストイック、しかしユーモアもさりげなく、
FUGAZIの映像作品らしい。


映像特典は、
米国批評とも解釈できるイメージ映像「Little Flag」「Glue Man」
(FUGAZI、イアン・マッケイ/ジェム・コーエン監督の音楽入り)に加え、
「Waiting Room」「Turn Over」「Long Division」のライヴが各々フルで入っている。

日本盤には16ページの特製ブックレットも封入。
イアン・マッケイのコメントの原文と和訳、
ジェム・コーエン監督の長文プロダクション・ノート/サム・ロジカル・ノーツの和訳、
観たい部分が出しやすい48に区切られたわかりやすい“contents表”(≒目次≒chapter)
等で構成されている。


★FUGAZI『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』(キュリオスコープ/キング KIBF 1577)DVD


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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